ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第八十一話 最強のフュージョン

 一時的に戦場から退避した悟空とベジータは仙豆で体力を回復し、言い争っていた。

 いや、言い争うというよりはベジータが一方的に怒鳴っているというのが正しいだろうか。

 ベジータはたった今、フュージョンの方法とポーズを見せられた所なのだが……それがあまりにも格好悪かったのだ。

 フュージョンのポーズはもはやギャグでやっているとしか思えないダサさであり、悟空が自分をからかっているのではないかとすら思ってしまう。

 勿論そんなはずはなく、悟空の表情は真剣そのものだ。

 

「冗談じゃない! そんなみっともない真似が出来るか!」

「そんな事言ったってよ……こういう技なんだから仕方ねえだろ」

「それに俺はまだ合体する事にも納得していない! 誰が貴様なんかと……」

「ベジータ」

 

 激昂するベジータとは対極に、悟空の声は落ち着き払ったものであった。

 決して咎めるような声色ではない。

 だが普段は滅多に聞く事のない彼の静かな声色にベジータの怒りが僅かに削がれた。

 

「分かってんだろ? オラ達のどっちが戦ってもブロリーにゃ勝てねえ。

他の誰が行っても同じだ。ここであいつを止めなきゃ、地球は終わりだぞ」

「ぐ……それがどうした! 貴様と合体するくらいなら俺は一人で戦って死を選ぶ!」

「そりゃあ一人でやれるんなら、それが一番いいさ。オラだって本音を言えばそうしてえ。

一人で好きなだけ戦って一人だけで死ねるんなら、それも悪くねえ」

 

 それは少しどころか大分一般人からズレた考え方だ。

 サイヤ人は闘争を好む。

 ならばその闘争の中で死ぬならば、それはそれで別にいいのだ。

 戦士としての本懐とすら言えるだろう。

 ただしそれは、死ぬのが自分だけならば……の話だ。

 

「けどよ、ここでオラ達が負けちまったら地球人みんなが殺されちまう。

ブルマも……トランクスもだ。おめえはそれでいいのか?」

「……ぐ」

 

 ベジータの顔が苦悶に歪み、ブルマとトランクスの……家族の笑顔が彼の脳裏を過ぎった。

 気に入らなかった。

 自分ともあろう者が家族を持ち、悪くない気持ちになっている。

 居心地のいい地球が好きになっている。

 穏やかに変わっていく自分が……そしてそれを見透かしたような悟空が、心底気に入らなかった。

 

「……くそったれが! やるんなら、さっさとやるぞ!

カカロット、早くそっちに立ちやがれ!」

「……」

 

 ベジータが意を決し、フュージョンのポーズを取る覚悟を決めた。

 だが悟空は意外にもそれに喜ぶでもなく、無言で彼を見ている。

 そして驚くべき事を言い出した。

 

「いや、焦りすぎると失敗すんぞ。ベジータ……おめえちょっとポーズ取って見せてくれねえか?」

「何ィ!? お、俺に……あのみっともないポーズを貴様の前でやれというのか!」

「ああ。おめえちゃんとポーズ覚えてんのかと思ってな。

おめえ恥ずかしがってんだろ? けどそれじゃあ、ポーズを失敗するかもしんねえ」

「貴様、ふざけてるのか!? 今は急がなくてはならないんだろうが!」

「ああ、急がなきゃなんねえ。ピッコロ達もそう長い時間は戦えねえだろ。

だからだ、ベジータ。この合体は絶対に失敗出来ねえ。フュージョンは一度合体すると元に戻るまで30分かかっちまうんだ」

 

 悟空は決してふざけていない。悠長に構えていない。

 だが切迫した時ほど一周回って冷静になれるだけだ。

 急ぐのは大事だ。ピッコロもそう長続きはしない。

 しかしだからといって焦って合体して、それで失敗すれば最悪だ。30分もブロリーは待ってくれない。

 だから何が何でもこの合体は一度で成功させなければならないのだ。

 失敗は許されない。

 だが焦った今のベジータではポーズを失敗する可能性が高い。先程の自分の説明だってちゃんと聞いていなかっただろう。

 なのでまずはポーズをやらせてみる。そしてミスがあれば指摘し、その上でフュージョン本番に入るのだ。

 

「ほれ、やってみろベジータ。時間はねえぞ」

「く……く、く……くそったれええええええ!!」

 

 ベジータの叫びが木霊し……その後ベジータは、悟空の懸念通りにポーズを間違えていたので三か所ほど指摘された。

 

 

 ピッコロの攻勢は長くは続かなかった。

 今のピッコロは融合によって得た超パワーの上から界王拳60倍を用いて無理矢理ブロリーに食らいついている。

 だが界王拳とは元々身体への負担が大きい技だ。

 いかにピッコロでも60倍は無理という他ない。今の彼がギリギリ安定して出せる出力など30倍がいい所なのだ。

 そういう点で言えばリゼットの使うバーストリミットも同じなのだが、この二つには大きな差が存在している。

 それはバーストリミットがリゼットの為だけにリゼット自身が編み出した専用の技であるのに対し、界王拳は界王が編み出した……元々は彼の為の技だという事だ。

 つまりは技と術者の親和性が違う。

 バーストリミットとリゼットの相性は極めて高い。

 当たり前だ。リゼット自身が自分の為に編み出した技なのだから相性がよくないはずがない。

 逆に言えばリゼット以外がバーストリミットを使っても100倍などという倍率を叩きだす事は不可能だろう。

 実際、カリンやMr.ポポもリゼットからこの技を伝授されているが20倍が限度であるし、今後倍率が上がる可能性は低い。

 そう考えればピッコロはむしろ界王拳を使いこなしていると言える。

 超サイヤ人に追いつくために血の滲むような努力を重ね、身体を負担に慣らし、必死に修行を続けた。

 だがそれでも30倍が限界だ。これ以上は身体がついてこない。

 戦闘力をどれだけ上げても戦闘力を倍加させるというのは無茶な事であり、その倍率を増やすのは簡単な事ではない。

 それを無理矢理引き上げて60倍で使っているのだから、当然負担は計り知れない。

 命を削っていると言っても過言ではないだろう。

 動くたびに筋繊維が断裂し、内臓を負傷し、血を吐きながらピッコロは戦っていた。

 隙を見てはターレスやセルが前に出てピッコロが回復する時間を稼ぎ、その間にピッコロが仙豆を飲み込んで無理矢理戦闘を続行する。

 まさに狂気の沙汰だ。常人ならば身体が壊れる痛みで動くどころではない。

 こうまでしなければブロリーには追いつけない。戦いにすらならない。

 それほどにブロリーは強すぎる。

 だがここまで尚……ここまでやって尚だ。

 

 ――ピッコロの戦闘力は、ブロリーの三分の一程度でしかない。

 

 ブロリーから見たピッコロは決して強敵ではない。

 ただ少し手強いというだけの虫けらだ。

 他よりはまだ面倒だから、潰す事を優先した……本当に、その程度の認識でしかないのだ。

 そしてピッコロが命を振り絞って稼いだ時間も、まだ一分にすら達していない。

 何という理不尽だろうか。何という怪物だろうか。

 だがそれがブロリーなのだ。千年に一度だけ現れる伝説の超サイヤ人とは、こういう存在なのだ。

 あのフリーザが恐れ、宇宙最強最悪として語り継がれてきた怪物の中の怪物。

 規格外を超えた規格外。それが、この男だ。

 

「邪魔だ!」

「ぐおっ!?」

 

 ブロリーの剛腕に吹き飛ばされ、ターレスが地面を転がった。

 ピッコロが仙豆を食べる僅かな時間……それを稼ぐたびに仲間の内の誰かが倒れていた。

 ナッパは既に(分かりにくいが)超化が解けて気絶しており、クラッシャー軍団もカカオとアモンドしか残っていない。

 カカオとアモンドはターレスの前に庇う様に飛び出すが、悲しいかな。力の差がありすぎる。

 この二人では時間稼ぎすら出来ないだろう。

 

「馬鹿野郎、下がれ! お前達の敵う相手だと思うか!」

「……ンダ!」

 

 カカオは一度ターレスに振り向いて親指を立て、アモンドも笑う。

 

「ターレス様……俺達がお供出来るのはここまででっせい。

一足先に、地獄に戻ってお待ちしておりまっせい!」

「ンダ!」

 

 実力が足りない。勝てない。だからどうした。

 自分たちは恐れ知らずの宇宙の壊し屋クラッシャー軍団。

 敵が前にいるならば、向かうだけだ。

 アモンドとカカオがブロリーに突撃し、虫でも払うかのような一撃でアモンドが消し飛んだ。

 続いてカカオがブロリーに組み付き――自爆。

 爆炎が上がるが、当然のようにブロリーは無傷で煙の中から現れた。

 

「うおおおお!」

「お前、みんなをイジめるな!」

 

 セルと魔人ブウが同時に突撃し、ブロリーへと猛攻を仕掛ける。

 だがブロリーは棒立ちのまま攻撃を受けながら二人へと拳を叩き込んだ。

 それだけでセルとブウが地面を転がり、ダメージを受けない魔人ブウだけが立ち上がる。

 

「その程度のパワーで俺に勝てる気でいるのか?」

 

 包囲網が崩れた事で、ブロリーが遂に攻撃に転じた。

 セルとブウを無視して突っ切った彼はピッコロの顔を掴んで、握力任せに圧を加える。

 普段のピッコロならばこれで頭が潰れていただろうが、界王拳で力を高めている今ならば耐えられないほどではない。

 だが少しでも緩めればそれが彼の死ぬ時だ。

 長時間持続出来ない界王拳60倍を続けねば死ぬ。続けても反動に耐えきれなくなれば死ぬ。

 ブロリーは仙豆の効能もピッコロが無理をしている事も分からないだろうが、しかし本能で有効な手段を理解していた。

 

「おのれ!」

 

 セルと魔人ブウがピッコロを解放するべくブロリーへ攻撃を加える。

 背後から蹴りを。横から拳打を。

 だがブロリーはまるで見向きもせずに力を込めてピッコロの頭を圧迫し、何とか逃れようと放たれる蹴りにビクともしない。

 むしろその抵抗を楽しんでいる。

 

 そしていよいよピッコロの命が尽きる――その瞬間、横から飛んできた何者かの蹴りがブロリーを吹き飛ばした。

 

 現れたのは……この場の誰も知らない戦士だった。

 逆立った金髪と生え際はベジータを思わせるが、顔立ちは悟空に近い。

 服装はメタモル星人という異星人が着る独特の衣装で、ブロリーすら上回る気を放出していた。

 見た事のない戦士だ。だがピッコロ達は一目で理解した。

 あれこそ悟空とベジータが融合した、ブロリーを倒す地球最強の戦士の姿なのだと。

 

「なんなんだあ……貴様はあ……。

カカロット……ベジータ……?」

 

 カカロットのようであり、ベジータのようでもある。

 その不可思議な戦士にブロリーが顔をしかめると、戦士は静かに己が何者かを口にした。

 

「俺は悟空でもベジータでもない。俺は貴様を倒す者だ!」

 

 宣言と同時に戦士――悟空とベジータが融合してさしずめゴジータといったところだろうか。

 ゴジータが黄金の光を纏ってブロリーへと挑んだ。

 それに対しブロリーもすぐに応戦するが、ゴジータの拳によって空へと飛ばされてしまう。

 

「ぐあ!?」

 

 それはブロリーにとって初めての経験であった。

 今までの戦いのような格下の攻撃ではない。

 以前の戦いの時のように格下が一瞬だけ自分を上回ったのとも違う。

 生まれて初めて出会った明確な『格上』。一撃で分かる拳の重み。

 今ブロリーは初めて、自分よりも強い男を前にしていた。

 

「ヌウウ……!」

 

 ブロリーの顔が憤怒に染まり、ゴジータへと殴りかかった。

 だがゴジータはそれを軽々と流してブロリーの胸板に拳を放り込み、更に蹴りを二発、三発と入れる。

 そのまま流れるように回転。まるで舞うように連撃へ移行して渾身の蹴りでブロリーを弾き飛ばした。

 飛んでいくブロリーへ一瞬で追いついて尚も拳と蹴りを放ち、ブロリーの反撃を的確に防いで流す。

 

「ウオオオオ!」

 

 ブロリーが攻撃されながらも構わず拳を振り下ろす。

 だがゴジータの姿が煙のように消え、次の瞬間にはブロリーの背後に立っていた。

 ――直後。ブロリーの胸と腹がまるで殴られたかのようにへこみ、更に拳打の跡が何度も刻み込まれる。

 あまりに速すぎて攻撃された事にすら気付かなかったのだ。

 よろめきながらブロリーが気弾を放つが、ゴジータはもうそこにはいない。

 跳躍したゴジータはブロリーの側頭部に膝蹴りを叩き込み、彼がよろめいた所でもう一度膝を叩き込む。

 そのまま反動で後方宙返りを決め、普通ならばそのまま離れていくはずのところを舞空術との合わせ技でブロリーとの距離を詰めた。

 そして空中でもう一度後方へと回転してサマーソルトキックを決め、ブロリーの顎を蹴り上げた。

 そのアクロバティックな動きにブロリーはすっかり翻弄され、反撃の糸口すら掴めない。

 そんな彼へと背を向けて着地し、片腕を上へ掲げた。

 掌の中には虹色に輝く気弾が生み出され、そこから感じられる力にブロリーが後ずさる。

 しかし敵に恐怖するなど、最強の存在である彼には許されない。

 誰が許さないという話ではなく、彼自身が自分を許せないのだ。

 

「ウオオオォォォォッ!」

 

 獣のように吠え、ゴジータへと突撃する。

 それに合わせてゴジータが手の中の輝きを放ち、ブロリーの身体を爆発が包み込んだ。

 だがそれでもまだ倒れない。まだ止まらない。

 ブロリーは震える足に鞭打ち、ゴジータへと向かっていく。

 それを見てゴジータも生半可な攻撃では仕留めきれないと踏み、ブロリーを仕留めるべく走る。

 

「でやあああ!」

「オオオッ!」

 

 ゴジータの拳がブロリーを殴り、ゴジータの足がブロリーを蹴る。

 だがブロリーは確かなダメージを負いながらも反撃に転じ、ゴジータをガードの上から弾き飛ばした。

 ゴジータは決して加減していない。先程までと同じだけの力で攻撃している。

 だがブロリーが反撃に転じるまでの時間が明らかに短くなっていた。

 もう、慣れ始めている(・・・・・・・)

 ブロリーはゴジータの攻撃に、その速度に、威力に……この短時間で順応し始めているのだ。

 そればかりか、ゴジータの強さに引き上げられるようにブロリーの気がますます上昇し続けていた。

 ゴジータへと大股で走り、素早く横へ回り込んで来たゴジータの動きに反応して気弾を生成する。

 だがそれをぶつける直前にゴジータが跳び、空中で側方回転をして反対側に着地しつつブロリーを蹴り飛ばした。

 更に気弾連射。ベジータの得意技でもあるそれを放ち、ブロリーを打ちのめす。

 

「ぐおあああああっ! お、おおおおおお!!」

 

 雨あられと撃たれる気弾にブロリーが苦悶の叫びをあげ、大きくのけぞった。

 だがこのまま終わらないからこその伝説だ。

 ブロリーはのけぞった姿勢で口を大きく開くと、ゴジータ目掛けて口から気功波を発射した。

 それを前にゴジータはまるで怯まずに走り、跳躍して気功波を避けるとブロリーの後ろに着地して気弾を放つ。

 背中を焼かれながらもブロリーは気力で膝を突く事を堪え、消えぬ闘志と執念に燃える白眼でゴジータを睨んだ。

 

「グウウ……カカロットォォォォォ!」

 

 ブロリーが気を撒き散らしながら突撃し、それにゴジータも正面から応じる。

 瞬間――世界が割れた(・・・)

 余りに常軌を逸脱した二人の気が空間すら破壊し、戦いの舞台が異空間へと移行した。

 上も下も前も後ろもない。

 現世から隔絶した、世界の裏側とも言える空間の中でゴジータとブロリーが飛び、二つの流星が何度も激突しては離れる。

 

「ウオオオオ!」

「はあああッ!」

 

 ブロリーが拳を放つ。ゴジータも負けじとブロリーを殴る。

 ゴジータの拳打で殴り飛ばされたブロリーがすぐに復帰して殴り返し、ガードごと吹き飛んだゴジータが即座に体勢を立て直してブロリーを蹴る。

 何度も何度も、殴っては殴られ、蹴っては蹴られ、二つの流星はまるで絡み合う様に飛び回り、打撃音が響き渡る。

 

「オオオオーーーッ!!」

 

 ブロリーの拳がゴジータを殴り飛ばし、ゴジータが吹き飛んでいく。

 その後をブロリーが追いながら気弾の嵐を撃つが、ゴジータは振り返る事なく速度を上げた。

 鳥が翼を畳むように腕を身体に密着させ、戦闘機のように横に回転(スナップロール)しながら気弾の僅かな隙間を的確に通っていく。

 高度を上げたゴジータを追尾して気弾が曲がり、まるで空に落ちる光の雨のような光景を作り出す。

 だがその雨の僅かな隙間をゴジータが潜り抜け、ブロリーへと肉薄した。

 

「だああっ!」

「ガアア!」

 

 ブロリーとゴジータの拳打が鈍くぶつかり合う。

 二人は飛行速度を落とす事なく、高速で飛びながらも攻防を止めない。

 殴り殴られ、蹴って蹴られ。

 二人の間で何度も暴力の交換が行われ、打撃音が数十数百と響き渡る。

 進化を続けるブロリーの怪物性は既に、ゴジータにすら追いつきつつあった。

 しかしゴジータもまだ限界ではない。ブロリーが無限に成長するというならば、こちらだって更に上を見せるだけだ。

 

「はあああああーーーッ!!」

 

 ゴジータの全身をスパークが覆い、超サイヤ人2へと変化した。

 これによって再びゴジータの強さがブロリーを上回り、加えて戦闘の経験も技術もブロリーが劣る。

 力任せの拳を跳躍して避け、空中で後方宙返りしつつブロリーの顎を蹴り上げた。

 更に膝蹴り。ブロリーの顔に膝をめり込ませ、放たれた拳を避けて懐に潜り、拳打を腹に突き刺す。

 今はまだゴジータが遥かに勝る。

 だが時間をかければどうなるか分からないのがブロリーだ。

 このまま戦いを続ければあるいは、この可能性の塊はゴジータすらも超えてしまうかもしれない。

 普通ならばあり得ない事ではある。だがそのあり得ないを実現させてしまうのがブロリーだ。

 故に時間は与えない。強くなるための間を与えずに、一気呵成に止めを刺す。

 その為に、苦悶に崩れたブロリーの前でゴジータは両腕を突き出して気を高めた。

 全身を覆う気が更に力強さを増し、可能性の怪物を完全に葬るべく超サイヤ人3へと移行する。

 

「これで終わりだ……ブロリー!」

 

 ――ビッグバン・かめはめ波。

 

 ベジータの技であるビッグバンアタックと悟空の技であるかめはめ波を融合させたゴジータの切り札だ。

 その一撃がブロリーに炸裂し、空間が再び砕けて元の世界へと戻った。

 

「うぅおおああああああーーーッ!!」

 

 ブロリーが絶叫し、咄嗟に張ったバリアごと吹き飛ばされて上空へと運ばれる。

 気功波は空を越え、成層圏を越え、リゼットの張った封印すらも貫いて宇宙をも越えて……やがてブロリーを母なる太陽へと押し込んだ。

 偶然ではない。全て計算した上での攻撃である。

 いかに最強のサイヤ人であるブロリーといえど生物だ。

 熱さを感じる事もあれば寒さを感じる事もある。

 気による攻撃や拳打には耐えられるかもしれない。

 だが生物である以上、太陽の中心温度である1500万度に耐えられるようには出来ていない。

 

「ガァ、アアアアアアア!」

 

 ブロリーが焼けていく。消えていく。

 彼は間違いなく最強の才能の持ち主だった。千年に一人の逸材だった。

 だがどんな最強の存在であっても、無敵ではない。

 進むべき道を間違えれば、その先にあるのは破滅だけだ。

 

 彼はどこで道を間違えたのだろうか。

 もしも彼が悟空に拘らなければ……己の中の凶暴性を少しでもコントロールしようとしていたならば。

 ――あるいは、彼にも違った未来があったのかもしれない。

 

「カ、カ、ロットォォォォォ!!!」

 

 ビッグバンかめはめ波と太陽の熱で焼かれ、ブロリーが断末魔の叫びをあげる。

 そして、やがて彼の身体は細胞一つ残さずに完全にこの世から消え去った。

 

 

 

 ブロリーが消えていった空を見上げ、ゴジータは静かに笑う。

 どんな脅威が来ても、何度復活しても……相手がどれだけ強くても。

 それでもこの星を好きにはさせない。

 何故ならここには守りたいものがあって、切磋琢磨出来る仲間がいるのだから。

 無事に平和を取り戻した地球に吹いた優しい風は、まるで戦士達へ送られた地球からの感謝の言葉のようであった。




地球「あざっす、あざっす! マジあざっす! ゴジータさんお疲れ様っス!
あ、もっと風吹かせましょうか!? 寒いっスか!? そうっスか!」
太陽「毎回俺に変なの押し付けるのやめーや」

【戦闘力】
復活ブロリー:16億→19億(ゴジータ戦で上昇)
伝説の超サイヤ人3:1兆2800億→1兆5200億

ゴジータ:300億
超ゴジータ:1兆5000億
超ゴジータ2:3兆
超ゴジータ3:12兆

【フュージョン倍率】
このSSでは弱い方の戦闘力×60倍とします。
ゴテンクスが初めて合体した際に慢心して魔人ブウに挑んだのでノーマルのままでも単体の超サイヤ人よりは上としつつ、派手なインフレ防止の為にあまり倍率を上げたくないので60倍にしました。

Q、それだとゴテンクス弱くね?
A、原作では悟天とトランクスは精神と時の部屋で修行を積んでいますが、このSSではその修行イベントがない分弱いです。
多分原作ゴテンクスの半分くらいの強さしかないんじゃないかな……。

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