ポケットモンスター -暗躍のウルザード-   作:ポケポケ

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第5話 初戦闘

「本当にそのポケモンでよかったのか?」

 

コアライの研究所を出て行った後。

ナギサはお節介ながらキョウヤに付いて行った。

初めはどうでもいい存在だった。

 

ただ、あの時のキョウヤの発言と行動。

トレーナーなら必ず強いポケモンを欲するはず。

それも何も知らないトレーナーなら不安もある。

 

自分のことを守ってくれるポケモンがいいはずだ。

なのにこのキョウヤという少年は違った。

 

「ところで君は一体?」

 

「ああ、まだ名前も言ってなかったな、俺はナギサ! それで、こいつが俺の相棒のポケモンリオル」

 

「あ、ああ……僕はキョウヤ、宜しく! でも、なんで僕なんかに構ってくれるの?」

 

「別にそんなんじゃないよ、今のままだったらお前は確実に危険な目に遭う……だから、しばらくは俺が一緒に付いて行ってやろうと思って」

 

「は、はぁ……?」

 

初対面なのにズバズバとナギサはキョウヤに様々なことを言い放つ。

上から目線だが的を得ている指摘にキョウヤは無言で頷く。

 

最初の街である【カイロタウン】から少し離れた最初の草むらを歩きながら。

ここから本格的に野生のポケモンが出現する。

だからこそ、ナギサは今の状態のキョウヤが危険だと判断した。

 

ほぼ戦闘不能のラルトスにトレーナーとして未熟のキョウヤ。

 

とてもじゃないが、戦える状態ではない。

 

「まぁ、俺といてキョウヤも別に損じゃないだろ? お互い、まだトレーナーとして成り立て何だし、一緒に行動した方がいいだろ?」

 

「いや、僕とは行動しない方がいいよ……だって」

 

「あれ? おいおい、お前ってあの【ノロマでグズなキョウヤ】じゃねえか?」

 

「あ、ほんとだ! あははは、あんたもポケモントレーナーになったんだ! 何にも出来ない癖に」

 

「【マユミ】に【ケンタ】!? なんで……」

 

キョウヤを草むらの茂みの中から見つけるとケラケラと笑いながら現れた人物。

腕を組みながらピッタリとくっついている。

カップルなのだろうか? そして、その二人を見た瞬間にキョウヤの顔が険しくなる。

同時に体の震えが止まらないようで、本能でモンスターボールを取り出すが、その手はおぼつかない。

 

「なんでってトレーナーだからに決まってんだろ? にしても、勉強も運動も友達もいないお前がトレーナーになるなんてな」

 

「ほんとっにマユミも驚いてるぅ! でも、なるのはそんなに難しいことではないんじゃない?」

 

「そうだなよなぁ……トレーナーが目と目があったらやることは一つ! てめぇも分かってるよな? グズ野郎」

 

すると、マユミとケンタはモンスターボールを取り出し、地面に投げる。

慣れた手つきで二つの投げられたモンスターボールからポケモンか現れる。

 

「お前がポケモントレーナーなんて生意気なんだよ」

 

「うちらの毒タイプのポケモンでまたあんたを虐めてやるわ」

 

「【ベトベター】に【ドガース】か……見たことはあるけど、あまり知らないポケモンだな」

 

(ふむ、どちらもカントー地方のポケモンだ、幸いにもラルトスにとって相性はいい……だが、問題は)

 

「やるしかないか、いけ! ラルトス!」

 

ナギサとリオルが心の中で話し合う中。

キョウヤも二人に立ち向かうためにポケモンを繰り出す。

しかし、場に出たラルトスは怯えており、二体のポケモンを前にしても背を向けているだけだった。

 

戦えない。やはり、今のラルトスには酷なことだった。

 

キョウヤはそれを見てラルトスを抱き抱える。

 

「駄目だ! 僕の都合でラルトスにもっと傷を受けさせる訳には……」

 

「はぁ? トレーナーもグズならポケモンもグズ? どうしようもねえな」

 

「だったら、ポケモンの代わりにあんたがうちらの攻撃を受けるんだね!」

 

「おいおい、こいつら……流石にそれはないな」

 

二人は指示を出し、毒タイプ特有の技を繰り出す。

出した技は【ヘドロばくだん】という強力な技。

くらえばひとたまりもないだろう。

 

(ナギサ!)

 

「ああ、分かってる! リオル【はどうだん】」

 

それに対応するようにナギサはリオルに命令する。

両手に力を溜めて波動の力で攻撃する格闘タイプの技。

それは球体となって相手に迫っていき、当たればこれもただでは済まない。

 

そして、ナギサには奥の手もある。

 

「さらに、【チェイン】【ダブル】!」

 

チェイン。放たれた一つのはどうだんは分裂する。

しかも同じ威力で。これは単純にもう一つの攻撃をコピーするというもの。

今回の場合、最初に放たれたはどうだんをそのままコピーをした感じだ。

 

ヘドロばくだんとはどうだんは相殺し、空中で爆発する。

 

「はぁ?」

 

「何が起こったの?」

 

ケンタとマユミは何が起こったか分からないという表情だった。

 

「一つのはどうだんが二つになった? 一体どうして……」

 

(まずはピンチは凌いだな、後は敵を倒すだけだ)

 

「ああ、リオル【フェイント】」

 

「ち! くるぞ! ベトベター」

 

「二体一の状態なら勝てるはずよ! ドガース頼むわよ」

 

ナギサはリオルに指示を出した直後。

同時にマユミとケンタも自分のポケモンに命令する。

しかし、明確な指示は出さず、的確にナギサとリオルに攻撃を合わしてくる。

 

暗黙の了解。どうやら、事前にある程度の攻撃パターンは決まっているようだ。

二匹の連携がこのトレーナーの基本戦術。

 

しかし、そのことはナギサもリオルもいち早く気付いたようで。

 

(こいつらは連携で畳崩してくる! つまり、人数的に不利なこちらはチェインをうまく使わないと勝てないぞ)

 

(分かってる、さっきのヒールと今のダブル……使えるチェインはもう少ないからな! 一気に決める!)

 

波動の力で相手に知られないように会話を続ける。

だが、フェイントをかけようとした時。

リオルに向かって毒ガスが集中する。

 

二匹同時で毒ガスを発生させているため、まともに吸えば猛毒になってしまう。

 

嫌らしく、近距離では戦えない。

 

普通だったら。

 

「【チェイン】【スピード】【アタック】」

 

しかし、チェインの使えるナギサは別だ。

残っているチェインを全てリオルにかける。

素早さと攻撃力を飛躍的に上げるものだ。

目にも見えない速さで毒ガスを振り払い、攻撃力を上げた状態で相手に近付く。

 

「リオル【でんこうせっか】」

 

手数を増やし、何度もベトベターとドガースに攻撃をいれる。

レベルは違う。先に旅を初めているこの二人の方が上だと思う。

 

ただ、積み重ねてきた戦闘経験、知識、戦術。

そして、何より手を抜いていない。

この二人にはナギサに対してもキョウヤと同じ通り油断をしていたはずだ。

 

リオルの攻撃を受けたベトベターとドガースは戦闘不能となり、地面に倒れる。

 

「ば、馬鹿な!?」

 

「こ、こんなの有り得ないわ!」

 

「速い、それにあの威力……一体どうなって」

 

「さてと、こいつらどうする? キョウヤ」

 

流れを切るようにナギサは二人の元へと近付く。

無表情のまま、今にもどうにかしてしまいそうな雰囲気だった。

 

「トレーナーは勝ったら負けたトレーナーからお金を貰うんだろ? いや、この場合は全財産貰っても構わないよな? キョウヤを……トレーナーを攻撃しそうだった訳だしな」

 

「ぜ、全額?」

 

「そ、そんな無茶苦茶な話……通じる訳」

 

「黙れ、お前たちに断れる理由なんてないだろ」

 

(落ち着け、確かにこいつらは許されないが……何もそこまで)

 

(いや、父さんだったらこいつらを殺してるな)

 

(ナギサが旅をしていた時とは状況も違う、あまり目立つ行動はしない方がいい、まだ、私も完全な存在ではないからな)

 

リオルに諭され、ナギサは一息つく。

後はキョウヤの判断に任せることにしようと思った。

 

「分かった、ただ、今度こいつに何かしたら……俺が容赦しない」

 

「「す、すいませんでした!」」

 

一目散にマユミとケンタはナギサたちから逃げて行った。

結局、妥当なお金だけ置いていった。

ナギサは不満もあるが、ここは落ち着くことにしようと思うのであった。

 

「ごめん、ほら……この通り、僕といると君の評価まで下げることになってしまう」

 

「なるほど、勉強も運動も友達もいないから虐められているのか、お前」

 

「は、はっきり言うな……その通りだよ、そんな弱い自分を変えたくて僕はトレーナーになろうと思ったんだけど、はは! 今からでも引き返してやめた方がいいかな」

 

キョウヤは弱弱しい声でナギサに自分の気持ちと目的を伝える。

やっと理解出来た。ナギサにもキョウヤのことが少しだけ。

ただ、ナギサにとってうじうじしているキョウヤにイラつき始めていた。

 

「そんな小さな理由でトレーナーをやめるのか?」

 

「小さな理由って……君には分からないよ! 僕の気持ちなんて」

 

「分かるとか分からないという問題じゃなくて、お前の意志はその程度だったのか?」

 

「え?」

 

「あの時、研究所で言ったお前がやりたかったこと、目的を果たすためには……こんなことぐらいで立ち止まってどうすんだって話だよ」

 

珍しくナギサが感情を少しだけ込めてキョウヤにズバズバと言いたいことを言う。

核心をつかれたようで、キョウヤはうろたえる。

 

「それに、勉強とか運動は分からないけど、友達がいないのはすぐに解消できる問題だ」

 

「すぐに解消できる?」

 

「だって俺らが友達になればいいだけの話だろ?」

 

「……っ!?」

 

まだ信用したわけじゃない。

ナギサにとっても何故ここまで今日知り合った人間にここまで肩入れする理由は分からない。

だけど、ナギサにとってキョウヤから悪い感じはしなかった。

むしろ、旅を続けていく上で大切なのは信頼出来るパートナーを見つけること。

 

ポケモンであり、人であり。

 

その積み重ねで豊かな旅にしていくと。これはナギサが父親から学んだことだ。

 

「まあ、俺が勝手に決めたことだし本気にしなくていいよ」

 

「あ、ああ……ありがとう! 凄く嬉しいよ」

 

「そんなに感激することか? 友達なんて簡単に切り捨てられる関係みたいなもんだろ? 利害の一致、違いで簡単に崩れる関係……」

 

「それでも、まともにこんなに話せる人が出来たことがない僕にとって君はこんなに話してくれる……それだけでもう」

 

「……はぁ、はやく次の街に向かおうぜ、俺はジム戦とやらに興味があるからな」

 

(言葉は厳しいが随分とこの少年のことを思っているようだな)

 

(別に、ただ、旅をするうえで人は多い方がいい)

 

(まあ、私はナギサが考えることに賛同する、私もナギサにとって相棒だからな)

 

(分かってるよ、これからもバンバン頼むぜ)

 

こうしてナギサとキョウヤはしばらく同行して旅をすることにした。

そして、最初のジムがあると言われる【エルフェタウン】へと向かうのであった。

 

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