ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第八話 天下一武道会

 カプセルコーポレーションから重力室のカプセルを購入した、というよりは特注で造ってもらったリゼットは早速それを聖堂の隣に設置し、修行を開始した。

 買いに行った時は『何で天女がそんなの欲しがるの?』といった顔をブルマにされてしまったが、まあ気にしないでおこう。

 重力は最大で300G。無論今のリゼットがそんな重力をかければ潰れてしまうが、後まで長く使う事を考えれば多少最大値は高くした方がいい。

 とりあえず、当面の目標は戦いが激化するまでに――つまりサイヤ人襲来までに重力150倍くらいを克服しておく事だろうか。

 100倍を克服した悟空が確か戦闘力9万くらいだったので、多分13万くらいにはなれるんじゃないだろうか……なれるといいなあ。

 

「とりあえず慎重に……まずは10倍から」

 

 下手に高く設定して、それで潰れて死んでしまってはただの自殺だ。

 だからまずは10倍にする。

 今の自分の実力ならどうという事はないと分かっているが、念のためである。

 

「……ふむ。十倍くらいではこれといった負荷は感じませんね。では20倍……25倍……」

 

 メモリを少しずつ調節し、今の自分にとって丁度いい辛さの重力を選ぶ。

 10倍は軽くて多分修行にならない。

 20倍は負荷を感じるが、まだ気にならないレベルだ。

 30倍まで行くと一気に身体が重くなり、まるで全身が重りと化したような錯覚を覚えた。

 どうやら今の自分にとって修行に適しているのはこの辺りのようだ。

 そう判断したリゼットは30倍でメモリを止め、早速基礎トレーニングに入る。

 バーストリミットは使わない。素の能力を上げるのが目的なので使う意味がない。

 というより下手にバーストリミットを使うと重さが感じられなくなり、修行にならないのだ。

 かといってバースト状態で重いと感じる重力にしては解除時に重さで即死しかねない。

 故にここで能力増幅を行う理由はどこにもなかった。

 

「よし、久しぶりに実力の伸びが実感出来る修行になりそうです」

 

 これで自分は強くなれる。

 その確信を抱き、リゼットは演舞のように身体を動かした。

 

 

 ――重力修行舐めてた。

 重力室購入より1年。リゼットはこの修行の効率のよさを思い知らされていた。

 具体的に言うと強さが一年で3倍以上になったのだ。

 数字にして……200神様といったところだろうか。

 大体6万前後と考えていいだろう。

 よく考えれば悟空も1週間で8000だった戦闘力が90000になるくらいなのだから、それは効果があるに決まっている。

 やはり重力による負荷はそれだけで身体を鍛えてくれるのだ。

 ベジータが後の方までずっと重力修行を愛用する理由が分かるというものだ。

 

 ……冷静に考えれば1年で3倍は、悟空と比べると泣ける遅さである。

 何せ向こうは1週間で10倍以上だ。話にならない。

 いくら瀕死パワーアップを駆使したとはいえ、この差は泣ける。

 やっぱりサイヤ人って凄い。リゼットは深くそう思った。

 

 さて、今日もまた重力修行と洒落込みたい所だが一時中断だ。

 何せ今日は天下一武道会当日。

 漫画で見た数々の試合を生で見れる大チャンスなのだ。逃す手はない。

 今のリゼットにしてみればレベルの低い試合である事は違いないが、だからといって楽しめないわけではない。

 例えは悪いが、総合格闘技の世界王者だってカブト虫とクワガタの戦いを楽しめる。それと同じ理屈だ。

 それに単純な数値では測れない技術というものがある。

 亀仙人の試合は見ても損をしないだろう。

 

 武道会場へ行くと早速一番前へ飛んで行き、観客席の囲いの上に座った。

 当然こんな入場の仕方をしては周囲は驚くし、特に顔見知りでもあったブルマ達(最前列にいた)は尚更だ。

 しかしリゼットは自分が目立つ事に関してはもう諦めたらしく、まるで気にした様子はない。

 

「リ、リゼット様! 何でここに?!」

「暇なので悟空君の応援に来ちゃいました」

「ひ、暇ってあんた……」

 

 リゼットの言葉にブルマが「そんな理由で」と言っているが、実際暇なので嘘は言っていない。

 たまに神様の神殿に行ったり、神仙術を教わってみたりしてはいるものの、基本的にあの山はリゼット一人しかいないのだ。

 ずっとくる日もくる日も延々、修行漬けの日々。

 自分の強さが上がるのを実感出来るのは嫌いではないが、それは別にしてやはり暇にはなる。

 だから今回の観戦はちょっとした息抜きのようなものだった。

 

 1回戦のヤムチャ対ジャッキーチュンに変な感動を覚え、ランファンにたじろぐナムに笑い、バクテリアンの臭さにたまらず一時退却し、鼻がないのに高速戦闘の最中に鼻糞を飛ばすクリリンに驚いた。

 そうして試合を見ながらこの後の展開を何となしに思い出す。

 決勝戦は悟空対ジャッキーチュン。ファンとしては是非間近で見たい試合だった。

 確か途中で悟空が大猿になってしまうので、亀仙人のMAXパワーかめはめ波を見る事も出来る。

 

「…………あ」

 

 ――兎人参化忘れてた。

 いけない、そのうち助けてあげようと思って今の今まですっかり忘れていた。

 そして今日観戦に来なければ忘れたまま、後になってしまったと気付いた事だろう。

 リゼットは囲いの上から浮くと、高度を上げる。

 

「あれ? リゼット様どこに行くの?もう決勝戦始まるわよ」

「ちょっとやるべき事を思い出しまして」

 

 今からならばまだ間に合うだろう。

 これから始まる試合を見れないのは少し残念だが、まあ見殺しにするわけにもいくまい。

 この時、真上に飛ぶのではなく斜め上に飛ぶのがポイントだ。

 足元まで届き、ヒラヒラフワフワしているスカートは多少の角度があれば絶対に中身を見られる事はない。

 だがこのまま垂直に上に上がってしまうと、ウーロン辺りに覗き込まれないとも限らないのだ。

 250歳のお婆ちゃんだが、心は少女だ。えっちいのは嫌いです。

 

 大気圏を抜け、月面へと着陸する。

 すると――いた。

 兎人参化とその部下二人が餅を丁寧に量産しているのが見える。

 もしかしてあれからずっと餅を突いていたのだろうか?

 

「兎人参化さんですね?」

「ええ、いかにも私が兎人参化ですが、これは珍しい。こんな月面にお客様とは……ささ、どうぞ。餅しかありませんが」

「あ、これはどうも。頂きます」

 

 兎人参化は心なしか嬉しそうに言い、つきたての餅を皿に載せるとお茶と一緒に差し出してくる。

 その姿にはかつて人々を恐れさせた盗賊団首領の面影はなく、ただの餅突き兎そのものだった。

 餅を突き続けているうちに毒気が抜けてしまったのかもしれない。

 リゼットは差し出された餅を一口食べ、それからここに来た目的と自分の素性を語る。

 

「自己紹介が遅れました。私はリゼットと申します。人々の間では龍天女とも呼ばれていますので、そちらの方が解り易いでしょうか」

「おお、貴女があの亀仙人や鶴仙人と並び称される伝説の3人のうちの一人……なるほど、噂に違わずお美しい。お会い出来て光栄に思います。ささ、どうぞ、黄粉も付けてお召し上がり下さい」

「あ、どうも。頂きます……それでですね、実は近いうちにこの月が破壊されてしまうんです」

「ファー!?」

 

 先程まで落ち着いていた兎人参化が驚きを露にする。

 まあ、こんな所まで送られた挙句月破壊とか嫌過ぎるだろう。

 いくら知らない事とはいえ、亀仙人も結構酷い事をする。

 

「ですので、もう悪い事をしないと約束して頂けるなら私が地球まで戻してあげますが」

「も、勿論ですとも! 私達は心を入れ替えたのです! な、なあお前達!」

「へ、ヘイ親分!」

「そ、その通りでさあ!」

 

 既に邪心はほぼ失せている一団だが、何かの拍子にまた悪事に走らないとは限らない。

 だが、こうして軽く脅しを入れておけばもう悪さしようという気にはならないだろう。

 リゼットは3人の返事に頷くと、超能力で3人の身体を浮かす。

 そして飛翔。

 3人と、ついでに何故か月にいた本物の兎数匹を連れて地球へと降下した。

 それにしても何故彼等は宇宙空間で平然と生存出来るのだろう……実に不思議だ。

 

 地球にある己の聖堂へ兎人参化達を降ろす。

 今の彼等は文無しの歩く兎だ。このままそこらに放り出しては生活が厳しいだろう。

 仕事をしようにも前評判が悪すぎる。

 誰が好き好んで元盗賊団を雇うというのだ。

 だからまずは、生活の目処が立つまでの間の面倒くらいは見てやろうとリゼットは考えている。

 せっかく更生しても、生活が出来ないのでは犯罪に走ってもおかしくない。

 それを防止するのもまた、拾った者の義務と彼女は考えていた。

 

 それらの事を彼等に伝え、至聖所以外ならばどこを使っても構わないと告げる。

 至聖所は一応リゼットの私室に当たり、また神様の宮殿と繋がっているのもここなので流石に立ち入りさせるわけにはいかない。

 月にいた兎達には後で専用の小屋を作ってあげてもいいだろう。

 

 そうして彼等の処遇を決めた後にリゼットは会場へと戻った。

 それと同時に轟音が響き、閃光が爆ぜる。

 どうやら丁度亀仙人が月を破壊した所だったらしい。

 MAXパワーを見逃した事を残念に思いつつ、リゼットは一番前の囲いまで戻った。

 

「あ、リゼット様! この大変な時にどこ行ってたんですか!? 孫君が変身しちゃって大変だったのに!」

「ええと、月の兎さん達を回収に」

「え?」

「何か月に人がいたようでして……その方々を回収しておりました」

「…………そ、そう、なんですか」

 

 ブルマとウーロンは流石に心当たりがありすぎるのか、それ以上何か言ってくる事はなかった。

 いくら悪人でも、流石に月と一緒に消し飛ばされていいとまでは思わないらしい。

 その後は悟空とジャッキーチュンの試合を見る事に集中し、やがて忘れたかのように盛り上がっていた。

 試合結果は――記憶と同じだ。

 共に疲労がピークに達した二人が最後に蹴りを放ち合い、リーチの差でダメージが浅いジャッキーチュンが勝利した。

 この結果についてリゼットは順当な結果だと思っている。

 そもそも大猿化というアクシデントがなければ萬國驚天掌で決まっていた勝負であり、それが現時点での両者の差というわけだ。

 

 ともかく、やはり生は違う。

 単に強いだけでなく、実にユーモアに溢れた試合だった。

 惜しむらくは最後の方しか観戦出来なかった事だろう。今の今まで兎人参化を忘れていたのが悔やまれる。

 

 次の天下一武道会は3年後。

 次こそは見逃さず最後まで見るぞ、と変な決意を固めながらリゼットは優勝者に惜しみない拍手を送った。




【鼻のない地球人(?)】
クリリンに鼻がない理由は、皮膚呼吸が出来るから(!?)
これはこのSSの独自設定などではなく、鳥山明先生が自ら語った公式設定である。
ここで重要なのは鳥山先生が『鼻はないが皮膚呼吸が出来る』ではなく『鼻が無い理由は皮膚呼吸が出来るから』と答えている事。
これは似ているようで全然違う。
鼻が無いから皮膚呼吸を会得したわけではなく、皮膚呼吸が出来るから鼻が退化したのだ。
つまりクリリンは突然変異などではなく、進化の過程でああいう姿になった、あの姿で完成している生物である。
……こいつ実は宇宙人なんじゃないかな……。

ちなみに、ファミコンソフト『ドラゴンボール 神龍の謎』ではクリリンそっくりの『クリリアン』というクリーチャー(!?)が登場する。
彼の二つ名は『宇宙一の殺し屋』。つまり宇宙人である。
また、彼は四本腕の宇宙人だがそのうちの二本をブーメランのように飛ばす事が可能。

……クリリン……お前本当に地球人なんだよな?
ブーメランにした腕を紛失したクリリアン本人とか、その末裔とかじゃないだろうな?

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