ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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リゼット「まだ休暇下りないんですかヤダー!」


第六十二話 サイヤ人絶滅計画①

 ブロリーを倒したリゼット達は無事に地球へと帰還し、それぞれの生活へと戻って行った。

 まだ最後の敵は残っているが最大の敵であったブロリーはもういない。

 完全に消し飛ばしたので、後になって登場する事もないだろう。

 ベジータ達は次の戦いに備えて精神と時の部屋に入ったが、残念ながら以前ほどの大幅なパワーアップは見込めなかった。

 悟空曰く『これ以上は辛いだけで修行じゃない』らしい。

 リゼットもまた、後の事を考えて精神と時の部屋の使用日数は温存しておく事にした。

 残りは半年分。きっと必要になる時がいつか来るだろう。

 それに今回の戦いで不本意ではあったが戦闘力が増えたので、これ以上の無理な強化が必要なかったというのも大きかった。

 今ならば短時間ではあるがバーストリミットの100倍だっていけるし、実際ブロリーとの戦いではそれをやった。

 とはいえやはり負担は大きい。普段はあくまで50倍までに留めておいて、100倍はいざという時の切り札にしておいた方がよさそうだ。

 天界の端から地上を一望し、リゼットは後ろに立つ男へと声をかける。

 

「今回は貴方に助けられましたね」

「何、気にするな。貴女の危機には必ず駆け付けると以前も言っただろう」

 

 後ろに立つセルは腕組みをしたまま紳士的な(と自分で思っていそうな)笑みを浮かべる。

 実際、顔立ちはイケメンの類なので様にはなっていた。

 メタルクウラの時といい今回といい、彼には助けられている。

 最初は警戒していたが命懸けで助けてくれた辺り、味方というのは本当なのかもしれない。

 相変わらず心は読めないが、だからといっていつまでも信じないのはただ臆病なだけだ。

 

「それで、残るはあの暗黒惑星だけだが……どうするつもりだ?」

 

 セルが上を向き、空の果て……その先の遙か彼方にある暗黒惑星を見る。

 暗黒惑星……それだけなら別にどうという事はない。本来地球とは全く関わりのない遠い星だ。

 だが現在、そこから射出された機械が地球にて猛威を振るっており、非常に迷惑しているのである。

 名を『デストロンガス発生装置』といい、生物の細胞を破壊してしまうガスを地球中に散布する性質の悪いマシンだ。

 リゼットならばこんなものを見逃すはずもないのだが、タイミングが悪すぎた。

 どうも、ブロリーを倒しに新惑星ベジータに行っている間に仕掛けていたらしい。それが今になって起動を始めたのだ。

 そしてそんな物を地球に撃ち出した者の名はドクター・ライチー。

 かつてサイヤ人に滅ぼされたツフル人の科学者であり、サイヤ人を根絶やしする為に地球に攻撃を仕掛けようとしている。

 サイヤ人への復讐。別にそれはいい。

 こう言っては何だがサイヤ人は実際恨まれて当たり前の事をしてきたし、地球だって一度は侵略の対象になった。

 壊した星は数知れず、殺した命の数を言えば億ではとても利かない。

 こちらの世界では未然に防いだが、ナッパなど『挨拶』と称して街を消し飛ばす行為にも及んでいる。

 だがそこに地球や、いくらサイヤ人とはいえ全く無関係の悟空や悟飯、トランクスを巻き込むのは完全に間違いだ。

 やりたければベジータとターレス、ナッパだけを相手に戦っていろという感じである。

 それでも地球にあんなものを仕掛けようとするという事は、結局ライチーも彼が憎むサイヤ人と本質的には何も違わない。

 己の目的の為ならば他の無関係な惑星を踏み躙ってもよしと考える。そういう輩だ。

 ならば、こちらもまた遠慮はしない。

 

「決まっています」

 

 リゼットは一言呟き、己の隣に亜空間を開いて気弾を連射した。

 その向かう先は宇宙を飛んでいる最中のライチーの部下達が乗る宇宙船だ。

 名前はボンターンやらジークやら色々いるようだが、別にどうでもいい。

 それを地球に来るよりも早く先制攻撃で破壊し、宇宙の塵へと変えた。

 更に連射。

 今度は暗黒惑星へと繋げ、ライチーの拠点である宮殿の真上から白い流星を降り注がせる。

 そうして宮殿を完全に破壊し尽し、攻撃を終えた。

 まだライチーとハッチヒャックは残っているだろうが、余計な雑魚は纏めて殲滅出来たはずだ。

 

「地球を巻き込もうとしたという事は私への宣戦布告も同然。こちらから打って出ます。

ポポ、貴方は悟空君達に連絡を。地球のデストロンガス発生装置を破壊するよう伝えて下さい」

「わかりました、神様」

 

 地球のデストロンガス発生装置は捨て置けないが、これは悟空達に任せておけば必ず破壊してくれるだろう。

 それよりも黒幕を叩かなければこの事件は終わらない。

 一人で出陣しようとするリゼットだったが、その後ろにセルが付き添う。

 

「付き合おう。戦力は多い方がいいだろう」

「……助かります」

 

 リゼットはゲートを展開し、中に飛び込む。

 セルもその後に続き、ライチーのいる暗黒惑星へと転移した。

 宮殿はもうそこにない。あるのは残骸だけだ。

 だがライチー自身は健在だ。彼は怒りを込めた形相で宙に浮き、リゼットと対峙する。

 

「おのれ地球の神……何故儂の復讐を邪魔する」

「いや何故って、それは邪魔しますよ。地球巻き込んだんですから」

「サイヤ人への復讐こそ我が悲願だった……その為ならば地球がどうなろうと知った事か。

だが貴様のせいで我が計画も台無しだ!」

 

 言っている事が支離滅裂である。

 ライチーが胡坐をかいたまま浮遊し、リゼットへと突撃した。

 だが所詮は戦闘を行った事もない科学者だ。戦い方というものをまるで分かっていない。

 それを言うならばそもそも戦えるはずすらないのだが、ここにいるライチーはいわば怨念の塊だ。

 怨念増加装置『ハッチヒャック』。その力はかつてサイヤ人に殺されたツフル人達の怨念を原動力とし、更に増幅された怨念は実体すらも伴ってゴースト戦士となる。

 このライチーもまた、そうして創り出されたゴースト戦士の一体に過ぎない。

 しかしいくら怨念で戦闘力が高まろうと、やはり科学者だ。戦闘の経験などあるはずもなく、リゼットは軽やかな動作で突撃を避ける。

 そして反撃に転じるも、ライチーの周囲を覆うように展開されたバリアがリゼットを阻んだ。

 だがそれはリゼットも同じ事。彼女の周囲を白い光の球が覆い、バリア同士の衝突となる。

 そうなれば後は単純に出力が大きい方が勝るだけであり、ライチーはバリアごと弾かれて地面へと墜落した。

 

「愚か者め。怨念で彼女に勝てるものか。

義母(リゼット)よ。神の気で以て奴等を消し飛ばしてしまうといい!」

「……え? 何ですかそれ。私そんな力ないですよ?」

「いいや、ある。何故なら貴女には宇宙から集めた信仰がある。

貴女自身の意思はともかくとして、貴女は正義の女神として信仰されている。

そこのライチーが怨念で力を得たのと同様に貴女は信仰で力を得ているはずだ。

ならば信仰を受けた貴女の気には悪を払う力がある! 未来の貴女はその力でゴースト戦士を壊滅させたのだ!」

 

 正義の女神とか、何その恥ずかしい呼称。

 そんな事を考えながらリゼットはライチーを注視する。

 そうすると……なるほど、確かに視える。彼を支えている怨念の塊が。

 そこに向けて気弾を放つ。

 すると、気弾はライチーが咄嗟に張ったバリアすら突き抜けて彼の胸へと吸い込まれた。

 変化は……ない。

 ダメージすらも与えておらず、ライチーは馬鹿にしたように薄ら笑いを浮かべる。

 だがその直後、彼の全身を突き破るように白い光が溢れ出した。

 

「なっ、なんだ、これはああ!?」

「あの世には『スピリッツ・ロンダリング装置』という悪の気を浄化する装置があるらしい。

神として高みへと至りつつある彼女の気はそれと同様の事を起こせるのだ」

 

 撃った本人のはずなのに完全に会話に置いて行かれてしまったリゼットはまるで他人事のようにへー、だのえー、だの呟く。

 悪の気を浄化出来るなんて芸当を身に付けた覚えもなければ修行した記憶すらないのだが、何時の間にか可能になっていたらしい。

 人の念って凄い、と思いながらセルの話に耳を傾ける。

 

「そして先日、神精樹の実を食す事で彼女は限りなく神として完成に近付いた!

最早薄汚い怨念などが勝てる存在ではない!」

「き、きえ、る……わたしの、サイヤ人への、怨念、が……。

い、いやだ……サイヤ人への憎しみを……失うなど、いや、だ……!」

 

 怨念と憎悪だけでここまで存在し続けてきたライチーから怨念と憎悪を奪い取り浄化する。

 これほどに彼を打ちのめす倒し方が他にあるだろうか。

 ライチーは絶望に顔を歪めながら怨嗟の声を吐くが、その怨嗟の元となる憎悪が消えていってしまう。

 恨む事すら出来ない。憎む事すら出来ない。

 ただ無理矢理に与えられた安らかな眠りに就く事しか認められない。

 

「あ、ああ……あ……」

 

 死して尚長年に渡りサイヤ人への恨みを蓄積させてきた科学者の最期は、余りに呆気ないものであった。

 地球に手を出そうとした彼は恨み募るサイヤ人と戦う事すら出来ずに、全く無関係の地球の女神によって滅せられてしまったのだ。

 原動力であった怨念を浄化されてしまった今、彼をこの世に縛り付ける物は何もない。

 怨念の天才科学者はあまりにも容易く、この世から消滅した。

 リゼットは自分の掌を見詰め、不思議そうに瞬きをする。

 不思議な気分だ。

 最初はただ立場を譲り受けただけの張りぼての神様だったはずなのに、どんどん能力がそれに準じてしまっている。

 まるで運命か何かが自分をそう導いているような……。

 いや、そんなはずはあるまい。本来神になるべきはデンデだ。ならば運命などというものが導くのは彼でなくてはならない。

 

「どうした?」

「……いえ、何でもありません。ハッチヒャックを破壊しましょう」

 

 怨念増幅装置ハッチヒャック。これを破壊しない限りまた怨念が集まってしまう。

 そうなれば今度はライチー以上にサイヤ人に恨みを持つ何者かが復活してしまう可能性もあるのだ。

 リゼットは手を翳し、怨念増幅装置へと気弾を放つ。

 だが横から割り込んで来た気弾がリゼットの気弾を逸らしてしまった。

 セルか? いや、彼ではない。

 今の気弾を撃ってきたのは彼とは逆方向にいる、そして物影に隠れている何者かだ。

 だがその正体を探っている暇はない。

 ハッチヒャックに黒い気が集まり、一気に変化しようとしているのだから。

 

「この現象は……」

 

 この急速な気の高まりには覚えがある。

 ブロリーとの戦いでもちょっかいをかけてくれた『奴等』の仕業に違いあるまい。

 という事は、物影に隠れているのもあの二人と見て間違いないだろう。

 どこかで仕掛けてくるとは思っていたが、遂に現われたようだ。

 

「ふふふ、久しぶりね。随分力を上げたじゃない?

前とは比べ物にならないエネルギーを感じるわ」

「トワ……それにミラ」

 

 リゼットの後ろに現われたのはいつぞやの魔族二人組、トワとミラであった。

 更に正面のハッチヒャックもとうとう実体化し、赤い鎧を纏った戦士のような姿へと変貌する。

 前にはハッチヒャック。後ろにはトワとミラ。

 一転してリゼットとセルは追い込まれてしまい、互いの背を護るように構える。

 

「何をしに来たのですか?」

「決まってるじゃない。そろそろ邪魔な貴女を消そうと思ってね。

今なら充分なエネルギーも得られそうだし、もう生かしておく理由はないわ」

 

 以前トワは、大したエネルギーにもならないと言ってリゼットを見逃した。

 それがここで現われたという事は、もう収穫時と判断されたのだろう。

 ミラが空を蹴って加速し、ハッチヒャックが走り出す。

 前後両方からの挟み撃ちだ。

 リゼットは咄嗟にミラを迎え撃ち、セルがハッチヒャックを相手取る。

 繰り出されるミラの拳は以前よりも遥かに速く鋭い。やはり以前は加減されていたようだ。

 だが前と違うのはこちらも同じ。

 リゼットはミラの拳を的確に流し、互角の攻防を繰り広げる。

 しかしハッチヒャックがセルを殴り飛ばし、背後から強襲してきた事で均衡が崩れた。

 いかにリゼットでも二人の格上を同時に相手にして捌き続けるのは困難だ。

 何とか避け、逸らし、流し続けるも完全に防戦一方になってしまう。

 

「くっ……はァ!」

 

 左右に手を広げて気合砲!

 ミラとハッチヒャックを吹き飛ばし、まずはミラへと狙いを集中させた。

 まずは正面からの掌打! ミラは咄嗟に顔を防御するがその瞬間に軌道を変えて腹を打つ。

 更に腹の肉を指で挟んで強引に投げる。

 投げる先はハッチヒャックだ。ミラを武器として投げつける事でハッチヒャックを阻害し、そこに気弾を放つ。

 

「小賢しい真似を!」

 

 煙を裂いてハッチヒャックとミラが飛び出し、だが上から降下してきたセルがミラを蹴り落とした。

 リゼットもまたハッチヒャックの腕を獲り、関節の逆方向へと投げる。

 だがどうやら関節技に意味はないらしい。ハッチヒャックは痛みなど感じていないかのように空中で回転して静止し、腕をクロスして気を高める。

 15秒かけて怨念をチャージして発射するリベンジャーカノンだ。

 だが1秒が体感時間で数十秒にも匹敵するこの世界の戦いにおいて15秒はあまりに長い。

 リゼットにとってそれは攻撃し放題の欠陥技でしかなかった。

 そしてハッチヒャックは攻撃する瞬間以外は防御が尋常ではなく、まともにダメージを通す唯一の機会でもある。

 故に彼を撃破する方法はこのリベンジャーカノンにカウンターを合わせる事であり、それはリゼットの得意分野だ。普段ならば容易に合わせる事が出来る。

 だがそれも、ミラがいるせいで容易ではなくなってしまった。

 再び飛びかかってくるミラを相手取りながら、リゼットは自分達が確実に追い詰められている事を痛感していた。




【サイヤ人絶滅計画】
FC用ゲームソフト。劇場版ではない。
OVAのサイヤ人絶滅計画、プレイディアの真サイヤ人絶滅計画、レイジングブラスト2収録のサイヤ人絶滅計画とバリエーションがあるが、全体的なストーリーはほぼ同じ。
このSSではOVA版に合わせる事にする。
悟空が生存しつつ悟飯が超サイヤ人になっており、トランクスが現代に残留している上にブロリー戦後である事が仄めかされている。
更にクウラ、スラッグ、ターレスを悟空が倒した世界線である事が明かされており、矛盾に満ちた世界線。
クウラ戦までは32話後書きの流れで強引に全劇場版を網羅しつつ、メタルクウラの世界を通らずにセルを悟空がうっかり倒してしまい、その後にブロリーを倒した世界だろうか。
もしかしたら、セルに仙豆をあげずに全員でタコ殴りにして倒したのかもしれない。
劇場版世界線の悟空は原作悟空のように一対一に拘らない傾向にある。
トランクスは未来に帰る為のタイムマシンのエネルギーを充電している最中だったのだろう。

【ハッチヒャック】
Dr.ライチーが発明した怨念増幅装置。ライチーを倒すと人型になって襲い掛かってくる。
サイヤ人に恨みを持つ怨念をゴースト戦士として蘇生召喚する能力を有し、ある意味ブロリーよりも厄介。
初期のOVAでは寡黙で機械的だったが、リメイク版では流暢に話すようになって不気味さが薄れてしまった。
初期OVAでは何を間違えたのかナメック星人であるピッコロさんを執拗に攻撃し、リメイク版では「サイヤ人は皆殺しだ!」と叫びながら、やはりナメック星人のピッコロさんを執拗に攻撃した。
悟空に「パワーはブロリー以上かもしれない」と言われたが、悟空でもそこそこ戦えたのでパワー以外はそうでもないらしい。
とはいえファイナルフラッシュを受けても無傷なので、完全体セルよりは強いと思われる。
必殺技のリベンジャーカノンは強いが、撃つのに15秒間かかるのでその隙を突かれて負けている。
もうそれ撃つのやめて普通に攻撃だけしてろ。
プレイディア版では巨大化したり分身したりしていたが、何故かOVAではやらない。

【ドクターライチー】
サイヤ人絶滅計画の黒幕。
地球にデストロンガス発生装置を送り込み、ゴースト戦士を生み出した張本人。
昔にサイヤ人によって殺されたツフル人の科学者であり、自らもゴースト戦士である。
嫌いなものはサイヤ人とダークドレアム。

【戦闘力】
・リゼット:5億5000万
バーストリミット50倍:275億

・パーフェクトセル:400億

・ドクターライチー:100億

・ハッチヒャック:300億
凶悪化:500億
※パワーはブロリー級

ミラ:?????

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