CHRONO A CROSS 〜CHRONO in Elnido〜 作:Pazz bet
リアルが非常に忙しくなっておりまして...
最新話です
相変わらず、蜩の鳴き声が響き、燦々と日の光が体を照りつけている。
この村に来た....数人の兵士と大男。のどかな村に突如現れた三人は、一瞬にして住民たちに緊張を与えた。
見れば、村人達の普段の明るいざわめきは、目の前の兵達に対しての静かな囁きにかわっている。
クロノも異変に気づき、顔を上げて様子を伺おうとすると、横の農夫が呟いた。
「アカシアの奴ら....。何だって今こんな辺鄙な村に来るんだ?祭の時期でもねえのに....。」
アカシア....。そう、アカシア龍騎士団。このエルニド諸島の治安を守るために結成された兵隊達だ。とはいってもエルニド自体治安は良好で大きな諍いは起きにくい為、滅多に動き回ることは無いようだが....。
最近、というかここに来てから数日しかたっていないので詳しいことは分からないが、ここらへんを駆けずり回っていたのは確かに見覚えのあるこの鎧だ。間違いない。
ただ、真ん中の巨人は見るのが初めてだ。服装や体格的に、他の兵士達とは違うようだ。この中でのリーダーだろうか。
村の入り口のところでは、この村の村長とおぼしき人物と、件の巨人が話していた。
「....少年の亡霊とな....?はっはっは、ご冗談を!大佐の側近ともあろう方が、いきなり何をおっしゃるのですかな?」
「村長。悪いがオレは遊びで来てるんじゃねえんだよ。分かるか?」
「分かりませんな...確かに儂らはアカシアの皆様を決して馬鹿にはできん。しかし、ここ最近の貴方達の動きと言ったらあまりに不可解がすぎる。一体何をがさごそと駆けずり回っておるのですか?そもそも!日頃の責務からしてお主らはどこまできちんと果たしておることか!この前など妙な獣人に」
ドンッ!!
「ヒッ」
「話になんねえな....。勝手に入らせてもらうぜ」
その巨人は、震える村長から目を離し、周囲をゆっくりと見渡した。
その眼光に見つめられた村人達は、先程の斧の柄を乱暴に地面にたたきつけるという粗暴な言動も相まって、あるものは体を萎縮させ、ある者は顔を背けた。
そしてクロノの方を向き、動きがとまる。
「てめえは誰だ?」
「村の人間じゃあねえな....?」
その大男は、こちらに向かってゆっくりと近づいてきた。そして、自分が顔を見上げられる距離まで詰める。数多の困難を乗り越えて来たクロノでも、思わず気圧されてしまうようなオーラを放っていた。分かる。こいつは....かなり危険な奴だ。
「オレの質問に答えてもらおうじゃないか。」
「カーシュ様、まさかあなたはこの少年がそうだと思ってらっしゃるので?」
「どうした。黙ってねえで答えやがれ」
な、何だ一体...。
クロノは、ああ、そうだと答える他なかった。
「クク、やっぱりな....。やっと肩の荷が降りたぜ」
彼の気配が一瞬緩んだ。
「でもでもカーシュ様、こいつはどう見たって死んでるようにはみえないんだな」
「もっと亡霊って言ったら、すけすけーってしてるもんじゃないかと...」
「ああ、だが幽霊でなくても、実際に"小僧"はいたんだからな」
しかし、クロノは自分に対してただならぬ事態が起きていることを察知し、身構えた。何のことを言っているのか分からない。一体何が目的なんだ。
「簡単さ。今から小僧、お前を屋敷に連行させてもらう」
なんだって....!?
どっと周囲がざわめく。つい先日ここに来て少しでも関わった人間がいきなり連れ去られると聞いて、自分に対して不信感を持つ者、そして、好奇の目線を持つ者。さらに、目の前の兵士に対する不安感。様々だろう。
自分でも理解できない。
つまりは捕縛、ということか?
しかし自分は指名手配をされるような悪いことをした覚えもなければ、その亡霊、とやらでももちろんない。
おいまて、とクロノは伝える。自分は確かにこの島に来たばかりだが、何か害や不利益を与えることをするつもりでは一切ないし、アンタ達にとやかくされる心当たりがない、と。
「フン、口では何とでもいえるぜ。口ではな。ただ確かなのは、うちの雇い主が連れてこいと言ってることだけだ。...島中散々探したが、てめえしかいないってわけだ」
きちんと探したのか....、いや、違う。確か、このエルニド海は、まず外部の人間は渡航してこれないんだった...。このアルニ村に新顔がいることは...。あきらかに普通のことではないし、他でも見つかる訳がない。
「命令は絶対だ。オレも仕事なんでな、万が一怪しいそぶりを見せたとなりゃあ、それなりの対応をさせてもらうことになる亅
どうする?
男の体を見回す。巨大な斧を背負うその体は、背は見上げる程に大きく全身に無駄なく分厚い筋肉がついており、異国風の服の間から除く胸板と腕は、その男が自分よりはるかに屈強であることを感じさせる。見掛け倒しの奴らは今まで何度も見てきたが、こいつはそんなデクの棒とは何か違う気がする。隠しきれてない無数の古傷といい、纏っている気配が...まるでこれまでに何百もの戦場を駆け抜けてきたような..。自分がここで抵抗するのは得策ではない。まず、こんな公衆の場でやり合うこと好ましくないことだ。
「オレだってこんなとこで騒ぎは起こしたくねえんだがな。さあ、どうする」
....仕方ない。
クロノは観念して、分かった、と言って手を上げた。
それでも人違いにはかわりはないのだ。あっちに行ってそれを証明して、さっさと戻ってくればいいんだ。
「ハッ、物分りが良くて助かるぜ。シュガール、ソルトン、こいつの両腕を縛っとけ。
当然武器は預からせてもらうぜ」
シュガール、ソルトン一つまり側近の兵士達はクロノの両手を縄で縛り、そして腰に下げていた刀を取り上げた。
皆が静まり返る中、馬車に荷物と自分が放り込まれ、三人が乗る。
それを確認すると、御者が馬に鞭打って進みだした。
しかし、村にはその異常な雰囲気の残滓が未だ残っていた...。
クロノは、この時はまだ知る由もなかった。
自分の行く先を。時空を超えたこの島で、人生最大の試練が待ち受けているということを。
再び歯車は回り始めたーー
滅びの鐘を鳴らす者へ裁きをーー
救いを求める者へ慈愛をーー
クロノ·アクロス〜CRONO"A"CROSS〜