広大な自然に囲まれているここメルデ地方。
三年前に発見された地方で、その頃から各地の人々がここに移住してきた。
まだまだ人口は少ないが、三年前と比べたら格段に増えた。
(本当の良かったのか? あんな別れ方で)
(いいんだ、あまり話し込むと別れるのが辛くなる)
(ドライな性格をしているのだな)
(余計なお世話だ、それよりも研究所が見えてきた)
家から出た後、ナギサはリオルと波動の力で何気ないことを話していた。
別れは辛い。だけど、長くなればなるほどそれはもっと辛くなる。
胸が痛みながらもナギサは前へと歩き続けることにした。
「ねぇ、大丈夫? イワンコ」
そんな時だった。ナギサは女の子と地面に倒れているポケモンを発見する。
犬型のポケモンのイワンコ。なかなかの新種のポケモンだ。
どうやら、足を怪我しているらしく女の子は困っている様子。
ナギサはそれを見てゆっくりと近付いて行く。
「怪我をしているな」
「え? あの……」
「ちょっと待ってな」
ナギサは困惑する少女を押しのけてイワンコに触る。
集中力を高めて、こう口に出す。
「【チェイン】【ヒール】」
緑色の光がイワンコを包み込む。
すると、足の怪我がみるみるうちに治っていく。
イワンコは尻尾をふりながら少女に飛びつく。
「これでもう大丈夫だ」
「あ、あの……ありがとうございます!」
「全然、それよりもポケモンを大事にしてあげなよ」
ナギサはそう言って少女から離れて行く。
これがナギサだけが使える不思議な力【チェイン】。
このようにポケモンの傷を治したり、ポケモンの攻撃力を上げたりと。
応用出来て、これによってナギサはリオルと共に様々な苦難を乗り越えてきた。
ただ、これに弱点がある。
(よかったのか? 貴重なチェインを使ってしまって)
(なに、一日に数回しか使えないと言っても別にこれぐらいは問題ない)
(うーむ、ナギサがそう言うならいいんだが)
チェインは一日に使用回数に限界がある。
それにこれは人には効果がない。ポケモンにしか適用されないということだ。
「これは父さんから教えられて、与えられた力……俺はこの力を信じてる」
ナギサは力強くそう言って研究所の前へと着いた。
いよいよ、ここから始まるんだと。
胸に手を当てて、ナギサは研究所に入って行った。
「はいはーい! いらっしゃい! 待っていたわよ、ナギサ君」
研究所に入るなり、出迎えてくれたのは【コアライ】博士。
美しく長い茶髪をかきあげながら、座っていた椅子から立ち上がる。
「久しぶり、コアライちゃん」
「な、なぁ! コアライ博士よ! たく、まだ若いからってなめないでよ」
「いやいや、だってコアライちゃんが博士なんて、笑っちゃうよ」
「むきー! その言葉二度と言えないようにしてあげるわ!」
そう、ナギサとこのコアライは小さい時からの知り合いだった。
年こそ、離れているが泣き虫だったコアライのことをおちょくる仲なのだ。
ただ、コアライの博士としての実力は確かなものであり、その点はナギサも信用している。
間を開けた後、コアライ博士はナギサに説明をする。
基本的なこと。トレーナーとしての心得などなど。
そして、最後にいよいよ、ナギサはコアライからポケモン図鑑を受け取った。
「これでいよいよナギサ君も正式なポケモントレーナーだね」
「まあね」
「それでポケモンなんだけど……」
「ああ、それなら別にいい、俺はこいつと旅に出ると決めているからさ」
ナギサはちらっとリオルの方を見る。
もうこれは決めていたこと。
リオルも分かっていたようで、相槌をうつ。
「ふーん、確かに私からポケモン用意するより長年のパートナーと冒険した方がいいかもね」
「まあね、それでまずは街に向かってそのジムリーダーを倒せばいいんだろ?」
「大まかな目的はそうだね! でも、ナギサなら大丈夫! あたしが保証する」
「……ほんと?」
「疑ってるの!? むきぃー博士の私が言うことは間違いない……」
「すいません! お、遅れました!」
ナギサとコアライが話している中。
とても慌てながらこの研究所に入って来る少年の姿があった。
黒髪の普通の顔と言った感じか。身長はナギサより少し高いぐらいだが。
だが、トレードマークのメガネがななめになっており、よっぽど急いでいたのだろう。
「だ、大丈夫よ! だから落ち着いて、キョウヤ君」
「……誰だ、こいつ」
ナギサはその少年を見て無表情でどうでもよさそうに見ていた。