ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第七十五話 浄化(はかい)

「っちゃあああ!」

 

 ベジータが地を蹴り、魔人ブウへ拳の乱打を叩き込む。

 その全てを魔人ブウは無防備に受け、吹き飛んでいった。

 飛んだ先にはターレスが回り込み、蹴り上げる。

 空に飛んだ魔人ブウを待ち受けるのはナッパだ。彼は拳を固く握ると、魔人ブウの脳天を殴って地面へ送り返した。

 

 サイヤ人3人と魔人ブウの戦いは終始サイヤ人組が圧倒していた。

 ベジータ達の戦闘力は魔人ブウの半分程度で、戦力を語るならば負けている。

 しかし魔人ブウはその不死身さに反して……いや、むしろ不死身だからだろうか。

 その肉体は酷く脆く、柔らかかった。

 殴れば簡単に弾むし簡単にへこむ。

 気円斬の一発も撃てば容易く両断可能で、気弾を撃てば穴が空く。

 無論それでダメージになるかと言えば否だ。全くダメージを負っていない。

 しかしそれでも、殴れば魔人ブウの体勢を崩す事は出来た。

 加えて彼はその不死身さ故に防御や回避というものを行ったことがほとんどないのだろう。

 ベジータ達の攻撃は面白いように当たり、魔人ブウが攻撃に転ずる間を与えない。

 いくらダメージがなくても、よろめけば次の攻撃に出るまでの時間が遅れるし、転べばもっと遅れる。

 結果として、疲労やダメージはさておき表面的にはサイヤ人組が魔人ブウを圧倒し続けていた。

 

「邪魔だ貴様等! 俺一人でやる!」

「おう、そうすりゃあいいさ。俺も勝手にこいつと戦うからよ」

 

 ベジータの怒声にターレスが嘲るように返す。

 彼らは共闘しているのではない。

 個々がスタンドプレーに走り、同じ標的を殴っているだけだ。

 サイヤ人というのは元来他人と協力するのが苦手である。

 フリーザの配下だった時はチームを組んで戦っていたりもしたのでチームプレイが出来ないわけではないのだが、それでも可能ならば自分一人の力で敵を倒したい。

 故に彼らの攻撃は協調性も何もない、バラバラなものであった。

 だがそれでもターレスとナッパはベジータと違い、フリーザの配下時代にサイヤ人同士でチームを組んで惑星を侵略した経験を持つ。

 故にベジータの邪魔をしない程度に合わせるのは決して難しい事ではなかった。

 これは、常に上にいたベジータでは決して持ちえぬ経験だ。

 

「お前達……弱虫のくせにナマイキだ! チョコになっちゃえ!」

 

 魔人ブウが苛立ったように触覚から光線を発射した。

 その向かう先はナッパだ。

 彼は不敵に笑うと、その場に仁王立ちする。

 

「ふっ、下らん技だ」

「「ナッパ避けろーーーー!」」

 

 おやつ光線を正面から受けようとしたナッパにベジータとターレスの怒声が飛んだ。

 それに怯み、思わずナッパは光線を避けてしまう。

 すると標的を外した光線はその先にいたキビトに命中し、彼をチョコレートに変えてしまった。

 

「キビトー!?」

「ちっ、このバカめ。どういう技かも見切れんのか」

「す、すまねえベジータ……助かったぜ」

 

 叫ぶ界王神を無視してベジータが不機嫌に言う。

 そんな彼を見てターレスはニヤニヤと笑っていた。

 

「ククク、お優しいこって」

「黙れ、貴様から先に殺されたいか! 命が惜しかったら笑うな!」

「おお、怖い。仲良くやろうや」

 

 決して仲良しというわけではない。

 むしろギスギスしているし、敵意すら向けている。

 だがそれでもサイヤ人同士、何だかんだで気が合う部分があるのだろう。

 噛み合わないパズルのようにちぐはぐな、共闘とも言えぬ共闘。

 しかしそれは確実に魔人ブウを追いつめていた。

 

 

 リゼットが戻った時、既に戦いは終局へと近付いていた。

 分裂した魔人ブウのうちの一体は悟空が超サイヤ人3のパワーで消し去り、もう一体はセルが消滅させていた。

 更に魔界の王ダーブラはピッコロが見事に倒し、残る最後の魔人ブウをベジータとターレス、ナッパのサイヤ人組が圧倒している。

 トワに逃げられてしまった悟飯はリゼットと合流後、ベジータ達の援護に向かったので今は4対1だ。

 流石に超サイヤ人3のような高出力ではないので決め手に欠けているようだが、それでも魔人ブウを足止め出来るだけで上出来過ぎる。

 リゼットが戦いの場へと戻り、更に悟空、セル、ピッコロまでもが加わって最後の魔人ブウを完全包囲した。

 

「どうやら、勝負あったようですね」

 

 リゼットが注意深く周囲を観察し、後ろから悟空を吸収しようとしていたブウの肉片を消し飛ばしながら勝利を宣言する。

 悟空はどうやら気付いていなかったらしく、「何だ今の!?」と驚いていた。

 ブウも流石にこの状況での逆転は難しいと理解しているのか、その顔には余裕がない。

 ふざける事も出来ず、最後の切り札だった吸収さえも見抜かれてしまい、ワナワナと震えている。

 

「い、イヤだ! 復活したばかりなのに、消えるのはイヤだ!」

「…………」

 

 ここにきて消滅という末路が目の前に迫っていると理解出来たのだろう。

 魔人ブウの声には明確な恐怖が篭っており、リゼットに憐憫の気持ちを抱かせた。

 この魔人ブウは決して悪党ではない。ただ無邪気なだけだ。

 子供は遊び半分で虫を踏み潰し、時には手足を千切って残酷な遊びを行う。

 それが悪い事だと認識していないからだ。

 この魔人ブウも同じだ。人を殺すのが楽しい事だとビビディに教えられたから行っているに過ぎない。

 しかしそれは大界王神を吸収したからこそ得た心であり、吸収前に彼が宇宙を荒らしていた事は変わらない。

 その大罪を無視して見逃すというのは流石に余りにも都合がよすぎるし、何より彼と和解したとしていつ悪の魔人ブウと分離してしまうか分からないのだ。

 結局のところ、彼は悪の心と分離しない限り地球にとって特大の爆弾でしかない。

 哀れだとは思う。同情もする。だが魔人ブウが魔人ブウである限り、見逃すという選択肢は絶対にない。

 

 ――本当にそれでいいのか?

 今からやろうとしている事は、ただの無垢な子供を袋叩きにして殺してしまうような、そんな行いではないのか?

 そんな迷いを、リゼットは強引に心の内側に閉じ込めた。

 やらねばならないのだ。

 魔人ブウを引き込むにはリスクが大きすぎて、全てが上手く行く保証など何処にもなくて、一歩間違えれば折角絶望の未来を避けたこの世界が滅んでしまうから。

 だからここで倒す……魔人ブウを殺す。

 それが自分の果たすべき責務だから。

 

「許して下さい、とは言いません。

せめて来世がよきものになるよう、閻魔様には私から取り計らっておきます」

 

 リゼットが手を翳すと気のリングが射出され、魔人ブウの腕を、足を、胴を、首を……身体の至る所を拘束し、脱出不能の状態を作り上げた。

 指を動かす事で魔人ブウが空中に吊り上げられ、無防備を晒す。

 その魔人ブウを標的として両腕を頭上で交差し、手の中で気を最大まで集約――リゼットの背中から光の翼が展開され、気が一気に高まった。

 

「これで終わらせます。皆、私に合わせて下さい」

 

 知るのは自分だけでいい。

 悟空達はこんな事を知る必要はない。

 もしかしたら仲間に出来たかもしれない。和解出来たかもしれない……本当はそんなに悪い奴じゃなかったかもしれない……。

 そんな事は自分だけが知っていればいい。自分だけが背負っていればいい。

 その決意のもとリゼットは気を高め、それに合わせて皆が気を集約させる。

 そう、これでいい……これで……。

 

(…………神様?)

 

 そんな彼女の横顔を悟空は見ていた。

 悟空だけが気付いていた。

 リゼットのその顔が苦悶に歪んでいる事に。

 隠そうとして、それでも隠し切れない何かを彼女は抱えている。

 それを誰にも伝えないまま、この戦いを終わらせようとしている。

 セルも何か勘付いているのだろうが、彼は魔人ブウの排除を優先している為に今は目の前の事に集中していた。

 リゼットが何に悩んでいるのか……それを何となく察し、悟空は目を閉じた。

 

「…………やめだ」

 

 悟空はそう呟くと技を中断した。

 そればかりか超化すら解除し、静かな瞳で咎めるようにリゼットを見た。

 その行動に全員が驚く。

 

「……悟空君?」

「神様……何を隠してるんだ?」

「それは……」

 

 孫悟空は、少し抜けている部分もあるが馬鹿ではない。

 リゼットが何かを隠している事、それに苦悩している事くらいは薄々感じ取れる。

 悟空はそんな彼女の悩みを見抜き、穏やかに笑う。

 

「分かるぜ。本当はあいつの事、殺したくねえんだろ?」

 

 リゼットは思わず息を呑む。

 図星であった。表情には出来るだけ出さないようにしていたのに、まさか見抜かれるとは……。

 やはりこの男だけは侮れない。

 リゼットは静かに微笑み、彼の指摘を認めた。

 

「その通りです。

彼は……魔人ブウはただ無邪気なだけ。私達はそんな存在を今からよってたかって殺そうとしている。

あまり……好ましい事ではありませんね」

「リゼットさん、何を言うのです! あれは全宇宙を滅ぼそうとした恐ろしい魔人! 悪なのです!

おやりなさい!!!! さあ! さあ!!」

「しかし、それでもやらなければいけない事というのがあります。

境遇がどうあれ、あの魔人がかつて数多の命を殺めたのは紛れもない事実……そして善悪の区別すら付かないブウは、この地球すら躊躇なく地獄へ変えるでしょう。

悟空君……やりたくないとか、そういう問題ではないのです。やらなければいけないんですよ」

「そうでしょうとも! そうでしょうともっ!」

 

 やりたくない。だからといってこの地球を、そこに生きる者達をチップになど出来ない。

 やるしかないのだ。ここまで来た以上、もう他の選択など取れない。

 そう言うリゼットへ、界王神はテンション爆上げで賛同した。

 

「うるせえ、ひっこんでろ!」

「ぶ!」

 

 そしてターレスに蹴られて崖の下に落ちた。

 界王神とは一体……。

 苦悩を微笑の仮面で隠すリゼットへ、悟空はニィ、と口の端を釣り上げた。

 

「本当にそうか?」

「……」

「あるんだろ、本当は? どうにか出来る方法がよ」

 

 悟空はリゼットの心を読めない。

 だがそれでも、察せるものがある。

 普段の抜けた態度に騙されそうになるが、こういう場面における彼の頭の回転は驚くほどに速いのだ。

 だから分かる。リゼットは本当に万策尽きて魔人ブウを殺そうとしているのではない。

 本当は一枚だけカードがあるのに、それを使いたくないから魔人ブウを殺して妥協しようとしている事に。

 

「あるにはあります……。

あの時の……7年前に私が暴走を引き起こしたあの技を使えば、魔人ブウの中の悪の気だけを消し去れるかもしれません。しかし……」

「なんだ、やっぱりあるんじゃねえか。そんなカンタンな方法が」

 

 リゼットが恐れているのは、また暴走してしまう事だ。

 暴走して、今度こそ自分の手で悟空達を殺してしまう事を何より恐怖している。

 だがそんな彼女の恐怖を、悟空は笑い飛ばしてしまった。

 

「自分の力なんだ。使えねえわけがねえ。

大丈夫だ神様。ぜってえに出来る」

「しかし……」

「オラもよ、実はちょっと勿体ねえと思ってたんだ。

あいつはそんな悪い奴じゃねえ。

だからよ……頼むよ(・・・)神様。あいつを助けてやってくれねえか」

「…………」

 

 ……ずるい。

 リゼットは悟空を、そう思った。

 頼むと、彼はそう言った。きっと分かっていてあえてそう言ったのだろう。

 これで魔人ブウを救いたいというのがリゼットの個人的な欲ではなくなってしまった。

 悟空からの頼みになってしまった。

 だからリゼットは彼を責めるように睨む。

 

「悟空君、分かっていて言ってますよね?」

「さあー、どうかな」

 

 そう言って悟空はまるで悪人のような薄ら笑いを浮かべた。

 分かっている、把握している。

 その上でリゼットが断れないような言い方を選んだのだ。

 見えない重荷を背負ってまで戦って欲しいなどと思わない。

 そんなものは降ろすべきだと思う。

 だから悟空は、彼女の荷物の半分を勝手に奪って勝手に背負ったのだ。

 無邪気で純粋だった少年は、いつの間にか少しだけズルい大人になっていた。

 そして、そんな彼だからこそリゼットの重荷に気付けたし、それを背負えるのだ。

 

「神様……もし失敗しても、オラが何とかする。

だからやってみちゃあくれねえか? このまま死ぬんじゃあ、あいつもやりきれねえだろ」

 

 何とかする……孫悟空の口から出るその言葉の何と頼もしい事か。

 何が起こっても、彼がいれば何とかなると思わされるから彼はずるいのだ。

 そして本当に何とかしてしまうから、孫悟空は皆の中心で在り続ける。

 いつの間にかリゼットすら、その輪に取り込んでいた悟空は根拠のない自信に満ちた笑みを見せた。

 そんな彼に根負けしたようにリゼットは溜息を吐き、上空のブウを見上げる。

 

「信じていいんですね?」

「ああ、任せろ」

 

 ハッキリと言い切る悟空の言葉にリゼットは目を閉じる。

 かつて地球にやってきた小さな運命の子は、最初に出会った時は好奇心旺盛な子供だった。

 それがいつの間にかこんなにも大きく、頼もしく成長していた事に嬉しさと寂しさを感じてしまう。

 彼が後ろに控えていてくれるならば……恐れずに踏み出せる。

 諦めていた新たな運命への道を歩んでいける。

 だから――リゼットは、恐れて目を背け、自ら封じていた禁忌の力を使う事を決断した。

 

 そうだ、恐れているだけでは前に進めない。

 失敗を恐れる事は確かに大事な事だ。

 だがそれで足踏みしていては超えられる壁だって超える事が出来ない。

 大丈夫……信じよう。

 失敗なんかしない。してもきっと何とかなる。

 何故なら、自分の後ろには孫悟空がいるのだから。

 

「……Xenoverse(ゼノバース)……発動」

 

 宣言。それと同時にリゼットの身体を純白の極光が包んだ。

 彼女の気が完全にクリアとなり、感知出来なくなる。

 光の翼は消え、代わりに輝く光輪が出現して神としての位階を一気に引き上げた。

 白金の髪がなびき、その顔からは感情の色が失われる。

 この宇宙では破壊神と、その従者しか到達していないはずの神域。

 その領域へと踏み込んだリゼットに、界王神は驚きすぎて顎が外れた。

 

(……魔人ブウ……消滅させるべき……悪)

 

 悪は殺す、悪は滅する。

 この身は人々の平和を守る神であり、信仰の化身。

 故に世界を脅かす悪を許しはしない。

 その存在を許容しない。

 リゼットの掌に銀河すら抹消して有り余るほどのエネルギーが一瞬にして集約され、それが魔人ブウへと向けられた。

 神の気を集約することによって完成するその技は、あらゆる存在を例外なく『破壊』する。

 それはリゼット自身も知らないことだが、破壊神と呼ばれるこの宇宙の頂点に位置する神が使う力と限りなく酷似していた。

 だが、その前に悟空が躊躇なく立ち塞がる。

 

「神様、そうじゃねえ……力に使われるな」

「……」

「自分の力なんかに負けるんじゃねえ。大丈夫だ……落ち着いて制御しろ」

 

 今、リゼットがこの気功波を放てば悟空といえど一瞬で蒸発させられるだろう。

 そして悟空はサイヤ人であり、今の彼女にとっては滅すべき悪である。

 だから立ち塞がるのは自殺行為でしかない。

 だがそれでも悟空は立った。

 そんな彼にリゼットは破壊のエネルギーを放とうとし――寸前で、踏み止まった。

 

「ぐ……悟空君、どいて、下さい……」

「…………ふう、ひやっとしたぜ……正気に戻ったんだな?」

「え、ええ……しかし長続きはしません。一撃で終わらせます」

 

 かろうじて理性で自分を制御し、リゼットの瞳に正気が戻る。

 しかしこれは一時的なものだ。完全にこの力を使いこなしたわけではない。

 これを使いこなすにはまだ、リゼット自身の力が足りていないのだ。

 だから長時間は続けられない。

 ギリギリで踏み止まっている今、この瞬間に決めなくては。

 

「いきます……」

 

 再び手の中に光が集まる。

 だがそれは先程までの敵を滅ぼす為のものではない。

 滅ぼすのは、悪しき心のみ。

 悪を憎んで人を憎まず……魔人ブウを消さず、彼の中の悪い心だけを『破壊』する!

 

浄化(はかい)!」

 

 技名とも呼べぬその名を宣言し、ブウへと解き放った。

 放たれた一条の光はブウへと突き刺さり、彼の胸の中で輝きだす。

 それはやがて光の渦となり、ブウの全身を飲み込んだ。

 

「おあああああああああ!」

 

 ブウが悲鳴をあげ、その身体から黒い霧が出ては粒子となって破壊されていく。

 その攻撃は十数秒に渡って続き、ブウから感じられる気がどんどん減っていく。

 どれだけ彼の中で悪の心が占めていた割合が高いか分かるというものだ。

 だが以前のように完全な別人にまではしない。

 かつて暴走した時、リゼットは地球の悪人全てを攻撃してしまった。

 そして彼らの中の悪の心を消去し、別人にしてしまった。

 その過ちをもう繰り返さない。ブウをブウのまま、彼の中の悪のブウだけを破壊してみせる。

 やがて光が終わり、リゼットの光輪も消失して膝をついた。

 ブウは地面へと落下して動かなくなったが、気を感じられるので生きているだろう。

 チョコにされていたキビトも無事に元に戻り、周囲を見渡している。

 

「……終わったのか?」

「ええ。何とか、彼の中の悪い心だけを消しました。

これでもう……魔人ブウは私達の敵ではありません」

 

 リゼットはブウを亜空間へと収納し、大きく息を吐いた。

 やはりあの力はまだ、今の自分には早すぎる。

 後数秒も続けていたら理性が飛んでいただろう。

 そんな彼女に悟空が手を差し伸べ、リゼットは無言でその手を取る。

 そして悟空を支えに、何とか立ち上がった。

 

「界王神様」

「はいっ! なんでしょう!」

「魔人ブウは私が責任をもって管理し、教育します。

もし問題を起こせばその時こそ私が彼を倒しますので……ここは観察処分という事で、見逃してはいただけないでしょうか?」

「はいわかりましたっ!」

「……あの、界王神様?」

 

 何だか界王神の様子がおかしい。

 顔を青くして……いや、それは元々だが、とにかく何か妙に腰が低い。

 まるで入隊したばかりの兵士のようにリゼットに服従の姿勢を取ってしまっている。

 しっかりしろ、全宇宙の神。

 まあ、今は混乱しているのかもしれない。そのうち元に戻るだろう。

 

「界王神様は置いておくとして……ともかく、これで当面の危機は去りました。

神殿に戻り、祝杯をあげましょう」

「おっ、飯も喰えるんか?」

「ええ、沢山用意してありますので遠慮なく食べていって下さい。

界王神様達も、よろしければどうぞ」

 

 ともかく、これで地球は救われたのだ。

 決して思った通りの決着ではなかったが、しかし戦いの前に感じていた苦悩はもうない。

 背負うと決めていた十字架もなく、足取りは軽やかだ。

 全ては悟空の……そして皆のおかげである。

 リゼットはそんな愛おしい仲間達と共に神殿へと帰って行った。

 

 その後、悟空達は天下一武道会へ戻り、試合を観戦した。

 悟空達が一斉にリタイアした武道会でベスト4に残ったのはMr.サタンと18号、クリリンとヤムチャの4人だ。

 まず最初にクリリンとヤムチャが戦い、その常人離れした攻防に全観客が釘付けとなった。

 その試合は張り切りすぎた二人が同時に場外に落ちて引き分けに終わってしまい、続く18号とMr.サタンの試合が実質上の決勝戦となってしまった。

 結果、優勝はMr.サタンで準優勝は18号という結果に終わったが、決勝戦で18号がMr.サタンに何か囁いていたのをピッコロとセルは聞き逃さなかった。

 サタンはチャンピオンの栄光を守る代わりに2000万ゼニーの借金を背負ってしまったのだ。

 

 そしてベスト4に終わったものの、念願の1回戦突破を成し遂げた上で激戦を繰り広げたヤムチャはますますスターとして名を轟かせた。

 相変わらず独身だが、勝ち組街道を驀進中のロンリーウルフである。




【悲報】王子やらかさない【何があった】
感想でやらかしを期待(?)されていたベジータですが、今回はやらかしませんでした。
ブウ編ベジータはサイヤ人編と違って結構頼れる王子なのです。
代わりに今回はナッパがやらかしかけ、キビトが流れ弾の犠牲になりました。

【戦闘力】
魔人ブウ(善):400億
・半分以下に弱体化。
原作で悪のブウが抜けたら半分以下になったので4割まで下げた結果悲しい数値に……。
それでもピッコロさんを上回る強さなので活躍出来ないレベルではない。

・現在の神殿メンバー
セル
兎人参化+兎団
Mr.ポポ
ゴッドガードン
魔人ブウ【NEW!】

リゼット(どうしよう……なんだかどんどん変な集団になってる……)



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