ドラゴンボールad astra 作:マジカル☆さくやちゃんスター
リゼットが飛翔し、その後を追うように3人の人造人間が飛ぶ。
己を追う人造人間を横目で見ながらリゼットは己と相手との間にある戦力差を分析していた。
現状だけを言うならば、恐らく自分の方が上だ。
現在リゼットは修行の成果によりほとんどの負担なくバーストリミットの50倍を発動しており、先ほどの攻撃もバリアで100%防ぎ切る事が出来た。
あの13号という男があの中では最強だろうと考えると、つまりあの3人の攻撃はほぼリゼットに通らない事になる。
しかしあれが様子見の加減した攻撃であった可能性もまた否定し切れない。
何せ相手は人造人間。気が測れないせいで実力の底が読めないのだ。
「ッシャ!」
紫色の小柄な男が掛け声を発し、リゼットへ拳を繰り出した。
だがこれも彼女には届かない。肌に触れる事もなく寸前でバリアに受け止められてしまう。
そればかりか、彼はここで初めて不可視の防御壁が回転しているという事に気付いた。
バリアに流され、そして弾かれるように15号の身体が吹き飛ぶ。
続いて14号が攻撃するも、これも通じない。
やはりバリアに遮断されて彼の巨体が弾き跳ばされた。
それを見て13号は確信する。間違いない、あの厄介な神は常にバリアを展開し続ける事で堅牢な防御を維持し続けていると。
「
リゼットが指を動かす。
すると無数の白い剣が空中に現われ、一斉に13号達へ向けて斉射された。
当然のように三人は散ってこれを避けるが、それを追って数本の剣が軌道を変えた。
軌道を変えなかった剣はそのまま一度通過した後に散開し、逃げ場を塞ぐように包囲網を完成させる。
内と外の両方から殺到する剣の嵐を13号は何とか回避して隙間から抜け出すが、14号は片足を、15号は片腕を切り落とされた。
更に再び接近しようとした14号が空中で磔にされたように停止し、大きく弾かれて氷山へと叩き付けられた。また気合砲と超能力のコンボだ。
13号が気弾を放つも、やはりバリアを貫通する事は出来ずに遮断される。
ならば、と人造人間3人は同時に跳躍してリゼットへと殴りかかった。
だが拳を出す事も出来ず、3人の身体が同時に空中で制止する。
「ぐ……!」
「無駄です。貴方達では私に触れる事さえ出来ません」
そのままノーモーションで超能力を行使し、3体を跳ね飛ばした。
更に気弾を放ち、まずは15号を撃ち抜く。
リゼットの気に貫かれた15号は紫電を迸らせ、ガクガクと震えて膝を突いた。
だがそれで終わりではない。15号を貫いた気弾は飛び去らずに彼の腹の中で居座っていた。
リゼットが指を鳴らす――直後、気弾は全方位に放たれる無数のレーザーと化して内側から15号を貫いた。
よほどダメージが深かったのだろう。15号はそのまま木っ端微塵に爆散し、その破片を雪の上に巻き散らした。
「まずは1体」
「おのれ!」
13号が赤い気弾を放ち、14号が両手から次々と気弾を連射する。
だがリゼットは動かない。防御の姿勢すらも取らない。
ただそこに浮遊したまま、一切の動作なく展開されるバリアだけで気弾の全てを無効化してしまう。
やがて二人の攻撃が終わったタイミングで手を突き出し、輝く槍を発射して14号の胸を貫いた。
更に槍は剣へと変わり、リゼットが指を動かすとそれに合わせて縦横無尽に刃を閃かせて14号を切断する。
指を縦に動かせば縦に斬り、指を横に振るえば横に薙ぐ。
そうして14号を細切れの機械片へと変え、白い剣は虚空へと飛び去って行った。
「二体」
「ぬ……ぐ!」
13号が咄嗟に構えを取るも、何の意味もないと言わんばかりにその身体が再度吹き飛ばされた。
無動作から放たれるこの気合砲と念動力の何と凶悪な事か、と13号は歯噛みする。
何の事前動作もなく発射されるのでは防御も回避も出来るわけがない。
更にリゼットが目を細めると13号の右手から不吉な音が鳴り、機械が歪んでいく。
「ぎぃ、が、あああああ!」
そのまま右腕の肩から先が関節の駆動限界を超えて回転!
5回6回と捻られ、コードが千切れて破片が舞い、ショートを起こしながら右腕が捻り切られた。
――この女、念動力だけで腕を引き千切りやがった!
13号は己の身に起こった恐るべき出来事に戦慄し、己を見下ろす幼い少女を見上げる。
これが神か! これがこの惑星の頂点か!
いくら攻撃を加えても微動だにすらしない。
そして向こうが動いてすらいないのに、こちらが一方的に蹴散らされてしまう。
もはや理解するしかない。格が違う、と。
だがそれでも尚、13号は笑った。
彼にはまだ切り札があったからだ。
「まだだ! 本当の闘いはここからだぞ! 神よ!」
13号が腕を広げると、それに呼応するように14号と15号の残骸が浮かび上がった。
彼は人造人間の中でも特殊なタイプであり、同胞である14号と15号の動力炉とデータチップを取りこむ事で力を増すという特殊機構を秘めていた。
これは本来、バイオタイプの人造人間の為の機構であり、13号はそのプロトタイプとして造られた実験機なのだ。
しかし動力炉とチップは13号に取りこまれる前に、空中から突如降り注いで来た無数の剣によって地面に縫い付けられてしまった。
「生憎ですが」
そして爆発。
13号と同化するはずのパーツが空中で砕け散り、13号の前で何の価値もない鉄片へと変わる。
それを為したのが誰かなど考えるまでもない。
これらは全てリゼットがやった事だ。
先程14号を仕留めた剣を空へ飛ばし、そこで無数の剣に拡散させて落としたのである。
「私は悟空君やベジータのように相手の変身やパワーアップを待つほど呑気ではありません。
空気を読めていないようで本当に申し訳ないのですが……勝てる時はそのまま勝つ主義です」
そう非情の死刑宣告を下して腕を振るう。
すると13号の胴体が捻れ、足が捻れ、腕が捻れ、首が捻れ……身体中のありとあらゆる関節部が強引に、そして曲げられない方向へと曲がっていく。
おいやめろ、その関節部はそっちに動くように設計されていない。
そう13号が叫ぼうとするも、リゼットは攻撃を止めようとしない。そして――。
――全身が、まるで竜巻にでも巻き込まれたかのように“捻れた”。
「ガ、アアアァアァアアAAAAAaaaaaaaaaaaAAAAA!!」
全身のありとあらゆる箇所が捻れ、曲がり、鉄が砕ける音を響かせながらひしゃげていく。
コードが飛び出し、パーツが散乱し、ショートを起こし、断末魔にノイズが混ざり人ならざる声になっても尚破壊は終わらない。
人工皮膚が千切れ、人の形が崩れ、13号だったものがただの残骸の山となった所でようやく破壊が終わり、解放される。
雪の上に積み重なったそれはもう人造人間ではない。
元が何であったかも分からぬ、ただの鉄とコードの山だ。
その哀れな残骸に、リゼットは無言で手を翳す。
そして気弾を発射。僅かに残った残骸すらも完全に消し飛ばした。
続けて14号と15号の残骸も消し飛ばし、彼等の存在を塵一つ残さずに抹消する。
「さて、悟空君は……気がパオズ山に移動している、という事はやはり心臓病が発症しましたか。
とりあえず様子を見に行く事にしましょう」
リゼットは己が完全に消し去った意思を持つ機械……が先ほどまで確かに居た場所を一瞥する。
数秒だけそうして眺めた後、何を言うでもなく目を伏せてその場から飛び立った。
後にはもう何も残っていない。
ただ、彼女達が来る前と何ら変わらずに雪と氷だけが在り続けていた。
★
リゼットが到着した時、既に戦いはほぼ終わっていた。
ベジータは腕が変な方向に曲がって気絶しており、トランクスも倒れている。
天津飯と餃子もダウンで、ナッパは上半身が地面に埋まっている。
かろうじて立っているのはターレス、ピッコロとクリリンだけだ。
クリリンはしっかり未来の嫁さんから頬にキスを貰ったようで、順調にリア充への道を歩んでいるらしい。
つい最近、マロンとかいうのに引っかかって振り回されていたのを知っている身としては是非クリリンにはこのまま幸せになって貰いたいとリゼットは考える。
彼は鼻と髪と身長と運と金と職と家と職歴と学歴こそないが、善良で仲間思いな男だしそろそろ報われてもいい頃だ。
「というか戦ってないクリリン君はともかく、ターレスとピッコロも無事なんですね」
「無事じゃねえよ。
こりゃあ今のまま正面から戦り合うのはキツイぜ、神さんよ」
さり気なくやられていなかったターレスとピッコロに驚きつつも、リゼットは倒れている仲間全員に気を分け与え、放置しても死なない程度に回復させる。
「ガキ二人はまだ手に負えるレベルだ。実際最初はベジータと女がやりあって、優勢に進めていた。
黒髪の方もピッコロが圧倒していたんだがな……だが、あのデカブツが動いてからは一方的だ。
とんでもねえパワーであっと言う間に全員やられちまった……」
「トドメを刺さないのは余裕のつもりか……クソッタレめ!」
ターレスとピッコロの言葉を聞く限り、修行の甲斐もあって彼らは17号や18号は圧倒したらしい。
だがそれがいけなかったのだろう。
二人の危機に16号が動いてしまい、蹴散らされてしまったのだ。
だがこれは嬉しい情報でもあった。
止めを刺していないという事は、17号達は決して冷酷な人造人間ではないという事だからだ。
16号も含めて彼らは話せば分かる人物だ……これならば味方に引き込む事も出来る。
「そういえば神様は大丈夫なんですか? ドクター・ゲロの奴が言うにはかなり強力な人造人間が3人、そっちに向かったらしいですけど」
「心配はいりません。もう片付けました」
「……何というか流石ッスね」
相変わらず気付いたら敵の数を減らしているリゼットにクリリンが呆れつつ、もしかしてこの人がこっちにいれば人造人間に勝てたんじゃないだろうか、とも考えていた。
しかしそれはあの18号が倒されてしまう事を意味しており、喜ばしい事のはずなのに何故か抵抗感がある。
この時点ではまだ、クリリンは己の恋心に気付いていない。
「とりあえず皆を連れて悟空君の家に行きましょう。
居場所がバレている以上、早急に悟空君を移動させる必要があります」
人造人間が未来と異なり善良だというのはリゼットにとって明るいニュースだ。
とりあえず倒さなくてはならない敵が三人減ったし、うまくいけばあの三人はこちらに付いてくれる。
しかし現状では悟空抹殺を目的としており、流石にそれを果させるわけにはいかない。
ならばまず、悟空を安全な所に匿うのが優先だ。
そして今現在、地球上において最も安全な場所といえば一つ――リゼットの住む天界をおいて他にないだろう。
如意棒を挿さない限り別次元に潜行し続け、更にバリアも常時展開されている神殿こそまさに地球で最も強固な砦だ。
更にここならばリゼットが護ってやる事も出来る。
カメハウス? 何でそんな予想されやすい場所に行かなければならないのだ。
リゼットはまずゲートに気絶している全員を飲み込み、ついでにクリリン達も放り込む。
気絶している連中はポポがベッドに運んでくれるだろう。
その後、悟空の家まで転移して悟空とヤムチャ、ついでにチチも神殿へと連れて行った。
これで17号達に悟空が殺される事はあるまい。
未来では神殿に篭城していたらメタルクウラに破壊されてしまったらしいが、とりあえず新ナメック星は遠視する限り、まだ平和そのものだ。ビッグ・ゲテスターもまだ近くにはいない。
ひとまず落ち着く事が出来そうだ、と思いながら地上を見る。
とりあえず人造人間の現在地だけは正確に把握しておいた方がいいだろう。
そしてリゼットが見たものは……この世界線には現れないだろう、と予想していた怪物の姿だった。
緑色の体皮、セミのようなシルエット。
それは従来の人造人間とは異なりバイオテクノロジーで産み出された細胞の怪物。
この時代においてはまだ完成しない、遠い未来にようやく稼動するはずの存在。
――セルが、何故か地上にいた。
(人造人間……セル……!?
どういう事? 未来の私がみすみすアレの誕生を許したとでも!?)
リゼットには知識がある。場所は分からずとも、セルという怪物を造っている研究施設がある事も知っている。
ならばそれを探して生まれる前に消してしまう事は決して難しい話ではない。
ゲロもあれは完全に放棄していたのだから、施設の場所を変えたりはしないだろう。
だがおかしい……妙だ。有り得ない。
リゼットは混乱する思考を必死に纏めようとするも、何故このような事が起こっているのかの結論を出せずにうろたえていた。
(何故……何故、アレが『完全体』になってこの時代にいるんですか!?)
そう――セルはあろう事か完全体であった。
第一形態の化物染みた外観ではない。
いっそスマートさすら感じられる人に近い顔立ちをしており、その物腰には落ち着きがある。
更に意味が分からないのが人を襲う素振りを一切見せず、まるで何かを探しているように辺りを見回している事だろう。
彼はやがて上を……つまりこちらを凝視する。
そして、その口元が弧を描いた。
(――! 不味い、見られて……!)
瞬間。
セルは“ゲートを開いて転移し”、神殿へと姿を現した。
あまりに突然の事にリゼットは咄嗟に飛び退き、クリリンとターレスが構える。
セルからは不思議と禍々しい気は感じなかった。
本来ならば彼から感じられるはずのフリーザ親子やベジータの気がそこにない。
代わりに彼から感じるのは『クリアな気』。
他の誰でもない、リゼット自身の気こそが彼から感じられる。
リゼットと異なり、その気はまだ悟空達でも感知出来るだろうが、この気質は間違いなくリゼットのそれだ。
(わ、私の気……? どういうこと? 悟空君やクリリン君の気も感じられますが、私の気が占める割合が高すぎる。
未来の私は一体何をやったんですか!?)
「そう身構えないでくれ。私は貴方を傷付けに来たわけではない」
セルの深くて渋い声が、リゼットを安心させるように優しく響く。
必死に相手の心を読もうとするも、まるで読める気がしない。
超能力も――駄目だ、完全に防がれている。
このセルは、ふざけた事に超能力まで完備済みだ。
「――貴女に会いに来たのだ……我が義母よ」
「!?!?!!?」
リゼットは混乱の極地に達し、声にならない叫びをあげた。
【各キャラ戦闘力】
※今回は人造人間側
・13号:2億5000万
・14号:2億
・15号:2億
・超13号:25億
・19号:9000万
・20号:1億
・18号:8億
・17号:9億
・16号:20億
・セル:200億
※まだ本気ではない
Q、セルVSリゼットだとどうなるの?
A、セルはリゼットの技と技術を全部持っているので初見殺しが全く通用しない。負ける。