ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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準最強タグ「さあて、仕事を始めよう。腕が鳴るな」
※準最強タグさん、絶賛活躍中


第六十五話 サイヤ人絶滅計画④~予期せぬ救世主~

 第7宇宙のどこかに存在するトキトキ都。

 ここは時を司る界王神クロノアが治める、現世とは完全に隔絶した場所だ。

 その中心部でありクロノアが暮らす刻蔵庫は今、緊張した雰囲気で包まれていた。

 

「まずいわね……まさかこんな事になるなんて」

 

 最初に声を発したのは幼い少女だ。

 肌は薄い桜色。髪は濃いピンクのショートカット。

 尖った耳を持つ事と肌の色以外は比較的地球人に近い外観をしており、十分に可愛らしい容姿であると言えるだろう。

 少なくとも、フリーザフェイス+モヒカンというどこぞの同族よりは地球人に親しまれやすい外見をしている。

 だが見た目で判断する事なかれ。彼女こそがこのトキトキ都の頂点に位置する時の界王神クロノアその人なのだ。

 その肩にはフクロウに似た白い鳥である『トキトキ』が留まり、心配そうに彼女を見ている。

 

「トー! トー!」

「うん、わかってるわよトキトキ。このリゼットって子、まさかこんな領域にまで踏み込むなんてね。

何でこんなのが辺境の惑星で神やってるのよ。他に回しなさいよ、他に。人材の無駄遣いすぎるわよこれ」

 

 クロノアの前には現在起こっている出来事が――時間を司る場所でこのような言い方は妙だが――リアルタイムで映し出されており、映像の中では悟空達がリゼットに手も足も出ずに蹴散らされている。

 今はまだかろうじてリゼットの理性が働いているのか殺されずに済んではいるが、もし彼女がこのまま信仰に完全に呑まれて神として覚醒し切ってしまえばその最悪の末路が訪れるのは想像に難くない。

 

「トワ達の仕業でしょうか」

 

 悩むクロノアに声をかけたのは銀髪の青年だ。

 背中には剣を背負っており、歴戦の戦士の風格を漂わせている。

 その隣には緑色の戦闘服を着た特徴的な頭髪のサイヤ人が立っており、腕を組んで事の成り行きを見守っている。

 

「自分で改変してやられたっての? それは考えられないわね。

それにこれを引き起こしたのはセルでしょう?

多分誰か……トワ達と同じように時間に干渉出来る何者かがセルに入れ知恵したのよ」

 

 これまで彼等『タイムパトロール』はずっとトワやミラが引き起こす時間の改変を監視してきた。

 幸いにして、その時間軸に生きる人間達……とりわけリゼットが自力で勝手に解決してトワやミラの計画を阻んでくれていたので出撃する事は滅多になく、悟空達の前に現われる事もなかった。

 だが今回はそのリゼットが暴走してしまっている。

 しかも、予想を遥かに超えたパワーアップをして。

 その力はタイムパトロールの二人はおろか、時の界王神すらも遥かに上回っているだろう。

 

「ど、どうすればいいんですか?」

「……何とかして、あの宇宙中から念を集めている技を解除させるしかないわね。

多分、強い衝撃を与えれば目が覚めて技を自分で中断してくれると思うんだけど」

「なるほど、流石は時の界王神様。……それで、どうやって今のリゼットさんに衝撃を?」

「…………わからないわ」

 

 強い衝撃を与えて一瞬でもリゼットを正気に戻せれば、後は勝手に本人が技を止めてくれる。

 そこまでは分かったが、そもそもそれが出来れば苦労はしない。

 今やリゼットはファイナルフラッシュすら容易く弾くバリアを常時展開している上に本人の防御力もミラの全力ラッシュを受けて微動だにしないレベルなのだ。

 加えて身体が勝手に判断して避ける、とある技を発動していてそもそも攻撃すら当たらない。

 クロノアの頼り無い返答に銀髪の青年が肩を落とすも、隣にいた男は「分かり易い」と呟いた。

 

「要するにブッ叩けばいいんだろう? 簡単な事だ」

「そ、そんな簡単に……」

「いくと思ってるさ。今の所悪い未来は『視え』ねえしな」

 

 黒髪の男の発言は、彼の持つ能力を知らなければ意味が分からないだろう。

 しかしクロノアは理解しているらしく、「ふむ」と呟いた。

 

「どちらにせよ、今回は貴方達の出番が来ると思うわ。いつでも出れるように準備だけはしておいてね」

 

 

 どうすればいいのだろう。

 トランクスは構えを取ってはいたが、戦う気がまるで起きずに困惑していた。

 何せ相手が相手だ。稽古などで戦うならばともかく、本気で戦うなど考えた事もない。

 それに今のリゼットが相手では戦いそのものが成立するかも怪しく、実力の面でも精神的な面でも戦う気がまるで起きずにいた。

 

「おいお前等、ちょっと聞け」

 

 ターレスが同じく構えながら、リゼットから視線を外さずに話す。

 その声にもまた、いつもの余裕が感じられない。

 悟空やピッコロも同様で、この戦いが絶望的な差の上に成り立っている敗北必至の戦闘である事を全員が理解していた。

 

「あの神さんだが、一体何があったのかは知らんがとても俺達がマトモにやって勝てる相手じゃねえ。

だが、それにしちゃあ攻めが鈍いと思わねえか?」

「確かにな。今のあいつならば俺達全員を一瞬で殺す事も出来るだろう。……実際それを可能とする技もあいつにはある」

 

 ターレスの言葉に冷静にピッコロが相槌を打ち、相手が本気なら自分達は既に死んでいる事を素直に認めた。

 その上で考えられる推測を冷静に紡ぎ出す。

 

「恐らくまだ、完全に目覚め切っていないのだろう。

もしかしたら今なら、強いショックか何かを与えれば元に戻るかもしれん」

「そんな……昔の家電製品じゃないんですから」

「だがそれに賭けるしか俺達が生き残る道はないぞ」

 

 考えて出てきた結論は『叩けば治る』であった。

 何とも酷い脳筋な結論であり、これが正しいという保証もない。

 しかし今はそれ以外に推測を立てる事も出来ず、このまま何もしなければ悪として消されてしまうだけだ。

 

「要するに全力で戦えばいいっちゅうこったな!」

「ま、そういう事だ」

 

 シンプルな結論に悟空がやる気を漲らせ、ターレスが気を高める。

 勝とうと思う必要はない。

 ただ一発……一撃だけでも直撃させればいい。

 その衝撃でリゼットの目を覚ます事が出来れば、そこで終わるかもしれないのだ。

 悟空達四人は唯一の可能性に全てのチップを支払い、後の事など考えずに突撃を敢行した。

 

「うわあありゃああッ!!」

「トゥアアアアアアッ!!」

 

 まずは真正面からの攻撃。

 悟空とピッコロが全力を込めて殴りかかる。

 だが拳はリゼットまで届く事なく、彼女の周囲に展開されているバリアに阻まれて先へと進めない。

 だがこんなのは予想通りだ。二人は一撃で諦める事なく何度も猛攻を仕掛けた。

 攻撃の悉くが阻まれ、攻撃している拳や足が逆に傷付くがおかまいなしだ。

 

「はあああッ!」

「そらああ!」

「おらあッ!」

 

 両側面からトランクスとターレスが突撃し、猛攻を仕掛ける。

 背後からはナッパがリゼットを羽交い絞めにしようと接近した。

 だがこれも届かない。全てがバリアに阻まれてしまっている。

 リゼットは無表情でその無駄な努力を見詰めていたが、やがてピッコロに照準を合わせて右手の指先を向けた。

 

「ッ、今だ!」

 

 ピッコロが叫ぶと同時にリゼットの指先から放たれた閃光が彼の胸を貫通した。

 だが悟空達4人はピッコロの事を心配すらもしない。

 むしろ逆。ピッコロへ攻撃した瞬間こそを好機とし、リゼットへ一斉に攻撃を仕掛けたのだ。

 悟空、ターレス、トランクス、ナッパの4人は全力で乱打を放つ――が、一体どういうわけなのか、まるで当たらない。

 確かにリゼットは元々回避能力に優れている。長年の経験で培ってきた技術は驚異的で、あのブロリーの猛攻すらしばらくは無傷で凌いでいたほどだ。

 しかしそれでも、ここまで馬鹿げてはいなかった。

 まるで身体が勝手に判断して避けているかのように、悟空達の攻撃が掠りすらしないのだ。

 しばらく悟空達の攻撃を避けていたリゼットだが、まずトランクスを視界に入れて超能力で彼を吹き飛ばした。

 更に空いている左手でターレスの攻撃を掴み、即座に投げて悟空へとぶつける事で悟空の攻撃をも止めた。

 最後にナッパの頭を掴んで高速で揺さぶり、失神した彼を投げ捨てる。

 見事にいなされてしまった3人は、しかし確信を抱いた表情で空中に踏み止まった。

 

「やはりな。攻撃時にはバリアも解除されている」

「ああ。あの固えバリアを破る事は出来そうもねえが、神様が攻撃に移る一瞬だけはオラ達の攻撃を当てるチャンスもあるってわけだ」

 

 ターレスと悟空は冷静に話し合いながら、落ちて行ったピッコロを見る。

 彼は撃墜されてしまったが、気は健在だ。

 どうやら落ちた後に仙豆を食べて復活し、今は悟飯とベジータを復活させるべく彼等の元へ移動しているようだ。

 ナッパもそのうち復活する事だろう。

 リゼットは自分の防御が攻略されかけている事に気付いているのかいないのか、不思議そうに首をかしげ、そして思い付いたように掌を合わせた。

 すると彼女の周囲に無数の光球が生まれ、それぞれが人の姿を形作る。

 

「――HEROES・GOD MISSION(ヒーローズ・ゴッドミッション)

 

 怨念を集める事でゴースト戦士が誕生する。

 それと同様にリゼットは人々の意思を集める事で死した勇者を一時的にこの世へ召喚したのだ。

 だが光の意志によって集った彼等はゴースト戦士などでは断じてなく、言うならばそれは英霊。

 かつて地球の礎を築いた歴代の地球の神々がそこにいた。

 命と引き換えにピッコロ大魔王を封印した老武術家がいた。

 古の魔人と戦い命を散らした3人の界王神がいた。

 己の身を犠牲として魔神の半身を封印していた勇者の弟がいた。

 惑星を守り、育んで来た星々の神がいた。

 サイヤ人やフリーザ一派に立ち向かい、無念にも死に追いやられた宇宙の戦士達がいた。

 悪しきサイヤ人に立ち向かうために立ち上がった正しきサイヤ人達がいた。彼等の希望たる正しきサイヤ人の神がいた。

 そして数え切れない程の、かつて正義の為に戦い散っていた宇宙の強者達がそこにいた。

 

「……そりゃねえだろ、神様」

 

 空を埋め尽くす光の戦士達を前に悟空が頬を引き吊らせる。

 相手の手数を殺すのに自らも手数を増やすのは常套手段ではあるが、それにしてもこれは酷い。

 しかもリゼットの気で構成されているからか、彼等の戦闘力もまたリゼットに合わせて高まっており、一人一人が悟空達を遥かに凌駕する勇者の集団だ。

 そんな連中が一斉に悟空達へと飛びかかり、ただでさえ完全に傾いていた戦況が尚も傾いた。

 例えるならば、もう傾きようもないシーソーが地面に埋まって直立してしまう勢いだ。

 いや、もしかすると地面を抉って1回転くらいしたのかもしれない。

 酷い例えではあるが、それほどに戦力差は絶対的であった。

 悟空達も必死に抵抗するが、数と質を揃えられてはどうしようもない。

 瞬く間に光の軍勢に呑まれ、蹂躙されていく。

 一瞬で悟空達はボロボロにされ、胴着は破れ、戦闘服は破壊され、血の放物線を描きながら人形のように飛んで行った。

 先ほどまでデストロンガス発生装置があった電波塔にかろうじて不時着するもリゼットの攻撃は止まらない。

 手を振る事で英霊達が帰還し、変わりに無数の光球がリゼットの背後に並んだ。

 そしてその全てが一斉に発光し、彼女の大技の一つでもあるレイジングブラスト発射の構えへと入る。

 もし放たれれば、一発でも悟空達を消し飛ばして余りある気功波の、千発を超える一斉掃射だ。

 地球への被害に関しては恐らく、地面に落ちる前に亜空間で回収する気なのだろう。まるで躊躇する様子を見せない。

 

Ultimate blast(アルティメットブラスト)

 

 かくして放たれる、千を超えるレイジングブラスト。

 一発一発、その全てが普段のリゼットとは比較にならない超威力であり、まさしくそれは絶対の死を齎す光の豪雨であった。

 もはや悟空はその光景を前に笑う事しか出来ない。こうまで差がありすぎると悔しさも沸かなかった。

 神に歯向かう者に与えられる当然の結末、避ける事など出来ない破滅の末路。

 それを思い知らせるように光の雨は悟空達を一瞬で呑み込み、地上へと降下していく。

 だがそれらが地上を撃つ事はない。悟空が予想した通りに亜空間が開き、全ての光を飲み込んでその攻撃は全てデッドゾーンの中でまだかろうじて生きていたガーリックJr.へと直撃、爆砕した。

 

『…………』

 

 敵対者を全て葬ったリゼットは無感動に視線を動かし、そこに誰もいない事を確認する。

 そしてふと、妙な感触を覚えて自らの頬に触れた。

 指先に付着していたのは水滴だ。

 そこでようやく彼女は自らが止め処なく涙を流していた事に気付き、不思議そうに首をかしげた。

 

「ったく、泣くくらいならやるなっての、あんな攻撃」

 

 横から聞き覚えのある、だが粗暴な声が聞こえてリゼットは視線を動かした。

 そこにいたのは男だ。

 悟空と良く似た特徴的な頭髪に、頭に巻いた赤いバンダナ。

 サイヤ人やフリーザ軍が好んで着る戦闘服の色は緑と黒。

 顔には仮面を付けているが、避け切れなかったのか亀裂が走り、砕けかけていた。

 壊れた仮面から覗く左頬には十字の傷が刻まれ、その両脇には気絶した悟空とターレスを抱えている。

 

『……?』

「俺が誰かってか? そうだな……タイムパトローラーってやつらしいぜ。

お前もよく知ってる野郎にドラゴンボールってので呼び出されてな。時間を乱す連中を取り締まる仕事をしてるんだ。

ま、俺もフリーザの野郎にやられてから過去に飛んだりと色々あったから、こっちにとっても呼ばれたのは好都合だったんだがな。

なあ? ……トランクス」

『…………!』

 

 男の声にリゼットが僅かに驚いたように反応し、後ろを見る。

 そこにいたのは果たして、男の呼んだ通りトランクスという名の青年だった。

 だがその服装は緑色のセーターであり、加えて髪型が今のトランクスとは異なる。

 トランクスは精神と時の部屋で修行して以降は長髪を首の後ろで束ねているが、彼はまるで最初の頃のトランクスのような短髪だ。

 それに気のせいか、少しだけ成長しているようにも見えた。

 

「無駄話をしている暇はないですよ――バーダックさん」

 

 トランクスもまた戦士を抱えており、彼が持っているのはナッパと自分自身だ。

 彼等は近くの建物の屋上に悟空達を放り投げると、同時に超サイヤ人へと変身する。

 バーダックと呼ばれた男の仮面が完全に砕け、その素顔を覗かせる。

 果たしてそこにあったのは、悟空と瓜二つの……しかし彼よりも好戦的に歪む顔であった。

 

「悪いが、あんなのでも俺のガキと弟子なんだ。

そう簡単にゃあ殺らせねえよ」

 

 彼は獣のような野生的な笑みを浮べ、拳を強く握った。




ゼノンクス「強い人を! 俺と共に戦ってくれる強い人を連れて来て下さい!」
神龍「おk」
バーダック「……ここはどこだ? 俺は確か昔の惑星プラントにいたはずだが」
ゼノンクス「ご、悟空さん!?」

こんな事があったとか無かったとか。
というわけで、ゼノバース主人公の位置にいるタイムパトローラーは予想されていた通りバーダックです。
ちなみにトランクスが緑のセーターなんてダサい恰好をしているのは、コートをリゼットに貸したままだからです。
それとベジータは描写されてないだけでちゃんとピッコロさんが拾って助けてますのでご安心を。

【戦闘力】

・バーダック
基本戦闘力:4億6千万
超サイヤ人:230億
超サイヤ人2:460億

・トランクス(ゼノバース)
基本戦闘力:4億5千万
超サイヤ人:225億
超サイヤ人2:450億

【アルティメット・ブラスト】
神域化したリゼットが放つレイジングブラストの上位技。
光球をアホほど浮べてアホほどレイジングブラストを発射し、光の豪雨で何もかもを消し飛ばす。
その一発一発が、普段のリゼットのレイジングブラストを遥かに上回る威力を有している。
いうならば、かめはめ波などの気功波を全く同じタイミングで一斉にグミ撃ちしているようなもの。混ぜるな危険。
ヘブンズゲートと併用してのレイジングブラスト・ワームスマッシャーとかも出来る。
技名の由来はゲームのアルティメットブラストから。
気の消費量がおかしいので、無限に等しい気を得ている神域時しか使えない。
つまり味方に戻ったら使えなくなる。

【ヒーローズ・ゴッドミッション】
神域化したリゼットが人々の念や気を集めてリゼット版ゴースト戦士を大量召喚する技。
戦士の強さは個人差があるが、リゼットにより全員が疑似的な神域へと押し上げられている。
つまり全員が疑似超サイヤ人ゴッド状態。何それずるい。
技名の由来はドラゴンボールヒーローズ・ゴッドミッションから。
もしかすると平行世界の『アバター』さん達の何人かはここに紛れ込んでハッスルしているかもしれない。
気の消費量がおかしいので、無限に等しい気を得ている神域時しか使えない。
つまりこれも味方に戻ったら使えなくなる。
何で敵の時だけこんな意味わからん強さなんだ、こいつ……。

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