光己たちは現場を離れると、沖田に形だけでも沖田オルタに謝って和解してもらってから、改めて沖田とお互い自己紹介し事情を説明した。
「なるほど、だいたいのところは分かりました。
それにしてもかの白面金毛九尾やら天竺の神様やらまで仲間にしてるとは、藤宮さんもなかなかやりますね!
って、ちょっと待って下さいよ。マーラといえばノッブの推しの魔王ですよね。推しがいるのに来てないなんて、臆病風に吹かれでもしたんですかね」
それともその推しがまさかの幼女だったので、対面するのが怖かったとかだろうか。
「ま、どちらにしてもノッブ敗北拳ですね。やーいやーい! やはり私こそが真のヒロインでした!
ところで藤宮さんは私オルタとは契約したんですか?」
「うん、ついさっきだけど」
「じゃあ私とも契約しましょう! 負けてられませんから」
「お、おう」
沖田ノーマルはオルタに対抗心バリバリのようだ。
光己はフランスの頃は不要な契約は魔力節約のため避けていたが、今は十分な魔力があるのでその必要はない。まして沖田は戦闘中は怖いが、普段は明るく快活で人懐っこいので、話しているとこちらも気分が上向きになってくる良い美少女である。迷わず彼女の希望通り契約を結んだ。
「それじゃこれからはマスターとお呼びしますね!
この後はどうするんですか?」
「そうだなあ。あんな厄いモノがあったんだから念入りに探索するべきか、それともさっさと出て行く方がいいのか……皆はどう思う?」
光己が一同を見渡して意見を募ると、アルトリアオルタがはっしと手を挙げた。
「マスター、会議もいいがその前に昼食だろう。正午はとっくに過ぎているぞ」
「んー、言われてみれば」
光己も急に空腹を覚えたので、彼女の希望通り昼食にすることにした。皆で座れそうな開けた所を探してビニールシートを敷く。
しかしアルトリアは時計を持っていないのに「正午は過ぎている」と断言できるとは、さすがは伝説の腹ペコ王と称賛すべきなのだろうか……。
「いつもは保存食か現地調達だけど、今回はまさかの聖杯メシだ!
みんな好きな物を好きなだけ注文してくれ……いや待てよ」
聖杯メシとかいう新しい単語を発明した光己だが、何を思いついたのかいったん手のひらを突き出して皆を押しとどめるポーズを取った。
通信機のコールボタンを押してカルデア本部と連絡を取る。
《あら、何かあったの?》
するとオルガマリーが出てきたので、光己はちょっとためらった。
「あ、所長。うーん、所長にお願いするのはちょっと気が引けますので、Ⅱ世さんかドクターに代わってもらえます?」
《頼みごと? 別にかまわないわよ。私がやるべき仕事じゃなかったら担当すべき人に割り振るだけだから》
雇用主が親切にそう言ってくれたので、それならということで光己は計画を明らかにした。
「じゃあ遠慮なく。せっかく聖杯でごはん出せるんですから、俺が知ってる庶民のメシだけじゃなくて5つ星レストランの1番高いコースメニューとかも食べてみたいと思いまして。
カルデアのデータベースにそういう資料があったら送ってほしいなあと」
《貴方ねえ……》
オルガマリーは部下の俗欲ぶりにちょっとあきれたが、しかしこれは彼女にとっても良い話である。1秒で了承した。
《分かったわ、ただし私たちの分も出すように。
留守番のサーヴァントを加えても、ドレイクが連れてた船員より少ないから問題はないでしょう》
何せ自分だけでなく部下たちにもタダで豪華な食事を配れるのだから。
いや特異点の物資をカルデアに送るには相応の電力と魔力が必要だが、カルデアにある聖杯を魔力リソースとして使えば金銭的な負担はない。
「あ、それはそうですね。分かりました」
《今すぐは無理だけど、夕食の時間までには用意するわ》
「はい、それじゃまたその時に」
こうして夕食からは超豪華な食事を楽しめるようになったが、今回は光己が知っている範囲でのメニューとなる。
光己がそう言うと、またもアルトリアが真っ先に手を挙げた。
「ではハンバーガーだ。ジャンクなハンバーガーを山盛りで出せ」
「ジャンクなハンバーガーとは」
ハンバーガーがすでに(素材や調理法にもよるが)ジャンクフードの代表格なのに、さらにジャンク度を高めようというのか。まあサーヴァントには栄養障害の類はないからいいのだけれど。
「私はバターケーキとか欲しいです! できれば噂に聞くウルク風で」
「私はウナギのかば焼きと白いご飯を! あとお吸い物も欲しいですね」
「魔神さんはおでんがいいな」
「お昼から!?」
他にもスイーツだったり昼間からがっつり重かったりする人もいたが、光己は気にしないことにした。彼女たちにとってはあくまで嗜好品なのだから。
「でも先輩はちゃんと栄養を考えて下さいね」
「よし、それじゃ本場京都の高級ぶぶ漬けと、それだけじゃ寂しいから漬物とだし巻き卵と味噌汁もつけよう」
「では私もそれを」
その後他のメンバーもそれぞれ好きな物を注文して、食べ終わったら先ほどの話に戻ることになる。しかし光己はちょっと迷ってしまったので、カルデアに連絡を取って軍師の知恵を借りることにした。
《ふむ。生体反応調査によれば、この島には普通の動植物しかいないし、先ほどの石板のような呪物はまだあるかもしれんが、仮に見つかったとして良い物あるいは必要な物だとは限らん。
つまり探索しても骨折り損になる可能性が高いと思うが、海図を書くために島の地形だけでも把握しておく方がいいだろう》
「なるほど、ありがとうございます」
確かに地図は重要だ。特にこの特異点はいろんな地域の海がごちゃ混ぜになっている上に、嵐も起きるそうだから尚更である。
「それじゃヒルドとオルトリンデ、空から写真撮ってきてくれる?」
「うん」
「分かりました」
無人島の時の教訓で、一行は初手で航空写真を撮るという荒業を覚えていた。
2人がついでに島の周囲を軽く回ってみると、島の北端に船が1隻つながれているではないか。
エルメロイⅡ世によればこの島には人間やサーヴァントはいないはずだが、2人は念のため写真だけ撮って光己たちの元に戻った。
「ありがと。しかし船か……」
「はい。ヴァイキングが使っていた『ロングシップ』によく似ていますので、エイリークが乗ってきたものだと思います」
ヴァイキングは北欧神話の民族なので、ヒルドとオルトリンデは彼らが使っていた道具については詳しいのである。
「ほむ……あれ、それだとさっきの石板はいったい」
やはり特異点は物事の因果関係がおかしくなっているようだ。
どちらにせよ調べた方がいいだろう。
「じゃ、全員で見に行こうか」
「はい」
一同が現地に赴くと確かに船があり、しかも幽霊船ではなく実物の木や布を使った新しいものだった。つまりエイリークたちがこの特異点で建造したということだろうか?
中には人はおらず金銀財宝の類もなかったが、彼らが書いていた海図と航海日誌があった。
「むしろ普通の財宝よりいい物なんじゃないかな! だって既製の海図や羅針盤は使えないんでしょ?」
「ああ、そういえば最初に会った海賊がそんなこと言ってたな」
こうして光己たちは次なる道標を手に入れたのだった。
「次に行くべき所は分かったが、我々は船旅は不慣れである。つまり普段より長めの休憩が必要だろう。
ところで今は快晴で風もなく暖かくて暑いくらいだ。目の前の青い海は穏やかで美しい。
そんな状況で、我々がなすべきことは何だろうか?」
「もったいぶらずに海水浴したいって正直に言えばいいと思うよ!」
「その通り! やっぱヒルドは最初からいてくれてるだけあって分かってるな」
サーヴァント一同を前に何やら演説していた光己だが、本音をバラされるとあっさり開き直った。
「というわけで、求む参加者!」
「はーい!」
「はい」
ヒルドとオルトリンデは無人島の時も着替えのルーンを提供するほど協力的だったから、当然今回も参加である。となれば黙っていられない者も出るわけで。
「この清姫、ますたぁが行くところならどこまでもお供する所存でございます!」
「水着をもらえるんですか? なら沖田さんも参加しますとも!」
「漁や塩作りではなく遊びなのか。何事も経験だというから魔神さんもやってみよう」
もはや説明不要の清姫に、なぜか水着に興味津々な沖田と知識や経験が少ない分好奇心旺盛な沖田オルタが続く。
「はい、マスターのご希望とあれば」
「困ったマスターだな。しかしエイリークの航海日誌を読んでから次の島に行くと夜になるし、今日のところは構わんか」
「はい、いいですよ」
「ホントにえっちなマスターさんですねー。仕方ないから付き合ってあげますよ」
段蔵・アルトリアオルタ・ルーラー・カーマも積極的賛成とはいかないが反対ではないようである。
「うーん。知り合って間もないのに水着姿を見せるのはちょぉっとためらっちゃいますが、私が不参加だとマスターは落ち込みそうですから仕方ありませんね。特別ですよ?」
「むむぅ、誰も反対しないとは……! こうなれば私も参加して見張るしかありません」
玉藻の前とマシュはあまり乗り気ではなさそうだが、それぞれの思惑で参加のようだ。
「やった、まさかの全員参加! 仕事真面目にやっててよかったなあ」
「うんうん、マスターはよくやってると思うよ!」
握り拳を震わせて喜びを表現する光己と、そんな彼に本心60%お仕事40%でリップサービスするヒルド。その間にオルトリンデが無人島に参加していない女性陣に着替えのルーンについて説明した。
「―――というわけで、順番に更衣室代わりのテントに入って下さい」
女性陣がいったんその場を去り、光己と元々水着のルーラーだけが残った。
光己はこの特異点が海と島だけと聞いた時点で当然のように無人島で使った水着型礼装を荷物に入れていたので、それに着替えるだけですむ。
着替え終わって、傍らに佇んでいるルーラーをふと見つめる。
(やっぱり美人さんだよな)
造形がいいのは今さら言うまでもないが、貴婦人的な気品と大人らしいやわらかな包容力が絶妙なバランスでブレンドされているのが素晴らしい。純白の水着はよく見るとVカットがかなり大胆だが卑猥さを感じない、品の良いデザインでよく似合っている。
あとおっぱいが大きい。とても大きい。大事なことなので(ry
「マスター、どうかされましたか?」
すると当人が訝しげに声をかけてきたので、光己は正直に答えた。
「いや、ルーラーは綺麗だなあって思って」
「本当ですか? フフッ、ありがとうございます」
すると嫣然と微笑んでくれてちょっとドキッとしたが、次はいきなりそっと抱きしめられたのでまたびっくりした。
今は彼も水着1枚なので、熱い素肌がふれ合う感触がもうたまらない。
「ルーラー!?」
「マスターはいつも私たちのことを気遣って下さいますので、ささやかなお礼ですよ。
いつもはXXや清姫や景虎に先を越されてますのでなかなかできませんが」
「おおぅ……」
そういうことなら、と光己がルーラーの背中を抱き返すと「んっ……」と艶っぽい吐息が耳元にかかって本当にどきどきしてきた。
しかしそこに悲鳴のような声が響く。
「あ、安珍様ぁぁぁ! そ、そういうことはまずわたくしとぉぉぉ!」
毎度おなじみ清姫である。仕方ないので光己はルーラーから離れた。
「あれ、前の時とデザイン違うんだな」
「すぐ気づいて下さるとはさすが安珍様! はい、今回は森の探索はしなくていいので見栄えを優先してみました」
光己が褒めてあげると、清姫はすぐ機嫌を直してぱーっと笑顔になった。
今回は水色のビキニに白いフリルがついたもので露出度はけっこう高め、なので実年齢の平均よりだいぶ育っているのがさらに分かりやすい。
ただ水着の上に、黒地に橙色の火のような模様が描かれた和服を羽織っているのは正直邪魔でしかないとは思うが。彼女が希望しているハグもしづらいし。
「マースターー! まさか会ってすぐに水着をもらえるなんて沖田さん感激です!
しかもなぜか『病弱』スキルがなくなってるなんて、これは本格的に私の時代が来てしまったようですね!!」
「ちょっと恥ずかしいな。デザインはノーマルと同じなんだが」
次は沖田2人が出てきた。
2人とも白と翠色の露出高めのビキニで実にエロ可愛い。特にオルタは褐色の肌とのコントラストが眩しかった。
ノーマルは水着に執着があったらしくやたらはしゃいでいるが、オルタの方は露出の高さに恥ずかしがっているのも対照的でいとをかし。
「ただクラスはアサシンになったんですよね。その上見えないように擬装されてはいますけど変なジェット噴射機がついて……いえ空を飛べるようになりましたので、その分マスターの役に立てますから別にいいんですが」
「うーん、やっぱり水着になるとクラスが変わるのか……いやオルタは変わってないんだよな。どういう法則なんだろう」
やはりサーヴァントの世界にはいろいろと謎が多い。考察してもいいことはなさそうだけれど。
次は段蔵・アルトリアオルタ・カーマが戻ってきた。
「段蔵は前のと同じなんだな」
「はい、ワタシはこういうことには疎くて」
「そっか、でも似合ってるからいいと思うよ」
「は、はい、ありがとうございます」
段蔵は恥ずかしそうに頬を染めたが、実際黒の競泳水着は似合っているのでOKである。
「アルトリアオルタは今回もメイドオルタになったの?」
「ああ。今回は規律を守るメイドとして、装備を軍隊的にしてみた。食事どころか掃除・炊事・洗濯すらあまり必要なさそうなのでな」
「い、いえす、まむ」
黒い騎士王はメイドになっても迫力十分なので、光己はつい軍隊式に答えてしまった。
メイドオルタの水着は紺色の露出多めのイブニングドレス風のもので、同じ色の太腿までのストッキングを穿いている。胸の谷間やおへそを出しているのはなかなか良いデザインだった。頭には黒いティアラを付けている。
それはいいとして、上に羽織っている黒いコートは妙にゴツいし、手に持った黒い聖剣はともかく大きなスナイパーライフルは自分で言った通りの軍隊仕様だ。メイド要素はもはやどこにも見当たらない。
しかし文句を言うのは怖かったので、光己はつつましく沈黙を保った。
「カーマはずいぶん攻めた水着なんだな」
かわいいフリルがついた白と薄紫のセパレートなのだが、露出がかなり高めでふくらみかけのバストの谷間と下の方が見えているし、ボトムスはけっこうなローライズで腰回りがフリルだけになっている。見た目が10歳くらいなので犯罪的な雰囲気すら感じてしまうほどだった。
「私は別に攻めたくなかったんですけどねー。
きっとマスターがろり〇んなせいです」
「念のために聞くけど、俺の言動のどのあたりをロ〇コン認定したんだ?」
「だってマスター、いつも私を抱っこして喜んでるじゃないですか。
否定しても無駄ですよ。私たちは一から十とは言いませんけど、七くらいまで分かり合ってるんですから」
聞きようによってはすごいのろけだったが、光己は容赦しなかった。
不埒な幼女をベアハッグに決めて締め上げつつ、次に来た美女に顔を向けた。
「おおぉ、玉藻の前はやっぱり美人だなあ」
「ありがとうございますぅ~♪ 私もちょっと乗りすぎかなとは思いましたが、夏の獣が目を覚ましたと思っていただければ」
当初は乗り気でなかったわりに、玉藻の前は浮き輪とビーチパラソルを持ち麦わら帽子をかぶったノリノリのスタイルであった。白いTシャツを着ているので水着のデザインは分からないが、光己のマスターアイによれば露出高めの紐ビキニだと思われる。
「夏の獣か……確かに軽い気持ちでコナかけたら火傷しそうだな」
「フフッ。私はお安くありませんから、口説くならちゃんと覚悟してからに下さいましね♪」
最後にマシュとワルキューレ2人が出てきた。3人とも前回と同じ、マシュは白いワンピースでヒルドとオルトリンデは普通のシンプルなビキニである。
「マシュとヒルドとオルトリンデは変わりなしか……うーむ、クラスが変わった人は水着のバリエーションも増えてるってことなのか?
まあ3人とも似合ってるからいいか」
「うんうん。せっかく着替えたんだから早く遊ぼう!」
ヒルドがそう言って光己の手を引いたが、その時ルーラーがはっと上を見上げた。
「待って下さい! 上空にサーヴァント反応が」
「!?」
全員がはっと身構え、同じように上空を注視する。確かに人影らしきものがすごい速さで接近しつつあった。
しかし攻撃してくる気配はなく、そのまま一行のそばに着地する。
「XX!?」
「ええ、貴方のズッ友が呼ばれなくても来ちゃいましたよ!」
何と、出現したのはカルデアにいるはずのヒロインXXであった。しかし令呪を使った覚えもないのにどうやって!?
「私は生粋の水着サーヴァントですからね。水着イベント会場なら行くための魔力も少なくて……いえ! 私のマスターくんへの愛が起こした奇跡です!」
XXは満面の笑顔でそう言い切ると、光己の真ん前に駆け寄って思い切り抱き着いた。
「えへへー、やっぱりマスターくんのそばは居心地いいですね! さっそくですが、マスターくん分を補給させて下さい。ぎゅー」
「おおっ!? それじゃ俺もXX分を補給させてもらおうかな。ぎゅー」
「きゃー、そんなにきつく抱かれたらどきどきしちゃいます☆」
「…………って、今朝方まで一緒にいたのに何がマスターくん分ですか!」
光己とXXはお肌のふれ合いで幸せそうだったが、ヤキモチを焼いた清姫によって引っぺがされたのだった。
いつの間にか100話までいってしまいました。今後ともよろしくお願い致しますm(_ _)m
オケアノス編は舞台が海と島ですが、水着回を入れるのはちょっと難しいのですよね。ドレイクたちは海水浴できゃっきゃうふふなんて柄じゃありませんし、まして黒髭登場以降はそれどころじゃなくなりますから。つまりやるなら今しかないのです!