ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第五十七話 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦③

「いいぞぉ。その調子だ、どぉんどん近付け。グモリー彗星よ」

 

 夜。

 皆が寝静まった頃。パラガスは一人で星の動きを観察していた。

 科学者に造らせたレーダーは着々とこの星に彗星が接近している事を知らせており、パラガスは己の目的達成がいよいよ近付いている事を実感した。

 

「ふーっふっふ、あぁーはははは、あーっはーはーはーはー、ア゙ーハハハハァ!

フアァーハハハハァ!」

 

 復讐を遂げるまでにかかった年月を想い、パラガスは狂気に歪んだ高笑いをあげる。

 その笑いは徐々に大きくなり、最後の方は悲願達成が近付いた喜びから殆ど泣き笑いにも等しい状態となっていた。

 その姿に、たまたまその場に居合わせてしまった部下の一人であるモアが不安に満ちた声を漏らす。

 

「ま、まさか……」

 

 まさかパラガス様は自分達まで一緒に消す気なのでは?

 そんな不安を見抜いたようにパラガスがゆっくりとモアの近くへと歩き、声を発する。

 

「モア、心配する事はない。

貴様はその恐怖を味わわずに済むのだからな」

 

 それを聞いてモアは安堵した。

 よかった、ちゃんとパラガス様は自分達の事を考えていてくれた。

 グモリー彗星で葬られるのはあくまで王様気取りの間抜けなベジータと、その哀れな息子や同行人だけだ。

 

「はい、地球に移住しましても一生懸命に……」

 

 しかし彼は、次の瞬間パラガスが手を翳した事で己の勘違いを悟る事になった。

 

(かぁん)違いするな」

「うっうっ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 宮殿にモアの断末魔の叫びが響き渡り、気弾の輝きが一瞬夜を照らす。

 しかし、一つの命が消えた事に気付く者は誰もいなかった……。

 

 

 ベジータは苛立っていた。

 昨日訪れたトトカマという星では結局伝説の超サイヤ人は影も形もなく、無駄足に終わったからだ。

 パラガスは一生懸命配下に捜索させているというが、それも全く役に立たない。

 最早パラガスはアテにならないと考えたベジータは情報を待たずして自ら宇宙を巡り、探す事を決めた。

 これに慌てたのは勿論パラガスだ。

 彼の計画ではグモリー彗星の衝突までベジータをここに足止めして彗星の衝突で彼を殺すつもりなのだ。

 なのに今星を発たれてはその計画も台無しになってしまう。

 

「ベジータ王、明日まで! 明日までお待ち下さい!

明日になれば必ずや伝説の超サイヤ人の居場所が分かるはずです!」

「いえ、その必要はありません」

 

 パラガスの声を遮り、少女の声が響き渡る。

 ベジータとパラガスが視線を向ければ、そこには一体何処から出てきたのか、白い少女が凛と立っていた。

 服装は普段と同じケープドレスだが、万一の事態に備えて服の重さは軽くしており、ただ頑丈なだけのドレスだ。

 隣にはトランクスとピッコロが立っており、敵意に満ちた眼でパラガスを見ている。

 

「地球の神……!」

「パラガス、ベジータに教えてあげたらどうですか? ブロリーがその伝説の超サイヤ人であると」

 

 リゼットの口から出た聞き捨てならない台詞にベジータがパラガスとブロリーを見る。

 

「そ、そのような事があろうはずがございません! 私より力の劣るブロリーが超サイヤ人だなどと……。ベジータ王、さあ、宮殿へ戻り下され」

「全て嘘です! パラガスの言っている事は何もかも出鱈目だ!

あそこにあるのは廃墟なんです!」

 

 パラガスの苦し紛れの言い訳をトランクスが塞ぐ。

 いくらベジータでも信用出来る相手がどちらかなどは理解している。

 パラガスへの疑惑の視線が益々強まり、射殺さんばかりに睨む。

 

「騙したな、パラガス」

「……やっと能天気なお前でも呑み込めたようだな。

全てお前の息子と神の言う通りだ。こぉんな最低の星には何の未練もない」

 

 いよいよ騙しきれなくなったと理解したのだろう。

 パラガスは今までの従順な態度を捨てて本性を露にし、ベジータを嘲りながら背を向けた。

 

「彗星が衝突する事が分かったからこそこの星を利用したのだ。

俺の狙いは北の銀河の地球なのだからな! ふぁーはっははははは!」

 

 振り返りながら何故か人差し指を立ててベジータを指差し、独特の高笑いをする。

 更に彼は両手を広げ、演説しながら歩き始めた。

 

「宇宙の中で一番環境が整った美しい地球に移住し、そこを本拠地として帝国を建設するのが俺の本来の計画なのだよ。

その為には地球を決戦の舞台にするわけにはいかんからなあ。

無傷で手に入れる為に、こぉんな宮殿まで造らせてこの星まで呼び寄せたのだ。

ベジータ星の王などと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ」

 

 ブロリーの隣まで行き、大仰に手を広げる。

 一度開き直ってしまえば後は何とも清々しいものだ。

 自分が既に『詰んで』いる事も知らずに彼は言葉を続ける。

 

「ここでお前達を殺せば俺達の敵は一人もおらん! 北の銀河は勿論、東も、西の銀河もわけなく支配出来、俺とブロリーの帝国は永遠(えぇ゙いえん)に不滅になるというわけだぁ!

さあ、やれブロリー!」

 

 パラガスがブロリーに命令を下し、リゼット達を殺させようとする。

 だがブロリーは動かず、リゼットの超能力でパラガスの手に装着された制御装置が破壊された。

 

「なっ、何て事を! これがなくてはブロリーは……!」

 

 ブロリーを操る為に制御装置は必須だ。

 それがなくてはブロリーは衝動のままに暴れ回り、宇宙そのものを破壊し尽してしまう。

 そうなれば支配どころではない。

 あまりに軽挙な女神の攻撃を非難したパラガスだが、次の瞬間にはその顔が青褪めていた。

 何故なら――女神の手に、自分の物と全く同じ制御装置が付いているのだから!

 

「なっ……!」

「心配はいりません。もっと高性能なのを持っていますので。

……ブロリー! パラガスの動きを封じて下さい!」

「はい」

 

 リゼットの持つ制御装置が光り、ブロリーの額の装置と反応し合う。

 するとブロリーはリゼットの意のままに行動し、パラガスを羽交い絞めにした。

 まさかの事態にパラガスの余裕が完全に崩れ、冷や汗が滝のように流れる。

 

「これは一体……ブロリー、一体、どうしたというんだ……」

「この装置を設計した科学者をこちらに引き込み、ブルマに新しく造って頂きました。

貴方の負けです、パラガス」

 

 それは、戦いという行為を踏み飛ばしての決着だった。

 戦闘そのものを成立させずに勝つ。それは間違いなく最良であり最善だ。

 未来であれだけの猛威を振るったブロリーの余りに呆気ない無力化にトランクスが破顔し、リゼットを見る。

 やはり彼女は凄い。あの悪魔をこうまで簡単に無力化するなんて。

 これで未来は変わった。少なくともこの時間軸は救われたんだ!

 そう歓喜するトランクスだったが、全く面白くないのはベジータだ。

 

「ちっ……下らん真似をしやがって!

こんな方法に頼らずとも、俺なら伝説の超サイヤ人をぶっ殺せる!」

 

 そう言うや、ベジータの目が一瞬赤く光り、黒いオーラに包まれた。

 この現象には覚えがある。過去何度か煮え湯を飲まされた、あの謎の凶悪化だ。

 そしてそのオーラに包まれたベジータは思いもよらぬ行動に出た。

 それこそリゼットすら予期しなかった余りにも突飛で、そして馬鹿馬鹿しい行動だ。

 それが余りにも考えなしな行動すぎてリゼットすら反応出来ず、そしてそれが最大の失敗であり致命傷となった。

 

 ――ベジータはブロリーの額に向けて気弾を発射し、制御リングを破壊してしまったのだ。

 

「――!!? ベ、ベジータ! 一体何を!?」

 

 リゼットが狼狽した声でベジータの愚行を非難する。

 いや、違う。非難すべきはベジータではなくあの魔族達だ。

 気を辿れば、遠くに一瞬だけ女魔族の姿が確認出来たが、彼女は悪戯が成功したように微笑むと姿を消してしまった。

 焦燥するリゼットの前でベジータは腕を組んだまま、まるで悪びれずに答える。

 彼はきっと、自分が操られた事にすら気付いていない。

 

「下らん物を破壊したまでだ。そんな玩具に頼らずとも、伝説の超サイヤ人など俺一人で始末出来る!」

「ば、馬鹿! それが出来ないからこうして……」

「黙れ臆病者が! このような勝ち方は俺達サイヤ人の勝ち方ではない!」

 

 リゼットの用意した策は味方によって完全に撃ち砕かれてしまった。

 だがこれはベジータの精神状態を把握していたにもかかわらず軽視していた彼女の失態だ。

 超サイヤ人になったばかりでの18号戦の敗北。壁を越えたばかりの戦いでのボージャックへの完敗。

 その二つの要因がベジータのただでさえ少ない余裕を完全に失わせていた。

 だからベジータはこんなにも簡単に操られてしまったのだ。

 ……いや、操られていなくてもあるいは、今のベジータならば本当にこのくらいはやっていたかもしれない。そのくらい彼は追いつめられていた。

 リゼットはもっとベジータを気にかけておくべきであった。

 プライドに亀裂が走っていたベジータならばこのくらいしても不思議はないのだから、先に気絶させるなり問答無用で地球に帰すなりしておけばよかったのだ。

 だが結局のところそれは後の祭りでしかなく、全ては遅きに失している。

 制御リングを砕かれたブロリーの形相が変わり、トランクス達が揃って顔を青褪めさせた。

 

「ベジータ……貴様、責任取れよ……!」

 

 ピッコロが歯を食い縛り、怒りの声をあげる。

 事態はここに最悪の展開を迎え、ブロリーを抑える術は失われた。

 よりにもよってブロリーの額に付けているリングを砕かれたのではどうしようもない。子機があっても親器がなくてはどうしようもないのだ。

 

「ご、悟空君、聞こえますか! 作戦は失敗です!

至急、皆を連れて新惑星ベジータに来て下さい!」

 

 リゼットは慌てながら地球に念話を飛ばし、悟空をこの場所へと呼び寄せる。

 すると次の瞬間には出待ちしていた悟空がターレスと悟飯、更に精神と時の部屋での修行を終えたナッパを連れて瞬間移動で現われた。

 ブロリーから感じられる気の強大さに悟空が面白そうに笑いながらも冷や汗を流す。

 

「カカロットォ……!」

 

 悟空の姿を認めたブロリーが全ての敵を無視して悟空へと向かって歩む。

 視界にいるはずなのに無視されたベジータは怒りを露にし、ブロリーへと飛び蹴りを放った。

 回避も防御もせぬブロリーの首筋にベジータの全力の蹴りがこれ以上ないほどに直撃し――だが、まるで微動だにしない!

 

「っ!? くっ……! はああああ!」

 

 今度は気弾!

 あらん限りの力を込めて気弾を投げ、ブロリーに直撃させる。

 爆煙が上がり、パラガスが「ドォォラ!?」と叫びながら余波だけで転がった。

 だが肝心のブロリーは何事もなかったかのように煙の中から姿を現わし、攻撃を行ったベジータへ振り返りすらしない。

 ベジータなどまるで相手にもしていない。視界に入っているが存在を認識していない。

 攻撃されたという事実にすら気付いていない。

 人間が歩いていて、針も持たぬ虫に体当たりをされたとて気付く事はない。

 それと同じだ。ブロリーにとってベジータとは、攻撃されたという認識すら抱けぬほどに力の差が開きすぎている相手なのだ。

 その事を悟ってしまったのだろう。ベジータの全身から力が抜け、戦意が失われる。

 

「カカロットォォォォォォ!!」

 

 ブロリーが叫び、黄金の輝きが彼を満たす。

 狂気を野生を殺意を敵意を暴威を破壊を暴力を力を怒りを憎悪を。

 彼が内に秘めるその計り知れない野獣性を抑える鎖はもう存在しない。

 在るがままに、殺戮と血を好む伝説に相応しい狂戦士へと変化する。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 瞬間、ブロリーが“変わった”。

 筋肉が膨れ上がり、明らかに身体のサイズが変わり、その瞳は理性なき白眼へ。

 黒髪は黄金に逆立ち、全身にエネルギーの余波たるスパークを纏い、立っている場所にクレーターを穿ち、伝説が降臨する。

 

「く、くくく……はははははッ!!」

 

 先程までの静けさが嘘のように溢れる破壊の意志。

 壊す事に意味などない。

 ただそう生まれたのだから、そう壊す。

 壊す存在として生を受けたのだから人も木々も大地も空も、惑星も銀河すらもを破壊し尽す。

 いわば『暴力』という概念の擬人化。壊す事しか知らぬ怪物。

 それがブロリーという男の本質であった。

 

「ハァー、ハァー……伝説の……超サイヤ人……!」

 

 ベジータは既に黒髪に戻ってしまっていた。

 本能的に感じ取ってしまったブロリーとの差に、最早戦う意志すら沸かず、身体はその意志を反映して超サイヤ人化を解いてしまったのだ。

 そんなベジータを眼中にも入れずブロリーは悟空を指差す。

 

「カカロット、まずお前から血祭りにあげてやる」

 

 そう言うやブロリーは巨体に似合わぬ速度で突進した。

 しかし悟空も精神と時の部屋の修行で力を大きく増している。

 ブロリーの初撃を何とか回避し、戦場を空へと移す。

 それを追ってブロリーが飛び、悟空を援護する為にターレス、ピッコロ、ナッパ、トランクス、悟飯、リゼットも空へと飛翔した。

 唯一人残されたベジータは膝を突き、全身をガクガクと震わせている。

 

「で、伝説の……超サイヤ人……!

こ、殺される……奴は伝説の超サイヤ人なんだぁ……!」

 

 最早先ほどまでの自分一人で倒すと息巻いていたベジータはそこにいない。

 たった二回の攻撃ではあったが、それだけでブロリーの強さを理解してしまった。

 勝てるはずもない実力の差を思い知ってしまった。

 ベジータは疑いの余地なく、戦闘の天才である。

 だからこそ分かってしまうのだ。自分と相手の間にある、どうしようもない差が。

 頭の中が真っ白になり、もう何も考える事が出来ない。

 それほどにブロリーという存在は大きすぎた。

 

「純粋なサイヤ人の中でもベジータ、お前だけが本能的にブロリーの強大さと極悪さをキャッチ出来たようだな。

だがもう遅い。ブロリーが俺のコントロールから外れ、伝説のサイヤ人になってしまった以上、ブロリーと二人で全宇宙を支配しようとした俺の計画も何もかもお終いだ。

地球は勿論、宇宙を全て破壊しなければブロリーは治まらない……」

 

 パラガスもまた諦めたように呟き、ブロリーの戦いを見守る。

 ブロリーに勝てる存在などいるはずもなく、止める手段も失われた。

 ならばもう終わりだ。宇宙はブロリーに破壊されるしかない。

 その言葉を聞きながら、ベジータはただ震え続けていた。




【戦闘力】
ナッパ:9400万
大猿パワー:9億4000万
黄金の髭:47億

精神的に不安定なベジータの目の前でこんな『勝ち目がないので封じます』みたいな策を実行すれば、そりゃこうなるよねというお話。
リゼットは石橋を叩く前に、向こう岸をファイナルフラッシュで消そうとしている王子をどうにかすべきだったのだ……。

~もしもブロリーがニコニコ仕様だったら~

ブロリー「カワイイ!」
リゼット「……は?」
ブロリー「prprしたいなあ……」
親父ぃ「銀河の中で最も美しい地球の女神をわけなく調教しに来たサイヤ人のパラガスでございます。腐☆腐。
女神よりも弱いベジータに用はありませんよ」
ブロリー「気が高まるぅ、溢れるぅ」
リゼット「や、やだこの人達っ……気持ち悪いっ……!?」
ブロリー「(´・ω・`)」ションボリー超化解除
親父ぃ「DOOR!?」

このブロリーは仲間になる(確信)

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