それでは本編をどうぞ!
俺はたまに昔の出来事がフラッシュバックする。その度に頭痛や吐き気、そして人格が変わってしまう。幼い頃のトラウマなどはこれほどきついものなのかと再認識させられた。今日は休日だからよかったものの、明日からはまた学校だ。嫌でも瀬田に会ってしまう。もちろん先日の件については謝るが、それでも彼女に会うのに抵抗を感じてしまう。言葉とかも色々考えておかないといけないかもな。今日はゆっくり休もう。祐樹に遊びに誘われたけど断っとくか。しかし、なにかあったかと問われればそれはそれで面倒だ。返信するか。
「すまん、今日は別の用事があるから今度な。」
「おう、じゃあ今度な。」
ふう。休むと言ったとはいえ、何もしないわけにはいかないか。漫画でも読もうかな。ベッドから体を起こした時、インターホンが鳴った。家には俺しかいないため、俺が出るしかない。どうせ通販とかそんなものだろう。玄関を開けると、すぐさま俺の体は床にたたきつけられた。
「純也くんおはよー!どこか遊びに行こーよー!」
そう、日菜にすごい勢いで抱き着かれたのだ。いや、決して恋人とかじゃないぞ?この光景をクラスの男子に見られたら間違いなく処刑だな。しかも、俺の顔には柔らかい感触があった。
「日菜、ちょっとどいてくれ…。」
「あーごめーん!今日暇でしょ?どこか出かけよ!」
なんで暇な前提で話すんだよ。実際は暇だけど。…でもこんな日菜を見てるとこっちもなんだか元気が湧いてくるな。今日はゆっくりしようと思ったけど、別にいいか。
「まあいいけど、どこに行くんだ?」
「んー、色々!」
こいつは相変わらずだな。そんな彼女がどこか可愛げに見えた。身支度も終えた俺は、笑顔な日菜と街に出かけた。
「ところで何で俺なんだ?クラスの女子でもいいだろ?」
俺はふとそんなことを聞いた。日菜も1年の頃とは違い、随分友達も増えた。なのになんで俺なんだろうか。
「んー?純也くんといると楽しいからかなー?」
そういうことか。俺といると楽しいか。男子からはたまに言われるが、女子から言われたことはないな。そんなことを思っていると、文房具店についた。
「明日からまた授業始まるでしょ?ノートとかファイル買っとこっかなーって思ったからさ。純也くんも何か買うものあるー?」
「そうだな。俺はシャーペン買っとこうかな。ボロボロになってきたし。」
「そうなんだ。じゃあこんなのは?可愛いよ!」
「いや、さすがにこれはなあ。」
それは黄緑色のシャーペンだった。女物ではないが、少し派手だ。そういえば、日菜の目の色、よく見たら黄緑色だ。だから黄緑色にしたのかな。気づけば俺たちは、文房具店だけで1時間過ごしていた。
時というもは速いもので、もう夕方の5時だ。文房具店のあと食事、そのあとはショッピング、最後に公園という流れだった。日菜もそれなりに楽しんでくれただろうか。それなら俺は満足だった。しかし、まだ日菜は帰ろうとしなかった。何かを言いたそうに。
「純也くん、」
何故か日菜は恥ずかしそうだった。お?ひょっとして告白か?
「こ、これからは純くんって呼んでもいい?」
なんだ、そんなことかよ。ちょっと期待した自分が殴りたくなった。そりゃそうだろう。1回のお出かけで告白とか甘すぎなんだよ。
「ああ、構わないぞ。」
「ほんと!?ありがとう!じゃあ今日はもう時間だから帰るね。またね純くん!」
「気を付けて帰るんだぞー。」
そういい、日菜は猛ダッシュで帰っていった。さて、帰ったら何しようかな。…そういや明日、瀬田に謝らなければいけないんだった。やべー、どうすっか。何も謝ること考えてねえよ。そして暗い道の中を小走りしながら家に向かった。
「あー緊張したー!でも1歩前進した感じだからよかった!」
純くんには他の人とは違った、特別な感情を持っていることに、私は前から気づいていた。でもそれは、何を表しているのかはまだ分からない。
「明日からまた学校かー。よし、今日は早めに寝て明日から頑張ろう!」
そして寝る前に、今日お世話になった彼に返信した。
「今日はありがと!るるん!ってきちゃったよ!また遊びに行こうね!」
「やべえ、何も考えてなかった…。」
青々と澄みきった朝、俺は絶望のどん底に落とされた。さすがに何も考えていないのはナシだろ。でもちゃんと謝らないとな。食事を済ませ家を出ると、祐樹に会った。
「おう純也!おはよう!」
「朝から声でけえよ。」
「なんだよつれないな~。」
そう言いヘラヘラする祐樹。そうだ、こいつになら聞いてもいいかな。なんせ中学からの付き合いだ。それなりの信頼は置いている。
「なあ祐樹。」
俺は先日あったことを正直に話した。
「なるほどな。まあ、自分が間違ってるってことを素直に認めてしまうのが早いんじゃねーか?」
「んなこと言ったってなあ。」
「いや、今回の件はお前が悪いぞ純也。」
「…そうだな。ちゃんと謝るよ。」
そんなことを話していれば、学校についた。教室に入った途端、日菜が駆け寄ってきた。あ、これダメだわ。殺される。
「純くん、昨日はありがと!楽しかったよ!」
「あー。」
俺は教室を見渡した。案の定、男子から殺意の目が向けられていた。後ろからは、祐樹の怒りの声が。
「ちょっと純也君、屋上行こうか。」
ホームルームまではだいぶ時間がある。ああ、俺は自由を失ったのか。近くではリサに笑われていた。バイバイ、皆。こうして俺は3度目の尋問を喰らったのであった。
やはり時というものは速い。尋問から今に至る時間がとても速く感じた。
「純也~?ちゃんと薫には謝ったの?」
リサだ。朝は散々笑ってくれたな。今度ケーキ奢ってもらうか。
「いや、まだだ。今から行くよ。」
「そ。ちゃんと謝るんだよ?隠し事なしでね?」
「そうだぞ純也。ちゃんと謝れよ。」
「お前は黙っとけ祐樹。朝は散々詰め寄りやがって。すげー疲れたんだからな。」
またリサが笑ってる。そんなに面白いかよ。これからも尋問はありそうだな。逃げ道でも確保しとくか。そんなことを考えていると、瀬田が教室を出ようとしていた。もう時間がない。俺は走った。
「…瀬田。少しいいか?」
「なんだい?もう話しかけるなと言っただろう?」
「いいから。」グイッ
「…え?」
俺は無意識に瀬田の手を引っ張っていた。
「「「「「いいぞー純也!」」」」」
クラスの男子から歓声を浴びた。朝とは大違いだ。
そして俺は、先日演劇部の活動場所だった教室まで瀬田を連れてきた。
「一体どういうつもりだい黛君、君は私を馬鹿にした。そして私は君とはもう関わりたくない。それでいいじゃないか。」
「すまなかった!」
俺は大きな声で謝った。向こう側に見える生徒に見られた。それでも構わない。今は謝ることが先だ。
「お前のことを考えて言ってればこんなことにはならなかった。俺にできることはなんでもする!だから頼む、許してくれ!」
今までの人生でこれほど本気で謝ったことはないだろう。数十秒は頭を下げたままだった。
「…分かった。今回は許すよ。その代わり。」
瀬田の瞳は真っすぐで、そしてどこか悲しげのある様だった。
「…私の過去の話を聞いてくれるかい?」
含みのある言い方でそう言った。
いかがだったでしょうか。それではよいお年をお迎えください!