ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第四十四話 絶望を変える戦い

 トランクスは話を終えた後、3年後にまた来ると言い残してこの時代を去った。

 未来の出来事を聞かされた戦士達は3年後より始まる過酷な戦いを生き延びるべく、それぞれが厳しい修行に励む決意を固め、リゼットもまた今まで以上の修行をする必要があると痛感していた。

 正直に言って、リゼットは3年後の闘いを甘く見ていた。

 人造人間くらいならば悟空抜きでも何とかなると思っていたのだ。

 セルだって完全体になる前に倒してしまえばいいわけで、仮に太陽拳を使われても自分ならば余裕で対処出来る自信があった。

 だが違った。3年後より始まる劇場版ラッシュはその程度では到底切り抜ける事が出来ない。

 今まで通りの修行では駄目なのだ。

 ならばどうする? どうすれば劇的に力を増す事が出来る?

 リゼットは考えた。

 まず一つ……超神水の使用。

 猛毒ではあるが、それと引き換えに潜在能力を解放させるあの水を使えば力を上げる事が出来るだろう。

 問題の毒にしても上手く行けばリゼットには通用しない。

 というのも、リゼットは『あらゆる環境で生存出来る』能力があり、毒もその範囲に含まれるからだ。

 そもそも毒というのは定義上、正確な呼び方ではない。

 例えば玉葱なんかも猫や犬にとっては毒だが、人間にとっては食べ物だ。

 逆に人間にとって毒でも他の生物にとっては無害なものもある。

 毒というのは要するに『その生物にとっての害』であり、厳密に言えばどんな物だって毒になりうるし、毒を秘めている。

 極論を語れば酸素だって毒だ。

 他の宇宙人にとっては生存に欠かせない空気中の物質があったとして、それが地球人にとっては毒かもしれない。

 いちいちそんな毒で死んだり生きたりしているようでは、とても『あらゆる環境で生存』なぞ出来ないだろう。

 だから環境一つで変わる毒やウイルスなんてものはリゼットに対してはほぼ無効だ。

 だから使用そのものに問題はない……はずだ。

 問題は使用のタイミングだ。リゼットは最近も最長老に潜在能力を解放してもらったばかりであり、今使っても効果は少ないだろう。

 使うならば3年後、ギリギリの時まで待つ必要がある。

 

 次に、常に限界を責め続ける荒行。

 気霊錠を強化し、重力室のGを増やし、それでいて限界近くまで気の解放を行いながらの修行を繰り返す。要は今まで行ってきた事の強化だ。

 だがそんな事をすれば身体が先に限界を迎えて修行どころではなくなるだろうし、そのたびに仙豆を使っては仙豆の無駄使いだ。

 だがその解決方法はもう見付けてある。

 リゼットはフリーザの宇宙船にあったメディカルマシーンの分析をブルマに依頼し、完成したら譲って欲しいと交渉したのだ。

 勿論ブルマはこれに快く了承を示し、自分の分も欲しがったベジータには普通にオリジナルのメディカルマシーンをプレゼントした。

 ここでリゼットがあえて急がずにオリジナルをベジータに譲ったのには勿論理由がある。

 ぶっちゃけブルマに解析させて後から完成したブルマ製メディカルマシーンを貰った方が絶対に性能がいいと分かっているからだ。

 ついでにデザインも、出来れば神殿に合ったものがいいと駄目元で頼んでみたところ、見事にブルマはこれを叶えてくれた。何この超天才。

 形としてはでかい水晶、という所だろうか。

 中が空洞になっており、入る事で治療液が満たされる仕組みだ。

 尚、本来のメディカルマシーンにはある呼吸器は存在しない。どんな環境でも生存できるリゼットには必要のないものだからだ。

 こうして完成したリゼット専用のメディカルマシーンだったが、傍から見るとまるでクリスタルに閉じ込められて眠っているようにしか見えない、という事に本人は気付いていない。

 本人の神秘的な容姿と相まって絵にはなるのだが、これでは治療中ではなく封印中だ。

 しかし効果は絶大で、僅か1時間の休息で体力を全快にしてくれる。

 これのおかげでリゼットは今まで以上に無茶が出来るようになり、己の限界を責め続けた。

 改良された重力室を使っての300倍重力下での演舞に、仮想敵との組み手。

 限界までバーストリミットの倍率を上げて、気が枯渇したらメディカルマシーンで回復を繰り返す。

 過酷な戦いの中でも怯まないように痛みへの耐性を得る必要があったから、時には仮想敵に一方的に己を痛めつけさせた。

 極限の脱力による防御法も1年経つ頃には完成し、剣の一撃でさえ羽毛と化した彼女に傷一つ付ける事が出来なくなった。

 更に1年が経つ頃にはバーストリミットの最大倍率も50倍まで上昇した上で問題なく扱えるようになり、この50倍こそを一つの完成として以降は無理に倍率を増やさずに常時その状態を持続する修行を開始した。

 原作でも悟空がやっていた常時超サイヤ人になる事で慣らす修行だ。

 バーストリミットは超サイヤ人と異なり界王拳に近い技だが、だからこそ慣れが大事である。

 

 勿論鍛えるのはリゼットだけではない。

 こうなったらパワーバランスなど知った事かと戦士達を天界へ集めてベジータも無理矢理拉致し、リゼット指導の下で鍛えさせた。

 そして更に1年が経過し、そのタイミングで超神水を使用した。

 

 ――結論を言えば死にかけた。

 リゼットに毒が効かない……それは確かな事だ。その推測に間違いなど無い。

 だが超神水の毒は、そんなものではないのだ。

 身体の内にある潜在能力を無理矢理引き出す。それが超神水の効能で、毒のような症状が出るのはただの副作用でしかない。

 いわば気に作用する猛毒だ。どんな環境に適応しようと、こんなものにまで都合よく適応など出来るはずがない。

 結局の所リゼットの考えはただの楽観視でしかなく、彼女はその代償を数日に渡って支払う事となってしまった。

 ついでにリゼットだけを苦しませるわけにはいかないと、何故かポポとナッパも超神水を飲んでしまった。

 更に神殿に遊びに来たカリンが出しっぱなしの超神水を飲料水と勘違いして飲み干し、4人で仲良く死にかけた。何やってるんだこいつ等。

 

 しかし成果はあった。

 一週間以上に渡る激痛との苦闘の末、リゼットはようやく己の限界の壁を一つ壊す事に成功したのだ。

 戦闘力は劇的に跳ね上がり、通常状態でもフリーザと戦えるだけの力を得る事が出来た。

 これならばいける……リゼットは少なくない手応えを感じ、苦闘の末に得られた報酬を噛み締めた。

 また、ナッパだけは基礎戦闘力の上昇がなく、代わりにいつでも大猿のパワーを解放出来るようになっていた。

 

 その後、続いてヤムチャが飲んだ時に事件が起きた。

 何とヤムチャの呼吸が止まり、心肺停止してしまったのだ。

 これにはリゼットも大慌てで、気を送り込んだり念力で吐かせたり、心臓マッサージをしたりして何とかヤムチャの蘇生に成功したが、結局ヤムチャの強さは変わらず、以降は危険すぎるという理由で超神水を封印した。

 

 

 5月12日。

 集合場所である南の島にリゼットが到着した時には、既にベジータとトランクス以外の全員が集まっていた。

 ブルマもおり、その腕の中には赤ん坊のトランクスもいる。

 分かってはいたが、本当にベジータとくっついたらしい。

 かつて、若き日のヤムチャとブルマが手を繋いでダンスしていた姿を知っているリゼットとしては酷く微妙な気持ちにさせられる光景だ。

 それと、人参化は今回は神殿に待機させてある。

 もしかしたら神殿が襲撃を受ける可能性もあるので、彼はそちらの担当だ。

 

「あっ、神様! 来てくれたんですね!」

「ええ。地球の一大事ですからね。それにしても大きくなりましたね、悟飯君」

 

 嬉しそうに駆け寄ってくる悟飯の頭を撫で、後数年したら身長で抜かれそうだな、などと考える。

 今の悟飯はまだ9歳なのでリゼットの方が身長も高いが、14歳で成長を止めてしまったリゼットの身長は153cm程度しかない。

 こうして頭を撫でてやれるのも、後少しだろう。

 

「悟空君、心臓病の薬は?」

「え? ああ、家に置いてきちまったよ。結局病気にかからなくてさ」

 

 リゼットは悟空を注意深く見る。

 確かに今の所心臓病の症状は出ていない。一見すると健康体だ。

 原作ではこの後に症状が出るが、ここは既に色々とズレてしまっている世界でもある。

 今後、どのタイミングで発病するかは全くの未知数と言えた。

 

「なあに。仮にカカロットが心臓病にかかっても、そんときゃ俺が敵を片付けるさ」

 

 自信に溢れた声で言うのは、黒いシャツをラフに着こなしたターレスだ。

 上からは白いコートを羽織り、すっかり地球に染まっている。

 話しながら齧っているのは神精樹の実……ではなく、ただの林檎だ。

 

「神様、妙だとは思いませんか? 10時はとっくに過ぎているのに敵の気配が全く感じられません」

「それは当然です。彼等は人造人間……生物が持つ気など持っていません」

「! そ、そうか! 機械に気などあるわけがない!」

 

 天津飯の疑問にリゼットが答えると、全員が納得したような顔になり緊張感が高まった。

 そう、気が感じられないからまだ現れていないのではない。

 もう現れているのに気が感じられないのだ。

 その事に気付いた全員が顔つきを険しくし、街を見下ろす。

 もうこの瞬間にも、敵はいるかもしれないのだ。

 

「皆、気を引き締めて下さい。気で探せない以上肉眼で探す他ありません」

「へっ……かつては地球を滅ぼしに来た俺が今度は地球人を守る為に殺人兵器を探す、か。

皮肉な話もあったもんだぜ」

 

 リゼットの言葉にナッパが笑いながら答える。

 だが言葉とは裏腹に目は真剣だ。

 彼も随分この地球という星に馴染み、好いてくれているらしい。

 そのような事を考えていると、二つの人影が街へ降下するのが一瞬だが確かに見えた。

 更にリゼットは他の者には出来ない意思の感知をする事で、その姿をも完全に捉える。

 間違いない、あの老人と肥満体の男は20号と19号だ。

 

「い、今のは……!」

「ええ、現れたようですね」

「どこだ!? どこにいる!」

 

 リゼットに次いで気付いたのはピッコロのようだ。

 だが彼も一瞬しか見えなかったらしく、どこに降りたかは捉えていない。

 その隣では天津飯が完全に焦り、必死に人造人間を探している。

 

「戦闘力を感じないんじゃ仕方ねえ。俺達が降りて直接探すしかねえってわけだ」

「よし、みんな散って探そう。ただし深追いはするな。

発見したらすぐ皆に知らせるんだ」

 

 比較的冷静なターレスが降りる事を提案し、悟空もそれに賛同を示した。

 ともかく、まずは敵を見付ける事だ。

 発見が遅れるたびに被害者が増えるこの状況では1分1秒の遅れが死者を一人増やす。

 悟空達は街へと降下し、人造人間の姿を目視で探し始めた。

 リゼットもまた、出会い次第超能力で動きを封じてそのまま破壊してしまおうと物騒な事を考えながら街を散策する。

 場所は分かっている。そこにある悪しき意思も捉えている。

 ならば後はそこに行くだけであり、リゼットは迷う事なく人造人間二人を目指して歩いていた。

 そして、その彼女の前に早くも敵が姿を現す。

 しかし、その姿は彼女が想定していた老人と肥満体の男ではない。

 一人は黒い髪をおさげにした、白い肌の大柄な半裸男。

 もう一人は黒いサングラスをかけた、紫の肌の小柄な男。

 最後の一人は上半身裸の上にサスペンダーと上着という変態的な服装をしており、頭に帽子を被った白髪のオールバックだ。

 この中3人の中ではとりあえず、一番人に近い外見だろうか。

 

「この地球の神だな?」

「そういう貴方達は……人造人間ですね?」

 

 いきなり劇場版3人組のお出ましだが、リゼットにとってこれは都合がよかった。

 正直な話、遭遇したのが自分でよかったとすら思う。

 ここで出会ったのが悟飯やクリリンなら最悪殺されてしまう展開もあり得た。

 

「その通り。我々の目的は孫悟空の抹殺だが、最大の障害となり得る貴様を先に始末するようドクター・ゲロ様より命じられた。従ってまずは貴様を殺す」

「いいでしょう。しかしここは場所が悪い……闘う場所を変えますよ」

 

 リゼットはそう言うや否や、念力と気合砲で人造人間3人を吹き飛ばした。

 拒否権など与えはしない。

 問答無用の先制攻撃で3人を運び、氷山地帯へと場所を移した。

 ここならば派手に暴れても被害は出ないだろう、という考えだ。

 19号と20号は……残念ながら悟空達に任せるしかないだろう。

 悟空の心臓病だけが心配の種だが、とにかくこちらを速攻で終わらせて戻るしかない。

 下手に合流させて人造人間5人同時相手の乱戦とか下手すると死人が出てしまう。

 フワリ、と氷の上に着地して3人の人造人間と相対する。

 

「今のが超能力か……情報の通り厄介な力だ」

「情報を得ている割には対策は何もしていないのですね」

「……貴様の情報は集めにくかったのでな。ドクター・ゲロ様は超小型のスパイロボットを使って孫悟空達のデータを集めていたが、貴様だけは一定距離まで近づくとスパイロボットに何故か気付いて捕獲してしまう。おかげで貴様のデータはほとんど分からず仕舞いだ」

 

 小型のスパイロボット、と聞いてリゼットは思い当たるものがあった。

 そういえばもう20年近く前の事になるが、当時暮らしていた聖堂付近をウロウロしていた小型の虫型ロボットを捕まえた事がある。

 あれはドクター・ゲロのものだったのか、と今になって疑問が氷解した。

 

「だがいかにこの星の神といえど、俺達3人を同時に相手にして勝ち目はない」

「大した自信ですね」

「ふっ……その余裕もここまでだ! S.Sデッドリィボンバー!」

 

 13号が手を翳すと人間サイズの赤い気弾が放たれ、リゼットへと直進した。

 しかし彼女は一歩も動かずにその場に自然体で立ったままだ。

 直撃――瞬間、リゼットに当たったと思われたS.Sデッドリィボンバーは彼女を覆うように展開されたバリアに防がれ、霧散していた。

 

「な……っ!?」

「残念ですが、その程度で私は討ち取れません」

 

 リゼットはそう告げ、お返しとばかりに右手を宙へと掲げる。

 そして気の固定化により巨大な拳を創造し、3人の人造人間へと叩き込んだ。

 

 ――さあ、絶望の未来を回避する為の戦いを始めよう。




Q、魔凶星編は?
魔族四天王「ガーリック様いないし、大人しくしときますわ」

【各キャラ戦闘力】

・リゼット(超神水強化)
基本戦闘力:1億2000万
バーストリミット(最大50倍):60億

・ピッコロ
基本戦闘力:6700万
界王拳(最大15倍):10億500万

・ターレス
基本戦闘力:2000万
超サイヤ人:10億

・ベジータ:1900万
超サイヤ人:9億5千万

・孫悟空:2200万→220万
超サイヤ人:11億→1億1000万
悟空「何か調子が悪い……」

・ナッパ:1800万
大猿パワー:1億8000万

・孫悟飯:550万
・天津飯:540万
・クリリン:536万
・ヤムチャ:520万
・餃子:480万
・兎人参化:500万

―不参加―

・Mr.ポポ:1200万
バーストポポ3倍:3600万
・カリン様:1200万
バーストカリン3倍:3600万

※敵側は次回公表。
一応言っておくと戦士達の戦闘力はリゼットの修行によって原作以上になっている設定です。
後、このSSではフリーザ>19号説を採用しているのでそこを基準に数値設定をしています。

【極限バトル!!三大超サイヤ人】
ドラゴンボールシリーズの劇場公開作第10弾。
ドクターゲロが死んでいる点や悟飯が超サイヤ人になれない事、悟空達の実力から時期的にはセル編で悟空が復帰した辺りと思われる。
しかし呑気にショッピングや「ミスこの世で一番べっぴん世界大会」をしているのでセルと人造人間の脅威は去った後と考えていい。
神コロ様がセルを第一形態のまま倒してしまったか、あるいはそもそもセルが来なかった世界線と思われる。
17号と18号は元々悪党ではないので和解でもしたのだろう。
16号はよく分からないが、電池切れでも起こしたのかもしれない。
だからマンガンよりアルカリにしろと言ったんだ。

【人造人間13号】
ドクター・ゲロのコンピューターが作りだした3体の人造人間のうちの一体。
型番的にかなり古い人造人間だが、やたら強い。
加えてドクターゲロの命令に忠実であり、他の人造人間よりもゲロの考える『成功』に遥かに近い。
ゲロは19号などを造っている暇があるなら、こいつを完成させるべきだったのではないだろうか。
完全な機械タイプだが外見は人間に近く、言葉も流暢に話す。

【超13号】
14号と15号の動力炉とコンピュータチップを吸収して変身した13号。
ちょっと意味が分からないレベルで強い。
加えて悟空本人のみならず、その子孫の存在すら根絶する断固とした意志を持ち、作中で唯一悟空の金の玉を攻撃するという大暴挙に及んだ。さようなら悟天……。
時期的にピッコロさんは神コロさんの可能性が高いので、それを一蹴する彼の強さは16号クラスと思われる。

【人造人間14号】
ドクター・ゲロのコンピューターが作りだした3体の人造人間のうちの一体。
三体の中で最も大きく、「ソンゴクウ」としか話せない。
トランクス相手に善戦したが、剣を返してあげたのが仇となり、真っ二つにされた。
超サイヤ人相手にそこそこ善戦出来る強さだったので、19号よりは強いと思われる。
戦闘力億クラスは確実か。

【人造人間15号】
何かウイスキーみたいなものを飲んでいた変な奴。

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