MOMO TAROU   作:源治

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第十五話 王の帰還

 

古来よりニューヨークはありとあらゆる厄災に見舞われてきました。

 

地震、寒波、ヴィラン、ゾンビ、隕石といった自然現象はもちろん。

他国や自国のテロリストに、敵となった国家からの脅威。

 

時にはサメ(竜巻)、タコ、マシュマロマン、ワニなどの巨大生物の猛攻。

さらにはエイリアンや地底帝国、異次元存在などの別文明等々。

 

ありとあらゆる危機に直面し、ですがその全てを乗り越えてきました。

 

何故なら、その殆ど全てにおいてニューヨーク市民が奮戦し。

そしてそれら相手に戦い抜いた、守護者たる存在がいたからです。

 

ニューヨークで一番偉いのは恐らく知事です。

が、ニューヨークの王は誰かと聞かれると、市民の誰もがこう答えるはず。

 

そう、我らが守護者……キングコング、と。

 

ですが、そのキングコングは数年前に天寿を全うして天国に旅立ちました。

王の死を、全てのニューヨーク市民は善人悪人に関わらず哀しみました。

 

が、日々はそれでも過ぎてゆきます。

 

そんな偉大な王は過去のものとなり。

市民の誰もが前を向いて再び歩み始めました。 

 

ですが市民達は知りませんでした。

王には息子がいたということを。

 

そう、その息子こそが目の前にいる猿だったのです!

 

半殺し状態から息を吹き返した魔術結社の面々は、その事実を聞いて驚きます。

そして、その目には光が戻り始めました。

 

戻ってないのは猿本人だけです。

 

え、なにこれ、どういう空気?

そんな気分です。

 

何故なら猿は身長2メートルちょっと。

大きい方だとはいえ、いま迫っているゴジラの50メートルには遠く及びません。

 

しかも相手は口からレーザーを出します。

戦いになれば一瞬で決着がつくでしょう。

 

このままであれば、ですが。

 

幸いここにはかつてニューヨークで一番……いや。

世界最悪最強最高の魔術結社の面々が集結しています。

 

つまりは反魂の術を使い、息子である猿の身体を器として一時的に王の力を呼び戻すことなど、結社にとってはターンオーバーの目玉焼きを焼くくらいたやすいことなのです。

 

ちなみに私はちょいちょい失敗します。

 

おじいさんの指揮の下、準備は急ピッチで進められました。

猿はいまだに状況が把握できていませんが些細なことです。

 

しかしブードゥーぽい術者と霊幻道士っぽい術者が、悲痛な声を上げます。

 

だめだ、王の力を降ろすには魂が足りない。

 

この場にいる術者の誰もが覚悟していましたが、全員の魂を捧げたところで初代キングコングが降ろせないことがわかってしまいました。

 

なら俺の魂を使え、もうそう多くないが半分もあれば足りるだろう。

 

おじいさんのその言葉に、結社の面々は驚愕の表情を浮かべます。

確かに、おじいさんの魂の強度なら問題ないはずです。

 

魔術に詳しくない猿は、さっきから置いてけぼりです。

 

ですが、おじいさんが自分のために魂を使うというところだけは理解できました。

猿はおじいさんにつめよりますが、あっさりとぶん投げられます。

 

それでも必死に食い下がる猿を、おじいさんは優しく抱きしめます。

 

なあジュニア……お前のためなら魂くらい惜しくはない。

それにな、これでお前のオヤジとの約束も果たせるってもんだ。

お前はこの街を愛してるんだろ?

だってお前のオヤジが守った街だ。

だから……な、男に、王になれ……ジュニア。

 

そんな感じでなし崩し的ではあったものの、猿は覚悟を決めました。

おじいさんにここまで言われて、これで行かなきゃ男が廃るというものです。

 

若干七徹状態でハイになっていた感も否めませんが、些細なことです。

 

ですが、多分巨大化の副作用で意識が飛びまくって戻ったあとに身体がボロボロになるけど気にしないでくださいと、結社の面々に言われて一瞬で覚悟が霧散しました、が。

既に術式は起動していて手遅れでした。

 

そして……その日。

ニューヨークに王が帰ってきました。

 

全長45メートル、セントラルパークからタイムズスクウェアを通ってゴジラに向かって歩く王の姿を、誰もが目にしました。

 

一人の少年が呟きます。

 

キングコング……王様だ、キング……キングが帰ってきた、と。

その言葉はやがて波紋のように街全体に広がり、誰もが口々に叫びをあげました。

 

 

キング!! キング!! キング!!

キング!! キング!! キング!!

キング!! キング!! キング!!

 

 

もはやわかりきったことですが、結果をお伝えします。

 

三日三晩に及ぶ激闘の末、猿は勝利しました。

ちょうど十徹目に、眠さに耐えきれずゴジラを押し倒した感じです。

 

エンパイアステートビルを背中に壁ドンされたゴジラは、そのあまりのイケメンぶりに恋に落ちてしまったのです。

結果、ゴジラは猿にメロメロになってしまい、一瞬で『全てを破壊しろ』と刻まれた命令を『この人の赤ちゃん(卵生)を産む』に書き換えました。

 

まさに愛の力です。

あとゴジラは擬人化の特殊能力もあるので、特に問題ありません。

 

これにはおじいさんも腹を抱えて笑いました。

が、らしいっちゃらしいと大喜びの様子でした。

 

そうしてニューヨークに新たな守護者であるキングコングジュニア……いえ。

キングコング二世が正式に爆誕しました。

 

ゴジラとのラブラブッぷりを見るに、三世の誕生も遠い未来ではないはずです。

 

市民は大いにそれを祝福しました。

ウォール街は混乱していましたが、あそこは厄災がなくても大体混乱しています。

 

ものすごい筋肉痛と全身複雑骨折状態で生還し、十徹のせいもあって丸二日ほど寝ていた猿は、起きた後にことの経緯を聞かされて

 

「え、うっそでしょ?」

 

と、混乱していましたが、おじいさんの物理的な説得と、ゴジラのラブラブ献身看護のかいあって、まあいっかと受け入れることができました。

 

さすが王です。

 

これからもニューヨークの平和を守りながら、露店でホットドッグを売り、医者になるために勉強を続けることでしょう。

 

ですがおじいさん的に気になるのは、やはりおばあさんの魂の行方です。

一目見た時からわかっていましたが、ゴジラの中におばあさんの魂はありません。

 

おじいさんは、やはりオーガ機関はぶっつぶすという決意を新たにします。

 

が、いまだにその全容は謎に包まれています。

今回の件で国も重い腰を上げると思いますが、どうにかできるとも思えません。

 

そんななか、色んな意味で喜びに沸くニューヨークに速報が入ります。

 

なんと、世界征服……いえ。

世界を滅ぼすと宣言したオーガ機関が、行動を開始したとのことです。

 

テレビには空に浮かぶ大きな島が映っています。

 

それこそオーガ機関の本拠地。

空中要塞島『鬼ヶ島』だったのです。

 

 

 

MOMO TAROU 猿編(シーズン3) 完

 

 

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