もふいは可愛い。
三段論法による審議の結果、もふいは正義。
即ち獣人種は絶対的正義。
──力は総てを超越し、それぞ即ち真理なり。
私は力を信仰する。
強ければ何かを奪えるだとか、強ければ何かを守れるだとか、そんなことはどうでもいい。
何故ならば、それはきっと利害をも超越する。
大いなる力を前にすれば、何もが細事に過ぎないのだ。
私はただ、力を信仰している。
──賢人曰く、全は一。されども一は全なりや。
全ては力に集約される。自明である。
ならば可逆性を問う。力は全てに解体できるだろうかと。
あらゆる問題への万能の解決策を問うたならば、愚者も賢者も口を揃えて答えるだろう。
万能を超えた全能の境地、最強無敵、究極の力であると。
されど私は考える。
それはあらゆる問題を解決するのか?
笑止、解決などできようはずもない。
私がそれを持つならば、私がそれを振るうならば、きっと問題諸共全てを叩き潰すのだから。
問題が存在した痕跡さえ残さぬ故、存在しない問題を解決できるはずもなし。
──
普遍的な指向性を持つ力。
例えば自我を持つ
そんなものはきっと欺瞞だ。
比較するが故に他に対して相対的に勝る"最"強など、所詮は最強に過ぎない。
比較することさえ無意味な存在、絶対的無限力、それこそが究極であるはずだろう。
物理も精神も精霊も、全てを超越する絶大な力。きっとそれは制御など能うものではなく、精神など容易く消し飛ばすだろう。
精霊も肉体も魂も全て消し飛ばし、後に残るものはただ純然たる力のみ。それに意味など在りはしない。
私の求めるものは暗黒質にして無価値、無味無臭なる全能性。
生命ごときが持つ能力では観測し得ず、故に実在し得るかさえ確認し得ず、即ち生命の認識上には実在し得ない。
そんな幻想をこそ私は信仰する。
──実在力、非実在力。振るうべき力、求めるべき力。ならば己が手の内には如何なる力が在りや。
私が求めるものは、大昔に小耳に挟んだことのある
もっとも、制御可能な範疇にあるらしい
仮に
罷り間違ってそれが懐に転がり込んできたならば、躊躇いもなく祖神に献上するだろう。
私が求める力、私が振るう力、
膂力、速力、持久力。力にも多様な種類があるが、今挙げたような生物としての根源的な物理力を私は好む。
信仰やらは置いておいて、現実的にはそういう力を用いている。
究極の力、即ち無意味非実在の力、私が信仰するそれはあまりにも非現実的だ。
我等
──あと
ルーシア大陸にある荒野。
人が数人居ること以外、何も特筆すべきこともないその場所で。
地面が盛り上がり、地中から土を押しのけて手が出てきた。
片手が出てきて、次にもう片方も。
それから頭、首、肩まで出てきて周囲を見回す。
……というような光景が、地上からは見えていると思う。
それをしているのは私自身なので、客観的視点から確認してみるのはちょっと無理だと思うけど。
なんとなくこのシチュエーションでは、私はモグラ扱いされかねない気がした。
それを防ぐためにはモグラを
いやでも、裸の
……というか、うん、私裸だったな。服とか余裕で消し飛んだよね。下手したら自分の命すら守れない状況で服とか守るわけ無いし。
あ、別に埋まってる最中に超音速で突っ込んできた
私怨で種族浄化するわけじゃないの。
「っはー。
眩し……うえぇ、眩し……空が青いとか、太陽が暑苦しいとか……完全に天変地異。
……うん、まぁとにかく、地上だね。
んぅ?でも地上ってこんな生きやすい環境だったかな。あ、地中が生きにく過ぎたんだ。
苦し過ぎるし暇過ぎるし、完全に苦行。危うく悟るとこだったの。」
冗談じゃないと思う。
色んな意味で冗談じゃなかった。本当に悟りかねない状況だった。
元々、六神通と呼ばれる代表的な六種の神通力のうち、天足通、天耳通、他心通の三種に相当する身体機能や魔法を持っていたわけだけど。
天足通は狭義には空中歩行を始めとした自在の移動能力、広義には物質的な作用を持つ神通力全般って意味だね。
天耳通は地獄耳、他心通は読心だ。
修験者とかが苦労して会得するような能力を生まれつき使えるなんて、自分はすごく偉い人に違いない。
それはともかく種族としての先天的な能力としてそれらに近いものを持っていたのだが、加えて今回の荒行のような何かで宿命通らしき力を会得した。
会得したというか、その、会得してしまったというべきか。
なんか事ある毎に前世の記憶らしきものが割りと鮮明に脳裏をよぎるようになってしまった。
例えば今、前前前世から云々というような歌詞の歌を前世で聞いたことがあったなーとか連想した。曲名覚えてないけど。
要するに異世界のサブカル知識が大量に生えてきたのだ。どう考えてもこの世界では不要なのでクーリングオフしたい。
……ほらまたクーリングオフとかいう異世界産の概念がナチュラルに思い浮かんだの。すごく困る。
そもそも神通力からして、魔法の横行するこの世界にはそれに相当する言葉が存在しないわけだし。
この世界の魔法は人間以外の数多の種族が用いるけど、人間は魔法とかそういう特殊能力は無い。
そんな状況にあって、神通力のように"神仏や人間の高僧が用いる特殊能力"を意味する言葉が生まれるはずもない。
とりあえず、前前世や前前前世のことは流石に思い出せないし宿命通の強度は大したものではなさそうなのが救いか。
かの仏陀は一つ二つどころか万も前の生を想起できたそうなので、そんなカオティックな能力よりはマシだと思っとく。
万とかどう考えても精神が崩壊するだろ……あぁそうか、崩壊した結果が悟りなのか。
まあそれはさておき。
「んで、ハゲ猿共、何してんの?お出迎え?」
などと私は言ってみる。
いい加減無視するのもアレなので、そいつらに話しかけたわけだけど。
「ひっ……。」
「あ……あぁ……もうだめだ……。」
「
「い、いいかてめぇら、絶対こんな奴とゲームするんじゃねぇぞ!」
「やってられるか、俺は逃げるぞ!」
「あ、待て、置いてくな、俺も、俺も行くから!」
私が這い上がった場所の周囲には
何ここ、猿の巣?木も洞穴も建造物も無い荒野だから、巣では無さそうかも。
最終的には多分偶然って結論に行き着くんだろうけど、ちょうど二つのグループに分かれて私を前後から挟む形になっているので偶然とは断言し難いとも思う。
久しぶりに猿を見たので記憶を整理してみよう。
まず、猿はあんまり美味しくない動物だったはず。
実際に何に使えるかなんて本気で考えたことも無いし、考えても結局普通に非常食ぐらいにしかならないのだろうけれど。
それはさておき、
それから十秒かそこらで全員が必死にゆっくりと逃げ始めた。秒速五メートルぐらい?
すごい、流石猿!全力で走ってもすごく遅い!
あ、なんか思い出してきた。
でも後ろに居る二匹は何かちょっと違う反応。
なんだろう、なんかこういう反応を知ってるような気が……。
「リアル
「……もふ……もふ……っ!」
黒っぽい成猿と白っぽい幼猿。
……あれ?よく考えたら
前世でよく見たような気がしなくもないジャパニーズヲタク的な反応です?
え、何?この猿共は前世から猿やってるの?
私は
でもなんかこいつらも私みたいに悟りかけてる?こいつらも宿命通を?煩悩塗れに見えるけどマジで?
「ってかお前ら、誰が逃げて良いって言った!?まだ訊きたいこと残ってんだけど!」
「……『十の盟約』六つ、
後ろの猿達が呼び止めたら、前の猿達は戻ってくる。それ逃げるより重要?何だろうこれ。
あー、えっと、まあとりあえず
んで、何するんだっけ……?
えー……あ、そうか、お腹減ってるから頭回らないんだ。
アレか。うん。何とやらが減っては何とやらというものね。
一番近くに居る猿は後ろに居る二匹の内の幼猿の方なので、体を捻って幼猿に向き直る。
素早く脚を片手で掴んで、半ば振り回すような動きで、頭が自分のすぐ近くに落ちてくるようにうまいこと引き摺り倒す。
落ちてくる頭が地面に付かない内にもう片方の手で髪の毛を引っ掴んで頭を引き寄せ、首に咬み付く。
長く地中に居たせいか、空間認識能力や腕力に違和感は少ないものの握力と咬合力が明らかに落ちていると感じた。
「白!大丈夫か!?」
「……にぃ、大丈夫、これ甘噛み。……もふい。」
「なんだただの天国かよ。」
肉が少なそうだと思いつつも、それでも一食分には十分足りるかと妥協した──わけだけど。
「……ん?んんぅぁ?あれ?
なんか歯が立たないん……?
……っ!さてはお前、
いや、うん。なんか歯が立たなかった。物理的に。
それに足も握り潰すつもりで掴んだのに、なんか潰れないし。
筋力落ちてるとかそういう話じゃなかった。
咬もうとしても、潰そうとしても、その直前で自分の動きが止まる感覚。
剛性防御じゃなくて、行動妨害だと思う。
でも魔法の気配は無かったから、こいつらは
欺瞞に特化した
もしくは未知の新種族。
何なんだろうこの謎生物。
「歯が立たない?えーっと、それってもしかして。」
「……十の盟約?」
なんかそこはかとなくヒントっぽい何某かについて言及する猿共。
情報は無いより有る方が良いものな。情報を制すモノはなんとかを制すんだよ。最終的に物理が最強だけど。
だから大人しく
「ジューのメーヤク……あー、なんかそれ知ってる。私知ってるよそれ。
確かなんか暫く前になんかどっかの誰かがなんか言ってたなんかアレだよねなんか。なんか!
んで、えっと、あー、何だっけ?
……おいこら何その疑いの眼差し!
もうちょっとで思い出すからちょい待てよ私の記憶力を舐めるなよえっとアレだよアレえーっとあーなんか思い出し……
ッ!今私何を思い出したん!?いや確かに今何か思い出しかけたん!
本当だぞ猿の分際で
「……一つ、この世界におけるあらゆる──」
態度のなってない猿共をアレしようとしたら、子猿がなんか言い始めた。あれ?これジューのメーヤクだ……。
っていうかおーもーいーだーしーたーっつってんだろ先に答え言うなよ猿!
そっから先は言わせないよ私が先に言ってやる!
「──サッショウセンソウリャクダツをキンずる!!
フタつ、アラソいはゲームによるショーハイでカイケツするものとする!
ミッつ、ゲームにはソウゴがタイトーとハンダンしたものをカけてオコナわれる!
ヨッつ、サンにハンしないカギりゲームナイヨーカけるものはイッサイをトわない!
イツつ、ゲームナイヨーはイドまれたホウがケッテーケンをユウする!
ムッつ、メーヤクにシタガってオコナわれたカけはゼッタイジュンシュされる!
ナナつ、シューダンにおけるアラソいはゼンケンダイリシャをタてるものとする!
ヤッつ、ゲームチューのフセーハッカクはハイボクとみなす!
ココノつ、イジョーをもってカミのナのモトゼッタイフヘンのルールとする!
トウ、みんななかよくプレイしましょう!!!
ほら覚えてただろ!な!?な!?一字一句合ってるね!?ね!?」
「合ってるけどそんなことより第一条の内容考えてみ。」
お?うん。第一条ね。うん。
一つ、この世界におけるあらゆる殺傷戦争略奪は禁ずる。というわけか。
え?……え?マジですの?正気?頭おかしいだろ。
なんかあの
世界情勢変わりすぎだろ何これむしろ異世界とかじゃなくて?
バグった?この世界割りと大量にバグ埋まってそうだと思ってたけど、ついに致命的なバグ踏んだ?デバッガー仕事するべきそうすべき。
……よし、この件は忘れよう。えっと何の話だっけ?
そういえばこの成猿、"そんなことより"とか言いやがったっけ。こいつはいかん。
「さらっと流した!そんなこととか言った!ハゲ猿の分際で!ハゲ猿の分際で!
そこは私を褒め称えたり恐れ慄いたりするところだよね!?
やり直せ!次は褒め称えるの!むしろ生まれるとこからやり直せ!来世で!今からぶっ
「……ウワーゼンブアッテルゾースゴイナー。」
「……もふもふ……賢い、良い子。」
成猿がすごく適当なこと言って、幼猿が私の頭を撫でる。
……ん?なんかこいつ撫でるの上手過ぎるね?
本場の
あー駄目だよなんなのもう無理だよ何これすっごい気持ち良……良くねーよ気持ち悪いっつってんだろ本音は引っ込んでやがれクソが!
「撫でないの!他人の頭勝手に撫でないの!
ハゲ猿の分際で
「いやお前、出会い頭にいきなり喰おうとしたり猿呼ばわりする方がだいぶ失礼じゃありませんかね!?」
「……でも、食べようとしたおかげで、もふり放題……!」
「なあ白、そのポジション交代しない?」
「……にぃも、埋まってる女の子に、クンカクンカスーハースーハー、したいの?……ソレナンテ……エ……ロゲ?
……好きなだけ、するといい。」
「KENZEN!KENZENな範囲でだから!セーフだから!」
「……判決を、言い渡す。……セウト。」
「どっちだ……!?」
そういえばこの幼猿、抵抗が全く無いんだよね。
撫でる以前からして既に。さっきから私の髪に顔埋めて深呼吸とかしてたし。
完全にクンカクンカスーハースーハーカリカリモフモフきゅんきゅんきゅい状態だし。
成猿の方もこのアレさはどう見てもケモヲタだし。
なんていうか、一言で言うと、こいつらは
異種族にまで同志が居るなんて、やっぱり
「なあ子猿、お前は
「……もふもふは、正義……!」
「うん、そうか。よし決めたぞ。
子猿、盟約とやらに従ってゲームで決着をつけよう。
お前が勝ったら、私の飼い猿になる権利をやる。
私が勝ったら、お前の飼い主になる権利を貰う。
今回は特別に、勝者は得た権利を行使する義務も得る。
よし、完璧な条件だね。」
「……ん、完璧。じゃあ、ゲーム内容は──」
「待て待て待て待て待て!白さんこれ明らかに何か色々と駄目だとか思いません!?」
「……うん……わかっ、てた。しょうがないから、にぃも一緒。」
「そうだな妹よ、俺も一緒にそのゲームに参加しような!でもそこじゃ無いですよね!?」
「……?」
「いやほら、飼われるの確定とかおかしいだろ?な?」
「……"【三つ】ゲームには相互が対等と判断したものを賭けて行われる"。
賭けるものは、同一。対等と判断、せざる、を、得ない。
……にぃは、ケモ耳美少女に、お世話して、ほしくない、の?」
「俺が間違ってました是非ともお世話してほしいです完全無欠にパーフェクトな条件ですね!」
うわーこいつらマジ同志。
あ、ちなみに私が同志という言葉を使う場合は、変態大人に対する蔑みの意図が多分に含まれてるよ。
あとなんかこれ言う度にどっかからブーメラン飛んでくるけど私はde変態とかder変態とかそういうのではないので全く問題無いな?
「別に二匹でもいいけど……うーん。
……あ、畜肉か。片方精肉処理だ。ふーむー、つまり普通に食べるのと同じだね。
うん、二匹ともかかってくるが良いよ!」
「よし白、俺達が勝ったらこいつを飼おうか。」
「……
「おん?ちょい待て、対等かどうか考えるよ。」
「おいおい、今言ったのは俺達が勝ったらの話だぜ?
そっちが勝ったときの条件は何も変わらねえのに、気にする必要ある?
それとももしかして……
……あれ?今何が起こったっぽい?なんだこれ?なんかハゲ猿が喧嘩売ってきたっぽいんですけどー?
えっと、つまり何が起こって……あ、そうか、つまり喧嘩売られたのか。なんだこいつ。クソ失礼なハゲだな。
でもそんな挑発に乗らず、冷静に考えます。私は賢いので。
「む?ふむぅ?
……あー、まーそーか。確かに勝てば一緒だ。
なんかそういうの知ってるよ。何かの言語の慣用句で……えーっと、"
他種族の言語もいろいろ知ってるあたり、我ながらとても賢いと思う。ふふん。
……ん?あれ?賊軍?そういえば前世で"負ければ賊軍"とか言ってた気がする。
負けたら賊軍になれるとかどういう思考回路してたんだろ?生かして帰すわけ無いですよね
まぁ猿の知能だとそこらへんわからなかったんだろね。いやでも猿ってそこまで阿呆だったっけ?まぁどうでもいいか。
「種族全員
「……食性からして、ケモい。」
「いくらケモいっつっても限度があるだろ……俺的には全然アリだけど。むしろもっとケモくても良いけど。白は?」
「……
なんかケダモノ扱いされたし肉食とか言われた。
これは、えっと、なんだろ?こいつら自殺志願者かな?かな?
ぶっこr……いや、ここで殺したらそれこそ肉食系のケダモノの所業だよね。
落ち着いて話し合おう。話せばわかr……わかるわけねーだろ某二十九代目様とか速攻魔法"話せばわかる"を発動したらチェーンしてトラップカード"問答いらぬ"されてライフ消し飛ばされたじゃねーか。
あ、でも今世は
というわけで結局話をしよう。あれは今から三十六万……いや、一万四千年前の事だったか。まぁいい私にとっては前世の出来事だ。
っていうか何の話だっけ?……あ、食べる話!
理性的に対話を試みたというタテマエのもとに後で食肉加工するのはフカコウリョク!
「全員じゃないよ!狼族とか熊族とかそういうおっかないのと一緒にしないで!
私は貝とかが主食なかよわい猟虎族なんだよ!他に食べ物無かったら猿も食べるけど!」
「思いっきり肉食獣じゃねーか!」
「どこがか!貝とか雲丹とか蟹とかのどこが肉か!
お前新鮮な貝とか見たことないだろ!味はなんとなく肉っぽさもあるけど、あれ特に動かないしどう見ても植物だぞ!」
「ちっとは動くだろそんぐらい見たことあるし知ってるわ人間様の知識量なめんじゃねーぞ!
植物っつったら人参とか玉葱とまでは言わんがせめて昆布とか出せよ!」
「昆布は植物だけど食べ物じゃないからノーカンだし!
貝とかちょっとしか動かないの、ハエトリソウが閉じるのと同レベルだよ!
あ、お前もしかしてハエトリソウも動物だと思ってる!緑色だし完全に植物!
いいか!貝とか!あれらは!植物!野菜!海藻!よし閉廷!」
「……っつーか何かに似てる気がしてたけど。
それフライドポテトとかケチャップとかをガチ野菜扱いするピザ野郎の言い分じゃねーか?」
ピザ!?失礼極まる!失礼極まりないよ!
あ、落ち着くのだ私。なんかボケてもいないのにツッコミ的な何かを連発してくるハゲいとあはれ、的な感じでなめらかに受け流すのだ。
というか、んーむ?そもそも、何かおかしかったかな?
こいつの言い方はツッコミだよね?少なくとも
猿の感性はいまいちよくわからないな。私の前世はこんなんじゃなかったのに。
……あれ?こんなんだっけ?なんかこんなんだった気がしてきた。だって猿だったし。
「……あ、ピザの話なんかするせいでお腹へってきた。ずっと前から減ってるけど。
どうせ猿食べるにしてもこんな可食部率低そうな猿じゃなくて、甘い蜜吸って生きてる資本主義の豚とか食べたい。いわゆる資本主義のピザ。
あーもー、話なんかしてないでさっさと食べr……あれ?さっき食べようとしたっけ。
えっと……なんだ……あ、そうだ、ゲームの結果として合法的にぶっころだね?
はよゲーム。はよはよ。」
「……ん。」
「そうだな。
ここにカードデッキが一つある。
トレーディングカードじゃなくてプレイングカード、いわゆるトランプだな。
ややこしいルールを持ち出すのもなんだし、シンプルにババ抜きといこうか。
俺ら二人とも上がったら俺らの勝ち。お前が上がったらお前の勝ちだ。」
「んむ。ババ抜くよ。はよ。」
……んぉ?あれ?こいつら二匹がかり?そういえば二匹と一人だものね。そうなるのか。
それぐらいのハンデは許してやろう。
二匹居ても所詮雑魚。猿を二倍にしても、熊とか虎とかにはならないんだよ。
「
「……
「何それ?猿語の挨拶?あっしぇんてー。」
「"【六つ】盟約に従って行われた賭けは絶対遵守される"って言ってただろ。
今のは盟約に従うって誓う決まり文句らしい。
まあゲーム始めるときの挨拶だと思ってれば良いんじゃないか?」
「んーむ。完璧に理解したよ。はよはよ。あっしぇんてあっしぇんて。」
しかし、ババ抜きか……。
ということはアレだ、ポーカーフェイスすればいいんだね。笑ったら負けよってやつ。
ワンパターンなポーカーフェイスなんか猿でもできるんだから、私のポーカーフェイスは二十面相ぐらいいけるはず。二十倍強いぞ。
これはもう勝ったも同然。始まる前から勝負はついてるんだもの、笑いが止まらないよね。へへへー。
──とか思っていた時期が私にもありました。
「あれ?……え?ん?んむーぅ?」
「ん?どうした?」
「なんか違う!お前の手札、なんかさっきと違うぞ!イカサマしたな!?挽肉にされたいか!?」
「おいおいイカサマって、お前がそれ言うのかよ?
いつのまにか手札が変わってるってんならお互い様だろ?」
「は?お互い?んぅぅう?
……んむ。なんか私のも変わってるね?何しやがったったん?」
「え?なんでこの期に及んで被害者面してんの?
俺の手札はいつのまにか一枚増えてて、お前の手札は一枚減ってるんだぜ?
イカサマで得するのはイカサマした本人に決まってるよなぁ?
じゃあ誰が得したのかなぁ?ちょっと言ってみ?ん?」
「んぅ?えっと……んむ。
いやいやいや、待てよ、落ち着け、な?私はやってないよ?
陰謀なの!なんか気付いたら得してるなんて、陰謀論が火を噴くのは不可抗力!
ナチスの残党がイラクの大量破壊兵器でケネディ暗殺的なサムシングなの!つまり共産主義の猿のせい!
濡れ衣!濡れ毛皮!他人の毛ぇ勝手に濡らすなんて極悪非道!
いいか冷静に考えろ、獣耳尻尾の美少女がそんな悪いことするわけないんだぞ!お前もそう思うだろ!?だろ!?」
「ふむ、一理あるな。
ハイテンションな獣人キャラは愛すべき馬鹿と相場は決まってる。故にイカサマできるほど頭が回るわけがない。」
「……にぃ、騙されないで……っ!」
馬鹿言った!猿が私に馬鹿言った!ぶっころ案件!
でもなんか濡れ衣脱ぐ方向もしくは濡れ毛皮乾かす方向に話が行ってるから今は我慢!つまり後でぶっころ案件!
そしてその後のオハナシ(物理)に見せかけたお話(盟約により物理無効)の結果、仕切り直して第二戦ということになった。
ただし、次に同じようなことがあれば即座に私の負け、という条件で。
今度はイカサマなんてさせないししないし濡れ衣着ないし濡れない!
ちゃんと監視するよ!
三人の手札と捨て札をまとめてシャッフルして再び配られる。
配られたカードを手に取り、ソートしてペアを除去。残った手札の枚数は、猿共の手札と大差無い。
手札を何回かシャッフルする。
その最中、手札の裏面を二枚ずつ交差法で目視確認──
──違和感無し、少なくとも私の初期手札にマーキングは無い。
手札をファン、これで準備は完了。
マークトデック以外に猿がババ抜きで使えるような事前の仕込みは多分無いので、サマがあるとすればさっきみたいにゲーム開始後になるはず。
後はしっかり監視しながらババを渡して勝ち抜けるだけで良い。とても簡単!
──とか思っていた時期が私にもありました。(二回目)
「き゚ゅん!?」
「……良い声で、鳴いた。」
「どうした?もしかして、
私のカードが、一枚、濡れてる。
さっきまでなんともない普通のカードだったのに、縁に少しだけ、水か何かが染み込んでる。
やばいよ!やばいの!とてもとても困る!
このカード、ババだぞ!明らかに意図的なマーキング!
魔法的にも物理的にも猿共はこのカードに細工できなかったはず!
配られたとき濡れてなかったし、配られたあとずっと私が持ってたし、猿共の動きは見張ってたし、魔法の気配も無かった!
こんなことできるの私しかいない!私やってないのに!
「なんでもないよ!?なんでもないの!何もしてないって確定的に明らかだし自明だしQ.E.D.だし!解散!」
「……挙動、不審。」
「ですよねー、やっぱり白さんもそう思いますよねー。
こんなあからさまな態度、何かあるって自白してるようなもんだぜ?」
「私、何もしてないよ!ほんとなの!ほんとだよ!疑うなんて失礼!失礼極まるの!」
「へぇ、そう。ま、良いけど。
そんじゃ続きしようぜ?
「き゚ゃぅううぅく゚るるぅ……っ!」