儚き恋に喝采を   作:Slurve

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開幕

「お前は将来芸能界で生きていけ!」

それが親父の口癖だった。俺、黛純也は小さい頃から子役へと養成され、見事芸能界入りすることができた。しかし、俺は嬉しくとも何とも思わなかった。只々親に敷かれたレールの上を歩いている気がしてならなかった。それからの俺には、役どころかエキストラの仕事すら来なくなった。そして母親の説得もあり、早くも芸能界を引退することとなった。あの時の親父の顔は二度と忘れないだろう。とても悲しそうにしていた。しかし強制的にやらされても意味がないため、仕方がない。少々罪悪感があったものの、自分のやりたいことをやっていこうと心に決めた。

そんな俺も、今日からは羽丘高等学校2年生だ。クラス替えもなんとか友人と同じクラスになることができた。

「よお純也!今年もよろしく頼むぜ!」

 

「っと、なんだ祐樹か。ビビらすなよ。」

こいつは相川 祐樹。中学からつるんでる友人だ。今年こそは彼女作るとか到底無理そうなことを言っていた。いや、あいつじゃ彼女作れるんじゃないか?まあ先を越されても大丈夫だろう。俺もゆっくり作っていけばいいさ。焦らずにいこう。そろそろ教室に行かないとまずいな。

「祐樹、早く行かないと怒られるぞ。」

「やべ、もうそんな時間!?今年はどんな可愛い子がいるか楽しみだぜ!」

全くいつもうるさいなこいつは。まあいつものことだからもう慣れたけど。ちなみに言っとくが、この羽丘高等学校はつい最近までは女子高だったが、共学制になったらしい。それにしては男子が意外と多く、男女の比は4:6ほどだ。彼女を取り合う戦争をたまに目にするが仕方がないだろう。そんな気持ちで教室に入った。すると…

「じゅーんやくーん!」ガバッ

「うわ!なんだ日菜か。いきなり抱き着いてくるなよ。」

「だって今年も同じクラスだから嬉しいんだもん!とってもるんってきた!」

こいつは氷川日菜。出会いはこの高校が初めてだが、去年から何かと絡むことが多かった。周りからはたまにカップルだと勘違いされることも多いが、断じて違う。俺自身、こいつと絡むと疲れる。そんな光景を目の当たりにしていたクラスの男子から鋭い視線を浴びていた俺は、後々尋問を受けたのは言うまでもない。まあ暴力はされなかった分よかったが、めっちゃ怖かった。まあ笑い話として捉えてくれればいいだろう。多分。しかしそんな中、男子とは別の人物に鋭い視線を浴びていたのは今の俺には分からなかった。

 

 

 

 

 

 

そして始業式も終わり、それからはクラスごとの時間となった。

「はーい皆注目。今年1年このクラスで過ごしていくわけだが、やはり初対面の人と同じクラスになった者もいるはずだ。なのでこの時間はクラス全員に自己紹介をしてもらう。じゃあ最初は相川。お前からだ。」

「えー!?何で俺からなんだよー!?」

「お前が出席番号1番だからだよ。まあ1発目しっかり頼むぞ。」

祐樹の苗字は相川だからな。これが定めというものなのか。

自己紹介は着々と済んでいき、10人目となったところで、誰もが困惑したであろう人物の自己紹介が始まった。

「私の名前は瀬田薫だ。演劇部で活動をしている。私の華麗なる演技が見たい子猫ちゃんたちはいつでも見に来るといいよ。じゃあこの1年間よろしく頼むよ。」

うん、なんていうかその、この人には、ついていけないと思った。ん?しかし女子からは黄色い歓声が上がっていた。何故だ?透かさず隣の人に聞いてみた。

「お前瀬田薫知らないの?口調はあんな感じだけど、部活となると別人のように人が変わるんだぜ。噂には聞いていたけど、やっぱすげーな。」

だから人気があるらしい。なるほどな。瀬田薫、ねぇ。だが、演劇部と聞いて、嫌な思いがこみ上げてきた。そう、幼い頃の出来事である。あの頃はほんとに辛かったな。やめよう、もう思い出さないようにしよう。気が付くと、瀬田は自己紹介が終わったのにも関わらずその場にいたままだった。それも俺を見つめたまま。俺何かしたっけ?

「?瀬田どうした、早く席に着け。」

「…おっと、失礼しました。」

瀬田が席に着いた。ほとんどの男子は未だ何が起きたのか分かっていないだろう。そりゃそうだ。いきなりあんな自己紹介を聞いて、驚かない訳がない。

そして程なく自己紹介が終わり、後は自由時間となった。所々で話に花が咲いている。俺にも初対面の男子がいるからな。一応挨拶だけしておくか。

 

 

 

 

 

 

そして自由時間も終わり、部活に行く人、帰る人など、段々と教室から人が出ていく。

「俺もそろそろ帰るか。」

バッグを持って、席から立ち上がろうとすると、誰かが近づいてきた。それはすぐに分かった。自己紹介で度肝を抜いた瀬田薫だった。

「えっと、俺に何か用?」

「君、確か黛君だね。少し話したいことがあるんだがいいかな?」

おいおいマジかよ。瀬田は顔が整っており、美人だ。しかも背が高い。俺が174センチくらいだから、瀬田は170センチくらいか。女性にしてはかなり高い方だ。そんな人と一緒にいたらよからぬ噂が立ってしまうじゃないか。しかもこんな人となれば尚更だ。手短に終わらせよう。

「いいけど手短にな。」

「ありがとう。助かるよ。」

そういうと瀬田は真っすぐな瞳で俺にこう言った。

「君、昔子役だっただろう?」

「え…」

ちょっと待て、なんでこいつがそんなこと知ってるんだ。もう10年も前のことだぞ。マズい、このことが広まってしまったら俺は有名人だ。そんなのこりごりだ。俺は思いがけない一言に呆然としていた。

「フフッ、やっぱりそうだったか。でも勘違いしないでくれ。私はそれを誰にも言うつもりはない。気楽に話を聞いてくれ。」

よ、よかった。根は優しいやつなんだな。ん?まだ話があるのか?もう帰りたいんだが。

「よかったら演劇部に入らないかい?」

さらに衝撃的な一言に俺はその場で立ち尽くした。俺は「演じる」という行為に嫌悪感を抱いている。そんな俺が入るはずもない。すぐに断ろうとすると、

「返事はいつでも待っているよ。それじゃあ私は部活があるから失礼するよ。」

そう言い、颯爽と教室を出て行った。なんなんだあいつは… すると祐樹が駆け寄ってきた。

「じゅーんやくーん?瀬田さんと何を話してたんだい?」

「祐樹…」

笑いながら俺を見ている祐樹に俺は真剣な眼差しでこう言った。

「今年は波乱の1年になりそうだ。」

これが俺と瀬田薫の最初の出会いだった。

 




いかがだったでしょうか。楽しんでいただけたら幸いです。
投稿ペースは1週間に1本、2本上げていこうと思います。
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