ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第九十三話 それぞれの進化

 スナク星からの使者がやってきてから半年。地球は実に平和なものであった。

 悟飯の娘が生まれたり、チチが立て篭もったり、ブルマが何故か若返っていたりと色々ありはしたが、これといって話題にするような事はない。

 あえて挙げるならば悟空とベジータがウイスの所へ修行に行ってしまった事くらいか。

 相変わらず修行大好きの格闘馬鹿な二人である。

 とはいえ、リゼットにとってこれは少しばかり焦りを感じる出来事でもあった。

 前世の記憶で漫画として世界を眺めていた経験があるから、何となく分かるのだ。

 『あ、これ悟空とベジータ以外の全員が置いていかれる展開だ』と。

 ウイスの元での修行でどれだけ強くなるかは分からないが、戻ってきた時にはきっと大幅なパワーアップをしているに違いあるまい。

 その場合、下手をすると次の戦いの頃には自分達は戦力外になってしまっている、という事もあり得るのだ。

 そこでリゼットは急遽精神と時の部屋を魔法や神術で改装し、ポポや先代のアドバイスを聞きながらセルと二人がかりで魔改造してしまった。

 とりあえず、まず一人が使える時間は最大で2年間という制約をとっぱらい、ついでに同時に入れる人数も6人までに拡張。

 何という事でしょう。匠の手により精神と時の部屋はその気になればいつまでも篭り続ける事が可能な超引き篭り部屋と化してしまったのです。

 

「出来ました。これで寿命無限な私達はその気になればいつまでも修行し続ける事が出来ます」

「ふふ。これで孫悟空達に逆に差を付けてやれるわけだ。私は百年単位の修行でも一向に構わんぞ」

「……ポポ、もう何も言わない」

 

 リゼットとセルも大概修行馬鹿である。

 ドヤ顔で新しくなった精神と時の部屋を見詰める二人に、Mr.ポポは呆れるしかない。

 向こうが宇宙最強の師匠なら、こっちは宇宙最長の修行で勝負だ。

 悟空達には才能という武器があるが、こちらには時間という武器がある。

 決してインフレに取り残されたりするものか。それどころか逆に差を付けてやる。

 そんな気持ちでリゼットとセルの二人は精神と時の部屋へ早速突撃した。

 

 そして部屋に入って数日後には置いていかれてなるものかとターレスとピッコロも入室し、強さを求める者達がそれぞれの方法で己の限界を超え、神の域へ至る道を探し始めた。

 

 

 精神と時の部屋での修行が始まってより数年が経過した。

 部屋の中で彼等は互いに向き合い、そして気を高めている。

 これから行うのは模擬戦だ。

 この部屋に籠ってから彼等はそれぞれの方法でパワーアップを遂げており、今日は互いにその成果を確かめ合う日なのだ。

 

「いくぜ!」

 

 まず最初に仕掛けたのはターレスであった。

 彼は全身の気を解放すると超サイヤ人へと変身し、その状態のまま手の中にパワーボールを生成する。

 本来はエリート戦士しか作れぬはずのそれだが、この戦闘レベルになってはもうエリートも下級戦士もない。

 そして無論ただのパワーボールであるわけもなく、この部屋の修行で彼が編み出した特別製のパワーボールだ。

 その効果は、通常のブルーツ波と比べ数倍ものブルーツ波を発するというもの。

 そして、ここにきて未だに尻尾を残している彼とナッパだけがこのパワーボールを活かす事が出来るのだ。

 そして、ターレスだけが更に先の領域へ至る資格を手にしていた。

 

「弾けて、混ざれ!」

 

 精神と時の部屋の上空に人工の月が輝く。

 その輝きを瞳から吸収し、ターレスの変身が始まる。

 新たな力を求めて、彼がまず考えたのは悟空達とは異なる進化であった。

 ターレスはどうしても悟空のような善のサイヤ人にはなれない。

 多くの星を襲ってきた過去をまるでなかったかのように扱い、今更善人面するなどという真似は出来ない。

 第一自分が善人などになっては、それこそ殺された者達が浮かばれないだろう。

 『過去は極悪人だったけど今は善人だから過去の悪行には触れないでね』などと……何ともまあ、都合のいいお話ではないか。

 だからターレスは考える。俺は悪党でいいと。

 過去の悪行も殺してきた連中も、滅ぼしてきた惑星も、その全てを覚えている。忘れたりなどしない。忌まわしき過去になどしない。

 己は昔も今も変わらない。クラッシャー軍団の仲間達と宇宙を気ままに流離い、好きな物を食い、美味い酒に酔い好きな星をぶっ壊してたあの頃と変わらない。

 だから――悪党には、悪党に相応しい変身がある。

 かつて善のサイヤ人達が超サイヤ人ゴッドを作り出して戦ったという悪の超サイヤ人。

 彼が目指したのはそれだ。ゴッドとは異なる超サイヤ人3から続く正当進化。

 神の域だの神の気だのを無視した、どこまでも純粋な暴力と戦闘力を求めた力の進化!

 血と殺戮を好む、悪のサイヤ人としての性質を全面に解放した正統なる暗黒面の進化だ。

 ターレスはそれを目指し、ブリーフ博士に頼み込んでブルーツ波を増幅する装置を造ってもらい、己の身にブルーツ波を浴び続けたのだ。

 そうする事でサイヤ人の強さの根幹であるサイヤパワーの上昇を計った。

 無論無理はあった、血反吐も吐いた。

 だが、それでも彼はブルーツ波を無理矢理吸収し、進化の果ての更なる進化を手にしたのだ。

 

「オオオオオオオオオ!!」

 

 ターレスの身体が巨大化し、黄金の大猿へと変化する。

 超サイヤ人のパワーを持ったまま戦闘力を更に10倍へ上げ、だがまだ終わらない。

 猿と化しても尚理性を保ち、巨体に秘めたパワーを凝縮させる。

 するとどうだろう。

 ターレスの身体がみるみるうちに縮んでいき、やがて元のサイズまで戻ってしまったではないか。

 しかしその姿は先程までと大きく異なる。

 超サイヤ人とは思えない黒髪は背まで伸び、顔立ちはサイヤ人の凶暴性を隠す事なくギラついている。

 全身は赤い体毛に覆われ、圧倒的な力強さに漲っていた。

 瞳の色は黄金に変わり、目の周りが赤く縁どられている。

 超サイヤ人4――初めてこの変身を成功させた時に思わずリゼットが呟いたその名をターレスはそのまま採用した。

 もしかしたら、あったかもしれない平行未来で悟空やベジータも変身したかもしれない、ゴッドとはまるで異なる進化の姿だ。

 

「ふっ……凄まじい気だ。

ならば私も全力を超えた全力でお相手させてもらおう」

 

 セルが不敵に笑い、拳に力を込める。

 サイヤ人の細胞を引く彼は見た目からは分からないが、超サイヤ人への変身を可能としている。

 超サイヤ人とは実はサイヤ人のみに許された変身ではない。

 変身可能か否かはS細胞によって決定されるものであり、実はS細胞さえ保有していればサイヤ人でなくとも超サイヤ人への変身は可能なのだ。

 もしかしたら、宇宙のどこかにはサイヤ人でもないくせに超サイヤ人に変身出来る者がいるかもしれない。

 そんな豆知識はさておき、セルもまたサイヤ人ではないが超サイヤ人へ変身出来る。

 彼は最初から超サイヤ人の壁を超えた超サイヤ人……超サイヤ人2とでも言うべき位階に変身出来ていた。

 そこまで行けるならば……不可能ではない。

 超サイヤ人を超えた超サイヤ人を、更に超える事すら。

 

「ぶるああああああああああッ!」

 

 セルが叫び、全身を今まで以上の輝きとスパークが覆った。

 見た目的にはほとんど変化していないが、変身の位階を超サイヤ人3のレベルにまで引き上げたのだ。

 

「究極のパワーを見せてやる!」

 

 続いてピッコロが力を解放した。

 彼が行ったのは、リゼットと同じ潜在能力の解放だ。

 老界王神の潜在能力解放は種族に囚われず、誰でも平等にパワーを上げる事が出来る。

 界王拳の限界を悟っていたピッコロはこれに目を付け、老界王神によってパワーを引き出して貰っていた。

 勿論対価を要求されたのは言うまでもない。

 封印から助けた初回と違い、今回は老界王神に儀式をやってやる義理がないのだ。

 なのでピッコロはリゼットに知恵を求め、そして彼女のアドバイスに従って老界王神とピチピチギャルを会わせてやった。

 ピチピチギャルからパフパフをしてもらえた老界王神は満足してピッコロのパワーを引き出してくれたが……実は、そのギャルの正体はウーロンである。

 もっとも、ピッコロは既に合体によって潜在能力を解放しているに等しかったのでリゼットほどは伸びなかった。

 普段界王拳で無理矢理引き出しているよりはマシ程度の力を安定して負担なく発揮出来るようになった程度だが、それでも得たものは大きい。

 潜在能力『以上』を引き出せる老界王神だからこそ可能だったパワーアップだろう。

 

「では、始めましょうか」

 

 リゼットの修行は基礎能力の上昇と神の気の身体への適合に終始した。

 基礎能力を上げれば潜在能力解放時の戦闘力も上がり、ゼノバース発動時は更に上がる。

 そして安定して使えるようになれば、次のステージへの扉も開かれる。

 未だ全開出力は出来ないものの、その安定性は以前よりも更に高まっていた。

 既に神域へと至っているだけあってリゼットはセルやターレスよりも頭一つ抜けており、成長も早い。

 悟空達と出会うまでは100年単位の時間をかけて戦闘力数万で足踏みしていたのが嘘のようだ。

 インフレとは実に恐ろしいものである。一度加速が始まればもう止まらない。否、止まろうとも思わない。

 いわばこれは強さのチキンレース。引いた者から先に脱落し、戦士からモブへと降格してしまうのだ。

 

「うおおおおおおお!」

「ぶるわあああああ!」

「かあああああああ!」

 

 今までとは比較にもならない化物染みた力を漲らせ、ターレスとセル、ピッコロが突撃した。

 そこには遠慮も加減も一切ない。この域に来て尚、白の女神が自分達の上を往くと知っているからだ。

 リゼットはスウ、と目を細めて三人の攻撃を軽く流す。

 だが三人は止まらない。

 セルは技巧を凝らし、ターレスは野生の獣さながらの怒涛の勢いで攻撃を繰り返す。

 その間にピッコロが距離を開けて気弾を放つも、軽々と弾き返された。

 その圧倒的なまでの衝突エネルギーは次元すら歪ませ、空間に亀裂を入れる。

 部屋の外の現実世界では幾度も空間に穴が開き、ポポが「神様達凄い」と冷や汗を流していた。

 そしてその気の余波は遠く離れたビルス星にすら届き、修行(という名の家事お手伝い)をしていた悟空とベジータをも震撼させる。

 

「な、なんだ、この気は……!?」

「神様に……これはターレスか? すげえでけえ気だぞ!

それにセルとピッコロもすげえ!」

 

 ベジータは心底驚いたように、悟空は本当に嬉しそうに。

 二人がそれぞれの反応で地球の仲間達の成長を知り、拳を震えさせる。

 そして思う。負けてられない、と。

 

「よし、いくぞベジータ! さっさと家事を終わらせて修行だ!

あいつらに負けてらんねえ!」

「俺に指図するな!」

 

 悟空とベジータはやる気を漲らせて家事を素早くこなしていく。

 それを見てウイスは思った。これはなかなかいい関係だ、と。

 ライバルがいれば伸びは早いのだ。




インフレ特急「止まるんじゃねえぞ」

【戦闘力】
リゼット:30億
アルティメット化:1兆5000億
ゼノバース:6兆

悟空:10億
超サイヤ人:500億
超サイヤ人2:1000億
超サイヤ人3:4000億
超サイヤ人ゴッド:1兆
超サイヤ人ブルー:2兆

セル:1200億
超サイヤ人2:2400億
超サイヤ人3:9600億
バーストリミット:1兆9200億

ベジータ:9億5000万
超サイヤ人:475億
俺のブルマ:5700億
超サイヤ人ゴッド:9500億
超サイヤ人ブルー:1兆9000億

ターレス:9億
超サイヤ人:450億
超サイヤ人2:900億
超サイヤ人3:3600億
黄金大猿:9000億
超サイヤ人4:1兆8000億

ピッコロ:110億
アルティメット化:1兆1000億
※元々融合で解放されていたので上昇率が低い。

遂に主力勢がブロリーを超え始めました。
この6人は無事にインフレ特急に乗り込みましたので、今後も活躍する事でしょう。
力の大会には後4人必要なので、乗り遅れたメンバーも一応まだ席は空いてます。

Q、ナッパどこいった
A、年齢的に精神と時の部屋に入るとマジで老けかねないので辞退しました。
・地球襲来時(エイジ762)で年齢は50以上。現在はエイジ779でナッパは既に70を超えている可能性が高い。(しかも以前に精神と時の部屋に2年入った)
サイヤ人は80歳までは若者なので、つまりナッパに残された戦士としての時間はもう10年もない。
残念ながら彼も人参化同様に年齢の問題でリタイアの時期です。

【このSSでの超サイヤ人4の倍率】
黄金大猿=1000倍
超サイヤ人4=2000倍
超フルパワー超サイヤ人4=数千~数万倍(サイヤパワー供給者の数と質によって上下)

・ブルーと4を同格として扱いたいので同じ倍率にしました。
扱い的には界王拳ブルー=キュアベジータ=超フルパワー4>ブルー=超4>黄金大猿=ゴッド> という感じです。
無理矢理理由をつけるなら、黄金大猿は超サイヤ人3になれないベジータでも変身出来たので、超2×10倍(大猿)の1000倍。
超4は大猿ベビーに勝利したものの、かなり善戦されたのでそこまで差はないとして2000倍という所でしょうか。
勿論インフレを抑えるためのこじつけですが。

【宇宙のどこかにはサイヤ人でもないくせに超サイヤ人に変身出来る者がいるかもしれない】
もしかして:ネコマジン

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