「……朝か」
特徴的な青髪を触りながら少年は寝ぼけながら目を覚ます。
小さくそう呟き、少年……【ナギサ】は窓から差しかかる朝の光を浴びる。
ナギサはカレンダーを見て今日がその日だと気が付く。
そう、ナギサがポケモントレーナーとして旅立つ日なのだ。
「さてと、行くか、リオル」
ナギサは相棒であるリオルを呼ぶ。
すると、瞬時にナギサの前に出現し、彼の隣に立つ。
身長はナギサよりも小さいながらも謎の威圧感がある。
普通はポケモンはトレーナーになる前は持てない決まりがある。
制御出来ずに、命令無視したりして怪我をする恐れがあるからだ。
しかし、このナギサのリオルは別だった。
(心得た、だが、ナギサ……時間は大丈夫なのか?)
(安心しろって、まだ研究所に行くまで30分はある)
(……ナギサの大丈夫はあてにならないからな)
(な、なぁ!? 大丈夫だっていざとなったらリオルに【チェイン】をかけてぶっ放すから)
こうやってリオルとナギサは心の中。
つまりは波動で通じ合っているのだ。
コミュニケーションがしっかりとれているため、研究所の人や周りから認められている特別な例。
それ以前にこのリオルとナギサは仲がいいのだ。
「ナギサ、いよいよ今日なのね」
「ああ、そうだね」
身支度をしてリビングに行く。
するとそこには朝食を既に作り終えたナギサの母親の姿があった。
表情は何処か険しい。
それもそのはず、まだナギサ自身の年齢は14歳。中学二年生に相当する。
そんなまだ未熟な子供が広大な地方にたった一人で旅に出るのだから。
心配しない理由がない。
そして、ナギサの母親は静かに口を開く。
「父さんは帰ってこなかった、あの人と同じ道を……行ってしまうのね」
「いや、これは俺自身、父さんを探しに行く旅でもあるよ」
ナギサは真っ直ぐな黒い瞳で自分の母親の顔を見る。
ナギサの父親はまだナギサが五歳の頃に急に姿を消した。
警察などが必死に捜査したが、手掛かりがなく見つからなかった。
それからというものの、ナギサからも。そして、母親から笑顔が消えた。
特にナギサの母親はしばらく立ち直れなかった。
ナギサ自身も父親からは様々なことを学んだ。
ポケモンのこと。自分の力のこと。そして、戦い方など。
「このまま何もせずにいても父さんは帰ってこない……だから、俺とリオルで父さんを見つける」
「……そう」
「それに俺は父さんみたいに突然消えたりなんかしない! 安心しろよ、俺、強いから」
冷静だが内なる闘志で溢れているナギサ。
それを聞いてナギサの母親もふっと息をつく。
ここまで言われたらもう黙って送り出すしかない。
「分かったわ、だけど、辛くなったら戻って来なさい……あなたの帰る場所はここなんだから」
「うん、ありがとう、それじゃあ……行ってくるよ」
これがナギサとリオルの旅立ちの始まりであった。
果たして二人に待ち受ける運命とは。