ポケットモンスター -暗躍のウルザード-   作:ポケポケ

3 / 5
第3話 傷を受けたラルトス

「グッドタイミング! ちょうど君と同じで今ポケモントレーナーになった子がいるよ」

 

「な、なんとか間に合いました……」

 

「……ふーん、お前もトレーナーになるのか」

 

息切れをしながら慌てている少年は安堵の息をつく。

コアライは少年を落ち着かせ、ナギサはリオルと共にその少年を見ていた。

そして、コアライは棚から大きめの鞄をこちらに差し出してくる。

 

「この中にあなたのパートナーとなるポケモンがいるの!」

 

「はい! そのモンスターボールの中に入っているんですよね?」

 

「そうそう、よく分かっているわね」

 

コアライが言うには、ここ数年で各地のポケモンがこの【カイロ地方】に移住しているとのこと。

そのため、初心者用の【御三家】と呼ばれるポケモンも、各地の研究所から支給されている。

 

「えっとね、本来なら三匹の中から選んでもらうことになるんだけど……まだ、このカイロ地方はトレーナーになる人自体が少ないの」

 

「ほほう、選べる種類が豊富ということか」

 

「ナギサ君の言う通り、さてと、君はどうする? キョウヤ君」

 

キョウヤ。どうやらこれが彼の名前なのだろう。

ナギサはそれだけ頭に一応入れて、コアライの話に聞く。

すぐに決まると思われたが、キョウヤはとても深く考える。

それもそのはず、これから長い旅を一緒に乗り越えていく仲間。

 

ナギサが特殊なだけあって、本来ならこれが普通の光景だろう。

 

カント―地方、ジョウト地方、ホウエン地方……数々の地方からポケモンが集められている。

種類も多く、魅力のあるポケモンが多いためやはり簡単に選ぶのは難しいか。

 

しかしそんな時だった。

 

「ん? コアライちゃん、あのポケモンは?」

 

ナギサが気になり、指を指した方向にいたポケモン。

モンスターボールの中に入っておらず、リオル同様に常時外に出ている。

しかし、その場から一歩も動かず、何やら怯えているようにナギサには見えた。

 

それはリオルも察知したようで。

 

(あのポケモン弱っているな)

 

(ああ、身体的にも、いや、どちらかと言うと精神的にきているのか)

 

(あれではチェインでも治すのは無理そうだな)

 

(だな、悪いけどあの状態じゃ戦えないな)

 

波動の力でナギサとリオルは互いの意見を伝え合う。

言い方は違うもの、思っていることは同じだった。

あれでは、選ぶトレーナーもいない。

 

そのポケモンとは……。

 

「決めました! 僕はあのラルトスにします!」

 

「え!? で、でもあのラルトスちゃんは」

 

「……へぇ」

 

これはナギサにも予想外だった。

とてもじゃないがあの状態のラルトスでは先は長くはないと思う。

今まで父親とと共に様々なポケモンを見てきたナギサにとってそれは分かること。

リオルも何処か悲しそうな表情で見ていた。

 

でも、そんなナギサの考えとは裏腹にキョウヤは違っていた。

 

「僕も、トレーナーになる決心をする前はあんな感じでしたから」

 

「……はっきり言うけど、キョウヤ君の力量からしてあのポケモンを扱うのは難しいわよ、あのラルトスちゃんは過去に心の傷を受けてしまったの」

 

「心の傷? どういうことコアライちゃん?」

 

「使えないからと言ってトレーナーから酷い虐待を受けていたの、その後は転々として最終的にここにたらい回されたということ」

 

(なるほど、見立て通りにあのラルトスの心身はボロボロという訳か)

 

(ああ、言っちゃ悪いけどこのキョウヤという奴からは強みが感じられない)

 

(このラルトスを扱うには資質や覚悟が必要だということか)

 

(多分、俺でもそれは難しいと思う、過去に受けた心の傷は簡単に拭えるものではないからな)

 

父親が居なくなった時の心の傷。いや、心の穴と言った方が正しいか?

とにかく今のキョウヤにこのラルトスを扱うのは難しい。

 

でも、それでもキョウヤの意志は固かった。

 

「無謀かもしれません、だけど、僕がなんでトレーナーになろうかと思った時に……心の閉ざしたポケモンを救いたい! 目の前で苦しんでいるポケモンがいるのに、それを見捨てる訳にはいけないと思うんです!」

 

「分かったわ、キョウヤ君がそこまで言うならこのラルトスを君の最初のポケモンとして認めるわ、だけど……やっぱり」

 

「いいんじゃない? そいつの目と言葉は本気みたいだし、俺はいいと思うよ」

 

「ナギサ君まで……」

 

「よく分かんないけど、そのラルトスの受けた傷はこのまま立ち止まっていても治らないと思う、何かきっかけを作らないと」

 

ナギサは淡々と言っていたが、的は得ていた。

確かにこのまま道のど真ん中で止まっていても進むことは出来ない。

先の道は霧が立ち込めているように。ずっと先が見えないだろう。

ナギサとキョウヤがここまで言ったらコアライも認めざるを得なかった。

 

結局、最終確認をしてからコアライはキョウヤにポケモン図鑑を渡した。

喜びながら、キョウヤもナギサと同様にポケモントレーナーになった。

弱弱しいラルトスをモンスターボールに入れて、キョウヤは心の中で誓った。

 

必ずこのラルトスを一人前にして見せると。

 

何気ない出会いだったこのナギサとキョウヤ。

ただ、この偶然の出会いが後々の運命に大きく関わっていくのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。