ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第八十九話 トランクスとバーダックの挑戦

「あれからどれだけ腕をあげたのか、見せてもらいますよ」

 

 そう言って静かに佇むリゼットを前にトランクスとバーダックは構えを取った。

 腕試しの場所は人のいない惑星で行われる事となり、二人はリゼットと正面から相対している。

 トランクスはあれからかなり腕を上げたと自負していたが、どうやらリゼットはそれ以上に実力を伸ばしていたらしい。

 今の彼女は光輪を背負っておらず、トランクスも見知った光翼を展開した姿だ。

 つまり神域を解除した状態であり、それでも尚二人より実力で勝る。

 崖の上にはビルスとウイスが立っており、トランクス達の実力を見極めるべく目を光らせていた。

 

「はい、お願いします!」

「女相手に二人がかりか……俺も落ちぶれたもんだぜ」

「バーダックさん。リゼットさんを甘く見ては……」

「わーってるよ。だからこうして二人がかりに賛同してやってるんじゃねえか」

 

 2対1という構図がバーダックには不満なのだろう。気持ちは分からないでもない。

 何せリゼットは実年齢はともかく外見年齢は14歳前後の少女であり、とても戦いなど出来るようには見えないのだ。

 こう言ってはあれだが、戦闘意欲を刺激される相手ではないし至極やりにくい。

 悪党ならばその辺りも気にしないのだろうが、トランクスやバーダックにとって外見は愛らしい少女を殴るというのはこの上なくやりにくい事だ。

 だがこのテストに落ちればビルスとウイスが時間の流れを破壊してでもドミグラと戦おうとしてしまう。

 絶対に無様は晒せない。

 

「最初から全力でいきます!」

 

 だからトランクスは甘さと情を押し込め、今出せる限りの全てを出した。

 超サイヤ人を飛び越して超サイヤ人2へ。さらに2すらも越えて3へと。

 頭髪は膝まで届くほどに伸び、全身を雷光が包む。

 その変化にリゼットも僅かに驚きを見せ、しかしその顔はすぐに笑みへと変わった。

 

「余裕じゃねえか。後悔すんぜ!」

 

 バーダックもトランクスに合わせて気を解放する。

 だがこちらは外見に変化がない。

 超化を会得していないのだろうか? 否、そうではない。

 もう彼は超サイヤ人になる必要がないのだ。

 恐らくは別の時間軸の老界王神と出会い、そして潜在能力を引き出されたのだろう。

 リゼット同様の変化を会得しており、凄まじいまでの気で溢れている。

 

「それでは――始め!」

 

 ウイスが開始を宣言し、それと同時にトランクスとバーダックが翔けた。

 そして全力で攻撃を繰り出す!

 相手が女だという事は今だけは忘れなくてはならない。元より加減が出来る相手ではない。

 だから全力を尽くす事が礼儀だと考え、トランクスは凄まじい速度で猛攻を仕掛けた。

 そして思い知る。やはり彼女は強い、と。

 バーダックとの二人がかりだというのにリゼットは涼しげな顔で悉くを避け、どうしても避け切れない攻撃を軽々と受け流す。

 そうしながらリゼットが右手の指先をクイ、と動かした。

 瞬間、彼女を中心として上方へと巻き上がる衝撃波が発生する。

 もろに直撃を浴びてしまった二人は上空へと放り出され、更に追撃の気合砲で吹き飛ばされてしまった。

 

「ぐっ!」

「ちいっ!」

 

 今の攻撃で距離が開いてしまった。

 その事の危険性を一早く察知したのはトランクスだ。

 不味い、この距離は彼女の間合いだ!

 リゼットは自身の前に空間の穴を開くと、そこに次々と気功波を放つ。

 それと同時にトランクスとバーダックを囲うように空間の穴が開き、一斉に光を放った。

 そして襲い掛かる、全包囲からの気功波連射。

 二人は必死に避けるが、上下左右前後から襲いかかる閃光を全て避けきれるものではない。

 どうしても被弾してしまい、ダメージが蓄積されていく。

 特にトランクスは深刻だ。バーダックはまだ上手く直撃を避けているが、彼は何発か直撃を浴びてしまっている。

 いかに連射の為に威力を落とした気功波といえど、それでもダメージは小さくない。

 だがトランクスは歯を食い縛り、今気功波を撃ち終えたばかりの穴へ接近。そこに反撃の気功波を発射した。

 するとリゼットの目の前の穴からトランクスの気功波が逆流し、彼女を呑み込む。

 ダメージは……浅い! 彼女自身が攻撃中だったためにバリアは展開していなかったようだが、それでもここまで戦力に差があっては軽傷にしかならないという事か。

 だが攻撃は途切れた。この好機を逃すまいとバーダックが突撃し、瞬間移動染みた速度を以て距離を詰める。

 

「だあああらあああっ!」

「……っ」

 

 嵐のようなバーダックの連撃をリゼットも的確に捌く。

 避け、流し、逸らし、そして隙を見て反撃。

 だがバーダックも予知していたように――否、実際に未来を予知してリゼットの反撃を見事に避けてみせた。

 未来予知染みた読みと経験がリゼットにはある。だが対するは本当の未来予知。

 決して条件では負けておらず、互角の攻防が続く。

 だが攻防が互角ならば地力が物を言う。

 普段は地力の差を技術で覆すのがリゼットだが、今回は立場が逆だ。

 バーダックの異能を強引に地力で捻じ伏せ、予知しようが回避出来ない速度で放たれた掌打がバーダックの胸を抉った。

 リゼットの掌打は拳打と異なり、ダメージを内へと浸透させる。

 決して表面上を激しく傷付けるわけではない。だがバーダックの体内に与える傷は深刻だ。

 体内で炸裂した衝撃は彼の肋骨を砕き、臓腑を傷付ける。

 たまらずに吐血したバーダックの顎を叩いて無理矢理身体を上げ、その場で横に半回転。

 遠心力を上乗せしての渾身の一撃を彼の腹へと叩き込んだ。

 

「がはあああっ!」

 

 いかに急所を外した攻撃とはいえ、大ダメージには変わりない。

 地面を削りながら倒れ込み、その上へリゼットが飛んだ。

 指先に気を集めて構え、振り切る。

 すると横に薙ぐように気の衝撃波が発生し、倒れているバーダックへ無慈悲に襲いかかった。

 しかしバーダックを庇うようにトランクスが飛び出してガード。彼とバーダックのいる場所だけを残し、地面が大きく削られてしまった。

 

「今度は俺が相手です!」

 

 トランクスが飛び出し、リゼットへと猛攻を仕掛ける。

 だが結局のところそれは先ほどのバーダックの二の舞だ。

 いや、未来予知がない分バーダックよりも更に条件が悪い。

 だがそれでいい。少しでも凌げればバーダックが回復するまでの時間を稼げる。

 バーダックは震える手で懐を探り、トキトキ都で販売されている『ゲンキ・カプセルL』を口に放り込んで噛み砕いた。

 すると身体の傷がたちまちのうちに癒え、ダメージが嘘のように立ち上がる。

 

「よくもやってくれやがったな!」

 

 その復活劇に少しばかり驚いているリゼットへバーダックが飛翔し、トランクスと挟み撃ちにするように打撃戦を挑む。

 しかしリゼットは己の両側に空間の穴を開き、同士討ちを誘った。

 これにバーダックはすぐに気付いて手を止めるが、トランクスは止まらない。

 結果としてトランクスの拳がバーダックの顔面へめり込む事になり、彼をよろめかせてしまった。

 無論その隙を逃すリゼットではなく、両手を広げて気合砲を発射。

 トランクスとバーダックを吹き飛ばした。

 

「ちいっ……まだまだあ!」

 

 バーダックが空中で何とか停止し、再度突撃をかけた。

 近接戦闘の技術では劣る。それは分かっている。

 だが距離を取ってしまえばそれこそリゼットのやりたい放題だ。

 ならば不利を承知の上で挑むしかない。

 だが既にリゼットは充分な距離を取っており、次の技を完成させてしまっている。

 彼女の背後には数えるのも馬鹿らしいほどの光の剣が滞空し、その刃先を一斉にトランクスとバーダックへ向けた。

 

「千の剣よ、在れ!」

 

 刃の豪雨が降り注ぎ、二人は一時避難を余儀なくされる。

 一発一発が強烈な切れ味を誇る光の刃の乱れ撃ち。一発でも当たれば致命傷。

 そんな攻撃を前に突撃するような無謀は流石に犯せない。

 実際は刃の部分が丸くなっている有情仕様なのだが、それを一目で見抜けというのは酷だろう。

 しかし逃げてばかりでもない。バーダックが未来予知で安全地帯を割り出し、トランクスへ指示を飛ばした。

 

「そこだ! 突っ切るぞ!」

「はい!」

 

 刃の雨を掻い潜っての急接近。

 そして距離を潰してからの零距離気功波。

 相手の攻撃の瞬間こそが最大の好機であり、それを突く事こそがこの技――チェンジ・ザ・フューチャーである。

 二人同時のカウンター気功波を浴びてしまったリゼットは地面に墜落し、しかしすぐに立ち上がる。

 

「……やりますね」

 

 埃を払い落としながら不敵に笑い、上を見上げた。

 トランクスが腕を高速で動かし、バーダックが掌を翳す。

 そして放たれるのはバーニングアタックとリベリオントリガーの同時攻撃だ。

 しかしリゼットは瞬間移動で二人の目の前へと飛び出し、両手から気功波を発射して二人を撃墜した。

 チェンジ・ザ・フューチャーのお返しである。

 更に急降下。何とか空中で体勢を立て直した二人の中央を通過し、光の翼で二人を同時に巻き込む。

 ジャネンバの時のように切り裂きこそしないが、それでもダメージは小さくない。

 今度こそトランクスとバーダックは地面へ追突し、リゼットが空高く飛翔した。

 翼を広げて気を高め、腕を頭上で組み合わせて高めた気を一点集約。掌を砲門とし、地面の二人へと照準を定める。

 その構えに見覚えのあるトランクスが咄嗟に全力での迎撃を選択し、バーダックもまた己の最大技での迎撃を選んだ。

 

「Raging blast!」

 

 放たれた白い光の柱が二人へと突き進む。

 それに対しトランクスは両手を上へと翳し、解放した気がドーム状に広がる。

 そして放たれるのは彼の持つ最大の一撃だ。

 

「サイクロンブラスト!」

 

 トランクスと並び、バーダックが右手にありったけの気を集めた。

 反撃の狼煙はいつだってこの技から始まった。

 例え及ばずとも、この一撃には仲間達と自分の魂を込めているのだ。

 だから今回もまた、勝てる勝てないなど関係なく、この技を決め技として放つだけだ。

 

「これで最後だあああ!」

 

 トランクスとバーダックの渾身の一撃がリゼットの決め技と正面衝突する。

 いかに二人がかりでも火力ではリゼットが上だ。

 徐々に均衡が崩れて純白の輝きが二人の気功波を押し潰して行く。

 その光景を見ていたビルスは頬を掻きながら「まあこんなものか」と呟き、ウイスは面白そうにリゼットを観察していた。

 

「ま、まだだ! 俺達は、負けられないんだああ!」

「くそったれがああああ!」

 

 トランクスとバーダックが咆哮し、最後の力を振り絞った。

 サイヤ人だからこそ可能な、限界を超えて尚力を無理矢理引き出すという荒業。

 本来彼等の中に眠っているサイヤ人の更なる可能性を一時的に引き出すかのような気のブースト。

 それがリゼットのレイジングブラストを押し返し、一気に押し切った。

 

「……な!?」

 

 リゼットは咄嗟にバリアを最大出力で展開し、直後に彼女を気の嵐が飲み込んだ。

 宇宙まで飛んで行くほどの気の奔流。激流。

 それが終わった時、リゼットはかろうじてバリアで守られてはいたものの、ドレスのあちこちが破れ、決して小さくないダメージを負っていた。

 フラフラと地面まで降下し、ペタンと座りこんでしまう。

 そしてどこからか取り出した白旗を出すとヒラヒラと振ってみせた。

 

「おや、どうやら勝負ありのようですね」

「……うーん? まだリゼットの奴、余裕がありそうだけど……」

「しかし本人が負けを認めております。ビルス様、もう彼等に任せてしまってよろしいのでは?」

「……まあ、釈然としないけど……別にいいか」

 

 ドレスを既に修復して己の傷を回復させているリゼットを見ながら、とりあえずビルスもトランクス達の実力を認める事にした。

 ウイスはそれを見て満足気に微笑み、リゼットの後ろへと転移する。

 そして小声で彼女へと告げた。

 

「よかったですね。ビルス様は気付いておられませんよ」

「っ!? な、なんの事でしょう」

「気の剣の刃先を潰していた事と、光の翼で本当は切断出来たのにしなかった事。

それから本来の貴女ならばやっていたはずの急所狙いの攻撃を全く行わなかった事と、倒せるチャンスが何度もあったのにあえて追撃しなかった事。

それと最後の技、あれも本当は補助用の光球を数個浮べて複数の気功波を発射する技ですよね?

他にもまだえげつない札をいくつか隠し持っていそうですね」

「…………」

 

 ――全部見抜かれてる……。

 その事を痛感しながらリゼットはようやく一つの事実に気が付いた。

 もしかしなくても、このウイスという付き人……ビルスより油断出来ない相手かもしれない、と。




【ゲンキ・カプセル】
ドラゴンボールゼノバースでタイムパトローラー(主人公)が買える回復アイテム。
トキトキ都で売っている。
回復アイテムはずるいって? そんな事言ってたらゼノバースはクリア出来ません。(上手い人は除く)

【戦闘力】
・バーダック:8億
アルティメット化:4000億

・トランクス(ゼノ):7億5000万
超サイヤ人3:3000億


Q、何でバーダックが究極化会得してるんだよ
A、ゼノバース(正確には2)の主人公は老界王神に潜在能力を引き出してもらってアルティメット化を習得する事が可能です。バーダックはその立ち位置なので習得しています。
バーダックは変に超化せず見た目が変化しない方が『らしい』と思ったので覚えさせました。

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