マクロスΔ 歌の守り手 作:宇宙の記憶(ソラノキオク)
出張やら連勤チャレンジやらで筆が進みませんでした…
とりあえず、3話目です
日中の潮の香りを運ぶ風が元いた場所に帰るように陸から吹く風が日中の少しジメッとしていた暑さを和らげる夜が惑星ラグナに訪れていた。
街はいろいろな色の光で溢れ飲食店には仕事終わりの人々で賑わいを見せている。
それはここ『裸喰娘々』も変わりない。他と少しばかり違うのはここがΔ小隊の男子寮でありワルキューレの面々がよく訪れると言ったところだろうか。
ナナーシャが仕事を終え裸喰娘々へ向かうとクシャミの音とつい数時間前にも見た姿が見える
「…少年、何やってるの?」
「あ、あんたは…クシュンッ」
「あら、ナナーシャ少尉」
「あ、さっきぶりです」
娘々に続く桟橋の上には座り込むハヤテとその傍に経つカナメ、フレイアがおり、その先の娘々の店先で私のお魚ぁと嘆き声を上げるマキナとその隣にはレイナがいた
Δ
「カナカナ、ゴチになりやした〜」
「気をつけて帰ってね〜」
裸喰娘々での夕食を終え、カナメ、フレイア、ナナーシャの3人はラグナ支部の女子寮の前でマキナとレイナが帰宅してゆくのを見送っていた
「すみません、カナメさん。私までゴチになって」
「気にしない、気にしない。そういえば次の会報はフレイアちゃん特集なんでしょ?頑張ってね」
「会報?」
女子寮に入りながら交わされるナナーシャとカナメの会話にフレイアは反応する
「そ、ファンクラブのね。次号は新メンバー特集でフレイアちゃん特集だから覚悟していてね」
「お、お手柔らかにお願いします」
ナナーシャの悪い笑みにフレイアはつい顔を引き攣らせる。
そんな空気を破るかのようにきゅぷきゅぷという声とともに1匹の海猫がフレイアの背後に現れる。
「キュルルちゃんただいま帰りましたよ〜。いい子にしてまちたか〜?」
海猫、キュルルの姿を発見したとたん、ナナーシャはフレイアの視界から消え去り、次の瞬間にはキュルルを抱き頬擦りをしていた。
それを見たフレイアは困惑と驚愕が混じった表情を浮かべその隣でカナメは苦笑いを浮かべる。
そんな三人と一匹の居るところにパタパタとスリッパの音が聞こえてくる。
「あーもう。臭いとれたかな・・・。ん?」
「あ、デルタ小隊の…ミラージュさん。お世話になります」
「ただいま。どう?例の彼」
「ハヤテ・インメルマン…」
ハヤテの話題がでるとミラージュの脳裏に夕刻の悲劇が映し出され苦虫を噛み潰したような顔になる
「隊長さんから直接スカウトされるなんて、凄かったんですね、ハヤテって」
「ぜんっぜんすごくありません!ハッキリ言って才能ありません!なぜあんなのを呼んだんですか、ナナーシャ少尉!!」
「きゅぷ?」
かなりストレスが溜まっているのか耳をピクピクさせながら問い詰めるためにキュルルと戯れるナナーシャの方を向くとそこには首を傾げるキュルルがいるだけだった。
Δ
「新統合軍採用のVFシリーズに類似点はなし、か。となると民間企業かテロリスト、または発表前の新型機、か」
照明の落とされた部屋の片隅でホロウィンドを操作するナナーシャは頭を悩ませながら先日のアル・シャハルでの戦闘を思い返す。
「それにしてもあの統率の取れた動き、やっぱりどこかの部隊なのは確実よね…」
そう言いつつ新たなホロウィンドを開きアル・シャハルでの戦闘記録を呼び出し再生する。
アンノウン機、一機一機の動きをトレースしつつ動きの癖を探しケイオス及び新統合軍のデータベースを照合してゆく。
「これもダメ、か」
類似するデータはあるもののその全ては現在もケイオスまたは新統合軍に所属するパイロットのものであり前回の戦闘との関連性はほぼ皆無だった。
Δ
惑星ウィンダミア。辺境の星団であるブリージンガル球状星団の中のさらに辺境に位置し空は灰色の雲が覆いかぶさり、辺り一面は雪に覆われた白銀の星。そんな星にある平原で何かを探すかのように空を見上げながら少女は1人、星の特産品であるリンゴを齧る。
少女が齧るリンゴの音とそれが途切れた時の耳が痛くなるほどにしんとした空気を割くようにそれらは宇宙から舞い戻る。
「無事に帰ってきたか…。おかえり、
徐々に高度を落とし編隊を組んで舞い降りてくる期待達を眺めながら少女はそう呟き、黒に淡い紫色のラインが轢かれた機体へ乗り込み
Δ
フレイアとハヤテが入ってから数日、ケイオス・ラグナ支部の司令室は緊張した空気に包まれていた。
と、いってもヴァールシンドロームによる出撃といったものでは無く、ハヤテとミラージュの模擬戦の為だ。
事の発端はハヤテとミラージュのいざこざだった。
入隊仕立てということもありハヤテには飛行技能の実技訓練以外にも座学やアーネスト艦長による武術などの新人教育のスケジュールが組まれていた。
ハヤテは、それをほぼ全てすっぽかし、飛行技能の実技訓練にあてろと言うのだからワルキューレ最終オーディション時に飛ぶということがどういうことか教えるという意味で自機に乗せた関係から教官に指名されたミラージュからすればたまったものでは無い。
我慢の限界を超えたミラージュはアラドにハヤテとの模擬戦を申告し承認された。
一方で晴れてワルキューレに加入できたフレイアもレッスンルームにて似たような状況に陥っていた。
アル・シャハルやオーディション時の高いレセプター数値がどういった訳か全くと言っていいほどの低い数値しか出ていなかった。
その様を見たフレイアを除くワルキューレメンバープラスナナーシャによる緊急会議が開かれ一つの仮説が立てられ、その実験も行われようとしていた。
「遅れてすみません。ちょっと気になるデータを見つけたもので・・・」
そういいながらナナーシャは慌てた様子で指令室に駆け込む。
「その件の報告は後で頼む。ワルキューレ側の段取りは?」
「了解しました。ワルキューレ側、いつでもいけます」
アーネストはナナーシャの言葉にうむ。と頷きながらハヤテとミラージュの機体が映るモニタを力強く見守る。
オペレーターの誰かが両機の距離をカウント、そして両機がすれ違い戦いの幕が切って落とされた
Δ
試合開始から1分も経たぬうちにハヤテが乗るブルーのカラーリングが施されたVF-1EXの機体にはいくつもの赤い塗料が散っていた。
「うーん、アレなしでももう少しは耐えると思ってたけどなあ。まあ、そろそろ頃合かな」
ナナーシャは今回のために特別に設けられた席でボソリと呟き、端末を操作しレッスンルームにいる美雲へと指示を送り、レッスンルームが映し出されているモニタへ視線を移す。
それとほぼ同時にレッスンルームだった場所が空へ変わりハヤテが乗る青いVF-1EXが現れる。
『ハヤテ!』
モニタの向こうでは突然映し出されたハヤテとミラージュの模擬戦に驚くフレイアがいた
「インメルマン機、アンコントロールの模様!」
「あのバカ!AIのサポートきりやがった」
司令室が喧騒に包まれる中、ナナーシャだけは1人、ニヤッと口元を歪める
「さてさて、どんなショーが見られるのやら」
喧騒に包まれる司令室に1人の少女の、フレイアの歌声が響き渡る。
その声は機体のバランスを崩し、今まさに海面へとダイブしようとしているハヤテ機にも届く。
その声を聴きハヤテ機は機体を安定させ海岸線の崖にできた岩のトンネルを通過しガウォーク形態に変形、海面を滑り再び空へと舞い上がる。
『まだ試験は終わってないぜ、教官殿!』
『な!いい加減に諦めなさい!』
空へと舞い戻ったハヤテ機を追撃しようとミラージュ機が背後を取り機体をロックオンする。
『かかった!』
ハヤテ機はロックオンされた直後、機体を急上昇させガウォークにて減速、そのまま太陽を背にミラージュ機に向かって降下しペイント弾を放つ。
太陽によってハヤテ機を数瞬見失ったミラージュ機は回避できず赤に塗られた機体に青い花が咲く。
と、ほぼ同時に司令室では制限時間を告げるタイマーが鳴り響き、歓声に包まれる、それを聴いたアーネストはニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
模擬戦が終わっても続くフレイアの歌に乗せてハヤテの乗るVF-1EXは踊る。
「ま、多少見込んだよりかは劣るけどやるじゃない」
それを見たナナーシャの顔にも笑みが浮かんでいた
Δ
「それで、見つけたデータというのは?」
あの後、模擬戦の審判を務めていたメッサーが乗るVF-31Fの一方的なペイント弾の攻撃でこってり絞られたハヤテと負けたミラージュの帰還を見届けナナーシャ、アラド、アーネストは艦長室へ移動していた。
「統制軍のデータベースを漁っていた所、とても古いですがこのような資料を発見しました」
そう言いながらつけ爪型マルチディバイスを操作し部屋の大型モニタへとデータを転送する
「
「ええ。なんでも反統合勢力が開発した機体との事で少し前までは鹵獲された機体が熱核反応エンジンに載せ替えて動態保存されていたそうです」
モニタに映し出された資料に目を向ける3人に少しばかりの沈黙が訪れる
「アラド、ナナーシャ。この事は検証を要する案件だ。俺が許可するまでは他言無用で頼む」
そして沈黙を破ったアーネストの発言によってこの件は機密扱いとなった。