とある魔術の常識崩し 作:XY
空にはいつの間にか暗雲が立ち込めてき来ていた。
「本当にやるんですか?」
「当たり前でしょ!じゃないとこっちの気がすまないつーのっ!」
「はぁー、仕方ないですね。貴方そのつもりなら・・・!」
(目つきが変わった!?)
今まで温厚そうだったその瞳は、まるで獲物を捉えた狩人のようになっていた。だが、彼の変わった所はそれだけではなかった。
「
(口調も・・・!)
突然の口調の変化に驚く彼女だが、そんなのを気に止める暇はなかった。
「それはこっちの台詞よ!」
彼女が再び電撃を放つ。水谷もそれに対応するべく、近くに流れる川の水を引き寄せる。
(また防がれた・・・!?)
「場所選びが悪かったな、超電磁砲」
「あんたの
「ご名答。だが、俺の能力をそんじょそこらの物と一緒にしてもらっちゃ困るぜ」
川水を利用し巨大な水の蛇を形成し、御坂めがけ叩きつける。彼女も負けじとそれを電撃で打ち壊す。
「確かに場所選びはマズったかもね。でも・・・!」
そう言うと御坂は、先程とは比べ物にならない程の高電圧の電気を手に集め始める。
「水は電気を通す。さっきは防がれたけど、いくら何でもこの電圧の電気は防ぎきれないでしょ!」
御坂お得意の『雷撃の槍』が水谷に向けて放たれる。この攻撃を防いだのは過去一人。それもかなり特殊な能力だったのでそれは例外だろう。
この時、彼女は勝利を確信していた。防げるはずがない、と。だが
「水は電気を通す・・・。確かにその通りなんだが・・・」
「う・・・そ・・・!?」
「勉強が足りてなかったか?・・・純度って知ってか?」
無傷で現れた水谷を見て御坂は驚きを隠せない。
「水には純度ってものがあってな。それが高いか低いかで電気の流れやすさが決まるんだ」
「より正確に言えば、その水にイオンがどれだけあるかってんだが、まあ細かい事はいい」
「ここで重要なのは、俺がその純度を自由に操れるって事だ」
ここまで言われ、御坂はようやく理解した。
「人工的に作れる物では限界があるんだが、俺の能力なら純度100%の水だって作る事が出来る」
「まさか・・・!」
「そのまさかだ。この水は絶縁材と同じ働きをするってことだ」
「だが、その純度操作も俺の能力を一つでしかねぇ。教えてやろうか?」
「そんなもん聞きたくないわよ!それにいくら純度を高めようが所詮は水。電気が通じないなら!」
御坂は磁力で砂の中の砂鉄を集めだし、一本の巨大な剣を形成する。その砂鉄の剣は彼女の動きに呼応するように形状を変えていく。
「へぇー砂鉄で作った剣か。それでどうするつもりだ?」
「電気が通じないんなら、その水の塊を切るまで!」
水谷が放つ水の蛇を次々と破壊していく御坂。それによって水の蛇は小さな塊になり、まるで雨粒のように二人に降り注ぐ。水谷は散り散りになった水を操作し、再び水の蛇を創りだす。
「切っても切ってもキリがない!」
「どうした、超電磁砲。もう手詰まりか?」
「うっさいわね!!」
御坂は砂鉄の剣を駆使し、水の蛇の相手をしていく。その中で彼女はチャンスを伺っていた。そして水谷の攻撃の要ともいえる水の蛇を全て壊したところで、砂鉄の剣が水谷に襲いかかる。
(今なら入る!)
砂鉄の剣は無防備になった水谷の体に向かって行く。そして御坂の攻撃が完全に入った・・・はずだった。彼女は妙な違和感を感じていた。そしてそれはすぐに明らかになった。
「なっ!?」
御坂は思わず声が出てしまった。砂鉄の剣は、水谷の体に触れる一歩手前で防がれていた。砂鉄の剣を防いでいた物は氷だった。
「氷・・・?」
「だから言っただろ?まだあるって」
「でも、あの攻撃は氷程度で防げるものじゃ・・・」
御坂の砂鉄の剣はチェーンソー状になっており、それを動かさなくても触れただけでも簡単に斬れてしまう程の切れ味があるのだ。当然氷など触れただけで切れてしまう訳なのだが、ここで彼女はさっきの攻撃を思い出す。
「もしかして・・・さっきの攻撃みたいに、切れて水になったもの集め、瞬時に氷を形成して防いでいる・・・」
「・・・ご明察だよ。そんでもってチェックメイトだ、超電磁砲」
御坂は一度全て砂鉄を元に戻し、再度剣を形成しようとするが、突然その砂鉄が凍り始めた。徐々に手元に迫ってくる氷を見て、彼女は慌てて手を離す。
「砂鉄は全部凍らせてもらったぜ。これでさっきの攻撃は出来まい」
「砂鉄がダメなら、
「・・・それじゃおせーよ!」
コインを持って打ち出す構えを取る御坂だが、ほんの一瞬彼女の頬を何かがかすめる。彼女が振り返ると、コンクリートに大きな穴が空いていた。
「テレビとかで見た事ないか?水ってのは面白いモンでな、圧縮すれば鉄だって切る事だって出来るんだ。コンクリートなんてプリン同然だ。人間なんて尚更な」
御坂は今まで以上破壊力を見て声が出せないでいた。そんな彼女に構わず水谷は続ける。
「頼むから諦めてくれませんか?私だって人殺しにはなりたくないんですよ」
彼の目つきや口調はいつの間にか元に戻っていた。それは彼が戦いを放棄した事を意味していた。
「まだ勝負はついてないわよ・・・!」
「ついてますよ」
水谷はそう言いつつ御坂の後ろを指差した。そして彼女は気づいた。コンクリートに空いている穴は一つではない事に。パッと見ただけでも十数個の大小様々な穴があった。
「あの一瞬でこれだけ・・・!」
およそ一秒の間にあれだけの数を打ち込んでいたところから見るに、もし彼が本気できていれば今頃御坂は息をしていない事だろう。御坂やこの戦いを見ていた彼女等が、この事実に気づくまでにあまり時間はかからなかった。
「では私は行きます。そろそれ時間ですし」
「待ちなさいよ!」
この事実を知ってなお勝負を続けようとする御坂に水谷は言う。
「御坂さん。あらかじめ釘を刺しておきますが、今回のはただの遊びです」
『今回は遊び』、あれだけの
「今後もし、貴方が私の前に立ち塞がる事があれば・・・。その時は本気で・・・殺します」
『殺す』、物腰丁寧なその口調にはあまりにも似合わないその言葉。しかし、その言葉を発した彼からは言いようのない恐怖を御坂は感じた。それが今回の勝負を諦める決定的な一打になった。
「願わくばそんな事にはならないようにと思いながら、私は失礼させて頂きますね。では」
徐々に御坂の視界から水谷は消えていく。
「お姉様!大丈夫ですの!」
「「御坂さん!」」
戦いを終始見ていた白井、初春、佐天が駆け寄ってくる。御坂は呆然としていた。圧倒的な力の差。彼女に今まで勝った事があるのは、
だが、今回は違う。相手の能力も大まかではあるが分かっていた。その上での負け。ただ単純な実力差で圧倒的力で上から叩きのめされた。その事実は
「お姉様!お怪我はありませんか!?」
「「御坂さーん!」」
「ううん、何ともない」
そう返して、空を見上げながら一言
「一体何者なのよ・・・。あいつ」
5話目も読んで頂きありがとうございます!
本編の水の純度の話についてですが、一応調べてみた結果あんな感じになりました。
誤字脱字や批評、その他何かありましたらご連絡お願いします。