ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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_人人人人人_
> 復活のF <
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第六十四話 サイヤ人絶滅計画③~復活の『F』(2回目)~

 地球に残り、デストロンガス発生装置の処理に当たっていた悟空達はリゼットの当初の予想と異なり熾烈な苦戦を強いられていた。

 いや、苦戦どころの話ではない。デストロンガス発生装置を守るゴースト戦士のパワーに押され、もはや敗北間近という有様だ。

 その原因はゴースト戦士の面子の変化にあった。

 

「フフフ……あの時の屈辱をこんなにも早く晴らす機会に恵まれるとはな」

 

 緑色の肌の巨漢――ボージャックが勝ち誇ったように笑う。

 本来ならばゴースト戦士はフリーザ、クウラ、ターレス、スラッグという面子で構成されるはずだった。

 少なくともそれがリゼットの知る知識の内容だ。

 だがこの世界においてそれは成立しない。何故ならターレスは生きて味方に加わり、スラッグはピッコロと同化しているのだから現われるはずがないのだ。

 その代わりとばかりに出てきたのがボージャックを始めとするヘラー一族とパラガスであり、パラガスはどうでもいいが、ヘラー一族が戦士達を追い詰めた。

 本来ならばボージャックはまだこの時期に現われる敵ではない。

 しかしこの世界は違う。ブロリーが銀河で暴れまわった事が原因でボージャックは本来よりも早く出現し、そしてつい先日に死んでいる。

 故に、彼らがゴースト戦士として現れるのは必然の事であった。

 

「パラガス……貴様にはどうやらサイヤ人の誇りがないらしいな」

「何とでも言え。俺達親子がどれだけ貴様の父であるベジータ王を憎んでいたかお前には分かるまい。

お前達親子に復讐する事だけを思って生きてきたのだ。

さあゴースト戦士達よ、今のお前達のパワーでサイヤ人をこの世から消し去ってしまえぇ!」

 

 サイヤ人であってもサイヤ人への憎悪を滾らせている者がいる。

 それがパラガスであり、彼はサイヤ人でありながらサイヤ人をこの世から消し去ってしまう事を望んでいた。

 パラガスの号令に渋々といった様子でザンギャやブージンが応じ、二人がかりでベジータを追いつめる。

 一人が足を止め、もう一人が超能力の糸で拘束する。

 このコンビネーションは今のベジータでもそう簡単に打ち破れるものではなく、ブージンによって拘束された彼をザンギャがサンドバッグのように右に左にと殴る。

 

「サイヤ人の面汚しめ!」

「どぉぉら!?」

 

 ターレスの蹴りでパラガスが大股を広げて回転しながら吹き飛び、ビルに衝突して消え去った。

 だが次の瞬間には黒い煙となり、元通りの姿に戻ってしまう。

 これが厄介だ。ゴースト戦士はデストロンガスの供給を止めぬ限り何度でも復活する。

 ただでさえ強敵であるボージャック一味が不死身となれば、その厄介さは計り知れない。

 ならばデストロンガス発生装置を壊せば話は早いのだが、これが驚くほど頑丈でベジータの気弾でも傷一つ付かない。

 最早この戦況は絶望的と呼んでも過言ではなかった。

 

「やべえなこりゃあ……さっさと装置ぶっ壊して神さんの援護に行く予定だったが、それどころじゃねえ。

このままじゃ俺達の方が死んじまうぜ」

「へへっ……オラ、こいつらが来た時は寝てたから戦えるのは嬉しいんだけどよ、流石に何度倒しても元通りになっちまうのは参ったな」

 

 背中合わせになり、互いの背を守りながらターレスと悟空が愚痴を零す。

 そして何の合図もなく並んで突撃。

 二人でボージャックとゴクアへと飛びかかり、互いの隙を埋める見事な連携でボージャックとゴクアを叩きのめした。

 だが無意味だ。倒されたそばから敵は蘇り、全く終わりが見えない。

 

 敗色濃厚、という他ないだろう。

 悟空やターレスだけでなく、トランクスやナッパも既に大きいダメージを受けてしまっている。

 彼等の中で最強のはずの悟飯も疲労を隠せず、ベジータはダメージが深くて立ち上がれない。

 あるいはこれならば、まだハッチヒャックとの戦いの方が楽だったかもしれない。

 

「ホーッホッホ! サイヤ人の猿は皆殺しだ!」

 

 フリーザがトランクスと攻防を繰り広げながら笑う。

 本来の実力ならば相手になるはずもないのだが、ゴースト戦士になった事で戦力が増加しているのか今のトランクス相手でもそこそこの戦いが出来ていた。

 しかし強化された者がいる一方で、復活さえしなかった者もいる。

 それはクウラだ。彼も本来ならばこの中に参加しているはずなのだが、どこにも姿が見えない。

 それもそのはずで、クウラは別にサイヤ人など憎んではいない。

 彼が憎悪を向けているのは地球の神だ。

 故に彼は、この場に復活する事は出来なかった。

 

「くそっ! こいつら次から次へと湧いてきやがるぜ!」

 

 ピッコロもまた、ビドーを相手に劣勢に追い込まれていた。

 ビドーなどに今更後れを取るほど弱くはない。

 だが向こうは疲れないのに対し、こちらは疲労が溜まる一方だ。

 しかも敵はピッコロが知るような相手ばかりではない。

 遥か昔にサイヤ人に滅亡させられたカナッサ星人が……地球に来る途中でベジータとナッパが滅ぼしたアーリア星人が、その他多くの、サイヤ人によって殺され、サイヤ人を恨む者達がゴースト戦士として蘇っていたのだ。

 デストロンガスは既に地球に充満し、人々は絶望の声をあげながら倒れていく。

 植物は枯れ、都市機能は完全に麻痺し、もはや地球滅亡は秒読みだ。

 誰もが悲観に暮れた目で黒く染まった空を見上げ、諦めが心を支配した。

 

 故にその奇跡は鮮烈に人の心を魅了する。

 

 まず空を貫いて地上に降り注いだのは白い流星群。

 それが地球の至る箇所に仕掛けられたデストロンガス発生装置を守護者ごと破壊し、悟空達を追い詰めていたゴースト戦士を一撃で消し去った。

 フリーザやパラガスは勿論としてボージャックですら例外ではない。

 いかに強かろうと怨念で構成された紛い物の身体では今の彼女には太刀打ち出来ない。

 強さ云々ではなく、戦いそのものが成立しないのだ。

 ゴースト戦士達はこの世への未練を口々に叫びながら消失し、余りに突然の事に悟空達は呆然とし空を見上げる。

 否、彼等だけではない。地球中の人々が空を仰ぎ見て、そして目にした。

 暗雲を晴らして空より舞い降りる白の神の姿を。

 

『…………』

 

 リゼットが手を薙ぐ。

 すると元気玉の輝きにも似た光が地上を満たした。

 枯れた植物を蘇らせ、倒れた者を救い、絶望を希望へと塗り変える。

 これだけならばまさに救済だっただろう。

 人々の思い描いた神の救いそのものだった。

 地球の人間達は彼女を敬い、拝み、頭を垂れる。

 だがリゼットは手を掲げ、あろう事か第二波を――守るべき地球の人間へと向けて発射した。

 

「なっ……!?」

 

 悟飯が絶句し、信じられないという顔で空のリゼットを凝視する。

 放たれた閃光は地上のあらゆる悪人――殺人者や強盗犯、盗人を貫いた。

 殺したのではない。彼等の中の悪の気を完全浄化し、本人の意思を無視して無理矢理善人へと変えたのだ。

 立ち上がった元悪党達はまるで人が変わったように己の行いを悔い改め、そして気味が悪いくらいに目をキラキラと輝かせて平和を謳い始めた。

 異なる世界の異なる未来の話となるが、魔界の王ダーブラが天国へ送られる事によって過剰な更生をし、まるで人が変わったようになってしまうという出来事があった。

 今の現象はまさにそれと同じ。

 悪の気を僅かすらも残さず根絶してしまう事で、完全に人を変えてしまった。

 だがそれはもう、前のその人物ではない。とても同一人物と言えるものではなく、実質上殺してしまったも同然の行いだ。

 それは余りにも彼女らしからぬ行いだった。

 普段のリゼットならば決して行わない、押し付けの奇跡であった。

 我慢ならなくなった悟飯は全力で空を飛び、リゼットの前へと躍り出る。

 

「止めて下さい神様! どうしちゃったんですか!?

こんな……地球の人達を攻撃するなんて!」

『…………。

……サイヤ人……悪しき存在……』

「――え?」

 

 リゼットは感情をまるで感じさせない瞳で悟飯を見やり、感情の抜け落ちたような声で呟く。

 そして彼に手を翳すと気合砲を放ち、悟飯を吹き飛ばした。

 そのままいけば地球の成層圏を突き抜けて宇宙まで飛んでいっただろう衝撃。

 だが悟空が割り込んで悟飯を受け止める事で、かろうじて大事にはならずに済んだ。

 しかしその威力はどうだ。

 超サイヤ人2だったはずの悟飯が一撃で気絶し、黒髪に戻ってしまっている。

 

「お、おい! 神様、何すんだよ!

悟飯を殺す気か!?」

『…………』

「問答無用か!?」

 

 リゼットが再び気合砲を放ち、悟空が咄嗟に避ける。

 もはや確認するまでもなく解る。今のリゼットは明らかにおかしい。正気ではない。

 彼女の異常を察したピッコロやトランクスも駆け付けるが、やはりリゼットの彼等を見る眼は虫か何かを見るような無感動なものだ。

 断じて、仲間や守るべき対象へ向ける視線ではない。

 

「おい、孫! 神の奴は一体どうしたんだ!?」

「わ、わからねえ! だが普通じゃねえ事は確かだ!

しかも……普段とは比べ物になんねえほど強くなっている!」

『……ピッコロ大魔王……排除すべき……悪……』

 

 リゼットがピッコロを悪と断定し、光の剣を放つ。

 間一髪で避けるも、込められた気が普段の比ではない。

 悟空達ではもうリゼットの気を感知する事は出来ないが、今の彼女がかつてない程に強い事は本能で分かる。

 戸惑っている悟空達を余所にベジータだけは動揺せずに哂い、気を高めた。

 

「へっ! 何のつもりかは知らんがやるなら相手になってやる! ぶっ殺してやるぜ!」

「待って下さい、父さん!」

「消えろ! ファイナルフラーッシュ!!」

 

 ベジータが遠慮なく全力の気功波を放ち、リゼットを攻撃した。

 来るならばそれは敵だ。遠慮する理由がない。

 その判断は極めて正しいものであり、正当防衛という点から見ても彼を非難するのは筋違いだ。

 しかし戦力差の把握という意味では完全な誤りであり、バリアを纏ったまま煙の中から出てきたリゼットはベジータに無動作から発動する気合砲を発射して簡単に彼を吹き飛ばした。

 空から地面へと叩き落とされたベジータはたったの一撃で意識を失い、黒髪へと戻る。

 

「ば、馬鹿な。悟飯に続いてベジータまでもが一撃で……」

「つ、強過ぎる……一体リゼットさんに何が……」

 

 ピッコロが余りのレベルの違いに愕然とし、トランクスは強さの正体すらも掴めずに震える。

 無論それを今のリゼットに聞いても答えは返って来ないだろう。

 ならばその矛先が向くのは当然リゼットの後ろに佇む人造人間セルであった。

 

「セル、答えろ! リゼットさんに一体何をしたんだ!?」

「ふふふ、私如きが何をするなどと、そんなおこがましい事を。

究極の存在を前に完璧など何の意味も持たん。私はただ彼女の背中を押しただけだ」

「貴様……!」

「そう怒るな。これから始まる事は貴様にとっても悪い事ではない」

 

 怒るトランクスを前に、セルはあくまで冷静なまま答える。

 その彼の前ではリゼットを中心に黒い気が集い、彼女を取り巻いていた。

 この気に悟空は見覚えがあった。

 かつてフリーザと戦った時、突然フリーザが最終形態になった時に見せたあの黒い気だ。

 リゼットが正気だったならば、すぐにミラやトワが行っているのと同じ凶悪化による洗脳だと分かっただろう。

 

「セル! 貴様、リゼットさんをどうするつもりだ!」

「真なる歴史の改変を始めるのだ」

「歴史の改変だと!?」

「そうだ。時の巻物を改変し、我等の時間を修正する。

あの最悪の未来を……あの悲劇の全てを無かった事へと変える。

『彼女』が苦しまず……嘆かず、戦わず……そんな世界を、私が築いてみせる。私が変えてみせる。

その為には彼女の絶対なる力が必要なのだ。

そう……時の界王神の介入すらも跳ね除けるほどの、全てを超えた神の力が!」

 

 トランクスにはセルの言っている事が全く理解出来なかった。

 時の巻物だの、時の界王神だの、全く聞き覚えのないものだ。

 だが時間の改変など出来るはずがない。たとえ過去を変えてもそれは新しい未来が出来るだけで、既に存在する未来は何一つ変わらないのだ。

 

「セル、俺達の未来は何も変わらない! 過去を変えても新しい平行世界が誕生するだけなんだ!」

「だろうな。タイムマシンによる過去への介入ではそうなるだろう。ブルマは天才だがやはり人間だ。

その限界を超える事だけは出来なかった。

だがなトランクス……未来を本当の意味で変える方法は存在する。

そしてそれこそが、時の巻物の改変なのだ。

『奴』は私にそう教えてくれた」

 

 セルは壮絶に笑い、そしてリゼットを見る。

 条件は全てここに整った。

 神をも超える神域の新神。凶悪化とコントロール装置による二重の洗脳。

 そして『奴』の時間を越える力。

 これを揃えて過去を改変する事で、未来も変わる。

 トランクスが過去に現われない時間軸は全てが絶望の未来へと到達する。

 だがその起点へと彼女を連れて行けば時間軸は本当の意味で変わる。絶望の未来が救われる。

 そうすれば、真の意味であらゆる未来が救済されるのだ。

 当然邪魔は入るだろう。

 時間を司る時の界王神。彼女の配下であるタイムパトローラーが必ずどこかで顔を出すだろうし、時の界王神自らが出現するかもしれない。

 だがもう恐れる必要はない。たとえ時の界王神が来ようとも、もう今のリゼットは止められない。

 

『…………』

 

 だがセルは見誤った。

 否、セルだけではない。彼の『協力者』もまた見誤ったのだ。今のリゼットの力を。

 リゼットは無表情でセルを一瞥し、そして軽く気を解放する。

 それだけで彼女を取り巻いていた黒い気は霧散し、額の制御リングが崩壊した。

 後に残るのは相も変わらず輝き続ける女神だけだ。

 

「なっ……!?」

『……悪しき、気……』

 

 リゼットが手を翳し、セルへと向ける。

 セルは咄嗟に避けようとするが間に合うはずもない。

 放たれた極光がセルの半身を消し飛ばし、無慈悲に彼の計画ごと打ち砕く。

 半分になってしまったセルは驚愕に顔を染め上げながら怨嗟の叫び声をあげた。

 

「馬鹿な……話が違う……!?

私を……私を謀ったのか!? 『ドミグラ』ァァァァ!!」

 

 何者かの名を叫びながら、セルは吹き飛んで行く。

 彼女を制御する事など誰にも出来ない。

 彼女を止める事も誰にも出来ない。

 新たなる神は今ここに目覚め、活動を開始した。

 

 故に――押し付けの『希望』はもう止まらない。




ドミグラ「いや、その……私にとっても予想外だったというか……なんかごめん」←自分ならビルスも操れると本気で思っていた人
※別に騙してたわけではない模様。

クウラ「あの女に復讐する機会が……何? いない?
……なら俺の出る幕ではないな」
・クウラさん、やる気が出ずにまさかの帰宅。

【ドミグラ】
ドラゴンボールゼノバースのラスボス。
魔神を自称しており、超サイヤ人3の悟空を圧倒するほどに強い。
トワミラと同じく時間を股にかけて暗躍する男だが、トワの仲間ではない。
7500万年前にクロノアによって時の狭間に封印された。
ちなみにドミグラが時の界王神になってしまった歴史では意外にも真面目に職務に取り組んでおり、野心はさておき時の界王神になりたい熱意は本物だったらしい。

【戦闘力】
※精神と時の部屋2回目使用により、一部上昇。

・孫悟空:3億2000万
超サイヤ人:160億

・孫悟飯:3億
超サイヤ人:150億
超サイヤ人2:300億

・ピッコロ
基本戦闘力:3億→4億5000万
界王拳(最大20倍):90億

・ターレス
基本戦闘力:1億→1億7000万
超サイヤ人:85億

・ベジータ
基本戦闘力:9800万→1億6000万
超サイヤ人:80億

・トランクス:9500万→1億5000万
超サイヤ人:75億

・ナッパ
基本戦闘力:9400万→1億3000万
黄金のヒゲ:65億

・天津飯:540万→3600万→7200万

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