とある魔術の常識崩し   作:XY

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第9話です。


第9話 記憶

「何でまたこんな所に集めたんだよ?」

 

空賀(くが)が不機嫌そうな顔で聞いた。彼以外にも水谷(みずたに)という少年もいる。その質問に答えたのは、ルーナと呼ばれる少女だ。

 

「ちょっと超電磁砲(レールガン)に助言をしてね。それでどうやら気づいたらしく、これから面白いものが見えると思って呼んだのよ。ホラもう始まるみたいよ。ああ、それと水谷。貴方には私が合図したら、超電磁砲(レールガン)の手助けに行ってもらうわ。彼女は重要なファクターだからね。ここで死なれたら困る。いい?」

 

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少し前

初春(ういはる)を乗せる木山(きやま)の車はある場所に向けて走っていた。初春はキツい口調で木山に尋ねる。

 

「一体何の為にこんな事したんですか! それにあれに載っていた名前……」

「困ったものだな。そこまで見ていたのか」

 

木山は少し黙り、それから逆に初春に尋ねた。

 

「それを知って君はどうする? 彼等を逮捕するのか?」

「当たり前です!」 

「そうか……、彼等は何も関係ない。私が頼んだだけだ。だから私の目的が終われば、捕まるのは私だけでいい」

 

いち早く目的を成し遂げる為、木山はより一層アクセルを踏む足に力を入れる。しかし、その前にある者が立ち塞がった。警備員(アンチスキル)だ。

 

警備員(アンチスキル)か。総括理事会(うえ)からの命令があった時だけは動きが早いな」

 

どこか嘲笑するかのように木山は言う。彼女からは余裕すら感じられる。

 

「どうするんですか。年貢の納め時ですよ」

「大丈夫さ。今から君に面白いものを見せてやろう」

 

 

木山の正体を知り、それを止める為に御坂も現場へと向かっていた。そして、たどり着いた先は想像以上の状態になっていた。

 

警備員(アンチスキル)が……全滅!?」

「……大したことない連中だったよ」

 

聞き覚えのある声が彼女の耳に入る。声の主の居場所を探す為辺りを見回す。しばらくして煙の中から全身無傷の一人の女性が姿を現す。

 

「初春さんはどこ?」

「彼女なら車の中だ。安心しろ。危害は加えていない」

 

そして彼女はひと呼吸おいて、ある種挑戦的ともとれる台詞を言った。

 

「彼らの協力もあって、予想以上に幻想御手(レベルアッパー)の使用者は増えた。……君に3万の脳を束ねる私を止められるかな?」

「そんなの止めるに決まってんでしょ!」

 

彼女が第一歩を踏みしめようとした瞬間、足元に穴が開く。突然の出来事に彼女はバランスを崩しかける。そこを見逃さず木山は追撃をするが、間一髪のところで彼女は避けた。

 

「驚いたわ。ホントに幾つも能力を使えるみたいね。多重能力者(デュアルスキル)だなんて面白いじゃない」

「降参するなら今のうちだぞ」

「するわけないでしょ!」

 

彼女が強烈な電撃を放つ。しかし攻撃は通じない。

 

「えっ?」

 

彼女の反応に木山はニヤリと笑う。

 

「一度に複数能力が使えないなんて言ってないぞ」

 

そして木山は自分が立つ道路もろとも破壊し彼女の足場を崩す。彼女は磁力を使い壁に吸い付き、その攻撃から逃れる。

 

「もうやめないか? こんな事をしても時間の無駄だ」

 

まるで相手にされていないような発言に彼女はイラっとした。彼女は磁力で壁の一部と抜き出すとそれを木山に向けて投げつけた。

 

「電撃を攻略したくらいで勝ったと思うな!!」

「無駄だよ」

「!?」

 

木山は手からビームソードようなものを出現させ、彼女の攻撃を軽々と受け流す。そして彼女がいる部分の壁を破壊し、彼女を地面へと落とした。木山は短く息を吐き、空き缶を彼女の頭上にばらまいた。それらがアルミ缶だと気づいた時、彼女はある能力を思い出した。

 

「まさか……グラビトン!?」

「さあ君ならどう防ぐ?」

「全部……吹っ飛ばす!」

 

今まで以上の電気を帯電し、それを操りアルミ缶を次々を打ち抜いていく。木山は素直に感心していた。

 

「すごいな……。だが」

 

手に持っている一つのアルミ缶を御坂の後ろへとテレポートさせる。彼女も遅れて気づくが、それより先にアルミ缶が爆発を起こす。小さな衝撃と崩れ落ちる道路の影響で辺りには粉塵が舞っていた。

 

「悪いが時間がないんだ。恨んでくれて構わんよ」

 

ガシッ!と。突然、木山の動きが制限される。爆発に巻き込まれたはずの彼女が木山の腰辺りを掴んでいたのだ。

 

「つーかまえた!」

「何で……? ……磁力で即席の盾を!?」

 

木山は能力を使い辺りに散らばっていた鉄筋を彼女に向けるが、それよりも先に彼女の電撃が炸裂した。

 

「遅い!!」

 

彼女の電撃を受け、木山は意識を失いグッタリと倒れ込んだ。

 

「一応手加減しておいた……」

『せんせー!』

「!?」

 

突然に頭に響いた声に御坂は辺りを見回すが、周辺には誰もいない。

 

「まさか、木山春生の記憶? 電気を介した回線を通して……?」

 

声は徐々に大きくなっていった。

 

 

 

「私があの子達の担任を?」

 

彼女に任せられた仕事。それは『置き去り(チャイルドエラー)』の担任。学園都市に捨てられた子供達の担任をする事だった。

 

子供は嫌いだ。デリカシーがない。

 

「先生、モテないだろー」

 

失礼だし、

 

「うわっ!」

 

悪戯するし、

 

「どうした?先生が話を……」

「うわーん!!」

 

論理的じゃないし、

 

「あっ!好き嫌いはダメなんだよー」

 

馴れ馴れしいし、すぐに懐いてくる。子供は嫌いだ……。

研究の時間はなくなるし……いい迷惑だ。

 

「先生!お誕生日おめでとー!!」

 

子供は……子供は……。

 

 

実験当日。

これで全て終わるはずだった。誰も傷つかず、みんな元気で戻ってくるはずだった。そう信じていた。だが、

 

「早く病院に連絡を!」

 

けたたましい警告音。慌てる研究員達。何もかもが違っていた。AIM拡散力場制御実験、そう聞いていたその実験は全てが違っていた。

慌てる研究員達をある老人が制した。

 

「浮き足立ってないで、データをちゃんと集めなさい。この実験に関しては箝口令を敷く。君達も他言無用だよ」

 

それはこの実験を取り仕切っていた、木原幻生(きはらげんせい)だった。そして彼は木山の肩に手を置く。

 

「君はよくやってくれたよ。彼等には気の毒だが……」

 

彼の顔が一層、人とはかけ離れいくように彼女には見えた。

 

「科学の発展には犠牲は付き物だよ。君にはこれからも期待しているよ」

 

期待、という言葉がこれほどまでに憎く思えたのは今日が初めてだった。『ヒト』でない何か。仮に『ヒト』として形容するなら、『ヒト』の皮を被った何か。彼女の目には去っていく彼がそうとしか映らなかった。

 

ビーー!と。無情にも絶望を告げる音だけが彼女の頭の中に反芻した。

 

 

 

「何これ……!?」

「見られた……か」

 

意識を取り戻した木山が発する。

 

「何で……あんな事……?」

 

彼女の問いに声を震わせながら、後悔の念を表しながら木山は訴える。

 

「あれは表向きは『AIM拡散力場制御実験』とされていた。……だが違っていた! 実際は『 暴走能力の法則解析用誘爆実験』だったんだ!!」

「じゃ、じゃあ……あれは」

 

より一層彼女の声が大きさを増す。まるで過去の自分を戒めるかのように。

 

「そうさ! 暴走は予め仕組まれていたんだ! 私達はあの子達を使い捨てにモルモットにしたんだッ!!」

 

今まで周りに見せていなかった木山の真の思いが溢れ出す。

 

「でも、そんな非人道的な実験……警備員(アンチスキル)が許すわけ……」

「ああ、何度も頼んださ! 樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の使用許可だって……! あれの演算能力を以てすれば、あの子達を助ける事出来たはずだ!」

「だが、全て却下された! 統括理事会がグルなんだ! 警備員(アンチスキル)が動くはずがない!!」

 

自分が知らないところで起こっていた出来事に彼女は唖然としながらも言う。

 

「でも、だからって……!」

「君に何が分かるッ!!! 分かってるさ、こんなやり方は許される事ではないことぐらい。私だって何度も模索したさ。何か別のやり方はないかと! でも! こうするしかなかったんだッ!!」

 

そして木山は叫ぶ。

 

「私はあの子達を助ける為なら何だってする! 鬼にも悪魔にでもなる! この街の全てを敵に回しても、やめるわけにはいかないんだッああああああああああああああ!!!―――ッ!?」

 

突然、木山が崩れ落ちた。彼女が攻撃を仕掛けたわけではない。まるで充電が切れたロボットのようにその場に倒れ込んだのだ。

そして意識を失った彼女の後頭部から『何か』が、怪物のような『何か』が姿を現しだした。その怪物には、目があり、手があり、足があり、声があり、そして頭には輪っかがあった。怪物は叫ぶ。

 

「何よ……これ……? 胎児……?」

「iodklwmbcdfkd!!」

 

怪物はノイズ混じりの声と共に彼女の声をかき消す。だがその影響はそれだけでは収まらなかった。叫ぶ度に周囲に破壊をもたらした。彼女にもその被害が及ぶが、咄嗟に瓦礫で即席のシェルターを作り防いだ。その猛攻を掻い潜りながら一発の電撃を当てる。

ドッ! と大きな音と共に怪物の一部が弾け飛ぶが、その傷口からまた新たな腕が出来再生していく。生物では考えられない現象だった。

怪物にとって、その一撃が彼女を敵と見なすきっかけになった。ギョロリとその赤い目が彼女の方を向く。

 

「うっそおお!」

 

怪物が生み出した次々と氷の槍が彼女を狙う。その中で彼女を呼ぶ声がした。彼女が振り向くと意識を取り戻した初春がいた。

 

「来ちゃダメ!!」

 

怪物の次の氷の槍が放たれる。しかしそれは彼女を狙ったものではなかった。それにいち早く気づき、初春に放たれた攻撃を破壊する。轟音と粉塵が巻き起こった。

だが彼女は怪物の真の狙いに気づいていなかった。怪物が初春を狙ったのは、単に彼女を攻撃対象から外したのではなく、あえて初春を狙い、彼女が対応しきれない状態にするのが目的だった。

 

(間に合わないッ!?)

 

氷の槍が彼女の体に迫る。その直前――氷の槍は水となり彼女に降り注いだ。そしてその目の前には、

 

「久しぶりですね。御坂さん」

「あ…あんたは……!」

 




9話目も読んで頂きありがとうございます!
次は新年明けてからの投稿になると思います。2014年もよろしくお願い致します_(._.)_

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