ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第三十一話 更なる混沌

「もう終わりだ。安心しろ、お前のエネルギーは俺が使ってやる」

 

 リゼットの渾身の連撃を受けて尚、さしたるダメージも受けていないミラが宣告を下す。

 二人の実力差は一目瞭然。リゼットが全力で攻撃を叩きこんでもダメージがない時点でもはや勝敗は決している。

 勝ち筋があるとすれば斬撃系の気弾で首なり胴なりを切断してしまう事だが、千の剣を叩きこんでも無傷の時点でかなり難しいと言うしかない。

 しかしそこに、今まで沈黙を守っていた女魔族が言葉を割り込ませた。

 

「待って、ミラ」

 

 女の制止に男が素直に止まる。

 感じられる気の大きさは男の方が圧倒的に勝るが、どうやら立場は女が上らしい。

 ならばあちらを仕留めてしまえば……と思考を巡らせるリゼットへ女が問いを発した。

 

「ねえ、貴女。もしかして後ろに誰かがいるんじゃない?」

「……後ろ?」

「そう、例えば時間を越える力を持つ奴とか。

誰かが余計な事をしたと考えないと、不自然なのよね。

貴女だけよ? 存在している時間軸と存在しない時間軸でここまで差が生じているのは」

「一体何の話を……」

 

 相変わらず、この魔族の言いたい事はいまいち分からない。

 だが出てきた言葉は見逃せるものではなく、どうも彼女達は本来の時間軸……つまりドラゴンボールの正史を知っているかのような素振りを見せていた。

 本当に一体何者なのだろう、とリゼットは考える。

 セルやトランクスのように未来から来たのだろうか? それとも自分と同じ記憶持ちか?

 もしかしたら自分が知らないだけで後年にドラゴンボールの続編なり外伝なりが登場して、そこで登場した新キャラか何かだろうか?

 ……まさかAFのような二次創作のキャラクターという事は流石にあるまい。

 

「ふうん。どうやら本当に知らないようね?

……まあいいわ。ミラ、もう少しだけ放っておきましょう。

もしかしたらこいつを通して、裏にいる連中を引き摺り出せるかもしれないしね」

「こいつを見逃すのか?」

「いいでしょ? 貴方にとってはどうせ雑魚よ。大したエネルギーにもなりゃしないわ。

今はまだ、ね」

 

 女はあくまで余裕の態度のまま、リゼットを放置する事を提案する。

 実際にあの男――ミラとリゼットの実力差は明白だ。放置しても問題のない相手と判断されたのだろう。

 女は挑発するように笑うと、リゼットへと向き直る。

 

「そういうわけだから、もう少しだけ生かしておいてあげる。

でも私達の邪魔をしたらすぐに消えてもらうから」

「逃がすとでも……」

「あら、いいのかしら? 私達ばかりに構っていて」

 

 女がからかうように言い、それと同時にリゼットは感じた。

 今まで確かに第一形態だったはずのフリーザの気が、突然巨大に……最終形態のそれへと変わったのを。

 

「なっ……!」

「あら大変、フリーザったらいきなり最終形態になっちゃったわねえ」

「馬鹿な……貴方達、一体何を……!?」

 

 フリーザの性格上、いきなり最終形態になるなど有り得ない。

 だがこれと似たような事は以前にもあった。

 追い詰められてもいないベジータがいきなり大猿になるという不可解な事態。今回のはそれと全く同じ展開なのだ。

 一体何をしたのかは分からないが、この魔族二人が何かをしたに違いあるまい。

 

「そして、ほおら。もう一つ……」

 

 次にリゼットが感じたのは、このナメック星に到着してしまった複数の気であった。

 ギニュー特戦隊に、クウラ機甲戦隊。そしてクウラ。

 それらが、何時の間にかこの星に到着していたのだ。

 

「ふふ、少しだけ時間を早めてあげたわ。どう? 楽しくなりそうでしょう?

ま、種あかしをしちゃえばちょっと先の到着寸前の未来から『持ってきた』だけなんだけどね」

「……!」

「それじゃ、私達は次の時代へ行くわ。また会いましょう……可愛いイレギュラーさん」

「待っ……!」

 

 リゼットは慌てて止めようとするも、それよりも早く二人の魔族は最初から存在しなかったかのように消え去った。

 すぐに気を探すも、もうどこにも見当たらない。

 このナメック星だけではない……リゼットが感知し得る周囲の宙域数光年に渡り、あの二人はどこにも居ないのだ。

 彼女達の言葉を信じるならば、別の時間へと飛んだという事なのだろう。

 信じ難い、そして信じたくもない恐ろしい力だ。

 

「何て事を……」

 

 あの二人のせいで事態は完全にリゼットの手を離れてしまった。

 フリーザはいきなり最終形態へと移行し、クウラまで到着してしまうなど最悪の予想を上回っての最悪だ。

 一体どうすればいいのか……リゼットは最早、正しい答えを完全に見失っていた。

 いや、そもそも現状に対して正しい答えなどというものが存在するかどうか……。

 

「一体どうすれば……」

 

 迷っていても時間は止まってくれない。

 刻一刻と変化する混迷の事態の中、リゼットは早急に次の行動を決めなければならなかった。

 

 

 一方その頃、クウラ直属部隊『クウラ機甲戦隊』のリーダーであるサウザーは宇宙船の前で腕組みをし、部下の帰還を待っていた。

 彼等がこのナメック星に到着してまず最初に行ったのはフリーザの真意を問うべく伝令兵を飛ばす事であり、未だその部下が帰還しないのだ。

 サウザーとしては今回のフリーザの反乱はとても信じられるものではない。

 確かに彼の主であるクウラと、その弟であるフリーザはお世辞にも仲のいい兄弟とは言えないだろう。

 しかし、だからといって表立って反逆する程に険悪なわけでもない。

 それに宇宙の支配者であるフロスト一族同士の本気の殺し合いなど、自ら栄光を捨て去るに等しい愚行でありコルド大王もそんなのは許さないだろう。

 だから今回の件は何かの間違いであり、フリーザとクウラもきっと、いつも通りに互いに嫌味を叩き合いながらこの件は納まると、そうサウザーは考えていた。

 だが伝令に送った部下は帰らず……代わりにやってきたのは、フリーザの側近であるザーボンであった。

 

「お前はザーボン……? 伝令に送った兵はどうした?」

「ふ、フリーザ様が始末なされた。私はクウラ様にお知らせしようと……」

 

 これが単なる一般兵士であればサウザーの反応も違っただろう。

 だがここにいるのは曲がりなりにもフリーザの側近であるザーボンであり、その言葉の重みが違う。

 彼がクウラにこのような事をわざわざ告げるという事。それは即ちフリーザへの裏切りに他ならない。

 つまり彼は今、フリーザに殺されてしまう危険を犯してまでここに来ているわけであり、嘘でこんな事を行うのはあまりにリスクが高すぎる。

 否、高いというより得る物がない。リスクしかないのだ。

 

「だがお前はフリーザ様の側近のはず。何故それを伝えに来た?」

「……それしか生きる道がないからだ。いくらフリーザ様でもクウラ様と本気でやりあえば勝ち目はあるまい……そんな戦いで捨て石にされて死ぬのは御免だ」

 

 苦渋の決断というわけか、とサウザーは考える。

 確かにフリーザとクウラが普段の兄弟喧嘩ではなく本気で殺し合えば間違いなくクウラが勝つだろう。

 本人同士の戦闘力は勿論の事、側近の戦闘力もクウラが勝るのだ。

 機甲戦隊は僅か3人のみのチームだが、3人が共にギニューを上回る戦闘力の持ち主だ。

 たかだか4万や5万の戦闘力しかない特戦隊など相手にもなるまい。

 唯一対抗し得るのがギニューだが、それとて3人を相手にして勝負になるものか。

 だからザーボンの選択は正しい。

 確かにクウラとフリーザの軍勢が正面から衝突すれば、その時真っ先に捨て石となるのはザーボンだ。ならばまだクウラに付いた方が生存率は高いと言えるだろう。

 

 この時、サウザーはまだ半信半疑であった。

 ザーボンがフリーザを本当に裏切っているのか……その確証が持てなかったのだ。

 故にこの後に起こった事はザーボンにとってはまさに不幸中の幸いであった。

 

「ザーボン……てめえ、よくも……!」

「ド、ドドリア!? お前生きていたのか!?」

 

 何と、殺したと思っていたドドリアが生きていたのだ。

 しかしザーボンは幸運だった。

 もしもこれがフリーザの宇宙船で、フリーザの居る前で起こった出来事だったならばフリーザからの追及を逃れる事は出来ずに裏切り者として消されていた事だろう。

 しかしここはクウラの宇宙船前であり、そしてサウザーには今まさに、『クウラの為にフリーザを裏切ってきました』というシナリオで話している。

 ならばこのドドリアの登場は、むしろプラスとなる。

 

「おのれ、フリーザめ! 裏切り者の私を始末しに来たか!」

「裏切りは、許さねええ……!」

「何だと……? やはりフリーザ様の謀反は本当だったのか……!?」

 

 フリーザの側近の片方が片方を裏切り者と呼び、その対象も裏切りを認めている。

 この事態を前にサウザーは誤解をした。ザーボンは本当にフリーザを裏切ってクウラに付く気なのだと。

 そしてその際にドドリアを攻撃し、しかし殺し損ねたドドリアがザーボンを殺す追っ手として差し向けられた、と。そう勘違いしてしまったのだ。

 何とも見当外れな事を考えるサウザーの前でザーボンとドドリアの戦いが始まり、そこには一切の手加減も演技もなかった。

 戦闘力17万のサウザーにしてみれば二人の戦いは低次元なものだが、少なくとも本気で互いを殺そうとしているのはよく解る。

 やがて勝負はザーボンの勝利に終わり、ドドリアは海へと沈められた。

 

「サ、サウザー、時間がない。フリーザはドラゴンボールを集めるべく高い戦闘力が集まっている場所へと向かった。このままでは本当に不老不死となってしまうぞ!」

「わ、わかった! 俺はすぐにこの事をクウラ様へと伝えてくる!」

 

 今まで現実味のなかったフリーザの反乱。それが現実味を帯びてきた事でサウザーは慌てた。

 ザーボンの言葉の裏も読まずに、彼から伝わったフリーザ反逆の件を正しいものと考えてしまったのだ。

 それが全てザーボンの意のままだと気付きすらせずに宇宙船の中へと走り、そしてクウラへとそのまま報告してしまう。

 そしてサウザーからの報告を受けたクウラもまた、そこに疑いを挟みはしなかった。

 

「なるほど……フリーザめ、愚かな奴よ。

この俺に正面から歯向かうほどに救いようがないとはな」

 

 元より彼等兄弟の仲は悪い。相手への信頼など皆無だ。

 だから『もしかしたら』、『彼がそのような軽はずみな行動に出るはずが』という疑いを持とうとしない。

 『まああの馬鹿ならやるだろう』くらいにしか考えないのだ。

 故に、クウラの中において既にフリーザはただの裏切り者であり、そして敵でしかなかった。

 

「フリーザと、そこにいるわけのわからん連中は俺が纏めて始末する。

サウザー、お前はギニュー特戦隊を潰して来い。

他はともかく、ボディチェンジ能力を有するギニューだけはフリーザと合流されると面倒だ」

「はっ」

 

 ギニュー特戦隊の討伐を機甲戦隊へと命じ、クウラは空へと飛び立った。

 そこに警戒などない。戦えば必ず己が勝つという強者の自負に溢れている。

 それに遅れてサウザー達も飛び立ち、後にはザーボン一人だけが残される。

 ここまでは順調だ。これでフリーザとクウラはしばらく戻って来ないだろうし、その時はどちらかが死んでいるはずだ。

 そして特戦隊は機甲戦隊が片付けてくれる事になった。

 それはつまり、今ならばフリーザの宇宙船がガラ空きという事。ドラゴンボールを奪う絶好の好機が到来したという事だ。

 

「ふふふ……近付いてきた、近付いてきたぞ。私の永遠の美が!」

 

 全てを掌で弄んでいる、とザーボンは思い込んでいる。

 否、実際にこのナメック星における混沌とした現状は紛れもなく彼が招いたものであり、彼はそれを上手くコントロールしていると言える。

 だがその彼もまた完璧ではない。リゼットという存在がいるせいで既にボールが入手不可能になっているという事を予想出来ていない。

 つまり、彼はもう詰んでいるのだ。

 何をしてもボールが入手出来ない以上永遠の美など得られるはずもなく、そしてフリーザとクウラのどちらが戻ってきても彼の悪行はいずれ明るみとなり消し去られるだろう。

 

 この戦場は混沌。誰にもコントロールなど出来やしないのだ。




【ドラゴンボールゼノバース】
2015年に発売された家庭用アクションゲームソフト。
未来を改変した罪により、未来トランクスがタイムパトロールとして働いているという設定から物語が始まり、そんなトランクスがドラゴンボールに願った『俺と一緒に戦ってくれる強い人を連れてきてくれ』という願いに応える形で神龍に拉致された戦士がプレイヤーとなる。
歴史を改変する者達から悟空達を守るために戦うというのが大まかな流れで、このゲームの時間改変は従来のパラレルワールド量産型とは異なるドラえもん式改変となる。
かなり細かいキャラエディットが可能で、自分の分身が悟空達と共に戦い、助けるというファン垂涎の展開が大人気となった。
トキトキ都という、あちこちでアバター達がビンゴダンスをしているカオスな空間を拠点として、歴史の敵達と戦う。

【主人公】
ゼノバース1の主人公。
神龍に拉致されてトランクスに協力する羽目になった苦労人。
決まった容姿や性別はなく、プレイヤーが自由に決める事が出来る。
種族は地球人、サイヤ人、ナメック星人、フリーザ一族、魔人の五種類から選択可能。
プレイヤーの分身という位置付けなので基本的に会話はせず、ジェスチャーだけでリアクションを取る。
ストーリー中のモーションは統一されているので、女の子アバターにしていようが当たり前のようにガニ股になったりするのが悲しい。
『1』では大活躍だったが、主役補正が消えた『2』での扱いは悲惨の一言。

このSSでは当たり前ながら、オリジナル主人公枠はリゼットに取られているので、ここに私のアバターを放り込むことは出来ない。
仮にそれをやっても、明後日の方向にかめはめ波を撃ち、栽培マンにすら負けるクソの役にも立たない雑魚が登場するだけである。
なのでこの1主人公の立ち位置には別のキャラを放り込んでいる。

【トワ】
ゼノバースに登場するエロい恰好の魔族のお姉さん。
大人のお姉さんが好きなパラガスも大満足。
ドラゴンボールの様々な歴史にちょっかいをかけてはキリ(エネルギー)を吸収している。
ダーブラの妹だが、全然似ていない。
多分ミラよりは弱いが、それでもダーブラ級の戦闘力はあると見ていい。

【ミラ】
トワの造り出した人造人間。
自分が最強である事に拘っており、1ではやや小物感のする残念なイケメンだった。
実力は大体魔人ブウ(デブ)と同じくらいと思われる。
2では最終的にブルー以上の強さになる。

【時の界王神】
界王神にあるまじき有能。
可愛らしい外見をしているが、実は7500万年以上生きているロリババア。

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