ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

85 / 176
今回は束の間の平和という事で短編集のようなものになります。


第八十四話 一時の平和

【安易な解決法】

 

 セルは一日に数時間ほど、神殿からいなくなる時がある。

 彼の目的はどこかに逃げ延びているナメック星人の探索であり、未来に戻った時の為にその居場所を見付け出す為にこの時代に留まっている。

 なので神殿にいない時は瞬間移動でどこかの惑星に移動して情報収集をしているのだろう。

 そして今日もまた、調査を切り上げて神殿へと帰ってきた。

 

「お帰りなさい、セル。何か収穫はありましたか?」

 

 修行の休憩時間に魔人ブウと対戦プロレスゲームで遊んでいたリゼットがセルに気付き、声をかける。

 画面の中ではリゼットが操作するキャラクターがブウのキャラクターにベアークローを突き刺している。

 コーホー。

 

「いや、ないな。だが範囲は確実に狭めている」

「……セル。もうドラゴンボールを使ってはどうです?」

 

 セルの目的はドラゴンボールを使えば、簡単に達成出来る事だ。

 当初はまだセルへの警戒と、また騙されるかもしれないという考えもあったのでセルにドラゴンボールを使わせなかったが、7年も経てば少しくらいは信じてもいいという気になる。

 しかしセルはその提案を一笑した。

 

「それではつまらんではないか。こういうのは地道に探すから面白いのだ。

安易な解決法に頼っていては達成感がない。未知を探すのはなかなかに楽しい事だぞ」

「そういう所は、一体誰の細胞の影響なんでしょうね」

「さてな……案外、貴女かもしれんぞ」

「……」

 

 セルに言われ、リゼットは思わずなるほど、と思ってしまった。

 そういえば最初は、未知を楽しみたいという気持ちから全てが始まったのだったか。

 それがいつの間にか未知に怯えるようになり、失敗を恐れるあまりに効率優先の手段ばかりを取るようになってしまった。

 しかし、失われたと思っていた自分の本質的な部分はしっかりとセルに継がれていたようだ。

 

「では、今後も?」

「ああ、自力で見付けてやるさ。まあ焦らずゆっくりやればそのうち見付かるだろう」

 

 とりあえず、セルはもうしばらくこの時代に留まるらしい。

 

 

 

【次世代の子供達】

 

 悟天とトランクスはよく一緒に遊ぶ親友同士である。

 この二人は大体セットとして扱われるが、時々、二人組が三人組になる時がある。

 今日もまた、悟天とトランクスの所へとその少女(・・)が訪れていた。

 赤いロングヘアにぱっちりとした瞳。父に似て若干褐色の肌。

 容姿は母の若い頃に似ていて、年齢は今年で10歳になる。

 トランクスよりも2つ年上の彼女は、ターレスとスノとの間に生まれた一人娘だ。

 つまりはサイヤ人と地球人の混血である。

 服の下に隠れているが、ターレスとスノの教育方針なのか悟天達と違って尻尾もしっかり残っていた。

 田舎の雪国ならではの寛大さというべきか。都会と違って尻尾の一つくらい生えていても誰も気にしないのだ。

 都会ではめっきり見なくなってしまった獣人や竜人なども田舎に行けばまだ見る事が出来るので、それも尻尾が気にされない理由の一つかもしれない。

 

「あら、ユキちゃん。いらっしゃい」

「お久しぶりです、おば様」

 

 普段は雪国で過ごしているのでたまにしか会わないが、それでもターレスが来た時などは一緒に彼女もついて来る。

 サイヤ人との混血らしからぬ丁寧な挨拶にブルマも顔を綻ばせ、自分の子にも見習わせたいと思っていた。

 未来から来たトランクスは礼儀正しい好青年だったのだが、現代のトランクスはやんちゃな悪ガキだ。

 生活環境の違いや父親が存命という事も関係しているのだろうし、未来の惨状を知っている身としてはのびのびと育ってほしいという親心もあるが……それはそれとして、やはり将来の為に礼儀は身に着けてほしい。

 なのでブルマは、ユキという礼儀正しい少女と接する事でトランクスもその影響を受ける事を期待していた。

 そのまま少女はトランクス達と一緒に遊びに行き、その後ろ姿を見送ってからブルマはターレスへと声をかけた。

 

「本当にいい子よね、ユキちゃん。父親とは大違い」

「ひっでえなあ」

 

 ブルマにからかわれたターレスは苦笑いして肩をすくめた。

 ちなみに彼がここにいるのは彼の育てた果物をカプセルコーポレーションに売る為だ。

 ブリーフ博士は家の中に様々な動物や恐竜を飼っており、その餌としてターレスの育てた果物が人気なのである。

 

「だが、あんまり油断しない方がいいぜ」

「え?」

「確かにあいつは他所ではいい子ちゃんだ。お前の前は勿論、スノの前でもそれで通している。

だが忘れるな、あいつは俺の娘だ」

 

 ターレスがそう言っている頃、少し離れた場所まで飛んだ悟天は不思議そうにユキへと話しかけていた。

 

「ねえユキちゃん」

「何かしら?」

「何でみんなの前では話し方とか変えてるの?」

「ホホホ、何の事でしょう。私はいつでもおしとやかで礼儀正しい女の子なのです」

 

 悟天の問いにユキは心外だとばかりに微笑む。

 しかしそこに、トランクスが「よく言うよ」と口を挟んだ。

 

「こいつ神様みたいになりたいんだよ。無理無理、なれるわけないって。

こいつのパパの口癖を借りるなら天と地ほどの差が……」

 

 そこまで言ったところでユキの雰囲気が一変した。

 口の端が吊り上がり、目つきが鋭くなる。

 その背後に一瞬、悪党時代のターレスの幻影が見えたのは気のせいではあるまい。

 一瞬で被っていた猫を脱ぎ捨てたユキはトランクスの顔を掴んで、万力のような力で締め付けた。

 

「お喋りは早死にするぜトランクス……この星のど真ん中にお前の墓を立ててやろうか?」

「うげっ、もう本性出しやがった! だから無理だって言ってるんだよ!」

 

 トランクスはスーパーサイヤ人になって無理矢理ユキの魔の手から逃れて文句を言い、悟天も同じく変身をする。

 それに合わせて何とユキまで超サイヤ人へと変化した。

 しかもその気は、ターレスに鍛えられたのかトランクスや悟天を上回っている。

 

「いくぞ悟天! 今日こそぎゃふんと言わせるぞ!」

「うん、トランクス君!」

「お前達の力で私に敵うと思うか!? 私とお前達の間には天と地ほどの差が存在しているのだ!」

「嘘つけ! 僅差じゃないか!」

 

 トランクスが叫び、悪ガキ三人が空中で激突した。

 ちなみにユキが必死に隠している本性だが、気を感知出来る戦士達には薄々勘付かれてしまっている事に本人はまだ気づいていない。

 

 

 

【ストレス解消】

 

 リゼットは基本的に神殿から出る事はない。

 神としての職務もあるし、何より出る必要があまりないからだ。

 最近宇宙に出てホイのような邪悪な魔導師を減らしているが、基本的には神殿暮らしだ。

 しかしそんな彼女が二週に一度は赴く場所がある。

 それは都にあるドッグカフェである。

 リゼットは大の猫好きだが、実は犬も好きだったりする。

 更に言うと兎も好きだし(ただし人参化は例外)、大型だが虎や狼も問題ない。

 モフモフしてれば何でもいいのだろうか、こいつ。

 勿論下界に行く以上は変装は必須だ。なのでドレスの上からコートを羽織り、頭には帽子をかぶっている。

 そうして一般人に紛れて思う存分に犬を構い倒した彼女は、ストレスを発散してまた明日から頑張れるのだ。

 神様がこんな事してていいのかと思われるが、そこは大丈夫。バレなければ問題はない。

 しかしホクホク顔で店を出て行く彼女は、『天女様のお墨付き!』という垂れ幕がある事に気付いていなかった。




【ユキ】
ターレスの娘。あまり出番のないオリキャラ。
清楚系の上品なレディを目指しているが、本性はターレスに近い。
クラッシャー軍団の魂を受け継ぐ者。
基礎戦闘力は800万で超サイヤ人にも覚醒済みである。
本性を出すと、ランダムでクラッシャー軍団のうちの誰か一人がスタンドのように一瞬背後に出現する。
必殺技は父譲りのキルドライバー。発射時の掛け声は勿論「死ねーーー!」
他にもアモンドの『プラネットボム』やダイーズの『メテオボム』も使いこなす。
混血児の中では最もサイヤ人としての残忍性と好戦的な性格を色濃く受け継いでいる。
本人はか弱い女の子を演じているので戦闘には参加しないし、出番もない。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。