FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第101話 100話記念の水着回(本編1)

 眩しい太陽、晴れた空、青い海、白い砂浜、そして水着の美女美少女たち。これさえそろえば、たとえ特異点でも特級のリゾートアイランドといえるだろう。

 

「海に来るのは久しぶりだからな……さて、何をして遊ぶか」

「まずは準備運動じゃないかな? たとえばあたしとオルトリンデを抱っこしてスクワットするとか」

「それはもう本格的なトレーニングだろ!?」

 

 ある程度鍛えていれば体重67キロの男子が90キロのバーベルスクワットをするのは可能とはいえ、準備運動でやることではないだろう……。

 

「仕方ないなあ。今日はレジャーだから大目に見よう!」

「ヒルド先生厳しみ……」

 

 しかしワルキューレたちは普通の準備運動でもスキンシップしてくれるので、男子としてはとても嬉しい。特におっぱいを思い切り押しつけてもらえる、座っての前屈がポイント高かった。

 

「マスター、無人島の時よりだいぶ筋肉増えてますね。がんばって下さってて嬉しいです」

 

 その上鼻にかかった声でこんなことを言いながらカラダをすりつけたり、胸板や腕をさわさわ撫でたりしてくれるので、もう押し倒すのを我慢する必要が出てくるほどである。

 けしからん、実にけしからん(棒)。

 

「準備運動はこれくらいでいいかな。何して遊ぶの?」

「そうだな、まずは道具を用意するか」

 

 光己がそう言って聖杯に浜辺で遊ぶための道具を出すよう願ってみると、ビーチチェアやらレジャーシートやらクーラーボックスやらボディボードやらビーチテニスラケットやら浮き輪やら色々出てきた。普通の魔術師が見たら卒倒する光景だろう……。

 

「思ったよりいっぱい出てきたな。それじゃ最初は新顔の人たちと親睦を深めよう!」

 

 ということで、水着になったはいいが何をしていいか分からない様子の沖田2人と遊ぶことにした。この2人だけは21世紀の知識がないので、海水浴の遊び方を知らないのだ。

 ……ただそれだと沖田が水着のことを知っていたのがおかしなことになるが、例によって因果関係が狂っているのだろう。

 

「2人とも、せっかく海に来たんだから泳いでみない? サーヴァントには水泳のスキルはいらないかもしれないけど、他の聖杯戦争じゃなかなか出来ないことだと思うし」

「そうですね、ぜひ教えて下さい!」

「うん、マスターが教えてくれるなら」

 

 するとノーマルもオルタも乗ってきたので、光己は2人を胸の下まで浸かるくらいの所まで連れて行った。

 ルーラーアルトリアが彼の後ろにいるのは何か事件が起こった時に備えてと思われる。

 

「最初はバタ足からかな。まずは手とお腹を支えた状態、次は手だけ支えて、最後は自分だけでって感じで」

「なるほど、少しずつ支えを減らしていくわけですか」

 

 実に合理的で苦難が少ない方式だ。未来的なアトモスフィアを感じる。

 ジャンケンでオルタが先発になったので、光己は彼女に両手を出してもらって軽く握った。

 

(おおぅ、今日会ったばかりの褐色美少女の手を握っちゃうとか神イベントだな!)

 

 オルタの方は何も意識してないように見える。こちら方面には疎いようだ。

 

「まあいいか。それじゃ沖田ちゃんは体の力抜いて、前のめりに水の上に横になって。

 沖田さんは横から両手でお腹支えてあげて」

「うん」

「はい!」

 

 そして光己がオルタの手を引いて後ろに下がると、オルタはそのままうつ伏せで倒れ込んだ。

 沖田がそのお腹を支えて海面に浮かばせる。

 

「うわわ、これが水に浮くということか……な、何だか不安だな」

「初めてだとちょっと怖いかもなー。それじゃ息を止めて、顔を水に沈めてみて。顔上げてると体が沈んじゃうから。

 もちろん時々上げて息継ぎしていいから」

「分かった。頑張ろう」

 

 オルタは光己の指示通り、顔を沈めて水に浮く練習を始めた。途中からは脚を上下に動かして水をかくバタ足も加える。

 

「なるほど、こうやって水の上に浮いて進むわけですか」

「うん、慣れたら腕で水をかくのも加えるとクロールっていう泳ぎ方になる。わりと簡単な方の泳ぎ方だよ」

「へえー」

 

 オルタは忙しいが、光己と沖田は会話する程度の暇はあるようだ。

 なおその途中で光己は手を持つよりお腹を支える側の方がより近くでお尻や太腿を凝視できそうなことに気づいたが、ヘタレな彼には今更担当を交代しようと言い出す度胸はなかった……。

 

「―――オルタはだいぶ覚えてきたみたいですし、そろそろ私の番に!」

「うん、じゃあそうしようか」

 

 こうして沖田が練習する番になり、光己は彼女の手を取った。

 

「わー、男の人に手を握られるなんてちょっとどきどきしますね。いえ私はそういうことは疎い方だったんですけど」

「そうなの? 沖田さんくらい綺麗で明るくていい娘だったらかなりモテてたと思うけど」

「もっ、もうマスターってば」

 

 この程度のやり取りで顔が真っ赤になるあたり、彼女は本当に色恋沙汰には疎いようだ。

 しかし彼女はアルトリアズみたいに魔力放出でカッ飛ぶというわけでもないのに、こんな普通の女の子と変わらないような細くてやわらかい手や腕で新選組の隊長をやっていたとは信じがたいほどである。

 

「じゃあ行きますよー! 沖田さんは水練でも最速です!」

「いや最初はゆっくりめでね!?」

 

 こうして沖田も何とかクロールの形を覚えると、さっそくライバルに勝負を挑んだ。

 

「では私オルタ! どちらが先にあそこの小島まで泳げるか勝負です!

 あ、せっかくですからマスターもやりません?」

「うーん、俺は沖田さんたちほど速くないから遠慮しとくよ。他の人たちの所にも行かなきゃならないし」

「そうですか、ではまた後で遊んで下さいね。では!」

 

 沖田は元気にそう言うと、オルタと並んで沖合の方に泳いでいった。

 まだフォームは粗削りだが、2人とも凄腕の剣士、つまり体を動かすことのエキスパートだから、そのうち自分に合った型を覚えるだろう。もう放っておいて良さそうなので、光己は沖田に言った通り他の娘の所に行くことにした。

 まずは1番手近にいた、清姫とカーマのところを訪ねてみる。

 

「2人とも水かけっこ? ずいぶん気合い入ってるように見えるけど」

 

 清姫とカーマの間にはきゃっきゃうふふな水遊びといった雰囲気は微塵もなく、サーヴァントの腕力で豪快な大波をぶつけ合っている。何かあったのだろうか?

 

「はい、これはますたぁに抱っこ席ですいーつを食べさせてもらう権利を賭けた神聖なる勝負なのです!」

「へえー」

 

 光己はそんな権利を提供した覚えはなかったが、このくらいなら目くじら立てるほどのことはないのでスルーしてあげることにした。

 この2人が水かけっこ程度で簡単に降参するとは思えないことについても黙秘したが、そこにカーマがぱたぱたと駆けよって抱きついてきた。

 

「おおっ!?」

 

 わりといつものことなので光己が軽く抱き返すと、なぜかカーマが邪悪な笑みを浮かべる。

 

「フフ、かかりましたねマスター」

「え?」

 

 かかったと言われても何のことか光己には分からなかったが、するとカーマは体をぐいぐい上下左右に動かしてすりつけてきたではないか。

 

「うふふー。これで体が『反応』してしまったら、マスターは〇リコンだと証明されるってわけですよ。

 お互い水着ですからチャンスですよね」

「な、何だとぉぉ!?」

 

 何という恐ろしい謀略だろうか。光己は恐怖に青ざめた。

 

「でも安心して下さい。マスターがロ〇ペ〇コンだろうが何だろうが、私だけは愛してあげますから」

「ザッケンナコラー!」

 

 光己はカーマを引っぺがして逃げようとしたが、それは許さぬとばかりに清姫が後ろからくっついてきた。

 

「ちょ!? 清姫なんで!?」

「ご安心下さい安珍様。この体勢ならわたくしに反応したことになりますから〇リコンではありません!

 か、かなり恥ずかしいですけど安珍様のために頑張ります!!」

「意味が分からないよ!?」

「私には分かりますよ。清姫さんは満年齢だと小学生ですから、マスターが反応したら確実に事案だってことが!」

「おのれ邪神め、俺は絶対に屈しないぞ! というかルーラーヘルプミー」

 

 絶対に屈しないと言った直後に助けを求めるヘタレ少年。しかしルーラーはおかしそうに小さく笑っただけで介入してくれなかった。

 

「フフッ、2人とも微笑ましくていいではありませんか」

「アイエッ!?」

 

 孤立無援に陥った光己に邪神とバーサーカーの挟み撃ちに対抗するすべはなかった。

 幼い肢体で前後からもみくちゃにするという凶悪な攻撃にいまや敗北寸前だったが、なぜか不意に2人が動きを止める。

 

「ん、どうかした?」

「あ、はい、その……水着がずれてしまったみたいで」

「うん、確かに感触が違ってるな」

 

 光己がそう指摘すると、さすがの2人も真っ赤になって彼から離れた。彼に背中を見せる形でずれたトップスを直し始める。

 その隙を見逃す光己ではない。魔力放出で地面を蹴って2人の間から離脱した。

 

「ああっ安珍様! なぜお逃げになるのですか?」

「ちょ、マスター逃げるなんて恥ずかしくないんですか!?」

 

 清姫とカーマが何か言っているが答えている暇はない。光己はそのまま逃亡したのだった。

 

 

 

 

 

 

「ふう、危ないところだった……。

 それじゃ次はどこに行くかな」

 

 周りを見渡してみると、少し遠くで何人かがボディボードをしているのが見えた。

 マシュと段蔵とヒロインXXとメイドオルタと玉藻の前のようである。玉藻の前だけは自前の浮き輪に座っているが。

 段蔵以外は騎乗スキルを持っているから初挑戦でもそれなりにできるだろうし、段蔵は段蔵で水蜘蛛の術の応用で何とかなるということか。

 

「あ、マスターくん! どこ行ってたんですかもー」

 

 光己(とルーラー)がそちらに行くと、XXがボードから降りて抱きついてきた。

 

「えへへー、捕まえちゃいましたよ。ぎゅー」

「じゃあ捕まえ返してやる。ぎゅー」

 

 光己も思い切り抱き返して、愛と友情を確かめ合う。すると後ろからルーラーもくっついてきた。

 

「それじゃ私も。ぎゅー」

「おぉっ!?」

 

 2人とも夏(?)の海で開放的な気分になったのだろうか。成熟した大人のボディ、特に立派なおっぱいにむにむに挟まれる至高の感触に光己は天にも昇る、いや天そのもののような幸せ心地だった。

 しかし残念にもXXはすぐ離れてしまい、さっきまで自分が乗っていたボードを拾い上げてきた。

 

「せっかくですからマスターくんもやってみませんか?」

「うん」

 

 ボディボードというのはボードの上に腹這いになって波乗りをするスポーツである。寝ている分、サーフィンよりはとっつきやすいだろう。

 

「おおぉ~、ちょっと不安だなあ」

 

 ボードの上に乗り、バタ足で沖に向かう光己。低めの波はボードを上げて盾にし、高めの波は潜ってやり過ごす。

 

「ある程度沖合に出たら、Uターンして波に乗って岸の方に戻るんですよ。ここの海は穏やかですので、波の中を横に進むなんてのは無理ですけど」

「ほむ、なるほど」

「ではまず私が手本を見せてやろう」

 

 するとメイドオルタがお手本役に立候補してくれた。

 イブニングドレス風の水着が濡れて肌に貼りついているのがえろいとか、そのデザインのおかげでボトムスが下着に見えるのでさらにえっちい……と光己は思ったが、口に出すのは怖かったのでチラチラ見るだけにとどめておいた。マシュがちょっとむくれているように見えるが気のせいだろう。

 メイドオルタは光己の前でボードに乗ると、すいーっと前方に進んでいった。ある距離まで行ったところで、強く水を蹴って豪快に飛び上がり空中で華麗にターンを決める。

 そのまま波に乗って光己の所に戻ってきた。

 

「見ていたか? 仮にも私のマスターならこれくらいは軽くこなしてほしいものだな」

「無茶振り!」

 

 メイドオルタは相変わらず要求水準が激高だった……。

 

「まあいいや、とにかくやってみよう」

「それじゃ私が横につきますね!」

 

 光己が改めてボードに乗ると、XXがその傍らに来てくれた。落ちた時に救い上げてくれるのだろう。

 にこにこ微笑んで楽しそうにしているのが嬉しい。

 

「よし、行くぞ!」

 

 光己が意を決して沖に進む。XXも横を泳いでついてきた。

 先ほどメイドオルタがターンした地点に着いたら、魔力放出で水を蹴って回転する! ……と、やはり初回から大技は無理のようで勢い余って転覆してしまった。

 

「わぷっ!? やっぱ無理だったか」

 

 しかも勢いがありすぎて、すぐに体を立てられない。しかし横から誰かが近づいてくる気配を感じた。

 XXが引っ張り上げに来てくれたのだろう。光己はそちらに手を伸ばして、何かに触れたので軽く掴んだ。

 

「きゃぁっ!? マ、マスターくんダメですっ!!」

「え!?」

 

 XXは悲鳴を上げつつも光己を抱っこして水中から引き揚げてくれたが、そこで目を開けてみると彼の右手はXXの右乳房をしっかりと鷲掴みしていた。

 丸っこくて柔らかくて弾力的でとてもいい感触だと思っていたが、まさかおっぱいだったとは!

 

「わああっ!? ご、ごめん!」

「な、何してるんですか先輩ーーーっ!!」

 

 もちろん光己はすぐ手を離したが、怒りに燃えた後輩に突き飛ばされてまた水中に沈むハメになったのだった。

 

 

 


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