MOMO TAROU 作:源治
一ヶ月後、おじいさんはワシントンにいました。
もう少し詳しくいうと、ワシントンの大きな白い家にいました。
更に詳しくいうと、プレジデントの後ろに立っていました。
プレジデントは汗を流しながら、必死に言訳をはき出し続けます。
実際の所、おじいさんにはペンタゴンに狙われる心当たりはありました。
ですが、だとしても単純に米軍がおじいさんを狙ったと考えるほど、おじいさんは単純ではありません。
単純ではありませんが、それとおじいさんの感情とは別の問題です。
おじいさんは何もいわず、武器も構えず、ただじっとプレジデントの後ろに立っていました。
それがいっそう怖くて、プレジデントはしゃべり続けます。
数ヶ月前、ステルス戦略爆撃機が作戦行動中に消えた。
ペンタゴンは事故による墜落としたが、残骸は見つかっていない。
調査の結果『オーガ機関』と呼ばれる秘密組織の、暗躍の形跡が見つかった等。
そして、オーガ機関の研究所があると思われる場所。
それを示した地図をおじいさんは受け取りました。
地図にはカリフォルニア州のサンフランシスコ湾内にある島、そこに印がしてあります。
そこはかつて有名な刑務所があったのですが、今では民間の研究所になっています。
ちなみに米軍の特殊部隊が何度か上陸を試みましたが、ことごとく失敗したそうで、現状では手が出せないようです。
プレジデントが全てをしゃべり終えると、すっとおじいさんの気配が背後から消えました。
プレジデントは滝のように汗を流しながら、ゆっくりと振り向き、おじいさんがいなくなったことを確認して、止めていた息をゆっくりと吐き出しました。
命拾いした、そう心が緩んだのです。
そして、前を向いた瞬間、そこにおじいさんの姿がありました。
プレジデントは、きっちり心臓が三秒止まりました。
おじいさんはいいました、釈放して欲しい囚人がいると。
その囚人は、かつてそこに有った刑務所の受刑者であり、そこから唯一脱獄を成功させた人物。
また、おじいさんも面識のある人物でした。
数時間後、おじいさんはその人物の前に座っていました。
おじいさんと同じくらいの歳のおじいさんです。
単刀直入におじいさんは、オーガ機関の拠点と思われる研究所に潜入するのを手伝って欲しいと、いいました。
相手のおじいさんは驚きます。
ロックがテロリストの研究所なんかになってたのかと。
そう、カリフォルニア州のサンフランシスコ湾内にある島。
アルカトラズ島、通称『ザ・ロック』
それこそが、現在オーガ機関の研究所がある場所です。
相手のおじいさんはいいました、見返りの飴(きびだんご)はあるのかと。
おじいさんは当然だといいました、最低でも自由の身にするといいました。
なんだかFBIの偉いおじさんが怒鳴ってましたが、おじいさんに桃缶を投げつけられて黙りました。
こうして、おじいさんのお供に、強い仲間が加わりました。
英国諜報部の特務機関員、ダブルオーのナンバーを持つ男。
冷戦より前から、世界を飛び回り、過去全ての権力者の秘密を握る男。
伝説のスパイの名を冠する男。
そして、何よりも有名な名前。
そう、女王陛下の犬です。