MOMO TAROU 作:源治
年齢も性別も様々な構成員たちが、その部屋で待ち構えていました。
場所は10階建てのニューヨークによくある一般的な古いビル。
その最上階の大部屋です。
大部屋に入るための入り口は一つしかありません。
ですがその入り口には、何十もの銃口が向けられていました。
向けられているのはリボルバー拳銃や45口径ハンドガン。
さらにはシカゴ・タイプライターなんて骨董品のサブマシンガンに、熊撃ち用の大型ライフルなんてものまで様々。
どう見ても待ち伏せです。
銃器博物館でも開けそうな武器で武装した数十人による待ち伏せ。
これなら熊だろうとゾンビの集団だろうと、ひとたまりもありません。
が、その圧倒的に有利な状況にもかかわらず。
待ち伏せしている誰もが、冷や汗を流し震えていました。
いえ、震えているのはなにも彼らだけではありません。
ズドン、と。
大きな粉砕音が間隔をあけて鳴るたびに、ビルが震えます。
しかも恐ろしい事に、その音はどんどん近づいてきます。
構成員達は、その音が防火扉がぶち破られる音だとわかっていました。
わかっているから問題なのです。
ビルの一階層ごとに設置された分厚い鋼鉄の防火扉が、ワンパンで破られています。
そしてついに、最上階に続く階段の防火扉が破られる音が聞こえました。
構成員達は銃の安全装置を外します。
出迎えるための準備と覚悟は既に完了済みです。
が、できるならやっぱり帰ってくれないかなと、構成員の誰もが思いました。
そんな構成員達の淡い願いは、一瞬で部屋の扉と一緒に打ち砕かれました。
現われたのは、体長2メートルを優に超えるアロハシャツを着たゴリラ。
そう、その正体は猿です。
目は血走り、鼻息は荒く、明らかに興奮している様子。
構成員達はその尋常じゃない様子? に、恐怖心と生存本能を刺激されます。
そしてまるでピタゴラスイッチのように当然の流れで、いっせいに発砲を開始。
大小様々な数百の弾丸が、猿に襲いかかりました。
そうして一方的な銃撃戦が始まり、どれくらいの時間がたったのか。
やがて室内にカチカチという弾切れを伝える音が鳴り響きます。
充満する硝煙で、猿の様子はよく見えません。
が、例えどんな相手だろうと、これだけの銃弾をくらえばひとたまりもないはずです。
ですが構成員の一人が「やったか?」
という、言ってはいけない呪文を呟いてしまいました。
この言葉を口にしてしまうと、死亡フラグ的な意味でも、ピタゴラスイッチ的な観点から見てもまずいです。
もう彼らの未来に何が待っているかは、容易に想像がつきます。
おそらく硝煙が晴れると、傷一つない猿が立っていて、構成員達がミンチにされる展開になることは脚本的な観点から見ても確定的明らか。
そんな展開を構成員達ですら予感する中。
ゆっくりと硝煙が晴れて、ようやく室内の様子があらわになります。
なんと、そこには床に倒れた猿の姿がありました。
普通にやられていました。
がっかりです、がっかりですよ私は。
構成員たちが緊張を解き、息を吐きます。
そして口々に「っへ、びびらせやがって……」などと言葉にしました。
あっ(察し)
外れだと思ったら確変が入った感じです。
フィーバータイム開始です。
なぜなら、カツンカツンと重たいブーツが床を踏みしめて歩く音が聞こえてきたからです。
遅れて現われたのは、黒い帽子をかぶり、分厚い黒のコートに身を包んだ老人。
ですが、その身体の大きさや身に纏う濃密な死の空気は、泣く子も絶命する純度。
処刑BGMをバックに現われたのは、どう見てもラスボス(おじいさん)です。
おじいさんは唖然とする構成員達をゆっくりと見回し、拳をボキボキと鳴らします。
構成員達は気がついてしまいました。
弾切れの関係上、強制的に銃なんか捨ててかかってこい! 状態なことに。
そうしてヤケクソ気味に第二戦の肉弾戦シーンが開始されました。
ました……が、おじいさん相手では分が悪すぎます。
ぶっちゃけ猿やクイーンエイリアンを相手にした方がまだ勝率が高いです。
そんな数学的観点から見ても明らかなとおり。
構成員達はもれなく全員半殺しにされました。
そこにコンプライアンス的な手加減は一切ありません。
男女平等に半殺しにされました。
おじいさんは構成員達を全員沈黙させた事を確認した後、猿の元にゆっくりと歩み寄ります。
そしてかがんで、ひょいとひっくり返しました。
体重200キロを優に超える猿ですが、ころんとひっくり返りました。
胸が上下している辺り、呼吸はしているようです。
というか、普通に傷一つありません。
猿は血走った目を開いたまま、すやすやと寝息を立てていました。
おじいさんはまだまだだなぁと、ため息を吐きます。
ですが、猿的にはこれでもだいぶ頑張った方です。
何故なら、ニューヨークに存在する黒魔術の秘密結社全てのアジト。
その100を超える拠点を、休み無しで来る日も来る日も襲い続けたんですから。
そう、猿はかれこれもう徹夜七日目だったのです。