ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第三十話 歴史の侵略者達

「よおカカロット。地球で会った時よりもずっと腕を上げたようだな。

そう身構えるなよ。別に戦いに来たわけじゃねえ」

 

 ベジータを連れて悟空達の前に現れたターレスは驚く程に友好的だった。

 いや、彼の目的は既に地球で聞いていたのだから別に意外でもないのかもしれない。

 彼が地球で語った目的――悟空と手を組んでのフリーザ打倒。

 あの時はターレスを危険と判断したリゼットが地球から追い出してしまったが、再び悟空とターレスはこのナメック星で再会を果した。

 ならば当然、あの時の勧誘の答えが聞きたくなるのだろう。

 それに対し、悟空はあくまで落ち着いた様子でターレスへと言葉をかける。

 

「悪いが時間がねえ。用があるんならさっさと済ませてくれ」

「わかってるさ。フリーザの野郎が来てるんだろう?

そこで相談だが、戦力が欲しくねえか?」

「オラ達に協力するっていうのか?」

「そういう事だ」

 

 ターレスからの共闘の申し出はまさに渡りに舟だ。

 地球に来た時もフリーザを敵と見なす言葉を口にしており、打倒フリーザに限れば最初から共闘の目はあった。

 しかも今のターレスは地球に来た時よりも更に気が強大だ。

 それでも今の悟空やピッコロならば勝てる相手だが、ターレスには尻尾がある。

 つまり最大で戦闘力10倍の大猿になるという奥の手もあり、それを使われてしまえば悟空達では勝てない。

 ターレスの隣にいるベジータは3万程度だが、リゼットの知識が正しければここから2回も瀕死になれば戦闘力がネイルと合体したピッコロ――つまりは100万以上――を上回る。

 成長性という点で見れば悪くない戦力だ。

 

「信じるな孫悟空。俺達を騙す気に決まっている」

「……いや、オラはそう思わねえな。こいつは確かに悪い奴だけど、フリーザを倒したいって気持ちは本物だと思う」

 

 ピッコロが疑り深く言うが、悟空はこの件に関してだけはターレスを信じてもいいと思っていた。

 何か根拠や理屈があっての事ではない。

 理由を問われれば『何となく』としか答えようがないだろう。

 あえて言うならば、悟空が記憶を忘れてよかったと発言した時のあの激昂ぶりだろうか。

 ターレスの事を完全に知っているわけではないが、それでも彼がバーダックという名の悟空の父を尊敬していたという事だけは確かに伝わってきた。

 だから悟空は、彼を信じてもいいと考えたのだ。

 

「信用してもいいんだな?」

「フリーザの野郎を倒すまではな」

 

 悟空の簡素な問いにターレスもまた簡潔に答える。

 それだけで二人にとっては充分だった。

 悟空が手を差し出し、ターレスが固く握る。

 決して信頼で結ばれた間柄とは言いがたく、仲間とは到底呼べない関係だ。

 だが少なくともフリーザを倒すという共通の目的を果すまでは敵ではない。

 今はそれで上出来だ。

 

「ところで、何でベジータが?」

「ああ。やっこさん、フリーザに反逆してこの星に来たはいいが側近の二人に半殺しにされちまったのさ。

で、それを偶然俺が見付けて拾ったわけだ」

「ターレス! 余計な事を言うんじゃない!

フリーザより先にてめえからブッ殺されたいか!?」

 

 ベジータは不機嫌を隠さずに怒鳴る。だがターレスは「おお、怖い」などと言いつつも本当に怖がっている素振りなど欠片もなかった。

 それも当然の話で二人の戦闘力には大きな開きが存在する。

 何も考えずに喧嘩を売っても負けるのはベジータの方なのだ。

 気付けば随分ベジータと他の戦闘力に開きが出来てしまっているが、リゼットはこの点についてあまり深刻には考えていなかった。

 どうせベジータは少しくらい差があっても勝手に猛トレーニングしてインフレの最前線にまで這い上がってくる男だ。心配する必要はない。

 むしろ今のベジータはまだ悪人であり、いつ後ろから撃ってくるか分からないので弱い方が都合がいいとすら思っていた。

 ……とはいえ、少し気の毒な事をしてしまったとは思う。

 ベジータの顔は屈辱に満ちており、彼は今、かつてない惨めさを味わっていた。

 

(く、くそったれ……どうなってやがる? 俺が地球でこいつ等と戦ったのはほんの一月前の事だ。

なのに何故、この短期間でどいつもこいつもここまで戦闘力を上げてやがる……全員、以前とはまるで別人だ……ナ、ナッパすらこの俺を遥かに凌駕してやがる……!

お、俺はあの時よりも遥かに力を増したはずだ……なのに何故……)

 

 それは、かつて体験した事のない恥辱だった。

 決して馬鹿にされているわけではない。誰かに指摘されたわけでもない。

 だが、それでも理解してしまう……今ここにいる中で、自分が一番弱いのだという事を。

 エリートであるベジータにとって、他人の上に立っているのは当たり前の事であった。

 故にこの状況は初体験。自分が一番の弱者であるという予想すらしなかった事態に困惑する他ない。

 

「よおベジータ……ちょっと見ねえ間に随分と弱弱しくなっちまったなあ」

「ナッパ……!」

「嘘みてえな話だ。絶対に敵わないと思っていたお前が今や、ちっぽけに見えるぜ」

 

 そんなベジータへと、ナッパが挑発交じりに声をかけた。

 ナッパとベジータの力関係は完全に逆転している。

 今や、ベジータがどう逆立ちしてもナッパには敵わない。それだけの差があるのだ。

 その事にベジータは怒りの形相を浮かべ、ナッパは嘲笑の表情を浮かべた。

 

「ナッパ、やめなさい。

貴方とベジータの間に確執がある事は知っていますが、今はそれよりもフリーザの事を考えるべきです」

「う……そ、そうだな。すまねえ女神様」

 

 一触即発の空気だったが、リゼットに窘められてナッパが矛を収めた。

 何かまだベジータに言いたい事はあるのだろうが、しかしリゼットに注意されては仕方ない。

 それに実際、今はベジータよりもフリーザに集中すべき時だ。

 ナッパはそう考えてベジータから意識を外した。

 

(随分ギスギスした共同戦線になりそうですね)

 

 そんなナッパの様子にリゼットは眉を顰め、それから一つの岩陰を見た。

 フリーザだけでも厄介なのに、どうも厄介事というのは続けてやって来るものらしい。

 しかし、一度“彼女達”とは話しておくべきだと思っていたのも確かだ。

 故にリゼットは、招かれざる客へ向けて声をかけた。

 

「……そこに隠れている者。何者ですか?」

 

 リゼットの鋭敏な感知能力はフリーザよりも先にここに来ていた何者かを捉えていた。

 スラッグではない。彼の気は未だ遠くにある。

 それにこの特徴的な気は以前にも感じた事があった。

 

「へえ、勘がいいわね」

 

 リゼットの呼びかけに応じ、岩陰から例の魔族二人が姿を現す。

 全身スーツの女に、その後ろに控える寡黙な男だ。

 まさか地球から遠く離れたこのナメック星にまで現れるとは、本当に神出鬼没な連中である。

 恐らくはリゼット同様に空間転移の能力でも有しているのだろう。

 何せヘブンズゲートの元になったデッドゾーンは元々ガーリックJr.の技だ。魔族が使えても不思議はない。

 

「な、何だ? フリーザの一味か?」

「いや、この気配……貴様等、魔族か?」

 

 突然の乱入者にクリリンが身構え、同じ魔族であるピッコロが即座にその正体を言い当てる。

 魔族の男女はそれに返答を返さず、リゼットだけを鋭く視線で射抜く。

 どうやら向こうの目的はリゼットらしい。

 

「地球の神……少し貴女と話したい事があるんだけど、どうかしら?」

「私が受けるメリットがありませんが」

 

 リゼットはこの後すぐに到着するだろうフリーザを迎え撃たなければならない。

 後にクウラが控えている以上フリーザに戦力を削られるのは避けるべきだ。

 だからリゼットがフリーザを瞬殺し、後に来るクウラに全戦力をぶつける。

 しかしここで魔族二人を相手にしていては、その予定が瓦解してしまう。

 

「受けるメリットはなくとも、受けないデメリットなら提示出来るわよ。

そうね……例えばこのまま、フリーザとの戦いに私達が乱入するとか」

「――!」

 

 女の言葉にリゼットは顔を険しくする。

 これは脅しだ。いいから黙って付いて来い、そうしないとフリーザに味方するぞと言っているのだ。

 これが並大抵の相手であれば「どうぞご自由に」とでも言って蹴散らすところだが、何せこの二人は未知数だ。

 最悪、仲間の誰かが殺されてしまう可能性すらある。

 つまりリゼットに拒否権など最初からないのだ。

 

(いっそ、一度皆を連れて地球まで逃げてしまいましょうか……。

……いえ、それは恐らく悪手。彼女達は私と同様に空間移動の能力を有している可能性が高い。

私が逃げたところで、最悪、戦場が地球に変わるだけ……)

 

 リゼットの取れる選択肢の一つに『逃げ』がある。

 ヘブンズゲートで悟空達を連れて逃げ、フリーザ、クウラ、ターレス、スラッグで潰し合いをさせてしまうというのは一つの手段に数えていいだろう。

 この場合の最終的な勝者はクウラになるだろうが、もしかしたら彼の性格上、地球を雑魚と見なして放置してくれる可能性もある。

 劇場版で地球まで来てしまったのは悟空がフリーザを倒したからだ。

 そうでなければ来ない可能性も低くはない。

 しかし……やはり問題となるのは、この魔族二人組だ。

 ここまでに判明している時点で、彼女達には『空間移動、あるいは瞬間移動』、『他者の行動を変える』、『パワーアップさせる』という3つの能力を有している事が分かっている。

 つまりリゼットが地球に逃げても、クウラやフリーザを連れて追ってきてしまう可能性が高いのだ。

 それならばまだ……ナメック星人達には悪いが、住人のいなくなったこの星を戦場にした方がいい。

 

「……いいでしょう。付いて来なさい。向こうで話を聞きます」

「ふふっ、物分りがいいわね」

 

 リゼットは遠く離れた小島を指定し、魔族の二人もそれに従う。

 こうなった以上、フリーザとの戦いにリゼットは参加出来ないだろう。

 この二人を速攻で倒してしまえば戻る事も出来るだろうが、それも難しいとリゼットは考えていた。

 今の自分が全力で戦って、勝負になるかどうか……それほどのポテンシャルをこの魔族からは感じるのだ。

 リゼットは悟空を手招きで呼ぶと、対フリーザの注意点を彼へと伝える。

 こうなってしまったからには、せめて悟空達がさっさとフリーザを倒してしまう事に期待するしかない。

 

「悟空君、決してフリーザに全力を出させないで下さい。

相手がこちらを舐めている間に速攻で倒すように。いいですね?」

「え? そんな強え奴なんか……オラそいつの全力と戦ってみてえぞ」

「負けるから止めて下さい」

 

 ……伝える相手を間違えたかもしれない。

 いや、一応ピッコロやターレスも聞いているはずだし大丈夫だろう。大丈夫と思いたい。

 リゼットはその場から飛翔し、後に魔族二人が続く。

 予想はしていたが、それなりに飛ばしているのに余裕で付いて来ている。これだけでも油断出来ない相手だ。

 

「……『(アンテ)』」

 

 飛びながら、己の力を抑えている気霊錠を解除した。

 この二人の実力は未知数、となれば加減している余裕などない。

 悟空達から大分離れた所でリゼットは着地し、魔族二人も彼女から少し離れた位置に降り立った。

 

「さて……率直に問いましょう。貴方達は何者ですか?

様々な戦いにちょっかいをかけているようですが、何が目的なのです?」

「嫌あねえ、ちょっかいだなんて。私達はただ、面白くしようとしてるだけよ?

けど、私達がせっかく頑張っているのに貴女がいるせいで上手く行かないのよね」

「それをちょっかいと呼ぶのですが」

 

 魔族の女はリゼットを見つめる。

 その視線はリゼットを計ろうとしているようにも見えるが、真意は分からない。

 だがどうやら彼女の眼鏡にリゼットは適わなかったらしい。

 一言、『違うわね』とだけ呟いた。

 

「おかしいわねえ。タイムパトロールの回し者だと思ったんだけど、本当に私達の事を知らないみたいだし……考え過ぎだったのかしら?」

「どちらにせよ目障りな奴だ。ここで始末してやる」

 

 彼女達が言っている事はリゼットにはさっぱり分からない。元より理解させる気すら相手にはないのだろう。

 だが一つ……どうやらやる気らしい、という事だけは嫌でも分かった。

 一気に気を高め、赤いオーラを放出する男に対しリゼットも白翼を展開して応じる。

 20倍バーストリミットを発動し、これでリゼットの戦闘力は数値にして1億2375万――フリーザの100%にも勝る数値となった。

 今頃悟空達はいきなり意味の分からない大きさになったリゼットの気に驚いているだろうが、それを気にする余裕もない。

 

「なるほど。この時代では破格の強さだ」

「はァ!」

 

 この気の大きさを見ても余裕を崩さないか……と思いながらリゼットは男の懐へと飛び込む。

 そしてまずは拳に気を集中しての連撃!

 しかし当然のように男はガードをし、微塵も揺らがない。

 

「どうした? 一人で俺達と向かい合う以上、余程腕に自信があるんだろう。

見せてみろ、その力を」

「……!」

 

 ただ一度の攻防。それだけでリゼットは相手と己の差を痛感していた。

 全力を出していない、という点では両者共に同じだが恐らく隠している実力に天地の開きがある。

 彼の言う通りに実力の全てを真正面から出しても簡単に叩き潰されるだろう、とリゼットは判断した。

 だからまずは体勢を崩し、一気に攻撃を仕掛ける。

 何とか、相手がこちらを侮っている間に片を付けねばならない。

 それが彼女の出した結論だ。

 

「――ふっ!」

「!?」

 

 堅牢なガードを維持している男の小指を握る。

 いかに戦闘力が多かろうと体重まで増加するわけではない。

 リゼットは掴んだ小指を支点に合気の要領で魔族の男を投げ、頭を地面へ叩き付ける。

 普通ならばこれで小指もへし折れるのだが、流石に頑丈だ。皹すら入っていない

 男は小指を掴まれたまま空いている方の拳を繰り出す――が、その瞬間にリゼットが小指を捻り男の姿勢を崩す。するとまるで操られるように拳がリゼットを外れ、逆に勢いを逆用した掌底が男の顔を射抜いた。

 

(……今だ!)

 

 男の体勢が崩れた隙を狙い、リゼットはバーストリミットを瞬間で最大まで開放。

 気を固形化して創り出した拳を地面から発射し……男の股間へと出力全開で叩き込んだ!

 更に気の拳は素早く睾丸を鷲掴みにし、力の限り握りしめて捻る。

 

「――~~~ッッ!!? ~~~~~~~ッッ」

「あら、えげつない」

 

 さしもの魔族の男もこれには悶絶し、目を見開く。

 金的というのは相手が男である以上、どうしようもなく有効な攻撃だ。

 睾丸というのはいわば剥き出しの内臓。鍛えようもない、股間にぶら下がった明確な弱所だ。

 しかしやはり戦闘力が高いと皮の防御も厚いのだろう。

 リゼットとしては本気で潰すつもりで攻撃したのだが、流血の一滴すらも齎せていない。

 

「は!」

 

 再び倍率を20倍まで戻し、相手の体勢が戻るのを待たずに足払い。

 鞭のように足をしならせて相手の膝裏に足の甲を当てて強制的に座らせた。

 要は膝カックンと同じだ。曲がるように出来ているのだから、僅かな力を当てれば曲がる。簡単な道理である。

 そのまま蹴りの勢いを殺さずに回転。その際に長い髪が魔族の男の目に当たり、視界を奪う。

 眼球もまた剥き出しの弱所の一つだ。

 

「~~ッ!」

「ミラ、前!」

 

 魔族の女が何か言っているがそのアドバイスを活かす間など与えない。

 遠心力を上乗せし、バーストリミットを再び最大まで上昇。

 気の固形化を右脚に集約させ、蹴りに刃を纏わせる。

 ――直撃。

 魔族の男は額から血を噴出しながら吹き飛び、遠く離れた岩山へと衝突した。

 ……本当は頭部を切断してしまう気だったのだが、僅かに額が斬れただけとは異常に固い相手である。

 

「“リストレイント”!」

 

 体勢を崩している魔族の男の両手両足を対象に物質創造神術を発動。

 無から有を生み出すのは神としての基礎技能であり、これ自体は何も驚くべき事ではない。

 ピッコロだって何もない場所に服を創る事が出来るのだ。

 それと同じ術でリゼットが創造したのは、重りだ。

 『原作』において、このような場面がある。

 四肢に4トンの重りを付けて修行をしている悟空のもとへ南の界王がやってきて、詳細は省くが悟空の重りを10トンにしてしまうというエピソードだ。

 それは結局、超サイヤ人になった悟空があっさり動いてしまったことで南の界王が度肝を抜かれるという展開に終わるのだが注目すべきはそこではない。

 このエピソードで注目すべき点は一つ。

 

 界王クラスであっても、変身していないとはいえ、悟空が動けなくなるほどの重りを創り出せるという事だ。

 

 このエピソードで悟空に与えられた重りは合計40トン。

 大界王星の重力が界王星と同じ10倍と想定すれば400トンの負荷を与えられた事になる。

 そして今回リゼットが彼に付与した重りは……一つ1000トン! 合計で4000トンの重量を彼に強要し、その動きを封じ込めた。

 

「ぐ……お!?」

「“ギャロウズ”!」

 

 続け様に物質創造。

 絞首台を具現化し、男の首を縄で縛り上げて念力と合わせて浮かせた。

 狙いは無論、言うまでもなく、このまま彼の首をへし折る事である。

 戦闘力では今のリゼットでは魔族の男に遠く及ばない。

 しかし実力で及ばずとも、界王の重りの事例から分かるように、物質創造の使い方次第では格上だろうと行動不能にする事が出来てしまう。

 そして4000トンの重りによって首にかかる負荷は、リゼット自身が使うどんな攻撃よりも彼にダメージを与えるだろう。

 ギリギリと男の首が圧迫され、元々青い顔色が更に青くなる。

 

「ったく、世話が焼けるわね」

 

 しかしリゼットが神術を使うならば、相手も魔術を使う。

 女が杖を向けただけでリゼットが創造した拘束具と絞首台は一瞬にして消え――だがリゼットはそれを予期していたように即座に次撃へと移行した。

 

「千の剣よ、在れ!」

 

 間髪入れずにリゼットが右手を掲げる。

 すると空を埋め尽くす程に白い剣が創造され、一斉にその刃を魔族の男へと向けた。

 躊躇などそこにはない。

 放たれた刃が次々と男に炸裂し、その姿を覆い隠していく。

 だがリゼットはそれでも終わりと見なさないらしく、飛翔して空中で翼を広げた。

 翼から漏れた気がまるで羽のように舞い散る。

 そこから間髪入れずに両手を頭上でクロスさせて気を高め、かめはめ波と同様に両手の手首を合わせた状態で前に突き出した。

 それと同時にリゼットの周囲に二つの光球が生まれ、それらは彼女の周囲を旋回しながら光を強めていく。

 そして高めた気を全て掌の中に凝縮・チャージし――発射した。

 

Raging blast(レイジングブラスト)!」

 

 かめはめ波などに代表される単純明快な一方向へ向けての気の放出。そのリゼット版だ。

 放たれた白い奔流に合わせて2つの光球が桜色の気功波と化して中央の白い気功波に合流し、魔貫光殺砲のように螺旋を描きながら旋回した。

 言うならば『貫通力と突進力を強化したかめはめ波』といったところか。

 リゼットの全力で放たれたそれは星の地表すらも削り、岩山を消滅させて男を呑み込む。

 そればかりか惑星の成層圏すらも突き抜け、遠く離れた位置にあった小惑星へと直撃、爆砕した。

 

(……間違いなく今の私の全力の攻撃……これで駄目だったなら……)

 

 今のはリゼットが今行える最大の攻撃だった。

 これでどれだけのダメージを受けてくれるか……あるいは受けないかで実力差がある程度痛感(わか)る。

 無論実力差があるならばあるでやりようはある。カウンター狙いもいいし、ひたすらに斬撃を繰り返すというのも有効な手だ。

 太陽拳からの気円斬コンボも選択肢に入れていいだろう。

 だがやはり、出来れば少しくらいはダメージも入っていて欲しい。

 実力差を埋める手段はあれど、やはりそれで勝つのは楽な話ではないのだから。

 かくして、煙が晴れた時にそこにいたのは――。

 

「……こんなものか……期待外れだ。面白くもない」

 

 額の斬り傷以外に、これといって全くダメージを受けていない魔族の男の姿であった。




・ゼノバースにおいてミラさんをどれだけボコボコにしてもこの台詞を言われます。
ニコニコ動画とかだと「(震え声)」とかコメントが付きますけど、やはりこの時点のミラさんは勝ち目がない強敵なのです。
どれだけ一方的に殴って、こちらのHPが僅かにすら削れていないパーフェクト勝ちでも勝ち目などないのです。
こんなものか。期待外れだ。面白くもない(内股)


【リストレイント&ギャロウズ】
敵に合計4000トンの重量を与えて行動不能にし、その上で絞首刑にかける結構酷い技。
物質創造術の悪用。やろうと思えば多分界王様でも出来る。
リゼットはカッチン鋼を見たことがないので地球で一番固い物質である天命石(カリン塔を構成している石)で造っているが、このレベルの戦いでは天命石など木材のようなものなので、割と簡単に壊れてしまう。

【千の剣よ在れ】
リゼット版王子戦法。Dr.ウィローにも使った『ソード』を正式に技に昇華させたもの。
同時に千本の剣型気弾を創造し、敵に突撃させる。
千の剣と在れと言いながら実は正確な本数はリゼットの手抜きにより、微妙に千本を超えていたり足りなかったりする。
なので正確な技名は『四捨五入すれば大体千本くらいの剣よ在れ』である。
グミ撃ちの際に手を高速で動かすのが面倒くさいというリゼットの怠け心から生み出された。
剣の形状をしていて斬撃特化しているので殺傷力は高い。
しかし所詮は王子戦法なのでミラには通じなかった。
\トレースオン!/ \ゲートオブバビロン!/

【Raging blast(レイジングブラスト)】
リゼット版かめはめ波。
補助用の光球を先に出してから、手を頭上でクロスしてチャージし、敵へ向けて発射する。それだけの技。
3発の気功波を複合して放つ事で威力と貫通力、突進力でかめはめ波を凌駕する。
その攻撃力はかめはめ波の3倍。燃費の悪さも3倍。シャアは実は1.3倍。
光球を出さずに撃つ事も可能だが、その場合はただのモーション違いのかめはめ波でしかない。
名前の元ネタはゲームの『レイジングブラスト』から。
\コイツデトドメダ! クロスマッシャー!/ \ファイナルカメハメハ!/

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