ドッタンバッタンフロントライン   作:鮪薙

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実は私は二重人格なのよ(ミステリアスガール


もう一人の家族

あの後、カフェでパンケーキ(フルセットモデル)を満喫したリベルタだったが、少し前にちらっと出たカルの話が気になっていた。

 

彼女は死にかけてこの街に来た、でも聞けば彼女は戦術人形、つまりそれは

 

(戦場からの敗走人形?でもそれだったら連れ戻されてるだろうし)

 

考えるがだからといって彼女のことをあまり知らないリベルタが答えに辿り着くということはなく、しかし気になると言えば気になってしまう彼女は夕食後、自身が入浴後にカルがお風呂に向かったタイミングで意を決して

 

「あの、院長……その一つ聞いていいですか?」

 

「うん?何かしらリベルタ」

 

「今日、カルさんがポロッと言った死にかけで街に着いて、それで院長に救われたと言う話、それって」

 

かなり遠慮気味に、いや自分でも凄く踏み入ったことを聞いていると自覚しているので聞いたけど罪悪感で殺されそうな声と顔でリベルタが聞けばケレスはあ~と頭を掻き、チラッとお風呂場の扉から聴こえる鼻歌を確認してから

 

「ま、気になっちゃうわよね。いいわ、でもあの娘には秘密ね、ちょっと絡まってる話だからさ」

 

「は、はい、院長が言うならば勿論秘密にします」

 

「ありがと、って言っても簡単にだけど……あの娘はね、元々二つ先の地区にあった司令部、そこが壊滅し鉄血から逃げ延びてきた人形なのよ」

 

始まりから衝撃的なカルの過去話、彼女はケレスの言う通り司令部が鉄血の襲撃で壊滅、何とか軍用車でこの街がある地区まで逃げてきたのだが途中で別の鉄血に見つかり攻撃され、命からがらに辿り着き助けられた。

 

と言うのが『カル』が記憶しているストーリー、では実際は、というと

 

「カルだけじゃなかった……妹【カルカノM91/38】も一緒だったのよ、いえ、それも違うわね」

 

「違う?」

 

「生きて辿り着いたのはカルカノM91/38だけだったのよ、カルはその時すでに手遅れなレベルだったのよ」

 

え、と言葉が漏れる、だって今ここに居るのはカルなのだから、そんな感じの顔をしていたのだろう、ケレスはええ、貴女の疑問はご尤も余と言い続けた。

 

「だからこそ、私は妹の方だけでも救おうとした、だけどそれを彼女が拒否して……」

 

【私が、生きても仕方ないわ、お姉さんを、助けて】

 

懇願のそれをケレスは隠すことなく彼女はすでに手の施しようがないと言うも、それならば今度は自分のコアを使えと、それで姉を救ってくれとカルカノM91/38は何度も、ケレスに伝えれば彼女は

 

「カルを、妹のコアと複合させる形で蘇生させた、いえ、複合なんてものじゃないわ、あの娘のコアの9割は妹の物なのだから」

 

「でも、それだったら人格は妹の人格が出るはずでは」

 

「……ふふ、それはそうね、今日の夜分かるわよ」

 

は?と小首を傾げた所でカルがお風呂から出てきてその話はそこで打ち切りとなりケレスはお風呂場に消え、残ったリベルタはカルの顔を見る。

 

そこにあるのは何時もと変わらない彼女、いやそもそも妹の性格も知らないのでどっちかはわからない、だがケレスの言葉から今此処にいるのは間違いなくカルであると思えば余計に訳が解らなくなるリベルタ

 

「どうかしましたかリベルタ?」

 

「え、あ、いえ、何でもないです」

 

秘密だと言われてる以上、聞くわけにもいかずにその日もカルの部屋でともに寝ることになり就寝した。

 

就寝後、深夜という時間にリベルタは隣でカルが起きたのと頭を撫でられた感触で意識が浮上し目を開けば

 

「あら、起こしてしまったかしら、いえ、それとも気配を感じやすのかしら?」

 

「カル、さん?」

 

まだぼんやりとした視界に映るのは当然ながらこの部屋の主であるカルなのだが、何かが違うとリベルタは直感する。

 

話し方や口調、いやもっと直接的に違う何かがあると視界をクリアにしていけば分かった、目の色が違う、本来のカルは赤い、だが今の彼女は青い瞳だと気付いた時、やっと眼の前の彼女は違う人物だと気付けた。

 

「ええ、カルよ」

 

「違い、ますよね?」

 

カルだと名乗ったが間髪入れずにリベルタがそう告げれば、バレちゃったと手を口に当て含み笑いをする、それから観念したように

 

「初めまして私はカルカノM91/38、ケレスからは【カノ】と呼ばれてるわ」

 

「あ、リベルタ、です」

 

「ええ知ってるわ、(カノ)からはお姉さんの記憶が覗けるから、逆はできないから私がこうして人格だけ生きてるのは知らないし、これからも知らなくていいのだけど」

 

それを聞いて何故?となるリベルタ、生きているなら知らせてあげればいいのにと姉妹とはそういうものではないのかと思っていればカノはフフッと優しく微笑み

 

「世の中、嘘が必要なときもあるの、例えばそう……『この街に辿り着いたのは初めから自分一人だった』とかね」

 

「それは、院長から聞きました、でもどうして」

 

「だって、辛いじゃない、妹の命で自分が生き残ったなんて、それが私の望みだとしてもね」

 

そう語るカノの顔に未練はなく、姉の記憶に自分が居ないということに寂しさも感じられなかった、それは覚悟していたことだから、言葉になくともそう語っている。

 

だがリベルタは見えた、それが嘘だと、確かに殆どが本音だと思うがそれでも一つだけ嘘があるのを感じ、だがどう言葉にすればいいのかがまだ分からない彼女はその行き場を失った感情をどうすればいいのかわからなくなり、気付いたら

 

「あ、れ?」

 

「っ、そう、貴女も泣いてくれるのね……」

 

涙が溢れていた、それを見たカノは驚きながらも優しくリベルタの涙を指で拭い、優しいのねと言葉を掛け頭を優しく撫でる。

 

暫くリベルタの啜り泣く声が響くその間、カノは彼女を撫でる手を止めずに窓から夜空と月を眺め、あの日もこんな夜だったなと思い出に浸る。

 

「私は、お姉さんが生きていれば満足なのよ、でも、そうね、こうして、泣いてくれる人たちが居てくれるのはやっぱり嬉しいかも」

 

誰からも記憶に残らないのは寂しいものと呟いた所でリベルタが静かだなと見れば穏やかな寝息を立てている彼女、意外とマイペースなのねと微笑み、それから静かに、本当に囁く声で

 

「お姉さんを宜しくね、可愛い可愛い、妹さん」

 

カルカノM91/38、大好きな姉からは既に記憶から去っているがそれでも彼女は生きて静かに見守っている存在である。




カルカノM91/38
カルの妹であり通称【カノ】、だがカルの記憶からは存在そのものが全て消えており彼女からカノを認識することは出来ない。だがカノからカルのすべてを感じ、見ることが出来るので前に出てきた時に会話の齟齬が出ることはない、またこの時のカルは意識がなくなっている状態になる。

週一って言ったの誰だよオラァン!!!
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