君とまた会えたら   作:神野伊吹

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さぁ、書いたことのないタイプの物語を始めよう


prologue:春よ、来い

彼女と出逢ってから4年目の春。

俺は島を離れる。

本島の大学へ進学が決まり、通うためだ。

「寂しくなるね」

俺を見送る為に集まった仲間の中に彼女がいた。

「また逢えるよね?」

仲間達の中には泣いているヤツもいる。

今生の別れではないのに、別れというのは感傷的になるものだと初めて知った。

船に乗り込み手を振ると船は動き出す。

「たまには連絡寄越せよ!」

仲が良かった奴が大声で叫ぶ。

声は震えていた。

船内に入り、窓の外を眺める。

島が離れていく。

目線を上げると公園が見える。

1週間前、あそこで彼女に別れを告げた。

告白するつもりだったが、出来なかった。

目を瞑ると思い出が甦る。

 

 

 

片想いだった。

少しだけ大きな島の、小さな町の、小さな学校。

島の東と西に別れていた二つの中学校。

高校は島の中心に位置するそれしかなかった。

中には本島の高校を受験する人もいるくらいだ。

人数も少ないその学校で、彼女は輝いていた。

彼女を初めて見たのは中学の時だ。と言っても高校の入試の時だったのだが。

その時から俺の心は彼女に奪われていた。

正直、試験も何を書いたのか覚えていない。

合格できたのは運が良い以外の何物でもないだろう。

 

 

数ヶ月後の合格発表の日、彼女と再び出逢った。

当たり前の事なのに嬉しくて仕方無かった。

自分の番号を見付け、両親であろう人たちに向けた笑顔は幸福に満ち溢れていた。

 

(あぁ、良かった。合格したんだ。)

 

これで自身の番号が無ければ父に殴られていただろう。

しかし、あんな状態でも受かるもので、見事に番号は見付かった。

彼女と同じ学校に3年間通えるのだと、ホッとしたのを覚えている。

 

 

春。

入学式で初めて彼女と喋った。

合格発表の日、父に頭を小突かれていた俺を見ていたらしい。

俺が無事に受かっていた事を、自分の事のように喜んでくれた。

 

夏。

明るく優しい彼女はクラスの人気者だった。

誰にでも隔てなく、オタク趣味の人にも興味を持ち、差別はしなかった。

彼女に理由を聞いた事がある。

「私達が知らない世界を知ってるのってスゴいよ?」

当たり前のように返された言葉は、俺の価値観を変えるには十分だった。

 

秋。

用務員のおじさんの手伝いで落葉を燃やしていると彼女が訪れた。

「ふっふっふ。これを投入するがよい!」

背後に隠した手にはアルミホイルで包まれたサツマイモのようなモノを持っていた。

彼女は戸惑う俺に微笑みを向ける。

「楽しまなきゃ損だよ?」

そう言うと火の中にアルミホイルを放り込んだ。

入れ方が違う気がするが、楽しそうな彼女に何も言えなかった。

 

冬。

小さい町なりにクリスマスムードが漂う中、お使いで買い物に出てた俺は彼女を見付けた。

ケーキ屋から出てきた彼女は笑みを浮かべると駆け寄ってきた。

「田嶋もお使い? お互い大変だね」

冬休みに彼女に逢えた俺は、思いがけない出逢いをサンタに感謝したのを覚えている。

「ぁ、そうだ」

彼女はポケットに手を入れ、小さな袋を取り出した。

「ケーキのオマケで貰ったんだけど、田嶋にあげる」

手渡された袋の中にはトナカイのような何かが入っていた。

確認すると、それはトナカイらしき生物のキーホルダーだった。

「メリークリスマス!」

悪戯っ子のような笑顔で駆けていく彼女の背にメリークリスマスと声をかけた。

そのキーホルダーは今も手元にある。

 

 

 

頬を熱いものが伝う。

これで良かったのだと、自身に言い聞かせる。

初恋は叶わないモノだと言うが、俺に勇気があれば叶ったのだろうか。

あの時、あの公園で、告白していたら彼女はどうしただろうか。

今さら考えてもどうしようもないことだ。

時を戻るすべなど無い。

目を開けると島はもう小さくなっていた。

大学になど行かなければ良かったのかもしれない。

 

溢れる気持ちを胸の中に押し込める。

二度と逢うことは無いのかもしれないが、それでも彼女には感謝しよう。

俺と出逢ってくれて『ありがとう』と。




うーんこの
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