ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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最近リゼットの絵を描いてくださる方が何人かいるので、指針としてフリーの立ち絵制作サイトで作ったリゼットの画像でも上げようと思ったものの、『匿名設定の場合は挿絵を利用すると匿名性が失われます』という注意事項を見て断念しました。


第七十七話 復活のフュージョン!!悟空とベジータ②

 到着した界王神界は緑豊かな美しい惑星であった。

 空は澄み渡るように青く、空にはいくつもの星が浮いているのが見える。

 それと同時にリゼットが理解したのは、何故地球が『最も美しい惑星』と呼ばれるかだ。

 何の事はない。この世界こそが美の基準だったのだ。

 神々が住まう界王神界が美の基準にあり、地球はその環境に極めて似通っている。

 だからどの宇宙人からも美しい惑星と認識されていたのだ。

 そのような感想を抱きながら界王神の後に続き、やがて3人は地面に刺さった一本の剣の前に到達した。

 

「これは?」

 

 既に知ってはいるが、一応ポーズとしてリゼットは尋ねておく事にした。

 何故知っているかを聞かれると面倒なのだ。

 

「Zソードといいます。我が界王神界に代々伝わる最強の剣であり、この剣を抜けた者はこの世で最強の力を手にすると言われています。

歴代の界王神達もこの伝説に挑んできましたが、私を含めてこの剣を抜けた者は一人もいません。

しかしリゼットさん。貴女ならばあるいは……」

「いいんですか? 私みたいな辺境の星の神が抜いちゃって」

「構いませんよ。平和の為に使われるならば剣も喜ぶでしょう」

 

 界王神の許可は得た。

 ならばもう遠慮は必要ないだろう、とリゼットは剣の前に立つ。

 まずは試しにそのまま掴んでみるが、ビクともしない。両手で掴んでも同じだ。

 この分だと思いきり引っ張っても結果は同じだろう。

 ならばとバーストリミットをいきなり100倍に解放し、さらに全力で念力をも上乗せして引っ張った。

 見た目こそ涼しい顔で軽く剣を引っ張っているようにしか見えないだろうが、実際は全力も全力である。

 あまりに強く引っ張ったせいで地面が浮かんだように揺れ、どれほどの力で剣が刺さっているかを実証する事になってしまった。

 だが構うものか、とリゼットは更に力を込める。

 すると遂にZソードが地面から離れ、完全に彼女の手へと収まってしまった。

 

「お、お見事です! 素晴らしいですよリゼットさん!」

「ま、まさか本当に下界の神がZソードを抜いてしまうとは……」

 

 Zソードを引き抜く事には成功した。

 しかしこの剣の真の価値は、剣自体にはない。

 そもそも引き抜いて実際に感じた事だが、このZソードは剣単品で見れば大した業物ではなかった。

 いや、業物には違いないのだ。確かにそれなりにいい金属は使っていると思う。

 切れ味もそこそこあるのだろう。

 重さもある以上、振り下ろして使えばかなりの攻撃力も期待出来る。

 だが宇宙最強の力を齎すほどかというと、残念ながら前知識なしでも違うと断言出来てしまう。

 そもそも満足に振り回せないほどに重いのでは武器として欠陥品もいいところだ。

 残念ながらこれでは、まだリゼット自身がカッチン鋼の剣を物質創造した方が強い剣となるだろう。

 もっともリゼット自身がカッチン鋼を見た事がないので創造出来ないのだが。

 そこまで考えて、ふとリゼットは界王神へと声をかけた。

 

「界王神様、少し試し斬りをしてもよろしいでしょうか?」

「ええ、構いませんよ。どうせなら硬いもので試してみましょう」

 

 リゼットが試し斬りを提案すると、界王神は嬉々としてその言葉に同意した。

 そして物質創造能力でカッチン鋼を創り出し、宙に浮かべる。

 まずは狙い通り。これでカッチン鋼を見る事が出来たのであれを少し詳しく調べれば次からはリゼットもあれを創造する事が可能となるはずだ。

 

「いきますよ!」

 

 界王神が投げてきたカッチン鋼を前に、リゼットはあえて力任せにZソードを叩き付けた。

 リゼットの技能を活用すれば刀身に気を纏わせてカッチン鋼すらも切断するのは決して不可能ではない。

 だがこのZソードの真価は折れた後にこそある。

 つまりZソードが無傷で残っていては困るのだ。

 故にリゼットはわざと荒く、剣に負担がかかるようにカッチン鋼へと叩き付けた。

 すると当然のように刀身が折れ、飛んで来たカッチン鋼を余裕をもって避ける。

 これでよし。後は老界王神が勝手に出て来て声をかけてくれるはずだ。

 

「ゼ、Zソードがァァァ!?」

「界王神界に伝わる伝説の剣がァァ!?」

 

 界王神とキビトは作画崩壊したかのように顔を崩して驚愕しているが、どうやら心底この剣が凄いと信じていたらしい。

 目玉が飛び出しそうなほどに目を剥く様は、カリスマブレイクというレベルではない。

 とりあえずフォローを入れておくべきだろう、とリゼットは二人へ声をかけた。

 

「ええと。どうやらこのZソードという剣、伝説ほど凄いものではなかったようですね」

「そ、そそ、そ、そんな馬鹿な。わ、我が界王神界に伝わる最強の剣のはずが……」

「しかしですね。こう言ってはあれですが、正直武器としては微妙ですよこれ。持ってみて下さい」

 

 リゼットはそう言い、界王神へと剣を渡す。

 界王神は何の疑いもなく剣を手にしたが、直後そのあまりの重さに驚き、剣を落としてしまった。

 慌てて引き上げるも、かなり辛そうだ。

 とりあえずキビトのように持ち上げる事すら出来ないという事はないらしい。

 

「な、なんですか、これは! 折れているはずなのに、も、物凄く重いですよ」

「でしょう? これではとても使い物になりませんよ。

切れ味がいいならまだ救いはあったのですが、肝心の切れ味もイマイチですし……まあ重いので鈍器としてはそれなりに優秀だったかもしれませんが」

「そ、そんなはずが……伝説は所詮伝説だったという事、でしょうか」

 

 界王神がガックリと項垂れ、肩を落とす。

 代々伝わってきた最強剣がまさかのハッタリとくれば落胆も隠せないのだろう。

 しかしそこに「違うぞ」としわがれた声が聞こえ、界王神とキビトは驚いて後ろを振り返る。

 それも無理のない事だろう。自分達以外誰もいないはずの聖域に、自分達以外の声が聞こえたのだから。

 分かり易く例えるならば、鍵をかけた自宅にいる時にいきなり聞き覚えのない声が聞こえたようなものだ。

 そして振り返った先にいたのは見覚えのない……しかし紛れもなく界王神と分かる老人であった。

 

「へっへっへっへ」

「あ、あの、貴方は?」

「儂か? 聞いて驚くんじゃ。

儂はよ~。なんとなーんと、お前のよ~。

15代前のよ~界王神なんだな~、これが」

「えええ!? じゅ、15代前のご先祖様!?」

 

 今ここにいる界王神は既に500万年以上生きている。

 その彼ですらまだ界王神としては若造であり未熟者なのだ。

 界王神とはそれほどに長寿であり、一つの代変わりの間にいくつの知的生命体が生まれ、そして文明を築いて崩壊するかが分からない。

 少なくとも地球人類の歴史は、今ここにいる界王神がビビディを討った頃辺りにようやく二足歩行が出来るようになったと言われている。

 そして恐らく、彼が老人になり代変わりをする頃には今と比べ物にならないほど発展しているか、あるいは滅びているかのどちらかだろう。

 そんな界王神の15代前とくれば、それはもう数億年単位も昔の人物という事になってしまう。

 驚くなというのが無理な話だろう。

 

「そうなんだな~。

昔よ、やったら強くて悪い奴がおってよ。

そいつによ、あの剣に封じ込められてしまったんだな~、これが。

わしの恐ろしさにびびってよ、そうしたんだな~」

「恐ろしさ、ですか。それは一体どんな力なのです?

失礼ですが、あまり直接の戦闘力は感じられないのですが」

「ふふん。知りたい?」

「ええ、知りたいです」

 

 とりあえず、何も聞いていないのに勝手に語るという事は、本人が語りたがっているという事だ。

 要するに自慢したいのだろう。

 ならばここで乗っておく事で話を引き出すのが得策だろう。

 原作ではここで悟空が悪癖を発揮して事をややこしくしてしまったが、リゼットはそんなミスを犯す気はない。

 

「わしはよー、なんとよー。

どんな達人でも、隠された力をドーンと、ドーンと引き出せてしまうんだなーこれが。

へへへ、聞いた事ある? こんな能力」

「確かナメック星の先代最長老さんが潜在能力を引き出す力を持っていましたね。

それと魔導師バビディも限界以上に力を引き出す魔術があったと聞いています。

それらとは違うのですか?」

「な、何? そんな奴等がいるのか。

だ、だが絶対に儂の方が凄い。絶対じゃ」

 

 ここで少しだけ対抗心を煽っておくのも忘れてはならない。

 しかしあくまで少しだけだ。あまりやりすぎると今度はヘソを曲げてしまう恐れがある。

 界王神相手にこのような誘導は少し無礼かとも思うが、こうして自分からやってくれるように仕向けないとこのエロ爺さんは最悪『胸や尻を触らせてくれないとやってあげない』とか言い出しかねないのだ。

 

「よーし、儂の方が凄いって事を見せてやる。

あの剣を抜いたのはお前さんだな? そこに立つんじゃ」

「はい、分かりました」

 

 どうやら無事やる気になってくれたらしい。

 まあ悟空のように気弾を当てていないというのも大きいのだろう。

 もしかするとわざわざ煽るまでも無く、出してもらったお返しでやってくれたかもしれない。

 

「あの剣を抜いて振り回せる者ならよ。儂にかかれば絶対に宇宙一になれる」

 

 リゼットは目を閉じて、ここにいない悟飯に少しだけ申し訳なく思っていた。

 本当ならばこの潜在能力解放は悟飯が行ってもらえるはずだったものだ。

 結局のところ潜在能力を解放してもらっても悟飯が活躍する事はほとんどなかった上にGTでは変身すら出来なくなって超サイヤ人ベジータ以下になってしまっていたが、それでも彼のパワーアップの機会を奪ってしまった事は変わりない。

 その分は自分が地球の危機を防ぐ事でどうか許して欲しい、とリゼットは内心で詫びた。

 

「しかしよ。あの剣を抜いてよ、儂を出してくれるのはよ。

界王神の誰かだと思っていたのによ。

まさか下界の神に助けられるとはよー。世も末じゃのお」

「も、申し訳、ございません」

 

 老界王神は界王神に皮肉を飛ばし、界王神が縮こまってしまう。

 フォローすると彼は決して弱くはない。

 彼の実力はかつて苦しめられたメタルクウラ一体分に相当する。

 ただ、戦いのレベルが進みすぎて相対的に弱く見えてしまうだけなのだ。

 

「よーし、そこに立ってあんまり動いちゃいかんぞ」

「はい」

「じゃあ始めるぞ。

……フンフンフーン! フフフのフーン!」

 

 一体どんな凄い事をするのかと思えば、突然のこの奇声をあげてのダンスである。

 普通ならば一体何をふざけているのかと思うだろう。

 しかし顔を見れば老界王神は至って真面目そのものだ。

 

「あ、あの、ご先祖様。それは一体どれほど続くのです?」

「儀式に5時間! パワーアップに20時間じゃ!」

 

 それは酷い拷問だ、とリゼットは苦笑してしまった。

 とはいえ自分ならば余裕で耐える事が出来る時間でもある。

 これでも昔はカリンの元で精神修行をやっていた時期もあるのだ。

 そのカリンとは今や立場が逆転し、神様と呼ばれるようになってしまったがあの時の経験は今でもリゼットの中で生きている。

 たかが一日+1時間など何の問題にもならない……ただしそれは、普段の話だ。

 今はあの世とこの世が繋がり、あちこちが混乱している。

 この事態をなるべく早く収めなければ被害が広がる一方だろう。

 だから自分が25時間待つのはいいが、実際に25時間経過するのは駄目だ。

 故にリゼットは、儀式の前に一つの提案をした。

 

「すみませんが、場所を変えてもらっていいですか?」

「……え?」

 

 

「……驚いた。お前さん、とんでもない力を眠らせているな?」

 

 儀式(ダンス)が終わり力の解放に取り掛かって10時間後。

 リゼットと老界王神がいる場所は界王神界ではなく、地球の精神と時の部屋の中であった。

 ここならば25時間過ごしても外では僅かな時間しか経たない。

 勿論老界王神にここの環境は酷なので、リゼットのバリアが彼を保護している。

 そして儀式が半分ほど終わったところで、老界王神は汗を流しながら上記の問いを発したのだ。

 一体何を聞いているのか、は考えるまでもない。

 彼の潜在能力を限界以上に引き出すというのはハッタリでも何でもなく、本当にリゼットの持っている力の全てを引き出してしまえるようだ。

 つまりは、視てしまったのだろう。リゼットが自らの意思で封印しているあの禁忌の領域すらも。

 

「はい。以前に二回だけ使った事がありますが、一度目は制御出来ずに暴走してしまいました。

それ以降、私は自らの意思でこの力の使用を自身に禁じています」

「ふむ。お前さん、それがどれほどの力か分かっておるのか?

それはよ、『神の領域』じゃぞ」

「神の領域、ですか? あの、私これでも地球の神なのですが」

「そうじゃない。今までお前さんが見てきたような神の力とは次元が異なるんじゃ。

本当の神の力ってのはよ、戦闘力が表面化しない限りなくクリアな気の事を言う。

お前さんは既にその域に片足を入れた状態にあるようじゃが、力を解放すれば完全にその上の位階へと移行出来ちまうだろう」

 

 老界王神もまさか予想していなかったのだろう。

 破壊神以外の……それもこんな辺境の神がその領域へ入りかけているなどという事は。

 そして悩んでいるのだ。その力を引き出してもいいものかどうかを。

 

「悪いが、その力は解放せずに眠らせたままにしておくぞ。

神の領域抜きの純粋なお前さんの潜在能力のみを解放するに留めておく」

 

 老界王神も普通ならばこんなケチな事はしない。全て解放する。

 だがリゼットが持つ神の領域はそれほどのものであり、制御出来ない力の解放など危険なだけだ。

 それでも老界王神の力で引き出されたならば以前よりずっと制御し易くはなるだろうが危険には変わりない。

 だからまだ早い。老界王神はそう考えたのだ。

 

 

 そして更に10時間が経過し、遂にリゼットのパワーアップは終了した。

 己の力を探ってみれば、確かに意図的にかけられたリミッターがあるのが理解出来る。

 とりあえず神の領域を除いた全ての潜在能力を解放した結果、見た目は全く変化せずに、かつ負担すらもなくリゼットは己の力が一気に跳ね上がった事を実感した。

 

「……は!」

 

 まずは軽く気を放つ。

 するとそれだけの事で空間に穴が穿たれ、神殿の景色が映し出された。

 本来の歴史ならば超サイヤ人3のゴテンクスでようやく可能となった、膨大な気に物を言わせての精神と時の部屋からの脱出。それが可能になったのだ。

 そして思う――これならば、ジャネンバにも勝てる、と。




【戦闘力】

・リゼット
基本戦闘力:12億
アルティメット化:6000億

【倍率】
500倍。
悟飯ならばもっと行くだろうがリゼットならばこんなもの。
それでも十分破格の強化。

【バーストリミットとの併用】
一応可能だが、気の制御がとても難しい。
超サイヤ人+界王拳と同じで制御をミスると自滅して死ぬ。
悟空が超サイヤ人習得後は界王拳を使わなくなったのと同じく、リゼットも今後は慣れるまでバーストリミットをあまり使わないと思われる。

【ゼノバースとの併用】
不可能。
両方とも変身技なので同時発動は出来ない。
言ってしまえば『神の気まで含めた全潜在能力解放』がゼノバース。

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