ドラゴンボールad astra 作:マジカル☆さくやちゃんスター
『ベジータ王バンザァァァイ!』
「銀河の至る所から集めたならず者達が、貴方の従僕としてお待ちしておりました」
ベジータが新惑星ベジータに造られた宮殿へ行くと、そこで待っていたかのように多種多様な宇宙人達が彼を出迎えた。
感じられる気はどれも大した事はないが数だけは多い。
もう少しマシな奴を集める事は出来なかったのか、と不満を感じつつもベジータは宮殿の中へ入って行く。
自分が暮らす城、になるはずだが急ごしらえ感が滲み出ている。
もっとマトモな城は造れないのか、とベジータは早くも不満で一杯だった。
中に入ると、眠たそうな目をした黒髪の男の存在に気付く。
外の連中よりは大分気が大きく(といってもパラガス以下だが)、何よりも気の性質に覚えがあった。
「息子です。何なりとお使い下さい」
「ブロリーです」
パラガスが紹介すると、青年は礼儀正しく自己紹介をする。
実はリゼットはちゃんと伝説の超サイヤ人の名前をベジータや皆へ伝えていたのだが、その時のベジータはターレスに先んじられた屈辱でそれどころではなく、話もほとんど聞いてはいなかった。
当然、そんな状態で、しかも3年前に一度聞いた名前など覚えているわけがない。
「お前もサイヤ人のようだな?」
「はい……」
ベジータはサイヤ人の生き残りを当初は5人と考えていた。
即ち自分とナッパ、ラディッツとカカロット、そしてその息子である悟飯だ。
だが実際には思ったより多くが生きていたらしい。
ターレス、パラガス、ブロリー、トランクスを計算に入れれば9人……いや、そういえば辺境の惑星に送られた戦闘向きではない愚弟がいたか。ならば10人いる事になる。
未来から来たほうのトランクスもサイヤ人ではあるが、あれは未来人だ。数に入れなくてもいいだろう。
そのような事を考えていると、慌てたようにパラガスの部下が走りこんできた。
「申し上げます! トトカマ星に超サイヤ人が現れました!」
「何ィ!?」
部下の報告にベジータが驚き、お出ましか、と好戦的に笑う。
「早速伝説の超サイヤ人を征伐しに出掛ける! 後に続けブロリー!」
せっかく来たばかりの宮殿から後戻りし、ベジータが宇宙船の場所まで戻ろうとする。
後にはブロリーが無言で続くが、そんな彼等へトランクスの制止の声がかかった。
「父さん! 闇雲に出掛けるのは危険です!
もっと情報を集めてからでも……」
「臆病者は付いて来なくともよい! ブロリー、早くしろ!」
「父さん……!」
今のベジータには余裕がない。プライドに皹が入っている状態なのだ。
だからこそ未来において誰も……それこそリゼットすらも勝てなかった伝説の超サイヤ人を自分一人で倒すという事に躍起になっていた。
そんな姿を見てパラガスは髭を吊り上げて笑い、己の計画が順調に進んでいる事を確信した。
★
「うわへへへ、な、何事ですじゃ! ここはどこですじゃ!」
同時刻、地球ではリゼットが亜空間移動により拉致してきたタコのような宇宙人の科学者が混乱していた。
最初はパラガスの持つ制御装置を奪う予定だったのだが、よく考えたら造ったのはこの科学者だ。
ならばこいつを誘拐してブルマ達に協力させればより高性能な制御装置を造る事も不可能ではない。
リゼットはそう考え、そして実行に移したのだ。
未だ混乱するタコに対し、リゼットはこのままでは彼の助かる目はないと説得する。
新惑星ベジータはグモリー彗星が近付いて衝突する間近であり、更にパラガスは脱出の手立てとして一人乗り用のポッドしか用意していない。
つまり彼にとって部下とは全て捨て駒であり、その中には科学者すらも含まれているのだ。
その事を説明するとタコは顔を真っ青にし、そしてリゼットへ協力する事を誓った。
「うわへへへ、全面協力しますですじゃ。技術も提供しますですじゃ。
気をお静め下され、儂は全くの無害ですじゃ」
「…………」
何という変わり身の早さだろうか。
心を読んでもこちらへの反逆の意思などはまるで見えず、恐怖で縛られた者の忠誠の圧倒的脆さを目の当たりする事となった。
その上で地球の事情やカプセルコーポレーションならば好きなだけ研究が出来るという飴をチラつかせる。
するとタコは完全にこちらに乗り換えたようで、奇怪な笑い声をあげながらリゼットに対し完全に従順となってしまった。
「という事でブルマ。後はお願いします」
「宇宙の技術ねえ……まあ、やろうと思えば出来なくはないだろうけど。
まあいいわ。地球の一大事ですものね。
そこのタコ、ちゃんと協力しなさいよ!」
「儂は完全にこちらに寝返りましたですじゃ」
リゼットからタコを放り投げられたブルマは呆れた顔をしつつも、やはり研究者としての好奇心は疼くのだろう。
タコを引き摺って自家用機に乗り、カプセルコーポレーションへと飛ぶ。
一応何かあったら心の中で叫べばすぐに駆け付けると言っておいたのでタコも何もしないだろう。
何より今のカプセルコーポレーションには最強の警備ロボットである人造人間16号がいる。
下手な事をすればヘルズフラッシュで消し炭になるだけだ。
どうでもいい話だがリゼットには16号を戦力として起用する気などない。
確かに高性能には違いないのだが完全なロボットである彼は改造する以外に強さを増す方法がなく、今後のインフレに置いて行かれるのが目に見えている。というかもう置いていかれている。
無理に戦場に引っ張り出しても無駄に破壊されるだけであり、それならばずっとカプセルコーポレーションにいて貰った方が有意義だと考えたのだ。
「さて、これで上手く行けばブロリーの制御装置が完成するでしょう。
間に合わなければパラガスから奪うまでですが」
「こりゃあ、今回は本当に戦わずに終わりそうだな」
舞台裏でブロリー制御の為に行動しているリゼットを見て、ターレスが面白くなさそうに呟く。
しかし未来の話を聞けばこれが最善の手だという事くらいは理解出来るので何かを言う事はない。
念のためと呼び出されたピッコロも腕を組んで神殿の端から地上を眺めている。
ナッパも暇そうにしており、天津飯もやる事がないと知って精神と時の部屋の前で瞑想に入っていた。
悟空達が出たら次は彼が精神と時の部屋を使いたいらしい。
別にそんな所にスタンバってなくても誰も割り込んだりしないのに。
それに悟空達が入ったのは半日前だ。まだ出て来るには時間がある。
そう考えるも、まるでその予想を裏切るかのように精神と時の部屋のドアが開いた。
「え?」
「馬鹿な、早過ぎるぞ!」
「それに何だ、この気は!」
リゼット、ターレス、ナッパが驚きを露にドアを見る。
そこには胴着をボロボロにした悟空と悟飯が立っており、二人とも髪が金色に染まっている。
間違いなく超サイヤ人だ。だが雰囲気がまるで違う。
見た目は確かに変身済みなのだが……そう、普通なのだ。まるでそれが変身前であるかのように自然体で超サイヤ人に変身している。
変身時特有の興奮状態も見られず、目も穏やかなものだ。
リゼットはそれを見て、改めて悟空の天才性を思い知った。
こんな短時間でもう、超サイヤ人を完全に自分のものとしたか、と。
「よう神様! すまねえが新しい服を貰えねえか。ボロボロになっちまってよ」
「あ、はい。いつもの胴着でいいですよね?」
リゼットが指を向け、悟空の胴着を新品に変える。
それと同じように悟飯はピッコロに新しい服をねだり、彼と同じ服を貰っていた。
これで名高い孫悟飯全盛期の完成というわけだ。
……9歳で全盛期ってどうなのだろう。
「おいカカロット。その状態、お前、超サイヤ人を自然な物として慣らしやがったな?」
「ああ。こうすりゃ変身時に無駄な負担をかけなくても済むからな」
「考えたな」
ターレスの質問に悟空は落ち着いた態度で答える。
なるほど、静かなものだ。
今までの超サイヤ人とはまるで違う。変身しているのに気を発散していない。
「で、勿論実力の方は身に付いたんだろうな?」
「ああ、少なくとも神様以外にゃ負けねえと思う」
「! へえ、言うじゃねえか。俺よりも上だって?」
「そうだな。随分上だと思う」
悟空の自信に満ちた返答にターレスは面白そうに笑う。
彼は間の抜けた男ではあるが、こんな場面で無駄な事を言うタイプではない。
その彼がこう言う以上、それは本当に自分を超えたという事なのだろう。
「神様の気は前よりは感じられるようになったが、まだ霧がかかったみてえにハッキリしねえ。
これって大分近付いちゃあいるが、まだ超えてねえって事だよな?」
「……ええ。一応そうなります」
リゼットは汗を流しながら悟空の問いに肯定を返した。
そう、悟空はまだかろうじてリゼットを超えていない。
だがその差は既に僅かなものでしかなく、今ならばリゼットの気を感知しての瞬間移動も出来るだろう。
だがそれ以上に驚かされるのは悟飯だ。
彼から感じられる潜在パワーは悟空すら凌駕しており、改めて才能の差に気落ちしそうになった。
だが頼もしい限りだ。これならば万一ブロリーとの戦いに突入しても期待が出来る。
「神様、次は俺が入ります。いいですね?」
「ええ、構いません」
「俺も同室させてくれ。カカロットに差を付けられたままじゃ納得いかねえ」
次に精神と時の部屋に入るのは天津飯とナッパのハゲコンビらしい。
彼等は並んで部屋へと入り、そしてドアを閉めた。
あのやる気ならば丸一日か、あるいはそれ以上の時間を修行に使うだろう。天津飯の腕が斬られない事を祈るばかりだ。
リゼットは彼等を見届けた後、遠視で新惑星ベジータを見る。
ベジータは現在トトカマ星という場所に向かっており、少なくとも夜まで帰還しないだろう。
パラガスはタコの不在にようやく気付いたようで探し回っている。
トランクスはクリリン、ヤムチャと一緒にシャモ星人と友好を深めていた。
「なあ神様」
「ん? どうしました、悟空君」
遠視を中断し、悟空へと向き直る。
こうして見ると本当に大きく、そして強くなったなと実感させられた。
以前は低かった身長も今ではリゼットが見上げる程になり、感じられる気も力強く、それでいて自然体だ。
流石主人公と頼もしく思うべきか、短い時間でここまで来た才能に嫉妬するべきか。難しい場面だ。
「伝説の超サイヤ人ってよ、やっぱ強えのかな?」
「ええ、恐らくはかなり。私達全員がかりでも勝てるかどうか分からない相手です」
「っひゃー! そりゃすげえ! オラ戦ってみてえぞ!」
「気持ちは解らなくはないですが、今回は諦めて下さい。
無事に勝てる保証もない相手なんですから」
「でもよお、オラここまで戦ってねえし……」
「駄目です」
折角強くなった悟空ではあるが、リゼットの計画が上手く行けば出番は来ないままに終わるだろう。
というより今回に限って言えば彼の出番はない方がいい。
下手にブロリーと遭遇させてしまうと、それだけでブロリーが暴走する危険があるのだ。
全く、赤ん坊の頃に泣かされたというだけでブロリーは悟空に執着しすぎだ。
同じ理由で顔が似ているターレスも今回はアウトだ。
悟空はここまで、心臓病のせいでメタルクウラやヘラー一族との戦いを寝過ごしてしまっている。それだけに戦いたい気持ちが強いのだろうが、今回は我慢してもらいたい。
「ともかく、今はブルマの制御装置の完成を待ちましょう」
「悠長だな。そんなもん待たずとも今すぐパラガスって野郎の制御装置を奪えばいいじゃねえか」
「いえ、それはどうやら良くない手のようです」
「あん?」
「先ほど科学者の心を読んだのですが……どうやらパラガスの持つ制御装置は『パラガスの気』に反応するように出来ているようでして。
つまり奪っても私達では使えません」
当初リゼットはパラガスから奪うつもりだったが、やはり石橋を叩いて正解だった。
パラガスの持つ制御装置はパラガス本人にしか使えない。
つまり焦ってあれを奪ったりすれば、逆にブロリーの解放を早めるだけに終わっていただろう。
出来る手をすぐに打つというのは決して悪くない。
だが時にはこうして情報を吟味して、石橋を叩いて渡るのも必要な事なのだ。
リゼット(……まだ不安です。もうちょっと確認しましょう)
・リゼットは石橋を叩いた。石橋に10のダメージ。
・リゼットは石橋を叩いた。石橋に10のダメージ。
・リゼットは石橋を叩いた。石橋に10のダメージ。
・リゼットは石橋を叩いた。石橋に10のダメージ。
・リゼットは石橋を叩いた。石橋に10のダメージ。
・リゼットは石橋を叩いた。石橋に10のダメージ。
・リゼットは石橋を(ry
石橋HP:8455/22000
【戦闘力】
・孫悟空:3億2千万
超サイヤ人:160億
・孫悟飯:3億
超サイヤ人:150億