ドラゴンボールad astra 作:マジカル☆さくやちゃんスター
昨日から評価が沢山入り、日刊ランキングの一位になる事が出来ました。本当にありがとうございます。
これほど嬉しかったのは東方輝針城に咲夜さんが8年ぶりに自機出演した時以来でしょうか。
尚、私は『お前咲夜のイメージに合わんから
悟空達がリゼットのもとを訪れてより数日。
リゼットは気配を限りなくゼロにし、上空より彼等の旅を見守っていた。
言うまでもなくマスコミ染みた観察欲に起因するものである。
物語として見たあの旅が現実に展開されている。
それを見ないのはファンとして間違えているだろう、という勝手な判断による高みの見物だ。
残念だったのは既に悟空達が六つのボールを集めている事であり、この旅の残るイベントが兎人参化との対決と、ピラフ一味に捕まる事ぐらいだった事か。
兎人参化は改めて見るとインチキもいい所の能力だと実感させられる。
とはいえ、恐らくだがあまりに戦闘力の離れすぎている相手には通じないだろう。
悟空によって月に運ばれてしまったが、流石に可哀想なので後で助けてあげてもいいかもしれない。
悪党には違いないが、一応殺生などはしていないようだし、何よりあれは罰としても重すぎる。
しかも月は後に破壊されてしまうので、その後彼等は宇宙を彷徨う羽目になるらしい。
これはいくら何でも哀れに過ぎる。
ピラフ一味との対決は大体知っている通りの流れだった。
悟空達がピラフの城に入ってからの事は上空からでは分からなかったが、まあやはり捕まってしまったらしい。
そして呆気なくボールを奪われ、伝説の『ギャルのパンティおくれ』へと繋がるわけだ。
これには上空で観察していたリゼットも爆笑したが、よく考えたらあれ誰のパンツなのだろう。
『ギャルの』と条件付けている以上新品は有り得ない。
とりあえず神龍にパンツ盗られた人はご愁傷様といっておこう。
しかし悟空達は悪運が強い。
捕らえられた日が偶然満月だったおかげで大猿化して脱出出来るのだから、怪我の功名というものだろう。
後はヤムチャ達が頑張って悟空の尻尾を斬るだけだ。
……と、思っていたのだが何故か自家用機で逃げたはずのピラフ達が戻ってきた。
そして大猿化した悟空に機銃を浴びせて翻弄している。
はて、こんな展開あったかな、などと思いつつも何せ前世の記憶だ。
抜けがあっても何ら不思議ではない。
機銃では埒が飽かないと判断したのか、ピラフ機からミサイルが発射される。
多分今の悟空ならば問題ないと思うのだが、しかしリゼットは不安に駆られた。
もしこれで悟空が死んだら?
無い、とは言い切れない。この時点の悟空の戦闘力は10。
つまり大猿化して十倍になっても100程度という事だ。
100ならばミサイルの直撃を受ければ死んでも不思議はない数値だ。
「――“レイピア”」
気の固定化で白いレイピアを己の横に生成し、指先を動かして操作する。
要するにレイピア型繰気弾である。弱そうとか言ってはいけない。
細剣をミサイルへ突撃させ貫き、悟空に届く前に爆散させる。
余波でピラフ達も吹き飛んだが、まあ彼等は無駄にしぶといので死にはしないだろう。
……後に大魔王を復活させて間接的に大勢の人々を殺す事を考えるとここで殺してしまった方がいい気がしないでもないが。
ついでにGTでは究極のドラゴンボールを使って間接的に地球すら破壊しかけるので、益々ここで殺した方が世界の為な気もするが。
……あれ? 割と冗談抜きであいつら消した方が世の中の為なんじゃない?
そんな物騒な思考に支配されそうになるが、リゼットは首を振ってその考えを追い出した。
ピラフなどどうでもいい。それよりも今は悟空だ。
「天女様!」
ブルマの弾んだ声が聞こえる。
流石に攻撃を行えば空にいてもバレるか。
本当は手出ししないつもりだったのだが、ついやってしまった。
リゼットはやっちゃったなあ、などと思いつつ高度を下げてブルマ達の前へと舞い降りた。
「私達を助けに来て下さったんですね!」
「え、ええ……まあそんな所です」
言えない……まさか本当はただ漫画を見るノリで見に来ていたなどと。
それにしても『天女様』とは随分くすぐったい。
有象無象にそう呼ばれても多少恥ずかしいだけだったが、原作キャラにそう呼ばれるのがこんなにも居心地悪いとは。
これは早急に呼び名を改めさせるべきだろう。
「リゼット」
「え?」
「私の名前です。天女などと呼ばず、遠慮なく名前で呼んで下さい」
ブルマ達に笑顔を向け、全員の反応を窺う。
ブルマは遠慮がちに、「そ、そう?」などと言っているが、この様子ならじきに慣れるだろう。
ヤムチャは……固まっている。そういえば女性が苦手って設定あったっけ。
ウーロンは顔を赤くして何かゴニョゴニョ言っている。
プーアルは何か眼を輝かせている。子供みたいな反応で少し可愛らしい。
とりあえず印象としてはそう悪いものではないだろう。
「そ、その、天……じゃなくてリゼット様! あれ、信じられないかもしれませんけど孫君なんです! 何とか元に戻す事は出来ませんか?!」
ブルマが縋るように懇願してくるのを見て、リゼットは睫毛を伏せる。
うん、言われなくても知ってる。だって見てたし。
なんて暴露する事など勿論出来るはずもなく、ただ一言『把握しています』とそれっぽい事だけ言っておいた。
「……見た所、満月のエネルギーが尾に集まっているようです。ならば尻尾を断ち切れば元に戻るかもしれません」
見て理解したような事を言っているが、これは半分本当だ。
原作でクリリン達はそこまで気付かなかったようだが、百年単位の気の練磨は伊達ではない。
遥か宇宙の彼方のフリーザの気すら感知出来る今のリゼットにとって、その程度は眼を凝らすまでもなく見抜ける事だった。
リゼットは腕を振るい、白い軌跡を生み出すと四人へ声をかける。
「私が悟空君の動きを止めます。貴方達はその間に尻尾を切って下さい」
「え? と、止めるってアレを?」
ブルマが不安そうにしているが、リゼットは構わず気を固定化し巨大な鎖へと変える。
そして遠隔操作。大猿をグルグル巻きにし、その動きをあっという間に封じ込めた。
いかに大猿だろうがこの時点では戦闘力100ちょっと。リゼットの敵ではない。
あの鎖を引き千切ろうと思うならばリゼットと同格の気が必要となる。
無論、今の悟空ではたとえ奇跡が起こって超サイヤ人になろうが到底届くものではなかった。
その余りの光景にポカーンとしているヤムチャへ、静かに告げる。
「さあ、今です」
「……。……あ、ああ! そ、そうだった! プーアル!」
「はい、ヤムチャ様!」
変化! の言葉と共にプーアルがハサミへ変化し、大猿の尾を断ち切った。
ヤムチャ自身はもとより、その相棒の有能さには舌を巻く。
何にでも変化出来て、時間制限もなし。
そして主に忠実で外見も猫のようで愛らしいといい所尽くしだ。
カリン様とセットでペットに欲しいなあ、などと思わないでもない。断じて思っていない。
それはさておき、尾を切られた事で悟空も無事人間へと戻る事が出来た。
それにしてもサイヤ人というのはアホなのだろうか。
悟空は元々地球を制圧する為に送り込まれたらしく、地球に月があるから大猿化して制圧する、というのが当初の予定だったらしい。
しかしいくら何でも、あの程度の大猿じゃ軍隊に殺されて終わりだ。
地球人がいくら弱いといっても科学力はあるんだから、あれじゃ制圧など夢のまた夢でしかなく、叶うわけがない。
そもそも食料も積んでいない一人乗りのポッドに乗せてそのまま赤子一人放逐とかアホの所業だ。
孫悟飯が拾わなかったらそのまま飢え死に一直線でしかない。
リゼットはそこまで考え、軽く溜息をついた。
まあ……要するにそこまで地球侵略は真剣に考えられていなかったという事だろう。
数年スパンの計画である事もそうだが確実性に欠ける。
大方下級戦士の子供など、どうでもいいと思って適当に放り投げているに違いない。
実際ラディッツが思い出すまで誰も思い出さなかったほどだし、この考えに大きな間違いはないだろう。
「ふう……た、助かったあ」
「本当ね。リゼット様が来てくれなきゃどうなってたか」
来なくても実は自力でどうにか出来ました、と教えてあげたい衝動に駆られる。
しかしリゼットは言葉を呑み込み、悟空に指を向けた。
すると裸だった悟空が一瞬にして前と全く同じ胴着を着た姿となる。
暇を持て余した神様から50年かけて教わった神仙術のちょっとした基本、物質生成だ。
周囲の元素だか何だかを物質へ変換する神族の基本技能らしい。
キビトなども同じ事が出来るので実は難易度はそう高くないようだ。
「うおっ?! 服が一瞬で!?」
「仙術です。伊達に天女と呼ばれてはいません」
250年も生きれば結構色々出来るようになるものだ。
というかこの天女のイメージは明らかに神様によって作為的に作られたものな気がしてならない。
気付けばすっかり神様代行人に仕立て上げられてしまった。
神様どんだけ神殿から動きたくないんだ。
それから待つ事一晩。
悟空が目覚めて尻尾がないと騒いだり、すぐに気を取り直して、まあいっかと軽く納得してしまったり、ヤムチャが気付いたら女性恐怖症を克服していたりと色々あった。
ブルマの素敵な彼氏が欲しいという願いと、実は女性好きだったヤムチャは当然のように意気投合。
大喜びの二人はダンスなど踊ったりして、熱々ぶりを見せ付けてくれた。
(でもブルマと結婚するのベジータなんですよね……ヤムチャェ)
今のヤムチャの幸せぶりを見てると何だか涙が出てきそうだ。
ともかく、もうここに用はない。
悟空達も一年間はドラゴンボールを探せないのでここで解散する事に決めたらしい。
ブルマとヤムチャ、ウーロンとプーアルはブルマの実家がある西の都へ。
悟空は亀仙人の所へ弟子入り、とそれぞれの目的へ向かうようだ。
リゼットもまた彼等に軽い挨拶をし、山の頂上にある聖堂へと帰って行った。
★
聖堂に帰り、やる事は今までと同じだ。
ひたすら修行修行修行&修行である。
重りを常に付けて動き回る事で基礎能力を上げ、限界以上まで気を振り絞りバーストリミットを続ける事で気の底上げと身体を負荷に慣れさせる。
特に後者の重要性は計り知れない。
何せリゼットは地球人だ。つまり超サイヤ人なんて反則変身はない。
それを補う為のバーストリミットだが、これは要するに見た目だけ変えただけの界王拳であり、その倍率は超サイヤ人以下だ。身体にかかる負担だって無視出来ない。
ならばもう、後は負荷に耐えられる身体を作り、身体を慣れさせ、通常よりも大きな倍加を引き出す以外にない。
50倍までいけるようになれば超サイヤ人化も同然……彼等に並べる。
しかし今のリゼットが出来るのは精々が七倍。
彼女の戦闘力――体感では大体二万前後を思えば驚異的な倍率だ。
しかし、たかがそれだけだ。
何十年も慣らし続けてここまでにしかなっていないのだ。
これでは駄目だ。その時が来たらこんなの一日であっさり超えられてしまう。
何か、新しい修練法を考える必要がある。
リゼットは聖堂で目を閉じ、思案を巡らせた。
何がある? 自分に何が出来る?
まず思い浮かぶのは精神と時の部屋?
あれならば一日で一年の修行。十倍の重力もかかり、己を鍛えるには申し分ない。
だが人生で入れる時間は二日だけと決まっている。
出来ればもっと、切羽詰って強さが必要になるまでは残しておきたい。
ブルマに頼んで重力室を作ってもらう?
これは……うん、これは候補に入れていいだろう。
お金もあるし、ちゃんと払えば作ってもらえるはずだ。
出来ればホイポイカプセルで持ち運び出来る物がいい。
死にかけてパワーアップ?
……いや無理。地球人は死を乗り越えても強くなりません。
アンサートーカーに覚醒出来るならやる価値は十二分にあるが、まあ無理だろう。世界違うし。
改めてサイヤ人はズルイ。もし自分がサイヤ人だったら瀕死パワーアップ繰り返しで今頃凄い強くなってるのに、と思う。
前世で見たサイヤ人系オリ主さん達が簡単に数十万とか超えてたのを思い出すと割と本気でへこむ。
「……とりあえず重力室、買いにいきましょう」
まずはカプセルコーポレーションに行こう。
それから並行して新しい技も開発する。
やる事はいくらでもあるのだ。
・自家用機でリターンしてくるピラフ
アニメ版オリジナル展開。
リゼットも一応見ていたがすっかり忘れていた。
・悟空が飛ばされた理由
この辺りは旧シリーズと新シリーズで明確に違うので一部新シリーズの設定を取り入れつつ基本は旧シリーズ準拠。
例えば旧アニメの『たったひとりの最終決戦』では悟空は明確に赤ん坊の頃に素っ裸で地球に飛ばされているが、新シリーズはそうではない。
これについて、このSSでは旧シリーズの方を採用している。
なので勿論バーダックも優しいサイヤ人などではなく、自分の息子に『戦闘力たったの2か……クズが!』とか言っちゃう人である。