ドッタンバッタンフロントライン   作:焔薙

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まぁ、ここで整体院開いて長いからねぇ(どっちかと言うと腕っぷしが有名だと気付け三十路


院長は人気者

朝食を終え、ケレス達は街を買い物がてら散歩をしていた、買い物と言っても昼食及び夕食の材料とリベルタが部屋に置きたい小物くらいであり本来の目的はリベルタに街を案内しつつ、ケレス達と交流ある者に彼女の顔を覚えて貰うことだ。

 

「やぁ、おやっさん、儲かってる?」

 

「おお、先生じゃねぇか、まぁボチボチだなぁ」

 

その内の一人、食材屋の店主にケレスが挨拶すれば向こうも笑いながら返してくる、このお店は彼女達もよく使い、また店主も彼女の整体院を利用する間柄である。

 

一応、今回の散歩の目的を聞かされていたリベルタだが店主を前にした瞬間、カルの後ろに隠れてしまっている。

 

「ボチボチなら良いじゃないの、聞いた話だと少し離れた街なんか悲惨みたいよ」

 

「そりゃあ、鉄血が猛威奮ってる場所なんかはそうだろうよ、やぁカルちゃん、とおや、見ない顔だね」

 

「こんにちは、おじさん。ほら、大丈夫ですよこの人は院長の常連の一人ですし」

 

そう促されカルの後ろから出てくるリベルタ、当たり前だが人間不信は直ぐにどうこう出来る問題ではない、なので信頼できる人間だとしても彼女が慣れるまでは出来る限り側にいて怖がらないようにするようにしている。

 

対して店主の親父さんは怒るでもなく彼らしい笑顔でリベルタに向き合い、軽く頭を下げてから

 

「始めましてだな、おらぁここの店主をしてもんだ、先生とは彼女がここに来てからすぐの付き合いだよ」

 

「こ、こんにちは、リベルタ、です」

 

「どう、可愛いでしょウチの娘?」

 

「呵々、だがウチの嫁さんには負けるなぁ?」

 

お、言ってくれるわねこの愛妻家めと互いに軽く笑い合い、数十分程四人で雑談をしてからじゃあまた後で買い物に来るよ次の目的地に進む。

 

雑貨屋の老婆、小物店の若いお姉さん、カルが良く利用している服屋のおばちゃん、どの人もリベルタを見て優しい笑顔で挨拶をしてから彼女が楽しめそうな世間話、小物店や服屋ではこれ似合うんじゃないなどで少々もみくちゃにされたがリベルタには不思議と嫌な感じはせずに自然と笑みが溢れた。

 

「知らなかった、こんなに暖かい人たちが居るなんて……」

 

「そうでしょ、貴女が知ってるところも確かにこの街の一部だけど、本当はこんな感じに優しい街でもあるのよ」

 

「私が救われたのもこの街に院長が居たお陰もありますがこの街の人が死にかけていた私を見つけ直ぐに院長を呼んでくれたお陰でもありますからね」

 

「そうだったのですか?」

 

「ええ、まぁその話は後にしましょうか。院長、次は何処に?」

 

「一番の問題児共」

 

たった一言のそれにああと何故かドナ・ドナされる子牛を見る目で自分を見つめるカルに自分がこれからどんな人達に会わされるのかと不安になるリベルタはそっとケレスの方を見れば、優しく頭を撫でられてから

 

「私のそばを離れないようにね」

 

「もっと不安になるんですけど!?」

 

ヘーキヘーキと軽く言うケレスにいや、本当にどんな所に行かされるんですか私!?と今からガクガク震え始めるリベルタとそれを眺め、ああまぁ昔の私だな~と呑気なことを考えるカルの三人が辿り着いたのは何の変哲も無い雑貨ビル、ここのその問題児がと疑問に思うリベルタだったが、それは建物内のとある部屋に入った瞬間に理解した。

 

「姉御に姉さん!?来るなら一言言ってくれれば全員で迎えましたのに!」

 

「良いわよ、大体全員でって街の見回りどうすんのよ、それでなくても怪しい奴ら紛れ込んでたってのに」

 

「なっ!?も、申し訳ございやせん!!この責任は俺の指で」

 

そこに居たのは明らかにカタギではない男性、見た感じ今は彼一人しか居ないようだが言葉から察するに複数人居るようで、更に街の見回りも彼らがしているようだがケレスの一言で顔を青ざめながら懐からドスを取り出して小指を切り落とそうとするその光景にヒッと声を引きつらせるリベルタ。

 

一方、ケレスはそれを見てはぁと大きなため息をついてからドスを持つ彼の腕を掴んでそれはそれはいい笑顔で

 

「要らないっての、今日はウチで迎えた娘の顔を覚えてもらおうってだけで来たのよ」

 

「姉御の娘、ですかい?」

 

「あ~、えっとリベルタちゃん、大丈夫ですよ、怖いですけど怖くないですからね~」

 

男の鋭い視線がリベルタを射抜けば彼女はカルの背中に隠れ服をギュッと掴んで震えてしまう、流石にこの手の異性の前に出すとか鬼ですか貴女は!とカルの厳しい視線にあ、と言葉を詰まらせるケレス、それから彼女の側まで行き

 

「ごめん、少し迫力が強すぎたね」

 

「だ、大丈夫、です。えっと、り、りり、リベルタ、です」

 

「無理しなくても、院長~?」

 

ああ、うん、私が完全に悪かったとバツが悪そうに頭を掻き、それから男の方を見れば真剣な目で何かをスケッチして少し待てば

 

「おし、これでどうでしょう」

 

「お、相変わらず見た目に合わない似顔絵術持ってるわよね」

 

彼が見せてのはリベルタの似顔絵、それもかなりレベルが高くこれならば他の仲間達もすぐに覚えるだろうという出来、此処に来たのはこれが目的だったのでそれが済んだ以上長居は無用だなとケレスが男、この事務所のボスに手短に他の要件を伝えてから彼女達は事務所を後にした。

 

「あの、先程の方とはどういう繋がりなのですか?」

 

「まぁ、簡単に言えば喧嘩売ってきたから徹底的に潰したら手下になった的な?」

 

「そ、そうですか」

 

なんだかどっと疲れたなぁとため息を突いているとそれを見たカルがジトッとした視線をケレスに送りつつ

 

「大丈夫ですかリベルタちゃん、院長、やはりあの方々といきなり会わせるというの流石に酷ですよ」

 

「そうよね、でもほら早めに顔覚えておいたもらったほうが良いと思ってさ、でもそうよね、帰りになにか食べようか」

 

「え、いや、そんな大丈夫です!」

 

良いから良いからとケレスがまた優しく頭を撫で、カルは言葉に甘えちゃいましょ、どうせ少ない院長のお小遣いからの奢りですしと笑う。

 

それを聞いて、まだ何処か遠慮はあるもののもう染まりつつある彼女はじゃあ、と先ほど街中で見て気になったものを口にする。

 

「カフェの、パンケーキが食べてみたいです」

 

リベルタ、少しだけ自分の意見を出すことを覚える。




事務所のボス
極東の島国にあったヤクザというものを真似た方々の集まりのボス、組長と呼ばれたがっているが全員ボスと呼んでいる。主に裏と表の見回り、違法な店の浄化などをケレスから言い渡され遂行しているが漏れも出る。特技は機械顔負けの似顔制作。

ドッタンバッタンは週一を基本にしていきたい

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