ドラゴンボールad astra 作:マジカル☆さくやちゃんスター
界王から念話を受けた後、リゼットはすぐに地球に接近しているというボージャック一味の気を探した。
すると確かに、遠い宇宙から遠路遥々こちらへ向かっている馬鹿が数人確認出来る。どうせなら道に迷えばいいのに。
しかもその戦闘力は今のリゼットでも1対1で少し手こずる、というレベルだ。
ボージャックに至っては完全にリゼットを上回ってしまっている。
到着まで恐らく二日といったところだろうか。その間に何とかこちらの戦力を上げなければ全滅が確定してしまう。
そして都合のいい事に、その手段は神殿にあった。
「と、いうわけで時間がありません。
これから二人一組で精神と時の部屋に入り、修行して頂きます」
本来ならばセルに対抗すべく入るはずの精神と時の部屋だが、この世界では何故かボージャックに対抗する為の使用となってしまった。
その奇妙な運命の変化におかしさを感じつつ、リゼットは地球の戦士達の強化に踏み出す。
とはいえ何せ時間がない。だから部屋を使う人間もこちらで選び、厳選したメンバーのみで二日後の決戦へと挑んで貰う。
まず一日目はピッコロとターレス。
原作通りベジータとトランクスも考えたのだが、残念ながら今のベジータは相当に自分勝手であり、一日使用というのを無視して勝手に二日目に突入してしまうかもしれない。
というかする。間違いなくやる。
『俺一人で全員ぶっ殺せるようになれば問題ないぜ』とか言いながら時間を超過して他の戦士を鍛える時間を大幅に減らしてくれる。
だからベジータは後回しだ。もうしばらくは一人で崖の上で瞑想でもやっていて貰おう。
二日目にはベジータとトランクスを入れ、この4人とリゼットの5人で彼等を迎え撃つつもりだ。
ナッパも鍛えたかったが、残念ながら今回は後回しにする他ない。
問題はボージャックだが、気を測ってみた所では少なくともセルには劣る。
イメージ的には最終形態セルと同格くらいと思っていたのだが、よく思い出してみれば劇場版の戦いは何かというと部下に背後から襲わせて後ろからの攻撃ばかりを行っていた。
悟飯は部下の糸で拘束してタコ殴りにし、トランクスをやはり拘束して殴り……。
要するにあの男、強い事は間違いないのだがリゼットが思っていたほどは強くはないのだ。
あるいは、セルが原作よりも強いのか……。
これならば部下を先に壊滅させて五人で挑めば充分に勝機はある。
それがリゼットの考えであった。
★
ボージャック一味は地球を目指して宇宙を飛んでいた。
銀河の中で最も美しい惑星、地球。
それこそ自分が支配してやるに相応しいという勝手な理屈から彼の惑星を目指し、そしてその距離はまさに目の前まで迫っていた。
だが成層圏を突破してまさに地球に踏み込んだその瞬間、彼等の行く手を塞ぐように空間に亀裂が走る。
「ぬ……?」
空間を跳躍して現われたのは白い少女。
一目で分かる神々しさに溢れ、光の粒子が輝いている。
ボージャックはその姿を見て一瞬で理解する。
なるほど、こいつがこの惑星の神か、と。
だがこの時点において彼は少女をさほど警戒はしていなかった。
封印される以前にも様々な惑星で暴れたし、惑星を管理している神などいくらでも葬ってきた。
だが直後、少女の後に続くように4人の男が現われた事で表情が険しくなる。
「へっ。お揃いで地球にようこそ、ってか。
遠路遥々殺されるためにご苦労な事だ」
黒いシャツの上から白いコートを羽織ったターレスが余裕に満ちた顔でボージャック達を煽る。
それに対しモヒカン頭の巨漢が好戦的に笑い、拳を鳴らした。
「ふん、少しは骨がありそうだ」
ピッコロがターバンとマントを外して構えを取る。
その視線の先では青い肌の美女、ザンギャが誘うように指を動かしていた。
「貴様等などにこの星を好きにはさせない」
トランクスが剣を手に威嚇し、それに合わせるように橙色の髪の男が剣を手にした。
互いに剣を武器にする者同士、既に戦う相手と定めているようで他者の割り込む隙間がない。
「パワーアップしたスーパーベジータ様の超圧倒的なパワーを見せてやるぜ。
あいつは俺がやる。余計な手出しは無用だ」
ベジータが腕組みをしたまま勝手にボージャックを指定し、リゼットは溜息を吐きたくなった。
まあ対ボージャックに関しては誰が挑んでも力不足なので、何とか他の面子が勝負を早々に片付けて援護に行くしかない。
ベジータには悪いが、本人も乗り気なのだし時間稼ぎをやってもらう事にしよう。
そしてベジータが勝手にボージャックを対戦相手に決めた事でリゼットの相手は小柄な男――ブージンに決まった。
しかしボージャックの視線はベジータではなくリゼットへと向いており、それがベジータを苛立たせる。
「貴様がこの惑星の神だな。おい小娘、この地球はいい星だな」
「それはどうも」
「喜べ。たった今から地球はこのボージャック様のものとなる。
従うならばお前だけは生かしてやるぞ」
下卑た視線だ、とリゼットは嫌悪感を感じた。
恐らく彼の言う事は半分は本当だろう。従えば命だけは助けてくれるのかもしれない。
だがそれは彼の奴隷になるという事と同義である。正直に言って冗談ではなかった。
そんなリゼットの心境も知らずにブージンが語る。
「ボージャック様は銀河で敵無し。
最も美しい北の銀河、その中でも最高の地球を支配するに一番相応しいお方。
逆らう奴は……殺す」
何とも勝手な理屈である。筋がまるで通っていない。
第一仮にも地球の神である己を通さずに持ち物宣言とは実に滑稽で笑わせてくれるではないか。
だからリゼットは言葉の代わりに気合砲を使う事で返事とし、ブージンを吹き飛ばした。
「なっ!? 貴様!」
「貴方の相手は後でしてあげます」
驚くボージャックを無視し、リゼットはそのまま飛翔。吹き飛んでいくブージンを追いかけた。
劇場版の戦いにおいても悟飯達があそこまで追い詰められたのはボージャックよりもブージンを始めとする取り巻きの能力に因る所が大きいとリゼットは思っている。
確かにボージャック一味は強かったが、それでもボージャックを除けば個々の力では勝っていたのだ。
それはトランクスがゴクアに勝利した事からも証明されている。
だというのにピッコロ、ベジータ、トランクスときたらご丁寧に一人一人ボージャックに挑みかかって他の雑魚3人をフリーにし、それで負けているのである。
あの戦いはボージャックの相手を悟飯が行い、他の3人を個別撃破して最後に4人で袋叩きにすれば悟飯が超サイヤ人2になるまでもなく勝てたはずだ。
だからまずは援護要員であるブージンを全力で潰す。
その為にリゼットは更に加速を行い、ブージンに追いつくと同時に胸に手を当てて零距離で気の剣を射出した。
だがブージンも危うい所で脱していたようで貫いたように見えたのはただの残像だったらしい。
「フッ、ホホホホホ!」
ブージンが気味の悪い笑い声をあげながら両手を翳し、周囲の岩や木々を浮かせる。
そして超能力でリゼットへ射出するも、それらは全てリゼットに届く事なく静止してしまった。
それどころかブージンが操った倍以上の岩や木々が彼女の背後に浮かび上がり、ブージンへ狙いを定める。
「ちいっ!」
ここでようやく同じ超能力者だと気付いたのだろう。
ブージンは飛来する岩や木を避けながらリゼットへと手を向ける。
だが遅い。既にリゼットは背後へと回り込み、その背へ手を押し当てている。
今度こそ零距離の剣がブージンを貫き、彼の腹から刀身が生える。
「があっ!?」
「遠路遥々地球までご足労頂いたところを申し訳ないのですが……今こちらは色々と立て込んでいましてね。貴方達の海賊ごっこに付き合っている暇などありません」
貫いたまま超能力を行使し、ブージンを地面へと叩き付ける。
背中に剣が刺さったまま地面に押し当てられた彼は更に深く串刺しにされる事となり、おびただしい血を吐き出した。
だがリゼットに容赦はない。
彼女が手を振るうと虚空にギロチンの刃が顕現し、更に気の拘束具がブージンを断頭台に縛りつけた。
そして手を振るう。
――斬首。
この地球にお前達の居場所などない。そう告げるような神の裁きが情状酌量も何もなく問答無用の死罪を言い渡す。
首から上を失った胴体が地面に転がり、だがリゼットは手を休めない。
相手は異星人。もしかしたらここからでもまだ再生なり行動なりするかもしれない。
勿論そんな能力はないかもしれないが、描かれていないだけであるかもしれないのだ。
クウラだって脳味噌だけで宇宙空間を遊泳しても生きていたのだから、あり得ない話ではない。
もし無くともそれはただのオーバーキルでしかなく、結果は変わらない。ただ少し気を無駄に消費してしまうだけだ。
だが万一あったならば討ち漏れとなり、後で何をしでかすか分からない。
だから万一の可能性すらも残さない。
「は!」
気弾一発。
既に事切れたブージンへと着弾し、爆炎が上がる。
彼の身体がこれで完全に塵と化した事を確認し、ここでようやくリゼットは己の勝利を確信した。
★
ゴクアとトランクスの振るう剣が中央で衝突し、甲高い金属音を響かせる。
リゼットが使う、実体のない気の剣ではない。
確かに存在する鋼を用いて鍛えられた鉄の凶器が互いを切り裂かんと唸り、幾度と無く火花を散らせた。
互いに距離を取るように、だが決して己の剣の間合いから外さぬように走り、一定の距離を保ったまま同じ方向へと二人して並走する。
ゴクアが先に仕掛け、振るわれた刃をトランクスが巧みにいなした。
そこから滑りこむように間合いを潰し、剣閃を横に薙ぐ。
間一髪――腹を僅かに切られただけで後ろに飛び退いたゴクアが冷や汗を流した。
「いい腕だ……剣で俺と渡り合うとはな」
「お前も悪くはない腕だ。しかし俺に剣を教えてくれた師には劣る」
「言ってくれる!」
ゴクアが吼え、再び剣を振るう。
一合! 二合! 三合!
それに対しトランクスも完璧に剣を合わせ、全ての斬撃を防ぎ切った。
ならばとゴクアが力任せに剣を振り下ろし、冷静にトランクスが避ける。
そして神速で踏み込んでの横薙ぎ! ゴクアも咄嗟にそれを避けるが、そこに隙を生じぬ二段目の攻撃が放たれ、ゴクアの腕を砕いた。
「っ、さ、鞘、だと!?」
二撃目の正体はトランクスの気を流した鞘であった。
気を流しての強化、という本来有り得ない芸当を平然と可能とするだけの業物。それにゴクアは驚愕し、地面を蹴って距離を取った。
まずい、こいつの剣は技量、武器共に己を上回っている。そう理解させられたのだ。
「い、いい剣だ。そいつも欲しくなってきたぜ」
「それは無理な話だな。この剣は俺にとっても大事な形見なんだ。
お前などに渡すわけにはいかん」
トランクスは鞘を捨てて剣を両手で握り、そして正眼に構える。
ただ構えただけではない。
トランクスの手から気が伝い、彼の持つ剣が黄金の光を帯びる。
陽光を反射し、まるで水に濡れているかのように美しく煌く刀身は戦いの最中でありながらゴクアの目を惹き付けて止まない。
「――往くぞ」
トランクスが超化し、それに呼応するようにゴクアも本気を出した。
全身の筋肉が膨張し、服が弾け飛ぶ。
だがそれはパワーに頼った変身だ。スピードを殺してしまっている。
かつてトランクスの師にして姉であった少女は彼に語った。力のみに頼った変身だけはするなと。その愚かさを。
剣に求めるべきはむしろスピード。神速の剣捌きこそが威力を生み出す。
無論普通の剣ならばトランクスの速度に耐え切れるはずなどない。振るう最中に折れてしまう。
だがこの剣だけはそれが可能だった。
地球最高の素材である天命石を材料に神自らが創造した文字通りの神剣。
世界でただ一振り、トランクスの為だけに『彼女』が遺してくれた遺品。
それを手に、黄金の気に包まれたトランクスが地を蹴って加速する。
(正面からの突撃! 腕一本を捨てれば防げる!)
馬鹿正直に正面から突撃してくるトランクスを見てゴクアは防御可能と判断した。
トランクスの実力と剣の質は十分に評価している。
その上で無傷の勝利は不可能と判断し、腕を捨てての勝利を取りに来たのだ。
彼の予想通りにトランクスの剣はゴクアの腕に当たり――そのまま、滑るように彼の腕を切り裂いた。
「――な」
「終わりだ」
トランクスの剣がいかに天命石製だろうと、本気で防御に回ったゴクアの腕をこうも容易くは斬れない。
しかしそれも、気を纏わせる事で可能となる。
極限まで凝縮した気を纏わせた剣はカッチン鋼すら切断してのけるのだ。
これをトランクスの師は『気功剣術』と名付け、トランクスへ伝授した。
今は亡き師から教えられた技。それを用いてトランクスは、宇宙からの侵略者を両断してみせた。
【気功剣術】
日本ではサービスが行われなかった『ドラゴンボールオンライン』の中に登場する流派。
この世界では未来のリゼットがトランクスの為に編み出した。
名前が被ったのはただの偶然であり、リゼットも流石に日本でサービスが行われなかった『ドラゴンボールオンライン』の設定までは把握していない。
【戦闘力】
―味方陣営―
・リゼット:1億2000万
バーストリミット(最大50倍):60億
・ピッコロ
基本戦闘力:3億
界王拳(最大20倍):60億
・ターレス
基本戦闘力:1億
超サイヤ人:50億
超サイヤ人(2段階目):60億
・ベジータ
基本戦闘力:9800万
超サイヤ人:49億
超ベジータ:58億8千万
・トランクス:9500万
超サイヤ人:47億5千万
超サイヤ人(2段階目):57億
僕は父さんを超えてしまったんです:76億
―敵陣営―
ボージャック:75億
フルパワー:150億
ゴクア:45億
マッスル化:60億
ビドー:48億
ブージン:43億
ザンギャ:40億
ついに敵側に戦闘力100億超えが出現。
インフレが加速しっぱなしです。