マクロスΔ 歌の守り手 作:宇宙の記憶(ソラノキオク)
この話を投稿時点で1話のアクセスが毎日のようにあったこと、とても嬉しかったです。それとお気に入り登録して下さった3名の方、ありがとうございます
まだまだ下手くそな書き方ではありますがこの嬉しさを糧に精進していきます。
それでは第2話をどうぞ
ナナーシャが視界の端に捉えた燃えながら堕ちてゆく機体へ向かっていると赤に塗装されたジークフリート、ミラージュ機がバトロイドに変形しその機体を抱えるのが見える。
ナナーシャはミラージュ機とその機体に迫る敵機に対し攻撃を仕掛け敵を分散させる。
そのまま敵の数を減らそうと追撃に出た瞬間、敵機が集結し戦場とは別方向、宇宙空間へ離脱してゆく。
「撤退?このタイミングで?」
あと少し攻め込まれていたら敗退していたという焦燥感とそんなタイミングでの撤退に違和感を抱きながら機体を降下させるのだった。
Δ
機体の損傷状況や消費弾薬数などのデータをまとめ機体から降りるとバシッという乾いた音が響く。そちらに視線を向けるとミラージュが一般人ーナナーシャが避難誘導していたハヤテ・インメルマンだったーに詰め寄っていた。
そちらに聞き耳をたてながらアラドのいる方へ向かい軽い報告を交わす。
その背後でミラージュとハヤテの口論がヒートアップしてゆく気配を感じ取る。
「報告は以上です。ところでアラド隊長、そろそろあの真っ直ぐ娘を止めた方がいいのでは?」
「ああ、そうだな。おい、ミラージュ!帰るぞ!」
「では、またラグナで」
「おう、帰ったらすぐにチャックの店でクラゲラーメンだな」
たわいない会話を交わし機体に戻る途中、ミラージュと別れたハヤテと目が合う。
「あの機体、君が操ってたんだね」
「なんだよ、あんたも文句があるのか?」
「ねえ、風、感じたんでしょ?」
「は?」
「あなたも来れば?一緒にいたあの娘とラグナに」
そう言って機体に飛び乗りコンソールを操作し空へと舞いあがる。
「なんなんだよ、いったい…」
1人残されたハヤテはそう呟くのだった
Δ
アル・シャハルでの戦術ライブから数日後…。
「はへ〜。今回もたくさん集まってるねえ。この中から合格者出たらいいんだけどねえ」
『マクロス・エリシオンからアルファイレブン。規定の高度から下がっています』
「っと、すいません。アルファイレブンよりマクロス・エリシオンへ。哨戒任務完了しました。これより帰投します」
『了解。ビーコンに従いへーメラー、1番滑走路に着艦してください』
「ビーコン確認。着艦する」
マクロス・エリシオンの右腕、空母へーメラーからの誘導ビーコンにのり機体を着艦させる。
そのまま機体をカタパルトから駐機場へ移動させエンジンを止め機体から降りると整備士達が点検などの作業に取り掛かる。
「おう、嬢ちゃん。機体の方はどうよ?」
「あ、おやっさん。お陰様で至極快調ですよ」
「そうかい!そりゃあよかった!なにせ前回の出撃でエンジンがオーバーロード寸前まで出力されてるもんだからオーバーホールの為に予備のエンジンに積み替えてるからなあ」
「それで、何かわかりましたか?」
「さあな。今のところ何も問題が見つかっちゃいねえのさ。まあ、問題がないならそれでいいんだがよ」
そう言いながら整備班の班長は苦笑いを浮かべる
「さてと…ってもうこんな時間!?」
「お?どうしたよ」
「この後、ワルキューレのオーディションの手伝いなの。もう行くね」
「おー、そりゃ急がねえとな」
整備士達に機体を任せ飛行甲板からへーメラー艦内に入り格納庫脇に設けられたブリーフィングルームを通り抜けた先にあるロッカールームへと入るとパイロットスーツを脱ぎ捨てるのだった
Δ
「やっべ、迷子になっちまった……」
マクロス・エリシオン艦内で案内役とはぐれてしまったハヤテ・インメルマンは艦内地図とにらめっこしながら呟く
「近くに人がいねえしどーすんだよ、これ」
「君、どうかした?」
「あ、アンタはたしかアル・シャハルにいた」
「おや、あの時の少年じゃないか」
ハヤテの背後から声をかけた女性-ナナーシャなのだが-はおどけた風に話す。
「てかアンタさっきまでいなかったよな?」
「ん?いたよ?ただただ気配を消すのが上手いだけ。で、君はここで何をしてるのかな?迷子?」
「ま、迷子じゃねーての。デルタ小隊のアラドって人に呼ばれて案内してもらってる途中で窓から見えた飛行機見てたら案内役が先に行ってしまったんだよ」
「それを迷子と言うと思うんだけど」
ナナーシャは少し呆れた顔をしてから少し考え込むとポンと手を叩く
「この通路を真っ直ぐ行って突き当たりを右に曲がったところにあるエレベータから飛行甲板へ出られる。アラド隊長には私から伝えておくから先に行っておくといい」
「マジか。サンキューな」
そう言ってハヤテはナナーシャの指差す方向へ駆けていく。その背中を見送りながらため息を吐きつけ爪型マルチディバイスを操作しアラドへの通信回路を開くのだった
Δ
ワルキューレリーダー、カナメ・バッカニアの合格者なしの言葉を最後にオーディション参加者は三々五々、ケイオスラグナ支部とバレッタシティを結ぶシャトルへ乗り込む。そのうちの1つに乗り込んだ少女、フレイア・ヴィオンは携帯端末を握りしめ車窓から見えるマクロス・エリシオンを見つめる。
「まだ、あそこにいるかな…」
アル・シャハルから一緒にラグナに降り立ちシャトルの発着場で別れたハヤテの事を思い浮かべると視線を端末に戻し肩を落とす。
その数瞬後、衝撃音とともに車体が緊急停止し外の景色を映し出していたホロパネルが黒く染まり車内の電灯が赤色に光る。
『お客様にお知らせします。バレッタ市内にてヴァールによる暴動が発生しました。』
何事かと動揺し慌てふためく車内にヴァールシンドロームが発生したという車内放送が流れさらに車内が騒がしくなる。
そんな中、1人の乗客が端末から表示させたニュースの映像にはバレッタシティと思われる所からの中継が映っていた。
が、中継映像に映るリポーターの背後で爆発が起こり画面に砂嵐が走り映像が途切れたことを示す。
その映像の衝撃で車内の騒がしさは少し収まる。と、端末で映像を表示していた少女とは反対方向から苦しそうなうめき声が聴こえる。そちらに視線を移すと男性客が蹲り震えているのが目に入る。
その人物に2人の女性が介抱する為に近寄ると同時に片方の女性が悲鳴をあげる。
2人の女性は男性から離れようと後ずさると同時に紅い飛沫が飛び散り、ボトリと赤い塊が落ち、床に倒れ込む。
「ヴ、ヴァール」
倒れ込んだ黒髪の女性のが細い声で呟くのと男性のシェルエットが膨らんで着ている服が裂けてゆく音が重なる。
「ヴァールシンドロームだと!?」
フレイアの後ろにいた男性客の言葉に反応するかのようにヴァールを発症した男は息を荒くしフレイア達がいる方向へ向き直る。
その姿を見た乗客の数人がパニックを起こしドアを叩き開けるよう懇願する。
予想外の事態に呆然とし立ち尽くしていたフレイアは女性の声を聞き我に返り、ヴァール化した男が近づいてくることに気づき慌て後ずさるが脚がもつれ床に倒れてしまう。
そんな彼女に狙いを定めた男は襲いかかろうと姿勢を低くする。
その姿を見、逃げられないと悟り怯え、過呼吸気味になったフレイアの脳裏にアル・シャハルでの美雲の、ワルキューレの姿が駆け抜ける
「歌…」
脳裏によぎった美雲やワルキューレによって過呼吸気味だった呼吸が落ち着いた呼吸に戻っていく
「のぼせてScreaming…もう止まれないの…」
その小さな詞を聴いた乗客と男に軽い動揺が起こる
「のぼせてScreamingもう止まれないの
S O Sアガるサイレン」
「あの子…」
「本気かよ…」
先より大きく、しっかりとした声に乗客達はさらに動揺する
その詞はヴァール化した男にもしっかりと届いているのか低くした姿勢から床に膝をつき座り込む。
肥大した筋肉や膨張し浮き出た血管は元に戻り始めそこにはもはやヴァール化した痕跡が多少残る程度の男性がいるだけだった。
その様子を見ながら1曲歌いきったフレイアは少し荒い息を吐き出しながら体勢を起こす。
「これ。大切なものなんでしょ?」
その声を聞きフレイアは後ろを振り向くとメガネをかけた女性が転んだ時に離れた端末を差し出していた。
フレイアは端末を受け取ろうとするがその女性の声が誰かに似ていることに気づき伸ばした手を止めてしまう。
「その声…」
「ふふっ。Welcome To Walküre World」
女性は立ち上がり後ろに下がりながらそう呟く。その女性の背後には端末でニュースの映像を表示させていた少女とその隣にいた少女が立っている。
3人が並ぶと床のディスプレイ表示が警報から白を基調とした色へと変わり光が溢れ出す。
その光に包まれるように足元から光が通過し3人の女性の姿が変わってゆく。
光が晴れるとそこには美雲、レイナ、マキナの3人が立っていた。
「み、美雲さん!?どういうことかね!?」
突然現れたワルキューレの3人に驚きフレイアは少し大袈裟とも思える仕草で立ち上がる。
「これが最終オーディション」
「さっきの声、チクチク気持ちよかった」
「合格よ。フレイア・ヴィオン」
マキナ、レイナの言葉に続きライトホログラフィーによってカナメが現れ合格を告げる
「合格!?」
少しパニックになりながらもカナメの言葉を受け取ったフレイアを光が通過してゆくと赤を基調とした衣装に包まれる。
「こ、これって…」
「今日からあなたも」
「ワルキューレ」
「ふぇ?…私が、ワルキューレ?」
嬉しさと戸惑いが混じった声音で呟くと車内にいたほかの乗客―ケイオスの社員なのだが―が祝いの言葉をかける
「あー!!オーディションの受付けにおったー!!」
その中にオーディションの受付けにいた社員の顔を見つけ叫んでしまう。と、後ろで突然空気が抜ける音が聞こえる。
「ひいぃ!?」
「へへへ。いやー、感動しましたー」
「ごめんね、これ、血糊」
「こっちはただの食紅で赤くした餅」
ヴァール化したと思われた男性とそれに襲われたと思われた女性2人がフレイアの背後から声をかけネタばらしをする。
2人のうちの黒髪の女性の髪形徐々に本来の色である銀髪に戻る。
「ああ!!アル・シャハルでシェルターに誘導してくれていた!!」
「正解。そして、おめでとう」
そう言ってナナーシャは微笑む。
こうして波乱に満ちた(?)第3回ワルキューレオーディションは幕を閉じたのだった