ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第八十五話 神と神①

 ヒルデガーンとの戦いから4年の月日が経過した。

 平和な時間が経つのは本当に早いものだ。

 この4年の間はこれといった事は起こっていない。精々ベジータの弟が来訪したくらいか。

 神殿の中央で風を浴び、髪をなびかせながらリゼットは軽くない達成感に身を委ねていた。

 この世界に生まれてより270年間。ここまで続いてきた戦いが彼女の脳裏を駆け巡る。

 サイヤ人にフリーザ、セルに魔人ブウ。劇場版の敵達。ついでに2年前に来て悟天とトランクスに撃退されたというアボとカド。

 その全てを乗り越えて、今ここに誰一人欠ける事なく今日という日を迎えている。

 敵のうちの何人かは悟空達に丸投げしてしまった事もあるが、地球の神としては恥ずかしくない程度にはこの星を守れたはずだ。

 この先にGTと同じ出来事があるかもしれないが、それはまだ6年以上先のはずだ。

 ならば今から手を打てば事前に防ぐ事も不可能ではない。

 しかし安心ばかりしていられない理由もまた一つだけ存在していた。

 ――魔神ドミグラ。

 リゼットがいくら知識を掘り返してみても、原作にもアニメにも劇場版にも登場していない未知の敵。

 幻影のドミグラはまるで大した事のない敵ではあったが、それも今のリゼットだからこそだ。

 例えばベジータなどが戦えば充分に苦戦するだけの強さはあり、たかが幻影にあれだけの強さを持たせる事が出来る程に本体が強いという事を意味している。

 つまり、まだ終わっていない。満足するには早いのだ。

 とはいえ、今くらいは平和を謳歌しても罰は当たらないだろう。そもそも神様は自分だが。

 

「さて、それでは行きましょうか。

ポポ、戻るまでの留守をお願いしますね」

「はい、神様」

 

 あれから4年経ち、平和になった今もリゼットは修行を休む事なく続けている。

 ブリーフ博士の造ってくれた新型重力室(最大3000G)での修行とセルやブウとの組み手、それから瞑想での精神鍛錬をローテーションで行い、週に1日は思い切り休むというサイクルだ。

 悟空達も日々修行を重ねており、ますます強さを増している。

 特に仕事をしていない……ではなく、最も修行時間の長いベジータの戦闘力向上は凄まじく、今や基礎能力だけならば悟空に並ぶ勢いだ。

 悟空、ナッパ、ターレスはそれぞれ仕事をしているのでベジータほど伸びていない。

 特に悟空は家計も苦しく、チチに働けとせっつかれているので猶更だ。

 流石に不憫だったので、今まで地球を守ってくれたお礼として物質創造術で金塊を創って渡したのだが(こういうのは本当はあまりよくないのだ。やりすぎると金の相場が崩れてしまう)、それでも悟空はやはり働けと文句を言われていた。

 チチ曰く、『悟空さは金があると仕事しないから使い切った事にしただ』らしい。

 どうやら金の有無というより、一家の大黒柱としてちゃんと働く姿を子供達に見せてやって欲しいようだ。

 しかし悟空はそれでも合間合間に暇を見付けては界王星に出向いて修行をしていた。

 チチが実は金塊を使わず保管している事にも薄々気付いているのだろう。

 

 だが今日はその修行はない。何故なら今日はブルマの38歳の誕生日であり、リゼットとタピオン兄弟、セルやブウに人参化も誘われているからだ。

 悟空も少し界王星で修行をしたら、切り上げてこちらに来るだろう。

 結局あの後タピオンは地球に残り、今では修行の合間に神としての業務を教え込んでいる。

 これはいずれリゼットが地球の神を辞めた時の為の後継者となるべく今から色々と教えているのだ。

 タピオンはあの一件、特にミノシアとの再会の機会を与えられた事でリゼットに深く感謝し、恩を返したいと申し出てきた。

 無論リゼットとしてはそこまで気にしなくてもいいと思っている。

 そもそも封印を守れずに眠りから起こしてしまった責は自分にもあるのだ。

 その事を説明してもタピオンは、リゼットへの感謝の気持ちは変わらないと爽やかな笑顔で言ってのけた。

 

「俺の人生は、本来ならヒルデガーンを封印した時点で終わっていたはずでした。

俺達兄弟は宇宙の為に永遠に、あの世にも行けずに封印され続ける覚悟だったのです。

しかし貴女のおかげで俺は新たな生を得て、二度と会えないと思っていたミノシアとも再会出来た。

……俺達は、本当に救われた……。

貴女は俺の恩人だ。貴女がしてくれた事は、貴女が思う以上に大きい。

だから俺は、この第二の人生を貴女への恩返しに使いたいのです」

 

 日差しを浴びながら一切の曇りのない色男全開の笑顔でこの台詞である。

 流石宇宙一格好いいモヒカンと言われる男だ。心構えが違う。

 でもちょっと彼、義理固すぎやしませんかね。

 だが恩返しをしたいと言われてもリゼットは実際のところ、タピオンの手を借りるほどに困っている事がない。

 ドミグラの件には現在進行形で困っているが、残念ながらこの件に関してはタピオンの出来る事は皆無だ。戦いのレベルに差がありすぎる。

 しかしリゼットには及ばずとも、その戦闘力は少なくとも界王神よりは上だ。

 更にヒルデガーン完全体の火炎放射すらも防ぐバリアも身に付けており、剣術の腕も一流。

 何より聞いたところコナッツ星人は寿命が地球人よりも長いらしく、リゼットは彼を己の後継にする事を思いついた。

 地球が安定するまで……とりあえず後100年くらいは神の座にい続けた方がいいかな、とは考えているがリゼットはそのうち地球を完全に出て外なる宇宙へ旅立つつもりだ。

 だが、その時になって後継がいないのでは話にならない。

 デンデを連れてくる事を考えないでもなかったが、今までの経験上、ある程度の強さがないと不安になってしまう。

 その点タピオンならば素質は申し分なく、かなりの実力向上が見込めるだろう。

 性格も誠実で優しく、ビジュアル的にも界王神に似てるので神様にしてもあまり違和感がない。

 彼ならば地球を任せてもいいだろう。

 そう判断したリゼットは、今から彼を後継として育てる事を決意したのだ。

 今では次代の神候補として悟空達とも顔見知りであり、特にトランクスは彼を兄のように慕っていた。

 

 ところでどうでもいいが、ブルマは今年で45歳である。

 38歳誕生日とは随分サバを読んだものだ。

 

 

「さあ、楽しい楽しいビンゴ大会の始まり〜始まり〜!」

 

!?

 

「地球は楽しい〜と、こ、ろだよ〜! ごーはーんもーおーいしーい!

楽しいビンゴ! ビンゴォ!!」

 

 皆から少し遅れて誕生日パーティー会場に到着したリゼット達はいきなり混乱の極みに立たされていた。

 一体何がどうしてこのような事態を招いたのか……到着早々に彼女達が見せられたのは、ヘタクソな歌とダンスを披露して盛大なキャラ崩壊を起こしているベジータの勇姿であった。

 いや、ここ最近のベジータが昔からは想像出来ないくらいに丸くなっていたのは知っている。

 彼の弟であるターブルが来た時などはその妻のオプーナみたいな宇宙人にペコペコと頭を下げて弟が世話になっている礼を述べていたし、オプーナを買う権利を貰っていた。今となってはベジータは少し口が悪いだけで普通にいい人だ。

 しかし、だからといってだ。いくら妻の誕生日だからといってここまではしゃぐ男でもなかったと記憶している。

 一体彼の身に何があったというのか……もしかして酔ったのか?

 

「セ、セル。私は幻でも見ているのでしょうか? あのベジータがダンスを披露しているように見えるのですが」

「い、いや……私も同じものを見ている。恐らくあれは幻などではなくブルマが造り上げたベジータそっくりのアンドロイドか何かだろう」

『どっちも違うぞ』

 

 呆気に取られて現実逃避をしていたリゼットに、遠く離れた界王の念話が届いた。

 緊急事態でもない限り界王が話しかけてくる事は基本的にはない。

 その彼がこうしてコンタクトを取ってくるという事は、つまりは緊急事態なのだろう。

 ベジータのダンスのせいでいきなり呆気に取られてしまったが、よく見れば参加者の中に二人、見知らぬ人物が紛れ込んでいる。

 一人はコーニッシュレックスという種類の猫によく似た獣人。あまり可愛くない。

 もう一人は独特の髪型をした青い肌の優男だ。

 どちらも只者ではない……非常にクリアで感じ取り難い気ではあったが、リゼットはかろうじて二人のかつてない強さを感じ取っていた。

 仮に今の自分や悟空達が束になってかかっても、どちらか片方に容易くあしらわれてしまう程に強さの桁が……否、次元が違う。

 恐らくは11年前に暴走した時の自分と同等か、あるいはそれ以上。

 そんなのが二人、パーティーにさらっと交じっている。

 リゼットはすぐにベジータの心を読み取り、そして地球がかつてない危機に晒されている事を瞬時に悟った。同時に、彼がプライドを捨てて機嫌取りに走るほどの事態であり、もしも戦いになればあの二人には勝ち目がほとんどないという事も。

 しかも驚くべき事に孫悟空は既にあの猫人間にやられてしまった後らしい。

 あの無駄に打たれ強い孫悟空をたった二発でKOとは……とんでもない強者がいたものだ。

 

『……事態は把握しました。正直驚いています……これほどの力を持つ神がいたとは……』

『う、うむ、何というか流石じゃな。話が早くて助かるぞ。

とにかくそういうわけじゃ。絶対にビルス様の機嫌を損ねるでないぞ』

『ええ……何とか、上機嫌のまま去ってもらいます』

 

 こんな事態は知識に全くない。

 原作とGTの合間にこんな出来事があったという設定も見た事がない。

 だが事実、今こうして破壊神という恐ろしい存在が地球へ来てしまっている。

 ……ドラゴンボールの世界で破壊神と呼ばれたり自称したりした者は何人か心当たりがある。

 例えばセルはアニメで完全体になった時のタイトルが『戦闘力無限大!! セルという名の破壊神誕生』だったし、GTでは破壊神ルードという敵もいたはずだ。

 同じくGTの敵である超一星龍も破壊神を自称していた。

 だがそれらとは全く別の、本物の破壊神がこれほどの存在だったとは……。 

 

 リゼットは軽く息を吐き、心を落ち着かせる。

 大丈夫、精神鍛錬は毎日のようにやっている。動揺せずに普段通りに振舞うのは得意だ。

 無駄にへりくだってヘコヘコするのは避け、さりげなく相手を立てつつ接待すればいい。

 普段通りの微笑みを浮かべ、リゼットはビルス達の前へと歩み出した。

 

「あ、神様。来てたの?」

 

 事態をイマイチ把握していないブルマがリゼットへと手を振り、全員の視線が集中した。

 ビルスとその付き人もリゼットへと顔を向け、付き人は「ほう」と呟いた。

 

「ん? この地球の神かい?」

「はい。貴方は破壊神様ですね。

此度は遠路遥々、よくぞ我が星へお越し下さいました」

「へえ、僕を知っているのかい。感心だね」

 

 リゼットの口から破壊神、という単語が出た事でその場の全員が反応を示した。

 どうやら彼が破壊神という事を知らずに接していたらしい。

 特にヤムチャなど、「やっちまった」という顔をしている。

 どうやら彼は持ち前のフレンドリーさを無意味に発揮してかなり気安く接していたようだ。

 

「ああそうだ。君、超サイヤ人ゴッドって知らないかい?」

「……いえ、聞き覚えのない名です。サイヤ人の神ですか?」

「いや、うーん、どうだろう。名前の響きからいってそれっぽくはあるんだけど、僕も詳しくは分からないんだ。ただ、予知夢を見てね……超サイヤ人ゴッドっていうのが僕を楽しませてくれるはずなんだよ」

「まあビルス様の予知夢は結構外れますけどね。アイドルが近所に引っ越してくるとか」

 

 ビルスの付き人がさりげなくビルスの予知夢を馬鹿にするが、ビルスもそれに本気で怒る様子はない。

 それにしても宇宙単位のアイドルとは一体どんなのだろうか。

 リゼットの脳裏には「みんな、抱きしめて! 銀河の果てまで!」などと言っている超時空シンデレラが登場していたが、次の瞬間には何故か白いニンジャロボットが出現してブンシン・ヘルタツマキでスリケンを投げてしめやかにアイドルが爆散してしまった。ワザマエ!

 

「わかりました。調べてきましょう」

「お? 調べる事なんか出来るの?」

「ええ。過去に精神を飛ばす部屋がありますので、そこでサイヤ人の歴史をあたってみます。

それまではこのパーティをお楽しみ下さい」

 

 そう言い、リゼットは物質創造の神術でクレープを作り出してビルスとウイスに渡した。

 皆の記憶を見る限り、ビルスとウイスは地球の食べ物を結構気に入って喜んでいたようなので、ちょっとしたご機嫌取りだ。

 ビルスは早速クレープにかぶりつき、「美味いぞー!」などと叫んでいる。

 とりあえずは成功のようだ。

 時の部屋は以前に時の神の手の者に破壊されてしまったが、あれからポポが修理してくれたので過去の閲覧だけは可能になっている。

 神殿に戻るついでに余計な事をしそうなヤムチャと魔人ブウの襟首を掴み、そのまま転移した。

 可哀想だが、ビルスがいなくなるまではパーティー会場から強制退場だ。

 ヤムチャとブウは置いてくる。とてもこの戦いには付いて行けそうもない。

 

(超サイヤ人ゴッド、ですか……多分、超サイヤ人4の事ではないですよね。

何か、全く知らない設定が出て来てしまいましたが……まあ、頑張って探すとしましょうか)

 

 会場はベジータやセルがしばらくは持たせてくれるだろうが、限度もあるだろう。

 リゼットはビルスの機嫌が悪くならないうちに調べてしまうべく、時の部屋へと直行した。




【時の部屋】
バーダックに壊されましたが、ポポが修理して過去の閲覧だけは出来るようになっている。

【神と神】
ドラゴンボールシリーズの劇場公開作品第18弾。
完結から18年以上経ってから公開されたまさかの新作映画。
他のパラレルワールド扱いの映画と違い、完全に正史という扱い。
ただし『超』とは展開が若干違う。
ベジータがビンゴダンスを踊った事で有名な一作。

【破壊神ビルス】
今作のボスキャラ。
神というものが軽視されがちなドラゴンボールの世界において突如出現した悟空達を遥かに上回る神。
意外とチョロく、美味しい食べ物を与えておけば色々我儘を聞いてくれる。
毎回食べ物を餌に、ブルマにいいように使われている節がある。

【ウイス】
ビルスの付き人の天使。未だに底を見せていない。
ナヨナヨした口調で話すキャラだが、ビルスの師匠であり第七宇宙最強。
ビルス同様、食べ物で釣れる。


【戦闘力】
・リゼット:20億
アルティメット化:1兆

・孫悟空:9億
超サイヤ人:450億
超サイヤ人2:900億
超サイヤ人3:3600億

・ピッコロ:100億
界王拳(30倍):3000億

・セル:900億
パーフェクトセル:1800億

・ベジータ:8億
超サイヤ人:400億
超サイヤ人2:800億

・ターレス:7億5千万
超サイヤ人:375億
超サイヤ人2:750億

・魔人ブウ:600億

・ナッパ:5億
超サイヤ人:250億
スパーク付きのヒゲ:500億

・孫悟飯:2億
超サイヤ人:100億
(学者に専念して弱体化&超2への変身はやり方を忘れた)

・タピオン:50億

・トランクス
基礎戦闘力:800万
超サイヤ人:4億

・孫悟天
基礎戦闘力:780万
超サイヤ人:3億9千万

・カリン様:7億
バーストカリン20倍:140億

・Mr.ポポ:6億
バーストポポ20倍:120億

・兎人参化:2億
バーストラビット10倍:20億



・破壊神ビルス:???
・ウイス:???
・ランカスレイヤー:ニンジャ



Q、ピラフ一味は何でドラゴンボール集めてないの?
A、11年前に暴走リゼットの気弾を浴びてピラフの悪の心が消滅して別人化したから。
(ピラフは問題ばかり起こすので後のドラゴンボールでも戻して貰えなかった)

Q、コナッツ星人って寿命長いの?
A、このSSの設定です。見た目的に界王神に似てるので長く生きそうな気がしました。
まあオルゴールの中に1000年もいたんだし、老化を止める術があるという事で。

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