ドラゴンボールad astra 作:マジカル☆さくやちゃんスター
ナメック星には夜がない。
それはこの惑星が3つの太陽の周りを回っているからだ。
だから必然的に朝や昼といった概念もなく、休むタイミングなどは個々に任される。
これはこれで惑星の特徴として別にいいのだが、困るのは隠密などにまるで向かない惑星だという事だ。
夜があればフリーザやターレスが寝静まるだろう頃もある程度計れる。
だがずっと昼が続くのでは、いつ彼等が休むかも分からず迂闊に動けない。
それでも何とかリゼット達は岩陰に身を隠し、情報を交換し合っていた。
その傍らには悟空達によって連れて来られたツーノ村の住人20人が縮こまるようにして立っている。
リゼットの記憶が正しければ、確かベジータによって壊滅させられ、そして後になってもドラゴンボールへの願いが『フリーザ一味に殺された者を生き返らせてくれ』だったが為に蘇生させてもらえなかった可哀想な人達だ。
「それにしても、よく俺達の事を信じてくれましたね?」
クリリンはツーノ村の人々を一瞥し、改めて自分達地球人との差異は大きいと実感していた。
向こうから見れば自分達はピッコロ以外まさに異星人の集団。
そして、その肝心のピッコロすら彼等の説得には同行していなかったのに、こうしてこちらの言う事を信じて付いて来てくれた事に驚きを禁じえないのだ。
「ああ。俺もあまりに彼等が話が分かる人達で驚いたよ。
どうやらナメック星人っていうのはかなり温厚な宇宙人らしい」
「顔はピッコロみてえなのにな」
実際にナメック星人の説得に向かったヤムチャが、外見からは想像も出来ないナメック星人の温厚さと人の良さを語り、悟空がピッコロを見ながら余計な補足を入れる。
しかしそれも無理のない事だろう。
何せ彼等の知るナメック星人といえば初代大魔王とピッコロ、そして先代神様の3人で、3人中2人が大魔王である。
これではナメック星人=怖いという図式が彼等の中に出来上がってしまっても仕方がない。
「あの、地球の方……少しよろしいですかな?」
ツーノ長老が遠慮するように声を発する。
その隣にはデンデがおり、彼の村……そしてこのナメック星で今何が起きているかは彼等にも伝わっているはずだ。
最初はまだ疑いもあったようだが、デンデとの合流後は完全にこちらを信用してくれているように見える。
「今、このナメック星で起こっている事はデンデから聞きました。
そこで我々はひとまず最長老様の所へ行き、この危機を知らせようと考えております。
どなたか我等と共に来ては下さいませぬか?」
「構いませんが……それは全員でもいいのですか?」
「え、はい。それは勿論ですが、全員で移動するとなると流石に目立つかと……」
ツーノ長老からの申し出はリゼットにとって渡りに舟であった。
最長老の所へ行っての潜在能力解放は、フリーザと戦う事を考えるなら外せないイベントだ。
打算にまみれた考えだとは自覚しているが、向こうだってこのままフリーザに蹂躙されるのは望ましくないだろう。
だから最長老は必ず全員分の解放をしてくれるという確信があった。
「その点でしたら問題はありません――ヘブンズゲート」
リゼットが微笑み、空間にゲートを開く。
ガーリックJr.は呆気ない男であったが、彼の技は実に役に立ってくれる。
悟空が後に会得する瞬間移動のような緊急回避能力はないものの、利便性ならばこちらが上だろう。
「さあ、行きましょう皆さん」
「神様のその技、本当に便利だよなー」
「全くだ。移動が楽でいい」
リゼットが開いたゲートにまず悟空が入り、次に天津飯が入る。
その後に全員が続き、更にツーノ村の人々もおっかなびっくりといった様子でゲートを潜った。
最後に術者であるリゼットが通過してゲートを閉じる。
たったこれだけで全員含めての長距離移動の完了だ。
ゲートを通った先は最長老の家の前であり、そこではピッコロそっくりの顔をした男がまるで驚いた様子もなく立っていた。
「ネイル殿!」
「よくぞ来られた、ツーノ長老。それに異星の方々よ。
最長老様はおおよその成り行きを知っておいでだ。さあ、中へ……」
言われるままに全員が入る。
しかしツーノ村の住人は20人であり、そこにリゼット達とデンデを含めると31人になってしまう。
ネイルと最長老を加えれば33人で、更に家主である最長老はかなりの巨体だ。
つまり――狭い。
まるでおしくら饅頭のようにぎゅうぎゅう詰めとなってしまう。
「……ネイル」
「も、申し訳ありません最長老様!
とりあえず地球の方々とデンデ、ツーノ長老以外は外でお待ち下さい!」
ツーノ村の住人達を外へ追い出し、とりあえず圧迫から逃れたリゼット達は改めて最長老を見た。
……でかい。
座っているはずなのに、この中で一番の長身であるピッコロよりも大きい。
直立すれば恐らくピッコロの3倍……6m程に達するだろう。
確かに一目で他のナメック星人と違うと分かる貫禄に満ちていた。
「ようこそ。貴方がたは地球人ですね。
まず、我が子等を助けて頂いた礼を言いたい。ありがとう」
「初めまして、最長老さん。
私は地球の神を務めているリゼットと申します」
リゼットが最長老に軽く会釈をし、微笑んだ。
とりあえず、まずは敵意がない事をアピールしておく。
最長老はそれに対し、「おお、初めまして」とにこやかに返した。
「あの悪党達のせいでこの星の我が子達も随分数を減らしてしまいました……残念です。
それに他にも数人、大きなエネルギーを持つ悪党がいるようですね。
ナメック星に住む者の知恵と力の証……希望の玉がまさかこのような事を招き寄せるとは……」
ドラゴンボールは本来、その星に住む民の為を思って造られたものだ。
それは地球もナメック星も共通している。
しかし皮肉にも、そのドラゴンボールこそが星の危機を招き、フリーザやベジータという悪党を呼び寄せてしまった。
残念そうに語る最長老へ、リゼットは回りくどい言葉をあえて選ばずに本題を切り出した。
「単刀直入に言います。貴方の持つドラゴンボールを私達に預けてくれませんか?
私達は彼等が不老不死になるのを阻止する為にここまで来ました。
彼等の手に7つの玉が揃うのは必ず阻止するとお約束します」
「確かに、私はもうここを動く事が出来ないし、あのフリーザという者が来ればそこにいるネイルですら守りきれないでしょう……。
私が持つよりも、貴方達に託した方がよさそうだ。
このドラゴンボールは貴方達に差し上げましょう」
最長老はそう言い、椅子の背もたれに乗せていたドラゴンボールをリゼットへと渡した。
地球のボールが精々野球ボール程度の大きさに対し、こちらはバスケットボール程度の大きさがある。
流石は本場というべきか。サイズからして違う。
「それにしても、貴方達は地球人なのに飛び抜けた力をお持ちなのですね。
何人かは違うようですが……しかも勿体ない事にまだ眠っている力がある。
その力を起こしてさしあげましょう」
最長老の大きな手がリゼットの頭へ乗せられる。
記憶や過去を探られたら少し厄介かな、と考えてリゼットは常に精神に防壁を張っている。
超能力者は相手の心を読む事が出来る。
ならばその逆に、読まれないようにする事もまた可能なのだ。
少なくともリゼット以上の気の持ち主でない限り、彼女の心を無断で読む事は出来ない。
しかし最長老の表情が変わらない事を見るに記憶を探る事自体をしていないようだ。
まあ、よく考えれば彼の性格上相手の許可も得ずに記憶を探るなんて事はまずやりそうもない。
実に紳士的というか、優しい人なのだと改めてリゼットは感じた。
そんな事を考えていたリゼットだが、しかしその余裕は次の瞬間に消し飛んだ。
――力だ。
今までに感じた事もないような圧倒的な力が自分の内から湧きあがってきたのが解る。
一瞬、無意識のうちにバーストリミットを発動してしまったのかと勘違いするほどの絶大な気の上昇。
2倍? 3倍?
否……恐らくは7倍近い戦闘能力の飛躍!
期待していなかったといえば嘘になる。
むしろドラゴンボールよりも、この潜在能力の解放を当てにしてここに来たと言っても過言ではない。
だがまさか、ここまでとは……。
(……いける……勝てる……!)
潜在能力の解放により、リゼットは自分でも驚く程の力を得た。
ここに長年の重力修行と気霊錠。そしてバーストリミットを日頃から使い続ける事で得た『負担への耐性』を合わせれば、きっと短時間ではあるものの40倍の上昇にだって耐えられる。
即ち、擬似的に超サイヤ人に近い域にまで踏み込める!
バーストリミットは界王拳と同じく身体に負担を強いる技である。
だがその負担への耐性は戦闘力も勿論だが、『慣れ』もまた一つの要素なのだ。
例えば孫悟空は今でも無理をすれば10倍の界王拳に耐えうる。
原作でもやはり、この時期の悟空は「10倍にだって耐えられる」と言っていた。
だがその後、瀕死パワーアップを経て圧倒的に力を増したはずの悟空の限界はどういう事か10倍のままであった。
数値にすれば基礎戦闘力9万から300万への飛躍的強化を果たしたにもかかわらず、である。
つまり悟空とリゼットは下地が違う。
確かに才能は悟空が勝るだろう。
種族としての特性など言うまでもなく、地球人であるリゼットとサイヤ人である悟空の差は本来埋め難い。
だがリゼットには積み重ねがある。今日まで生きてきた年月がある。
その差が、そのまま耐えうる倍率の限界へと繋がっていた。
加えて、神精樹の気を取り込んで一時的とはいえ戦闘力にして億クラスの世界を体験していたというのも大きかった。
あの経験によってリゼットの身体は既に、この領域に耐えるだけの下地を完成させていたのである。
簡単に言ってしまえば高出力のバーストリミットに耐えうるだけの器が既に出来ていたのだ。
勝てる――!
リゼットは既に、このナメック星での戦いの勝利を疑ってはいなかった。
スカウターがないのが惜しまれるが、今のフリーザと比較すれば大体の計算は不可能ではない。
今のフリーザと比較し、気霊錠などを解除した全力状態の自分は凡そ11倍から12倍。大体11.7フリーザ(第一形態)、2万666先代様といったところだ。
数値にして620万前後。
そこに30倍バーストリミットを重ねれば……約1億8千万!
無理して40倍まで引き上げれば2億にも手が届く。
勿論40倍はリゼットにとっても負担が大きく、加えて長時間は続かない。
しかしこれならば出力を落とした30倍や20倍程度でも互角以上に戦えるだろう。
油断さえしなければ負ける事はまずない。
(勝つだけならば、私だけでも容易……。
しかし私がそれをやってしまうと、悟空君の超サイヤ人化がどうなるか分りませんね)
悟飯が後に妄想で覚醒するのだから、別に必ずしも劇的に盛り上げる必要などない。
あれはあくまで物語で、悟空が主人公だからああいう盛りあがる覚醒をしただけであり、そんな事をする必然性などないのだ。
ならばやはり、最善は己がフリーザをさっさと始末してしまう事か。
リゼットはそう考え、しかし結論を急ぎすぎている自分に気付いた。
……いけない。どうも舞い上がってしまっている。
自分は今、自惚れている。
突然手に入れた大きな力に酔い、少し無謀な精神状態になってしまった。
“油断さえしなければ負ける事はまずない”……などと。その思考自体が既に油断そのものではないか。
(いけない……少し落ち着かなくては)
今なら、ピッコロが「俺は究極のパワーを手に入れたのだー!」とか叫んだり、ベジータが「俺は超ベジータだ!」とか恥ずかしい台詞を臆面もなく吐いてしまったり、潜在能力を引き出された青年悟飯が「勝てんぜ、お前は」とかドヤ顔で言ってしまった気持ちが分る。
これは麻薬だ。
急激な力の上昇というのは、こうまで人を酔わせてしまう。
260年生きてきたが、これほどの高揚感はそうはなかった。
少し冷静になってみれば、『勝てる!』なんて負けフラグもいい所だ。
やはり少し、熱を冷ます必要があるだろう。
今の自分は冷静に考えたつもりでも実際は熱に浮かされた判断だった、という事になりかねない。
「ありがとうございます、最長老さん。
おかげで、大分勝率も上がりました。
もしよろしければ、他の方の力も解放して頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ええ、勿論構いませんよ。
強い正義は一人でも多い方がいい」
リゼットの後に続き、悟空やピッコロも潜在能力の解放を行う。
これで全員が素の状態で特戦隊を完全に凌駕した。
つまり、ギニューのボディチェンジにさえ気を付ければ負けはない。
ターレスも、悟空とピッコロがこの強さに達した今脅威ではないだろう。
確実に流れはこちらへと傾いている。
リゼットは今、確かな手応えを感じずにはいられなかった。
1 一 俺は今究極のパワーを手に入れたのだ
2 遊 このゴールデンフリーザの前では無意味ですよ
3 二 俺の分の仙豆はいりません。絶対に勝ちますから
4 中 俺はスーパーベジータだ
5 右 油断さえしなければ、まず負ける事はありえません 【New!】
6 三 究極の戦士ならもうここにいるだろう
7 左 勝てんぜ、お前は
8 捕 ここにいるのが貴様の最も恐れていたスーパーサイヤ人だ
9 投 消えろ、ぶっとばされんうちにな
※遊の天津飯選手はよく考えたら台詞を吐いた試合は実際圧勝していたので相応しくないと思い、フリーザ選手とチェンジしました。
【各キャラ戦闘力】
・リゼット:620万
バーストリミット(最大30倍):1億8600万
・孫悟空:68万
界王拳(最大10倍)680万
・ピッコロ:66万
界王拳(最大10倍):660万
・孫悟飯:25万
・ナッパ:24万
・天津飯:21万
・クリリン:20万
・ヤムチャ:18万
・兎人参化:17万
・餃子:15万
\俺の出番のようだな……/
・クウラ:1億5000万
最終形態:4億7000万