MOMO TAROU   作:源治

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第十八話 世界の終わり

 

おじいさんたちが鬼ヶ島に突入してしばらく。

 

鬼ヶ島より投射されたホログラム映像が、世界中に出現します。

映し出されたのは、鬼の顔がペイントされた無機質な銀の仮面をつけ、赤いマントとラバースーツを身に纏った男の姿。

 

男の姿、そして声が世界中に響き渡ります。

 

私はオーガ機関の長、いや、世界皇帝オーガである。

これより人は次の階位へと昇る、これはその選別である。

受け入れよ人よ、我々は悪ではない、善なのだ。

我々は間違った方向に進もうとしている君達を救うために、正しき道へと誘おう。

人は我々オーガ帝国が管理しなければいずれ自らの手で滅びてしまう。

 

一方的で笑ってしまいたくなるような内容です。

が、オーガ帝国にはその力があることも確か。

 

先ほど最終作戦のために、最大出力でバベルの光を起動させた。

世界の終わりまであと一時間。

止められるとは思わないことだ。

起動した以上、君達が送り込んだノミがいくら足掻こうと。もはや止められん。

受け入れるがいい、その滅びを―――

 

そこまで言いかけたところで、銃声が響き渡ります。

そして銃弾はオーガ皇帝の仮面に当たり、はじかれました。

 

やれやれ、ノミが来たようだね。

 

ホログラム撮影用のカメラが引かれ、司令室に突入したおじいさんと、オーガ皇帝が対峙する様子が映し出されました。

おじいさんはその辺で拾った銃を構え、油断なくオーガ皇帝に照準を合わせ続けます。

 

今の一撃で決められなかった時点で、もう君に勝機はない。

 

余裕綽々なオーガ皇帝に、おじいさんは再度発砲。

しかし、銃弾はオーガ皇帝に着弾する前に不可視のバリアによって防がれます。

 

バリアーか……。

 

おじいさんは特に驚きもせずにそう呟きます。

オーガ皇帝はくくくと、愉快そうに笑い声を上げました。

 

この鬼ヶ島を包むものと同じ障壁だ、核攻撃だろうと通さんよ。

だがここまで来た君には資格がある、ここで一緒に世界の終わりを見届けようではないか。

そのあと、私自らの手で君を選別してやろう。

 

おじいさんはそれを聞き、無言で銃を捨てます。

そしてふところから桃缶を取り出しました

 

ふぬ、最後の晩餐かね?

 

ああ、お前のな。

 

おじいさんはそう言って大きく振りかぶり、オーガ皇帝に向けて桃缶を投げました。

しかも特殊な投法によって、横回転がくわえられてスクリュー状態です。

 

横回転の加わった桃缶は、真っ直ぐとオーガ皇帝に向かって飛んで行きます。

 

愚かな。

 

桃缶など投げて、どうしようというのか。

オーガ皇帝は失望し、もう世界の終わりの前におじいさんを選別しよう、そう決めます。

 

が、バリアーにぶつかった桃缶は、勢いを止めずにひたすら回転を続けながらゆっくりと進み続けます。

 

な、なにが……!?

 

オーガ皇帝が驚愕の声を上げます。

核攻撃にも耐えるバリアがきしんでいます。

 

そしてついに、バリアを突き破った桃缶がオーガ皇帝の顔に突き刺さります。

未だ回転の勢いをとめない桃缶は、オーガ皇帝の顔周辺を巻き込み、そして爆散しました。

 

これぞ必殺、桃缶ジャイロボール。

 

過去、おじいさんに桃缶を投げつけられた覚えのある幾人かは、それを見て冷や汗を流しました。

え、あれあんなに威力があるもんだったの?え?俺らなんで生きてたの?

 

そんな気持ちです。

 

そしてなんということでしょう。

世界皇帝オーガ(笑)は、そうしてあっさりとやられてしまったのでした。

 

ですが、それはそれとして悪は倒れたので、世界中は大喜びです。

が、先ほどのオーガ皇帝の言葉を皆が思い出しました。

 

あ、バベルの光が……と。

 

ですが、おじいさんがいる以上、止めることはたやすいはず。

誰もがそう思いました。

 

しかし、ホログラムに映るおじいさんの表情が冴えません。

いえ、むしろ驚愕の表情を浮かべています。

 

なぜなら、いつの間にかあらわれた、転がったオーガ皇帝の身体を冷たく見下ろす誰か。

割烹着姿の若く、凍り付くような美貌の女性がそこに居たからです。

 

白いエプロンを着けた、西陣染めで織られた奥ゆかしい藍色の着物。

黒く長い髪はアップにされて、鼈甲(べっこう)の櫛で留められています。

 

そしてそれを身につける彼女のたたずまいは、まるで天に浮かんだ夕闇の月。

 

いったい何者なのか、世界がその様子を固唾をのんで見守ります。

女性の、切れ長で冷たい目がおじいさんに向けられました。

 

その瞳に射貫かれ、おじいさんは思わず零します。

 

ば、ばあさん……、と。

 

おじいさんの絞り出すような声。

それを聞いて、おばあさんは淡々と答えました。

 

初めて出会った時のおじいさんよりも“強く創った”んですが。

やはり、あっさりやられてしまいました。

 

おじいさんは、その言葉だけで、全てを理解しました。

 

目の前の、この女性が間違いなくおばあさんである事を。

そして、おばあさんこそが本当のオーガ機関のトップだった事を。

 

そう……全ての黒幕は、おばあさんだったのです。

 

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