ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第六十話 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦⑥

 ターレスが植えた神精樹の種は、植えたターレス自身が驚くほどの速度で急成長していた。

 植えて僅か数時間で成長し切るという馬鹿げた速度を誇るのが神精樹だが、今回はその比ではない。

 まだ植えてより数十秒しか経っていないというのに、惑星全体を覆う程に神精樹が巨大化し、木々が空を覆い隠してしまっている。

 かつてターレスは、この惑星などより遥かに生命力に溢れた惑星である地球に神精樹を植えたが、その時だってこんな巨大な樹にはならなかった。

 まさにこれは星の命そのものだ。

 この惑星がまるで自らの意思で樹に己の力を明け渡しているかのように生命力に満ちた樹が育っている。

 その光景を見てターレスは、口角を吊り上げた。

 

「へっ、現金なもんだなオイ……俺が使ってた時は、こんなに元気よくは育たなかったぜ」

 

 ターレスは樹の頂点を目指し、飛んだ。

 彼の経験則ではこの先にこそ神精樹の実が成っている。

 果たして予想通りそこには実が存在し、だが予想に反してその数は一つだけであった。

 たった一つだけの神精樹の実が、神々しいまでに輝いていたのだ。

 

「どういう事だこりゃ……まさか星の力が複数の実に分割されず、たった一つの実に集約されたとでも言うのか!?」

 

 神精樹の実は通常、毒々しい赤紫色をしている。

 それはまるで無理矢理吸い上げられた星の血のようであり、決して好ましい色ではない。

 だが今ここにある実は黄金。無理矢理吸い上げられたわけではなく、星自らが献上したかのような眩い色だ。

 リゼットの気に感応した結果なのか、それともこれが本当の神精樹の実なのか……。

 その充分に熟した実をもぎ取り、ターレスは汗を流す。

 

「そうかい。お前もこのままじゃあ終われねえってわけか」

 

 ……いける!

 ターレスは奇妙な確信を抱き、樹から飛び降りた。

 神精樹の実により上昇する戦闘力は高々数十万程度であり、敵の力を思えばまさに駄目元の賭けでしかなかった。

 しかしこの実は違う。それ以上の力を感じさせられる。

 まさに星の力の全てがここに凝縮されているのだ。

 その証拠にこの星の大地が罅割れ、地震が起こっている。

 幾度も星を破壊してきたターレスだからこそ分かる。……これは星が自壊する前兆だと。

 どうやらこの惑星は本当に命の全てを振り絞ってこの実に託してくれたらしい。

 ターレスは倒れているリゼットの所まで行くと、その身体を抱き上げる。

 そして神精樹の実を食べ易いサイズに気の刃で切り、その小さな口へと無理矢理詰め込んだ。

 何とも、浪漫もへったくれもない食べさせ方である。

 目を閉じているリゼットも気のせいか苦しそうな顔になり、汗を流している。

 だがターレスは気にせず二つ、三つとグイグイ押し込んでいく。

 やがて4つめに入ったところで遂に、リゼットの掌打がターレスの顔を張り飛ばした。

 

 

 セルとブロリーの戦いは佳境に入っていた。

 当初こそ勢いよく攻め続けていたセルであったが、彼の体力は無限ではない。

 四人に分裂しての猛攻にも終わりが見え始め、ブロリーの攻撃が命中するようになっていた。

 そして今もまた腹に彼の豪腕が突き刺さり、勢いよく飛ばされていく。

 だがセルは吹き飛びながらも空中で回転し、強引に地面に足を付けて着地した。

 

「ま、まだだ! まだ終わら……」

 

 虚勢を張ろうとするも、ブロリーはそれすら許さない。

 彼の放った気弾がセルの上半身を消し飛ばし、気を大幅に削り取る。

 だがセルは尚も諦めずに再生し、全身にスパークと黄金のオーラを纏った。

 

「まだ、終わらなああいッ!」

 

 跳躍して距離を取り、着地と同時に両手に気を集約。

 残る全ての力を込めてのかめはめ波の構えへと入った。

 既に自壊が始まっている新惑星ベジータが鳴動し、暗く染まった空が雷光を降り注がせる。

 セルの脳裏に浮かぶのは荒廃した未来の世界。

 戦う事すら出来ず、自ら定めた役目も果たせずに終わってしまった世界。

 そして、培養液の中にいる自分へと向けられる白い少女の弱弱しい笑顔……。

 

「未来は――」

 

 

 

 

 ――私は、何を間違えたのでしょうね……。

 

 それは、人々の希望の象徴として戦う女神が見せる、誰にも見せる事の出来ない素顔であった。

 英雄亡き世界。孫悟空がいなくなってしまった世界でいつも彼女は後悔していた。

 あの時ああしていれば……どんな手を使ってでも孫悟空さえ生かしておけばきっとこうはならなかったのに。

 仲間達はきっと、今も自分の近くにいて笑っていてくれたのに。そう、嘆いていた。

 そんな彼女にセルはテレパシーで語りかけた。それは貴女のせいではないと。

 不幸に不幸が重なっただけで貴女は最善を尽くしていたと、慰めや誤魔化しではなく本心からそう思っていたし、話を聞いてもやはり彼女は最善の手をいつでも打とうと尽力していたと確信している。

 先代とピッコロの融合を即座に提案したのは誰だ? 彼女だ。

 神殿や聖堂を拠点として人類を匿う事を決めたのは? 彼女だ。

 クウラのせいで失敗に終わったがナメック星のドラゴンボールを使うことだって彼女が真っ先に思い付いた。新ナメック星の座標だって彼女が割り出した。

 精神と時の部屋をも使い、仲間達の実力を伸ばしもした。

 人造人間に速攻を仕掛けて破壊したのだってリゼットだし、ドクターライチーが呼び出したゴースト戦士を駆逐したのも彼女だった。

 打てる手は全て打っていたのだ。それでも今があり、ならばそれは彼女のせいなどでは断じてない。間違えてなどいない。

 だがリゼットは尚も首を振り、そして消え入りそうな声で言った。

 

 ――私は、きっとこの未来を変える事が出来た。出来た……はずなのに……。

 

 悲しむな。

 悲しむな、義母よ。

 私がここにいる。

 貴女の仲間達は貴女を置いて行ってしまったが、私は貴女を置いていかない。これからは私が側で貴女を支える。全ての敵を完璧な存在である私が蹴散らす。

 

 それは誓いだった。

 孫悟空を殺すという使命の代わりに自分で自分に与えた使命。

 生まれる理由。生きる意義。

 この完璧な力をどう使うか。何の為に戦い何を守るのか。

 しかし彼女は逝ってしまった。

 永遠の眠りに就き、もう二度と目を覚まさない。

 もう笑わない。動かない。約束を果たすための戦いすら出来ずに、セルの使命は終わりを告げた。

 残ったのは、『完璧』という余りにも空しい称号を自称する、何の役割もない強いだけの人造人間が一体のみ。

 その力も――もう、何の価値もない。守ると決めた者はもういないのだから。

 

 

 

 

「未来は――私が変える!!」

 

 セルの全身から放たれるオーラが力強さを増し、スパークが迸る。

 それだけに留まらず、黄金のオーラの上から白い炎が噴き出した。

 セルは見た目では分からないが、超サイヤ人化を発動している。

 サイヤ人ではないがサイヤ人の細胞を持つ彼は、悟空達同様に超サイヤ人への変身が可能なのだ。

 だがその上から更に、リゼットの技であるバーストリミットを重ね掛けした。

 

「私に残された全エネルギーを放出し! 太陽系をも葬る一撃で貴様を消し飛ばしてくれる!」

 

 雷が鳴り響く。

 大地が砕け、空が荒れる。

 惑星の終焉を思わせる光景。だがそれを前にブロリーは尚も笑う。

 手の中に気弾を生成し、大気が緑色に染まった。

 

「かめはめ波ァァァァ!!」

「イレイザーキャノン!」

 

 セルの放ったかめはめ波とブロリーの放ったイレイザーキャノンが中央で衝突。爆風で辺り一面全てを吹き飛ばしながら押し合う。

 だがやはりパワーはブロリーが上だ。セルのかめはめ波は除々に押されていく。

 このまま勝負ありか? そう思われた刹那にブロリーを囲むように悟空と悟飯、ピッコロ、トランクスの四人が降り立った。

 仙豆により復帰した彼等はここを唯一の勝機と見なし、セルへ全力で加勢する。

 

「孫悟空に、孫悟飯! それにピッコロとトランクスか!」

「誰かは知らねえが手を貸すぞ!」

 

 悟空はセルとの面識はない。

 寝ている間に遠視した光景でそういう奴がいるとは知っていたが会うのはこれが初めてだ。

 だが今はとりあえず味方という事は理解出来る。

 そして、セルが踏ん張ってくれている今しか勝機がない事も把握出来た。

 ならば話は後だ。ここで倒さなければもう、この悪魔を倒す機会は訪れない。

 

「波ァーーーッ!!」

 

 悟空のかめはめ波がブロリーを側面から襲った。

 青い光の奔流に呑まれながら、しかしブロリーは揺らがない。

 だがそこに、今度は悟飯が全力でかめはめ波を放つ!

 

「波ァァァァ!!」

 

 両側からの親子かめはめ波だ。

 そしてかめはめ波同士が衝突し合うその中央地点における威力は相互作用により通常よりも遥かに高い破壊力を有している。

 それでも尚微動だにしないブロリーへ、今度はトランクスとピッコロが追撃をかけた。

 

「フィニッシュバスター!」

「魔貫光殺砲!」

 

 計四発の気功波!

 その猛攻を前に、だが尚もブロリーは崩れない。

 イレイザーキャノンの威力を益々強め、セルのかめはめ波を押し返しにかかる。

 恐るべき化物だ、と悟空は心底思った。

 これだけの攻撃に晒されながらまだ平然としているなど、とても信じられない。

 

「ご、悟飯! 怒りを爆発させろ! お前の力はこんなもんじゃねえ!」

「で、でもお父さん! 僕はもう全力で……」

「いいや、まだお前は全ての力を出しきっちゃいねえ! 力を爆発させるんだ!」

 

 悟飯はまだ潜在能力を発揮していない。

 発揮したとてブロリーに届くものではないが、それでもこの戦いを傾ける一因にはなれるはずだ。

 だがそれを発揮出来ぬままに勝負の天秤はブロリーへと傾き、少しずつセルが押されていく。

 もしこのままセルが敗れてしまえばもう終わりだ。誰もブロリーには対抗出来ない。

 セルが健在の今しか勝機はないのだ。

 その決戦を遠くで見ながら、ベジータは拳を握り締めていた。

 

「下級戦士が戦っているのに……くっ、くぐぐ……!」

 

 ベジータが力み、彼の気によって周囲の瓦礫が浮かぶ。

 相手は勝ち目のない伝説の超サイヤ人だ。

 だがそんな相手に下級戦士やナメック星人すらが挑んでいる。

 なのに自分が何もしないなど、それは彼の自尊心が許さぬ事だった。

 一度は砕けたプライドが再構築され、心に炎が灯る。

 

「サイヤ人のォォォ! 王子はァァァ! この、俺だァァァ!!

っちゃああああああ!!」

 

 ベジータが超サイヤ人と化し、空高く飛翔した。

 

「俺がベジータだーッ!」

 

 そして金色の流星となり、一気に戦場へと飛来する。

 その雄姿はトランクスの目にもハッキリと映り、彼の顔を喜びで染めた。

 ベジータはブロリーの上へ陣取ると、両手を広げて気を一気に高める。

 

「サイヤ人の王子ベジータが相手だ!

くらええええええ!」

 

 そして放つ――気弾の連射!

 

「だだだだだだだだだだだだだだだだだだっ!!

だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだっ!!!」

 

 ベジータの気弾が次々とブロリーへ着弾し、爆発する。

 ダメージにはならぬが、注意を逸らすという意味ならばこれ以上のチョイスはないだろう。

 実際、自分の上から雨が降ってきたとしたら集中など出来ない。

 ダメージ云々ではない。単純に気が散る。

 だがその気の乱れこそが今は致命的だ。一瞬の隙も逃さずに悟空が叫ぶ。

 

「今だああ!」

 

 ここが勝機!

 そう踏んだ悟空は残された気の全てを全放出し、トランクスとピッコロも後に続いた。

 更に悟飯が目をカッと見開き、全身からスパークが迸り髪が逆立つ。

 それに合わせるようにセルが最後の力を振り絞ってイレイザーキャノンを押し返した。

 ベジータも気弾の連射を止め、必殺のビッグバン・アタックを叩き込む。

 セルと悟空、悟飯のかめはめ波、トランクスのフィニッシュバスター、ピッコロの魔貫光殺砲、そしてベジータのビッグバン・アタック。

 六条の輝きがブロリーを飲み込み、激突し合う。

 その中央地点における威力はもはや計り知れない。

 

「…………!!」

 

 ブロリーの顔が驚愕に歪み、紛れもない苦痛に染まる。

 そして――爆発。

 ぶつかり合った気功波が中央で天にも届く光の柱となり、その中にいたブロリーを蹂躙した。

 これは効いている。効かないはずがない。

 やがて爆発が終わり、悟空達は一斉に座りこんだ。

 

「や、やった……」

 

 信じ難い化物だった。本当にそれしか言えない。

 たった一人を倒すのにこちらは全員満身創痍。疲労も溜まりきっている。

 ベジータだけはまだ元気だが、それだけだ。

 だが、それでも勝つ事が出来た。

 皆の力を合わせ、今度こそ絶望の未来を回避出来たのだ。

 

「悟飯、最後のパワーは凄かったぞ」

「お、お父さん、僕……」

「言ったろ? お前が怒ればすげえパワーが出せるって」

 

 決め手となったのはやはり最後の悟飯の覚醒だろう。

 あれがなくてはブロリーを仕留め切る事は出来なかったはずだ。

 言い過ぎではない。ブロリーはそれだけの強敵だったのだ。

 唯一つ誤算があるとすれば、それは……。

 

 ――それは、まだブロリーという化物を低く見積もっていた事だけだろう。

 

「お前だけは簡単には死なさんぞ!」

「ふおぉあ!?」

 

 煙を裂いて絶望が姿を現す。

 彼は怒りの形相でベジータへと一直線に飛翔し、逃げる暇も与えずに丸太のような腕をベジータの顔へと衝突させた。

 そのままラリアットで前へと飛び、偶然いい位置にあった岩盤へと衝突、めり込ませた。

 そのあまりの光景に悟空達は声も発せない。誰もが目を見開き、身体を震わせて見ているだけだ。

 

「もう終わりか?」

 

 ブロリーはそんな悟空達に見向きもせずにベジータを岩盤へと押し付ける。

 一押しごとに頭蓋が軋み、意識が途切れる。

 彼の圧倒的暴力に晒されたベジータに成す術などない。

 金髪は黒髪へと戻り、力が抜けた身体は岩盤を滑り落ちていくだけだ。

 そんなベジータを見届け、ブロリーは笑う。

 

「終わったな。所詮クズはクズなのだ……」

 

 倒れたベジータから完全に興味を失い、ブロリーは悟空へと視線を移す。

 そしてその顔を壮絶な笑みで歪め、巨体を揺らしながら突進した。

 悟空を庇うようにトランクスが前に出て気弾を放つが全く意味がない。

 ブロリーは邪魔な石でも除けるかのように腕を振り上げる。

 

「ドアアッ!」

 

 アッパーカットで跳ね上げられ、この一撃だけでトランクスの意識も断ち切られた。

 そこに超サイヤ人2へ覚醒した悟飯が殴りかかる。

 流石に今の彼は別格だ。ブロリーとも少しくらいは殴り合いが成立する。

 だがすぐに力の差が現れ、殴り飛ばされて壁にめり込んでしまった。

 更に髪が黒髪に戻り、気を失ってしまう。

 

「ごはーーーんッ!」

 

 ピッコロが慌てたように悟飯を助けに飛ぶ。

 だがこれも遅い。ブロリーが振り向きざまにラリアットを叩き込み、ピッコロも何も出来ずに吹き飛ばされてしまった。

 

「おのれええええ!」

 

 セルが横から突撃するも、彼の体力も既に限界だ。

 放つ拳打には先程までの力がなく、ブロリーに全く効いていない。

 それを見てブロリーは薄ら笑いを浮かべ、セルを軽々と殴り飛ばした。

 地面を二転三転と転がり、かろうじて立ち上がったセルは怒りの形相を浮かべる。

 そして全身に力を入れ、筋肉を誇大化させた。

 それは、パワーだけを増す愚かな変身であった。

 こんなにも膨れ上がった筋肉ではスピードが殺されてしまい、満足に力を活かす事すら出来ない。

 無論セルはその程度も分からぬ馬鹿ではない。

 だが……今の彼は逆上していた。

 冷静さを失い、そんな事すら分からなくなってしまったのだ。

 

「ハァー! ハァー! 貴様なんかに……貴様なんかにこの私が負けるはずがないんだあああ!」

 

 巨漢と化したセルがブロリーへ殴りかかる。

 だが遅い。悲しいほどにスローだ。

 ブロリーは軽々とセルの攻撃を避け、お返しにボディブローを一撃叩き込んだ。

 それだけでセルは膝をつき、口から胃液を逆流させる。

 ……そしてそのまま、地面に倒れて動かなくなった。

 

 あまりにもあまりな逆転劇。何も出来ずに倒れる仲間達。

 そんな絶望的な状況を作り出した悪魔は悟空を指差し、告げる。

 

「カカロットォォ……今楽にしてやる」

 

 宣言と共に放たれた右ストレート。

 悟空はそれを避ける事すら出来ず、派手に地面を転がった。




【戦闘力】
・孫悟飯:3億
超サイヤ人:150億
超サイヤ人2:300億

・パーフェクトセル:400億
バーストリミット:800億

ブロリー:14億5000万→15億
伝説の超サイヤ人:1500億
ダメージによる戦力低下:950億

トランクス「セルの奴……あんなパワーだけに頼った変身をするなんて……」

こいつの細胞の影響

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