ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第七十三話 ミラの本気!最強はオレだ…!!

 地球のとある村にある、とある民家。

 そこでは結婚してから24年以上経つ夫婦が仲睦まじく暮らしていた。

 その日も彼等はいつも通りにささやかな昼食を取っている最中であり、実に平和な時間が流れていた。

 ふと、何気なく外を眺めた妻が空を飛ぶ白と赤の光に気付き、声を弾ませる。

 

「ねえ、見て千兵衛さん。昼間なのに流れ星よ」

「へえ、そりゃ珍しい」

 

 昼間に流れ星というのはそうそう見ない。

 実際には珍しいのではなく見えないだけなのだが、こうもハッキリ見える流れ星というのはそうそうない。

 夫婦は興味深そうに空を飛ぶ流星を眺めたが、やがて二つの流星は一際強く輝くと空で大爆発を起こした。

 

「……千兵衛さん、流れ星が爆発したわ」

「ほ、本当に珍しいな」

 

 普段滅多に見ない光景に夫婦は多少の驚きを示し、しかしすぐに昼食へと意識を戻した。

 きっと明日か明後日になれば今見た不可思議な出来事も忘れているだろう。

 今日も地球は平和そのものであった。

 

 

 

 互いの気功波が衝突し、爆炎が宇宙に拡散する。

 だがそれを放った二人はもうその場所にいない。

 白と赤の流星となって星の海を翔け、幾度も衝突を繰り返す。

 併走しながら気弾で牽制し合い、隙を探り合っていた。

 

「疾っ!」

 

 気弾の合間、僅かな安全地帯を見付けてリゼットが迷わずに飛び込んだ。

 慣性の法則を無視したかのように何度も直角に曲がり、ミラへ続く最短ルートを通る。

 そして気弾を放つモーションに入っていたミラへ両手で掌打。衝撃と気を彼の体内へと浸透させて内部から炸裂させる。

 ミラが夥しい吐血をし、しかし怯む事なく殴り返してくる。

 その腕を素早く獲り、首へ指突。

 ミラが怯んで頭が下がった所に肘打ちをぶつけ、地球の成層圏へと戻した。

 すると当然のように重力が彼を絡め取り、落ちる速度が加速する。

 落ちながらミラが体勢を立て直すが、そう簡単にはいかない。

 ミラの背後にゲートが開き、ミラは血相を変えてこれを回避した。

 リゼットによる転移は一番受けてはならない攻撃だ。彼女は敵を亜空間に絡め取ったが最後、太陽などに転移させて焼死させようとする。

 だが無理な回避は隙を生み、リゼットに次の攻撃のチャンスを与えた。

 雷光が轟き、幾筋もの神鳴が一斉にミラを集中放火する。

 気弾や気功波には威力が劣る『魔法』だ。

 だが威力は劣るものの、高出力の電撃は身体を一瞬麻痺させてしまう。

 その麻痺は更に次の攻撃への間を与えてしまい、リゼットがミラの前へと瞬間移動した。

 ゲートを使っての空間転移ではない。より速度のある、神の権限を用いた地球限定の瞬間移動だ。

 時間にして僅かコンマ一秒にも満たぬ硬直、麻痺。だがそれだけの間があれば最大の一撃を撃ちこむには充分過ぎる。

 

「Sparking・Meteor!」

 

 無防備な所を狙い撃っての最大出力気弾!

 しかもほんの一瞬、0.1秒にも満たぬ間限定でバーストリミットを200倍まで引き上げての超出力攻撃だ。

 射出し続ける気功波と異なり、気弾は一度撃てばそこで完成する。発射後に術者がへばろうが威力そのものに変動はない。

 例えば悟空が元気玉を放った後にヘロヘロになったとしても一度撃たれた元気玉の威力は不変だ。

 勿論万全ならば、更にその元気玉を強く相手に押し付ける事が出来るが、やはり元気玉の威力は変わらない。

 それと同じ事であり、リゼットはその気弾の特性を利用した。

 つまり発射の一瞬のみならば限界を超えても身体への反動は気功波ほどにない。

 結果放たれ、ミラへ叩き込まれたのはリゼットの限界を大きく超えた白い彗星だ。

 

 だが耐える事が出来る。この程度ならば!

 そう確信したミラだったが、次の瞬間にそれは間違いだと悟る。

 必殺の攻撃は一つではない。

 リゼットの周囲に浮かぶ光球が輝きを発し、リゼット本人もまた気を大きく高める。

 そして放たれるのは彼女のもう一つの必殺技だ。

 

「Raging blast!」

 

 リゼットの両手から白い気の奔流が放たれ、遅れて2つの光球からも同様の気功波が発射される。

 放たれた2つの気の奔流は中央の輝きと合流し、螺旋を描きながら混じり合う。

 やがて完全に一つとなった巨大な極光がリゼットの前に展開された亜空間へと飛び込み――ミラを背後から急襲! 彗星と極光とで挟み撃ちにした。

 

「うっ! うおおおおおおおっ!!! おおおあおぉぉおあああああああッ!!?」

「はああああああーッ!!」

 

 リゼットが持つ二つの大技の合体だ。

 しかも前後から挟み撃ちにする事により、その中心点の破壊力は単純に混ぜるよりも遥かに威力を増している。

 いかにミラでも防ぎきれるものではないし、これでは回避も出来ない。

 気の大爆発が起きる事で地球の空を白く染め上げ、甚大なダメージを負ったミラは地面へと墜落していく。

 それを見たトワが顔色を変え、悟飯との戦闘を中断して彼の元へと転移した。

 無論リゼットもすぐに後を追い、3人は荒野へと場所を変える。

 

「ミラ!」

 

 トワが駆けつけた時、ミラの姿は酷いものであった。

 身体の至る箇所が焼け爛れ、気もほとんど残っていない。

 誰が見てもわかる瀕死であり、戦闘不能だ。

 だがミラは目を見開くとゆっくりと起き上がり、空中のリゼットを睨む。

 

「ぐっ、う……ぐぬうう……ま、まだだ……」

「ミラ! もう無理よ、退きましょう!」

「ふざけるな……お、俺が、負けるとでも……」

「ミラ!」

 

 息も絶え絶えでありながらミラが最後の力を振り絞って飛翔し、リゼットと相対する。

 既に勝負は付いている。

 だがそれでも侮れないのは彼の執念か。

 

「お、俺は最強だ……最強でなくてはならない……。

貴様などに……貴様、などにいいー!」

 

 ミラが叫び、赤い閃光となって突撃した。

 リゼットもそれに合わせて白い流星となり、二人が最後の衝突を果す。

 威力は互角。二人は交差してすれ違う形となり、リゼットが先に振り返って構えを取った。

 だがミラが無理な体勢で手を突き出したのを見て発射を中断し、放たれてきた気功波を紙一重で避ける。

 そして発射直後の硬直状態に陥ったミラへ向けて今度こそ最大の、そして最後の気功波を解き放った。

 

「う、うおおおおおおおおおおお!!」

 

 本日二度目のレイジングブラストがミラを呑み込み、その身体を撃ち砕いていく。

 比喩ではない。

 とっくに限界を迎えていた彼の身体はもうリゼットの攻撃に耐え切れなかったのだ。

 身体は粉微塵に砕け散り、気功波に呑まれて消失していく。

 やがて白い輝きが終わった時、もうそこにミラの身体は一欠けらとて残ってはいなかった。

 

「あ、あああ……っ!」

 

 トワが絶望の声を漏らし、信じられないといった顔でリゼットを見る。

 だがすぐに正気を取り戻し、転移で逃げようとした。

 しかし……僅かとは言え呆然自失となった事が彼女の命運を分けた。

 もしもミラがやられた直後に転移出来たならば、彼女は見事逃げ遂せる事が出来ただろう。

 しかしトワはそれを出来なかった。一瞬とはいえ我を失ってしまった。故にもう間に合わない。

 転移しようとしたその瞬間、彼女の視界を転移してきたリゼットの掌が塞ぐ。

 言うまでもなく、気功波の構えだ。

 

「し、しま――」

 

 最大出力のレイジングブラスト!

 それが完全に不意を打つ形でトワを飲み込んだ。

 撤退など認めない許さない。これ以上地球をかき乱すのなど許可しない。

 故にここで消えてなくなれ。

 その必殺の意志を込めた気功波がミラ同様にトワも塵へと変え、この世から完全に消滅させた。

 

「千の剣よ、在れ!」

 

 消滅させてもまだ緩めない。

 以前ミラは、身体の半分を消しても復活してきた。

 ならば、あり得るかもしれない。ここからの復活も。

 魔人ブウのように、煙だけになっても尚復活するかもしれない。

 だから万に一つの可能も残さない。

 肉片はもう見当たらないが、見えないだけであるかもしれない。見落としているかもしれない。

 だから、その可能性すらも排除する。そうして初めて勝利と言える。

 虚空に展開した千の刃が次々と地面に突き刺さり――爆発。

 辺り一面を気で薙ぎ払い、ミラとトワが復活する可能性を完全に排除した。

 

「…………」

 

 完全に更地となった地面を眺め、リゼットは警戒を緩めずに気を探る。

 気を完全に消そうと、それでも生きている以上僅かな気配は残る。

 悟空達では感知出来ない微細な気配……スカウターで測れば0に等しいだろう小さな虫の気配すら本気になったリゼットならば感知可能だ。

 本当の意味で気をゼロに落とす事は出来ない。何故なら生きているのだから。

 悟空達が普段やっている『気をゼロに落とす』というのは、感知出来ないほどにまで気を小さくしているだけだ。

 限りなくゼロに等しい領域……数字にすれば0.000……の後に何度か0が続くような小さな領域にまで気を落としているだけだ。

 だがそれでも真の意味で0にはならない。本当に気をゼロに出来るのは人造人間か死人だけだ。

 その並外れた感知能力を全開にしてこの付近にある虫の一匹一匹、微生物に至るまであらゆる命の気配を探り……そして、リゼットはようやく己の勝利を実感した。

 

「……お、終わっ、た……」

 

 リゼットが地面に着地し、膝を突く。

 手強い相手だったが、何とか勝つ事が出来た。

 しかしこのままでは疲労で倒れてしまう。

 リゼットは懐から仙豆を一つ出すと口に入れて噛み砕き、気と体調を万全まで戻した。

 まだ戦いは終わっていない。何故か増えてしまった魔人ブウが残っているのだ。

 トワとミラを倒した以上そのうち戻るだろうが、今すぐに戻る保証はない。

 ならばすぐに仲間達の元へ戻り、手助けしなくては。

 精神的な疲労までは仙豆も治してくれないが、それはこの戦いが終わってからゆっくり休む事で養えばいい。

 自らに鞭を入れ、リゼットは悟空達の気を追ってその場から転移した。

 

 

 魔人ブウと戦いながら悟空は、その予想以上の強さに驚いていた。

 今の自分達は宇宙全体で見ても相当に強くなっているという自負がある。

 本来ならばとんでもない存在であるはずの界王神すらも凄いとは思えない。

 当初は宇宙の神という事で本気を出したらリゼットよりも上なのかと期待したが、この戦いが始まる前の狼狽ぶりを見てそれは間違いだと確信してしまった。

 界王神の実力は恐らく、7年前の精神と時の部屋に入る前の自分と同じかそれよりは多少マシという程度だ。

 だがこの魔人ブウは違う。リゼットが警戒して自分達を呼んだのは決して間違いではなかった。

 今の自分達と比べても尚、強いと思えるだけの強さをこの魔人は秘めている。

 加えて不死身で、しかもそれが三体。厄介などというレベルではない。

 

「だりゃあ!」

 

 殴る、殴る。

 ブウの攻撃を掻い潜り悟空の拳が何度もヒットするがまるで堪えた様子がない。

 既に悟空は超サイヤ人の限界を超えた7年前の悟飯と同じ領域――超サイヤ人2とでも言うべき姿になっている。

 だがそれでも魔人ブウに勝てる気がしない。それほどにこの魔人は強い!

 

「なるほど……神様がオラ達の力を必要とするわけだ。お前本当に強えな」

「へっへーん、えへん!」

 

 悟空の手放しの称賛に魔人ブウが嬉しそうに顔を綻ばせる。

 その姿はまるで邪気を感じさせない子供じみたものだが、恐ろしいのは子供染みた無邪気さで悪事を働けるという事か。

 これは本腰を入れないと危ないな。悟空はそう考え、まだベジータにも見せていない本気をここで見せる事を決意した。

 

「うおおおああああああああッ!!」

 

 悟空の咆哮が辺り一帯に轟く。

 余りの気の強大さに地球全土が揺れ、天候すらもが変化した。

 髪は膝余りまで伸び、眉毛が消えて顔つきが厳つくなる。

 全身を包む黄金の気が一層眩くなり、スパークが力強く迸る。

 その変化に場の戦いが一旦止まり、全員が驚愕に満ちた顔で悟空を見る。

 ベジータなどはあからさまに激怒したような顔になり、射殺さんばかりの顔で悟空を睨んでいた。

 

「オラをこの姿にさせたのは、神様に続いてお前で二人目だ」

 

 悟空がこの新形態を獲得したのはほんの1年ほど前の事。

 悟空はこの7年で何度か神殿に赴いてリゼットに組手を頼んでいたが、その最中不意に自分が今まで超えられなかった壁を超えたのが分かったのだ。

 切っ掛けが何だったのかは分からない。

 怒りではなかったと思うし、何か特別な事をしたわけでもない。

 恐らくは偶然、何らかの形でパズルのピースが噛み合ってしまったのだろう。

 ともかく、悟空は超サイヤ人を超えた超サイヤ人……それを更に超えた位階へと到達してみせた。

 結局その時の組手は悟空が超サイヤ人3になった途端にリゼットが逃げ回る戦法に切り替えたせいですぐに変身が解けてしまったが、これで悟空は気の出力に限るならばリゼットを超えたのだ。

 

「へへーん、怖い顔になったって、ちっとも怖くないぞ!」

「どうかな? 勝負は……ここからだ!」

 

 超サイヤ人3と化した悟空が地を蹴り、魔人ブウへと急接近した。

 ここまでの戦いで不死身に近い再生力を持つのはよくわかった。

 セルのように核とかそういった弱点も見当たらない以上、恐らくバラバラにしても復活するだろう。

 ならば取るべき手はただ一つ。

 二度と再生すら出来ないように、完全に消し去る!

 

「っらあ!」

 

 悟空の拳が魔人ブウの頬を力強く殴り、殴った箇所から雷光が迸る。

 更にアッパーカット! 雷撃を伴って放たれた一撃が魔人ブウを跳ねあげ、その後に悟空が続いて追い討ちをかける。

 

「だありゃりゃりゃりゃりゃああああ!」

 

 殴る、殴る、殴る!

 魔人ブウの身体に悟空の拳がめり込み、周囲に雷光が撒き散らされる。

 一撃ごとに空間が歪み、魔人ブウが反撃も出来ずに身体を浮かす。

 直後、悟空が瞬間移動して上に回り込み一撃! 落雷の如き拳を以て魔人ブウを地上へと叩き落とした。

 

「はああああああッ!」

 

 今度は両手に気弾を生成。

 その気弾を抱えたまま急降下し、倒れている魔人ブウへと炸裂させた。

 雷を伴った気の爆発が魔人ブウを飲み込み、だが悟空はまだ止まらない。

 再び瞬間移動して蹴りを放ち、着地するまでの間に更に三発。

 着地と同時に蹴り上げ、それを追って悟空も跳躍した。

 そして繰り出すのは、あのブロリーとの戦いで編み出した彼のオリジナルとも呼べる一撃。

 全ての気を拳一点へ集約させ、気を巨大な龍へと変質させて繰り出す最大最強の切り札。

 

「龍拳!!」

 

 黄金に輝く神龍が発生し、魔人ブウを巨大な口で飲み込んだ。

 更に追い討ちとばかりに龍が荒れ狂い、天高く昇っていく。

 まるで宇宙へと行き、そのままあの世へ直通で連れて行くのかと錯覚してしまう天への飛翔。

 やがて龍は去り、後には吹き飛んだ雲から差し込む陽光と、その輝きに照らされる悟空だけが残された。

 

 拳を天に突き上げたままの悟空は勝利の笑みを浮かべ、確かな手応えを拳に刻む。

 残る魔人ブウは、後2体。




~トキトキ都~
時の界王神「よし! トワとミラの居場所が分かったわ!
バーダック、今日こそあいつらとの決着を着けるわよ!」
バーダック「いよいよか」
トランクス「ハイッ! ……あれ? 時の界王神様? お、俺の姿が見えていない?」
時の界王神「魔人ブウが現れた歴史のようね。一体どんな歴史改変が……」
トランクス「是非貴方に知ってほしい重大な事がある。俺の名前はトランクス。20年後の未来から来た本物のサイヤ人の戦士だ」
リゼット『スパーキングメテオ! レイジングブラスト! レイジングブラスト! レイジングブラスト!』
ミラ『ぎゃー!』
トワ『きゃー!』
リゼット『勝った! ドラゴンボールゼノバース、完!』
トランクス「俺は20年後の未来からやって来たトランクスだ!」
時の界王神「…………し、死んでる……」
トランクス「おーーーい!」

※説明しよう! これはトランクスルーなどというギャグではなく、ドラゴンボールゼノバースにおいて、トワとミラの改変によって本当に未来トランクスが消えかけるシナリオがあるのだ! 勿論この後バーダックの活躍によってトランクスは助かるのでご心配なく!

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