ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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Q、ドミグラさん、何で前回ナッパだけハブったの?
A、ドミグラ「え? だってナッパとかどの世界線でも大体雑魚やん。
というかあの世界、ナッパ生きてたの?」


第九十一話 時の魔神

「では、ご健闘に期待します」

 

 ウイスに連れてこられた場所は、以前の平和な時の巣とは全く異なる空間であった。

 空間は薄暗く染まり、恐らくはトキトキ都の中心だろう砂時計が崩れている。

 その周囲には壊れた時の歯車が無惨な残骸を晒しており、ドミグラの攻撃の凄まじさを物語っていた。

 だがどうやら、間一髪で間に合いはしたらしい。

 空中にはドミグラが見下すように浮かんでおり、その両脇をトランクスとバーダックが固めている。

 どうやら二人のタイムパトローラーは洗脳されてしまったようで、今や時の界王神は孤立無援の状態だ。

 神の世界を経験した者か、あるいは神そのものでなければあの洗脳に抗うのは難しいのだろう。

 魔法に長けた魔人ブウも一度目は洗脳されてしまっていた。

 ウイスは二人を送り届けると、そのまま姿を晦ませてしまう。

 どうやら前言通り、協力する気はほとんどないらしい。

 

「時の界王神様!」

「悟空君! それにリゼットちゃんも!? どうしてここに!」

 

 時の界王神が驚いて二人を見るが、実はリゼットも驚いていた。

 正直、この年齢になってちゃん付けで呼ばれる事になろうとは。

 流石は7500万歳以上か。彼女から見ればリゼットなど、まだまだヒヨッコなのだろう。

 

「ウイスさんに連れて来て頂きました。

どうやら、かなり危ない場面だったようですね」

「え、ええ。トランクスとバーダックが奴の術にかかっちゃって。

それに時を生み出す鳥……トキトキっていうんだけど、その子もドミグラに飲み込まれちゃってね。

正直、来てくれて助かったわ」

 

 どうやら本当に危ない場面だったらしい。

 突撃してくるトランクスとバーダックを悟空が迎え撃ち、その隙にリゼットがドミグラへと向かった。

 とりあえず悟空ならばあの二人相手でも不覚を取る事はないだろう。

 ならば自分はその間にドミグラを倒してしまえばいい。

 そう判断したリゼットは潜在能力を解放してドミグラへ向けて気弾を放ち、彼を吹き飛ばした。

 しかし流石にドミグラも弱くない。すぐに着地して体勢を立て直し、余裕の表情でリゼットを見る。

 

「来たか、地球の神よ。遅かったじゃないか。

トキトキは我が手に落ちた。これから私は時空を支配する新たな神となるのだ」

「そうですか。ならば貴方を倒してしまえば解決というわけですね」

「無駄な事を。それよりも私の部下になる気はないか?

過去も未来も思うがまま。永遠の時間を生きられるぞ」

「生憎ですが間に合ってます」

 

 ドミグラが魔術で杖を操る。

 通常の棒術とはまるで違う、杖が自分で勝手に動いているかのような遠隔操作だ。

 しかし武器を手放すのはリゼットに言わせれば決して賢い選択ではない。

 向かってくる杖の先端を獲り、体重をかけてテコの原理でドミグラの顎へ棒を命中させた。

 よろめいた所にすかさず突き。喉を杖の先端で強打してからハイキック。光速の蹴りがドミグラの頬を蹴り砕き、更に杖を地面に突いて跳躍。

 空中で回転し、遠心力を乗せて杖でドミグラの顔面を殴打した。

 

「ぐぬっ!」

 

 余裕を崩して立ち上がったドミグラへ向けて杖を投げ返した。

 咄嗟にドミグラが受け止めた瞬間を狙って屈み、視界から外れて下から攻める。

 跳ね上がるように全身のバネを使ってドミグラの顎を打ち上げ、更に無防備な首を掴む。

 そのまま思い切り投げ飛ばし、砕けた歯車の尖った部分へ痛烈に叩き付けた。

 

「小癪な……時を統べる新たな神に逆らうとは」

 

 ドミグラが黒い気弾を発射するがリゼットはそれを紙一重で避けながらドミグラへと接近した。

 彼は強い事は強いのだが、体術はあまり優れているとは言い難い。

 攻撃動作はいちいち隙が大きいし、どちらかといえば魔術頼りのタイプだ。

 まあ、7500万年も時の狭間に閉じ込められていたような男だ。なまってしまっても仕方のない話だろう。

 いくら寿命が長かろうが7500万年もブランクがあればロクな体術を使えるはずがない。

 どう見ても自主的に修行などするタイプでもないし、残念ながら接近戦においてドミグラはリゼットの敵ではなかった。

 掌打で胸と腹を打ち、股間を蹴り上げて悶絶させる。

 遠心力を乗せて鞭打! 痛みに怯んだ所へ更に連撃を叩き込み、右足を軸に回転。

 リゼットの長い髪がドミグラの目に当たって視界を奪い、怯んだ所へ思いきり回り蹴りを放って転倒させた。

 

「神に逆らう者がどうなるか知っているか?」

 

 起き上がり、浮遊しながら何やら話しているようだがリゼットはそれを無視し、腕を引く。

 そして放つのは、神の裁きの代名詞とも言える落雷の魔法だ。

 

「天罰を受けるのだ!」

 

 叫んだ直後に落雷に打たれたドミグラは落下し、地面に墜落した。

 更に追い討ちの気弾連射。王子戦法とか負けフラグとか言ってはいけない。

 爆光が連鎖的に輝き、それが終わった時、ドミグラは全身をボロボロにして倒れ伏していた。

 だが流石に魔神。見た目ほどのダメージは受けていない。

 杖を支えに立ち上がりながら、忌々しそうに呟く。

 

「……ふん、いい気になるなよ。

見せてやろう、魔神の真の力を!」

 

 ドミグラは黒い気弾を連射し、一気に距離を取る。

 どうやら近接戦闘は不利と見て遠距離からの魔術連射に戦術を切り替えたらしい。

 しかし遠距離戦はリゼットも得意とする分野だ。

 拳を握って大きく引き、前へ突き出す。

 すると巨大な気の拳が顕現してドミグラの魔術を砕きながら直進。ドミグラを殴り飛ばした。

 続けて空間の穴を開き、気功波を連射。

 するとドミグラを囲うように穴が開き、次々と閃光が発射されて彼を打ちのめした。

 

「くそっ、忌々しい奴め! 何故貴様には神である私の術が効かん!?」

「まあ、私も一応神ですし」

「笑わせるな、私以外の神などこの世にはいらん。その澄ました顔を絶望に染めてやる!」

 

 放たれる魔術の数々を見ながらリゼットは目を細め、その場から消えた。

 そして一瞬にしてドミグラの前へ出現し、零距離気功波!

 閃光がドミグラを呑みこみ、歯車へと追突させた。

 正直、心底惜しい男だと思う。

 実力はある、魔術も使える。間違いなく彼は強い。

 単純な戦闘力だけを言えば決してリゼットにそこまで劣ってなどいない。

 だが経験がない。強敵との戦闘経験が圧倒的に欠如している。

 これでは格下に勝つ事は出来ても、魔術が通じない格上相手は無理だ。

 

「おおおおっ!」

 

 ドミグラがその場から消え、リゼットの背後から連撃を仕掛けた。

 杖と蹴りを素早く繰り出すも、リゼットには当たらない。

 その悉くを避けられ、軽く見切られてしまっている。

 更に転移、上から仕掛ける。

 今度は右から、左から。

 だが通じない。どの角度から仕掛けても、まるで柳でも相手にしているかのように流されてしまう。

 それどころか、攻撃の隙を見付けたリゼットがドミグラの右手の指を掴むとそのままへし折ってしまった。

 

「ぬっ!?」

「少し、痛いですよ」

 

 へし折った指を放さずに、指を支点としてドミグラを投げて歯車へとぶつけた。

 更にもう一度投げ、更に投げる。

 その度にリゼットに掴まれた指はあらぬ方向へと曲がり、関節が滅茶苦茶に破壊されていく。

 

「離せ!」

 

 ドミグラが無事な左手で攻撃を仕掛ける。

 だがリゼットはあっさりと右手を解放すると、今度は左手の指を掴んでしまった。

 そして再びあらぬ方向へと曲げて、何度もドミグラを投げて周囲の何かへぶつける。

 ドミグラにダメージを与えつつ指などの末端部位を破壊するという悪辣な攻撃だ。

 ようやく指を放したかと思えば間髪を容れずにドミグラの額へ指を当て、破壊力を集約させた一点貫通性の気功波を発射した。このまま頭を破壊して終わらせてしまおうという魂胆だろう。

 しかしドミグラは咄嗟の判断で上体を大きく逸らして閃光を避け、だがその不安定な姿勢を狙ってリゼットが彼の足元を蹴り払った。

 当然のようにドミグラが背中から地面に倒れ込み、リゼットがそこに気弾を放つ。

 致命傷には程遠い。だがすぐに煙の中から飛び出して距離を取ったドミグラは確かなダメージを負っており、完全に戦いのペースはリゼットの手の中にあった。

 

「何なのだ……何なのだ、お前は!」

 

 ドミグラは憤怒の表情でリゼットを睨む。

 そして杖を両手で握ると、更に気を高めた。

 どうやら、まだ本気ではなかったらしい。本当に勿体無い実力の持ち主である。

 

「もう遊ぶのはやめだ……数千万年に渡って蓄えたパワーの全てを解放し、お前を完全に消し去ってやる! そしてお前を殺した後は、お前の過ごしてきた全ての時間を消し去ってこの世からもあの世からも抹消してやるぞ!」

 

 ドミグラの全身を黒い気が包み込み、その姿を変えて行く。

 身体の色はまるで服と一体化したかのような青へ。

 腕や足は太くなり、赤い髪は鬣へと変化した。

 その顔はまるで竜のような異形へと変わり、例えるならば二星龍とヤコンを合わせたかのような顔立ちだ。

 膨れ上がった全長はリゼットの3倍以上もあり、比べてみればそのサイズ差は大人と子供どころの騒ぎではない。

 

「なるほど……確かに凄まじい気ですね」

 

 リゼットは風圧で顔にかかってしまった自身の髪を指で払い、あくまで冷静にドミグラを見る。

 なるほど、確かにパワーは凄まじい。直撃すれば無事では済まないだろうと一目でわかる。

 ドミグラの豪腕がリゼットを狙い、しかしリゼットは軽やかな動きで第一撃目を避けた。

 そうして隙だらけになった所で気弾を連射してドミグラに当てるが、まるで怯みもしない。

 再び振るわれた拳を避け、その拳圧で髪をなびかせながらリゼットは少し厄介だな、と考えていた。

 動きは単調。技術も稚拙で巨大化した分速度も低下、と一見すると逆に有利にすらなっている。

 だが単純に強くて固い。

 攻撃は一発一発が肝を冷やすレベルの威力で、気弾を打ちこんでも怯みすらしない堅牢さもある。

 この防御を抜くには大技の乱れ撃ちくらいしかないが、リゼットはあまり体力は高くないのだ。

 ドミグラが手を広げ、黒い煙のような気功波が次々とリゼットへ発射された。

 そう、これが厄介。筋肉を巨大化しての気の増幅は原作でセルがトランクスに指摘したように速度が落ちて逆に弱体化する諸刃の剣だ。

 だがいくら筋肉が膨れ上がろうと気弾や気功波の速度が落ちるわけではない。

 そしてそうした攻撃の威力や速度は完全に気の大小によって決定するものであり、固定砲台となるなら筋肉が巨大化するデメリットはさしたるデメリットではなくなるのだ。

 つまり、あの巨大化変身は見た目に反してむしろ遠距離戦向きなのである。

 そういう意味では、この上なくドミグラ向きの変身と言えなくもない。

 どうせ近接戦闘の技術などないのだから、ならば下手に身軽になるよりも被弾上等で防御を上げてしまうべきだ。

 先ほどまでは余裕だったリゼットの額を汗が伝い、次々と打ち出される魔術や気弾を何とか回避し続ける。

 無論、避けてばかりではない。

 隙を見て円盤状の斬撃に特化した気弾を発射した。

 だが通らない。あまりに強固なドミグラの体皮を裂く事も出来ず、表面に僅かな跡を付けただけだ。

 

(固い……!)

 

 あれだけの防御力があれば、接近していくら攻撃を加えても通じないだろう。

 防御力に物を言わせてのゴリ押しは、実はリゼットが一番苦手なタイプだ。

 何せ駆け引きも何もあったものではない。

 カウンターなど取りたければいくらでも取れと言わんばかりにひたすら攻めて来る相手というのは本当にやり難い。

 もっともブロリーと違ってスピードがないのは救いか。

 あの時と比べればまだ何とかなる状況だ。

 

(怯まないにしても、効いてないわけではないはず……こちらも覚悟を決めて大技で勝負をかけましょうか)

 

 リゼットは意を決し、己の内に眠る神の力を解放した。

 全身を白い輝きが包み、背中に光輪が出現する。

 未だ未完成だが、それでも神の領域だ。その戦闘力はこれまでの比ではない。

 リゼットは掌を翳し、自身の身体ほどの大きさはありそうな気の塊を生み出す。

 

「Sparking・Neo!」

 

 光球が直進してドミグラの胸に炸裂し、爆煙で包みこんだ。

 そこに間髪を容れずに次なる攻撃を放つ!

 

「Raging blast!」

 

 純白の奔流がドミグラを呑み込む。

 だがその光の中を構わず突っ切ってきたドミグラが爪を振るう。

 しかしもうそこにリゼットはいない。

 ドミグラの背後へ回りこんだリゼットが次なる技の構えへと入っている。

 

「千の剣よ、在れ!」

 

 一瞬にして顕現した空間を埋め尽くすほどの剣の嵐。

 その全てがドミグラへ殺到し、剣山のように彼の姿を覆い隠して大爆発を起こした。




【戦闘力】
魔神ドミグラ:2000億
第二形態:4000億

↓トキトキ吸収

魔神ドミグラ:6000億
第二形態:1兆2000億

↓数千万年に渡って溜めたパワー解放

第二形態:4兆2000億

・ちなみに数千万年パワーはドミグラにとっても一度しか使えない最後の切り札として扱います。今回使ってしまったので仮にリゼットに勝てても同じだけの強さを発揮するにはまた数千万年必要です。

Q、数千万年かけてこれってコスパ悪すぎじゃね?
A、封印されたままここまで集めたんだから、むしろ凄いんやぞ。

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