とある魔術の常識崩し 作:XY
すっかり日も暮れて、時刻は7時頃になっていた。初春の看病を終え、佐天は帰宅途中だった。
「それにしても、
「・・・本当だったらどうする?」
突然の声に驚き佐天は振り返る。そこには少女がいた。
「だ、誰?」
「そんな怖がらなくてもいいわ。悪い人じゃないわ。それでこれがそうなんだけど、いる?」
少女が差し出したのは、音楽プレイヤーのような物だった。
「これ、音楽プレイヤーじゃ・・・」
「重要なのは中身よ。それでいるの?」
それを目の前にし佐天は迷う。それを少女は察したのか、
「貴方、迷ってるのね」
「え?」
「『本当にこんな事していいのか』とか『ズルはダメ』とか。貴方あいつらとは違うのね」
「あいつらって?」
「
その言葉に佐天は唇を噛む。
「あいつらはバカみたいに食いつくわ。時には相手を暴力で痛めつけてまで・・・。くだらないわよね」
佐天はその言葉に対し、反論とも思える口調で言った。
「・・・仕方ないじゃないですか。どんなに頑張っても・・・
二人の間にしばしの沈黙が過ぎ、少女が話し出す。
「ごめんなさいね。何か嫌な気分にさせちゃったみたいで」
「あ・・・、いえ私の方こそ・・・」
「貴方、名前は?」
「え?」
「貴方とはお友達になれそうな気がするわ。私はルーナ=イデアール」
「わ、私は佐天涙子です。外国の人ですか?」
「そう思ってもらって構わないわ。佐天さん、また会えるといいわね。あと、これ渡しておくわ」
そう言われ渡されたのは、先程の音楽プレイヤーだった。
「あのこれは・・・?」
「それをどう使うかは貴方が決めなさい。それじゃあね」
「あ、はい」
(何だったんだろう・・・?)
◆
「それでさっきの話だが、同程度の露出でも水着は良くて下着はダメなのか」
「「いや、そっちではなく」」
御坂と白井は、大脳生理学の専門家である木山春生に
「それでその
「それが・・・まだ分かっていませんの」
「そうか。とにかく君達はそれが昏睡した学生達に関係がある、そう考えているわけか。で何故私に?」
「能力を向上させるという事は、脳に何らかの干渉をするシステムである可能性が高いと考えています。ですからもし、
木山は少し笑みを浮かべ答える。
「むしろ、こちらからお願いしたいね。大脳生理学者として興味がある。ところで・・・」
木山は目を窓の方へやる。そこには窓にベタリと引っ付いている佐天と一礼する初春の姿があった。
「へぇー!脳学者さんなんですか。ハッ!白井さんの脳に何か問題が!」
「
「黒子がいうには、
初春が質問する。
「どうしてですか?」
「まだ調査中ですが、使用者に副作用が出る可能性がありますの。それに、容易に犯罪に走る傾向が見受けられまして」
「へぇ。あ、佐天さん。どうしたんですか?」
「あ・・・、何でもない」
「今日はお世話になりました」
「こちらこそ、教鞭を振るっていた頃を思い出して楽しかった」
「教師をなさってらしたんですか?」
しばらく考え込む顔をし、少し寂しげな目で答えた。
「昔ね・・・。では失礼させてもらうよ」
「「ありがとうございました」」
◆
昼下がりの土曜。佐天は散歩をしていた。
しかし、今日はいつもの穏やかな散歩に終わりそうになかった。近くから男の悲鳴のようなものが聞こえてきたからだ。近寄って確認して見るに、
佐天は事態を察し
「やめなさいよ!すぐに
彼女はこの脅しで諦めてくれれば、と考えていた。しかし、その思惑に反し男は蹴りを入れる。ゴッ! っと強い音と共に彼女の後ろの鉄柵が凹む。
「今、何つった?」
「えっ」
怖くて怯えている佐天の髪を掴み、男は言う。
「何の力もないヤツにごちゃごちゃ指図する権利はねぇんだよ」
事実を言われ、彼女は顔を歪める。そこへ
「あら?佐天さん?」
聞き覚えのある声がした。それは彼女がこの前知り合った少女、ルーナだった。
「ルーナさん・・・?」
「って、あんたら。何私の友達に手出してるわけ?」
半ばキレ気味にルーナは言う。だが男達は特に気を止めない。
「なんだ、ガキが一人増えただけじゃねぇか。邪魔すんなよ」
一人がルーナに襲いかかるが、次の瞬間襲いかかった男の悲鳴が響く。
「う、腕が・・・!」
ほんの一瞬彼女が指を触れただけで、その男の腕は反対方向に曲がった。痛みでのたうち回っている仲間を無視し、先程佐天を掴んでいた男がルーナに近づく。
「へぇおもしれぇ能力だな」
「あんたも怪我したいわけ?」
彼女の警告を無視し男は話を続ける。
「俺はよぉ、
両手を広げ、まるで自慢するかのように男は続ける。
「だからよぉ、大きな力が手に入ったらお前みたいなヤツをギタギタにしたいと思ってたんだよ!」
「・・・仕方ないか」
ルーナはため息をつきながら、まるで呪文のような言葉を発する。
「命令する。鉄を我が右手に集め大剣を創造せよ」
見る見るうちに鉄が集まり、大剣が形成されていく。全長3mはあるであろうその大剣を彼女は片手で軽々と扱う。さすがの男も驚きの表情を隠せない。
「なっ!?いったいどういう事だ!?」
彼女は答えず、笑いながら
「首の一本ぐらいは飛ぶかもね」
そう言いながら、一旦右側に思いっきり振り切ってから、男めがけ大剣を振るう。ドバンッ! という轟音と力いっぱい振られた剣の衝撃で鉄柵は崩壊し、辺りに粉塵が起こっていた。そしてその煙の中からルーナと体をビクビク震わせている男が見えてきた。
「解除っと」
彼女がそう言うと、今まで剣を形成していた鉄がバラバラになり、ただのくず鉄になった。やっと事態の把握を完了した佐天が彼女に近づく。
「あ、あの・・・」
「あ、佐天さん。もう大丈夫よ。こいつ、完全に戦意喪失してるみたいだから」
「ありがとうございます・・・。知り合ったばかりなのに」
「良いって良いって、気にしなくて」
しばらくして佐天がつぶやくかのように言った。
「ルーナさん、力って何なんでしょう・・・?」
「ん?力?」
突然の質問に首を傾げるルーナだが、佐天は構わず続けた。
「さっきの男に言われたんです。『何の力もないヤツにごちゃごちゃ指図する権利はない』って。私の周りの友達は
悔しさ故に涙を目に浮かべながら佐天は言う。ルーナは少し考える仕草し、話し始める。
「じゃあさ、貴方が思う『力』って何?今の奴らみたいな力?それともそのお友達みたいな力?」
「え・・・?」
「もし、貴方が前者の意味を指すならそれはただの『暴力』よ。よく考えてみなさい。貴方のお友達は何の為に『力』を使ってる?暴力の為?」
「・・・違うと思います」
佐天のその解答にルーナは笑顔を示し続ける。
「それが分かってるなら、貴方は大丈夫よ。それに貴方はもう力を持ってる」
「えっ?」
「貴方は一人であの男達に立ち向かった、その『勇気』。力っていうのは、何も強さだけじゃないの。誰かを助ける為に立ち向かう勇気、それもまた、立派な『力』よ」
「でも・・・」
佐天が言いたい事をルーナも察していたようで、佐天が切り出す前にルーナが言った。
「まあでも実際の社会で評価されるのは、今の奴らみたいなのっては事実だからね。特に
でもね、と彼女は続けた。
「そんな世界はもうすぐ終わる。新しい世界がやってくるの。もう誰も『能力』なんていうものに振り回されない、そんな世界がね」
彼女の言った意味を佐天は理解出来なかった。ただ、何となく彼女から恐怖を感じた。
「それじゃ私はこの辺で失礼するわ」
「あ、今日はありがとうございました」
「また絡まれないように気をつけなさいよ」
佐天に挨拶を済ませその場を去ろうとするルーナだが、それは叶わなかった。
「そこのお方」
「ん?」
「
「・・・は?」
7話目も読んで頂きありがとうございます!
気がつけば、この作品も12人の方にお気に入りに入れてもらって嬉しい限りです。
これからも宜しくお願いします。
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