光己はルーラーアルトリアの背中と腋とうなじを愛撫するのに満足すると、当然の流れとして彼女の体の前面に塗らせてもらうことにした。
「ルーラー、仰向けになってくれる?」
「……はい。あ、でも体に力が入らないのでお願いしていいですか?」
「うん」
光己はオイルを塗る側だからそこまで弛緩していないので―――代わりに頭の中はルーラーのカラダのことでいっぱいだったが―――彼女の頼み通り、そっと肩を起こして横に転がした。
仰向けになったルーラーと間近で目が合う。
(……うわぁ)
魔力を送られたせいか愛撫が気持ち良かったのか、ルーラーの顔はじっとり汗ばんで頬が真っ赤に紅潮していた。潤んだ瞳は焦点が定まらず、とろーんとしたまなざしで光己の目を見つめている。
はっきり言ってえっち過ぎる。光己はますます興奮して彼女のさくらんぼ色の濡れた唇を強引にでも奪いたいという欲求にかられたが、そういう乱暴なことはしたくないのでなけなしの理性を振り絞ってこらえた。
手順通り足先の方に移動したが、その時ルーラーがちょっと物足りなさそうな顔をしたように見えたのは多分気のせいだろう。
改めて指先から足首、脛へと塗り進めていく。
「んっ……ふ、あン……マス、ター……はぁ、ぁ」
「ル、ルーラー……」
年上の素敵な美人が自分の手(と魔力)で身動きできなくなるほど力が抜けてしどけなく横たわって、おまけに色っぽい喘ぎ声まで上げているさまは感動とリビドーで理性が消し飛びそうな光景だ。
それはそうと、また太腿まで来た。
(おぉー……)
美脚は前から見てもやはり美脚だ。水着のVカットの角度はえぐいし、股の間もやっぱり目を引く。しかしそこを守っている白い薄布が湿っているのは汗……だろうか?
見るなり触るなりして確かめたいが、それは時期尚早だ。光己はそこには触れず、素肌を出しているギリギリの所までを撫でたりつついたりして責め立てた。
「んんッ、はっ、くぅぅ……マ、マスター、そ、そんなじらすみたいな……!」
ルーラーの哀願するような声が頭も体も痺れさせる。調査はまだ途中だが、これ以上続けるとこちらが辛抱たまらなくなりそうなので、いったん切り上げることにした。
腰回りとお腹を塗って、それが済んだらいよいよ―――!
「ルーラー……」
「……はい」
XLサイズのおっぱいだ! 寝そべっても形が崩れずツンと上を向いていて、自己主張が実に激しいがそれがいい!
彼女の水着は上品な感じがするが、よく見ると露出は大きい。バストもきっちり隠されているのは4分の1くらいで、残り半分はレースで残りは素肌を出しているのだ。見ていると吸い込まれそうな感じさえしてくる。
「じゃ、いくよ」
光己は恐る恐るといった感じで両手を伸ばして、ルーラーの乳房にそっと触れた。つややかな白い肌を、宝物を愛でるように撫でさする。
手に収まり切らないほど大きな双丘はとても柔らかくて、なのに指に力を入れると弾力豊かに押し返してくる。その感触の心地よさといったらもう!
「あぁぁっ、ン、はぁ、ッく!! マ、マスター、すご、い、です……!」
「うん、ルーラーもすごい……!」
光己がさらに大胆に力強く揉みしだき始めると、ルーラーもびくんと身をよじらせて甘い嬌声を上げる。2人とも「オイルを塗る」というお題目を完全に忘れ果てて、愛の行為に夢中になっていた。
(そろそろ中見てみたいな)
ルーラーのおっぱいは水着の上からでも大変素晴らしいが、やはりじかに見て触りたい。そう思った光己はさっそく脱がすべく彼女の水着を観察したが、ホルターネック型なのは分かるが結び目の類がどこにもなかった。
「詰襟みたいに外れたりするんかな? うーん」
試しにいろいろいじってみると、パチンという音がして襟の後ろが左右に別れた。
これで脱がすことができる。光己が震える手で襟を下に引っ張ると、白い布はゆっくりとめくれていった。
「おおぉ……」
このまま下げていけば全部脱げそうだ。ついにルーラーの生おっぱいを拝める!と生涯最速の勢いで胸を高鳴らせる光己。
―――そこに遠くから若い女性の声が響いた。無論ルーラーではない。
「マスター、ワイバーンがやって来たようです!」
「ぶふぅぅぅっ!?」
あまりにも、あまりにも唐突かつ無粋すぎる注進に光己は思わず噴き出した。
その間に声をかけてきた女性が光己のそばまで来て地面に片膝をつく。
「
その女性、段蔵は頭を下げてすまなさそうにしているが、光己としてはツッコミを入れるより注進の内容の方に対応しなければならない。
「ワイバーン!? どこに!?」
「はい、あちらに」
段蔵が顔を上げて空の一角を指さす。光己がそちらを見てみると、彼女の言う通り5頭ほどのワイバーンがこちらに接近しつつあった。
ただ彼らが光己たちを捕食するつもりなのか、それともこの島で休憩したいだけなのかは分からない。もっとも仮に後者だとしても、こちらを発見したら襲ってくるだろうが。
「おのれおのれおのれ、本当になんて空気を読めない奴らだ……あと3時間とは言わんけど、せめて3分待ってくれれば……!
あ、段蔵のこと言ってるんじゃないから気にしないでね」
光己は血涙を流して悔しがったが、仲間への配慮はする辺りリーダーとしての自覚は忘れていないようだ。状況と年齢を考えれば立派なものと言えるだろう……。
「とにかくここにおまえたちの居場所はない! どこから来たか知らんがとっとと帰れ」
光己が大声で怒鳴りつけると、ワイバーンたちは一瞬当惑して動きを止めたがすぐに回れ右して戻って行った。
常識的に考えてあり得ない事態に段蔵が驚いて、早口に仔細を訊ねる。
「マスター……あれはワイバーンがマスターの言うことに従ったということなのですか?」
「うん。俺は一応大人の竜だから、他の竜が産んだ仔でも多少は指図できるんだよ。
人間でも大人が子供を怒鳴って脅したら逃げるだろ? それと同じだよ」
「なるほど……しかしそうなると、この海域にはワイバーンを産めるほどの大人の竜がいるということになりまするな」
「うん、そいつがそばにいたら俺が何か言っても聞かないと思う」
どうやら敵はサーヴァントだけではないようだ。今回は竜殺しがいないから面倒なことになりそうである。
「ところで他のみんなは?」
「玉藻の前殿が呼びに行っていますので、じきに集まるかと思いまする」
「わかった、お疲れさま。それと艶事してたわけじゃないから誤解しないでね?」
光己は段蔵の言葉を覚えていて念押ししたが、ニンジャ娘はすぐには納得しなかった。
「そうなのですか? しかしどう見ても……」
こんなことがあったのにルーラーはまだくたっと寝そべったままで、頬は色っぽく上気して息も荒い。どこから見ても事中か事後なのだが。
「いや、本当にサンオイル塗ってただけだから!」
光己はそう強く主張しつつ、皆が来るならということで急いでルーラーの水着を直す。それから彼女の頬を軽く叩いて気つけをした。
「ん……ぁ、マス、ター……?」
「ルーラー、大丈夫? 起きられる?」
「え? ……あ、はい」
ルーラーはまだぽやーっとしていたが、光己が普段の様子と違っていることに気づくとすぐ正気に返って体を起こした。そこは英霊になるほどの王にして騎士ということか。
「何かあったのですか?」
「うん、みんなが来てから話すから」
「はい」
ルーラーは頷いたが、玉藻の前たちの姿がまだ遠いのを見て取ると光己の耳元にすっと口を寄せた。
「マスター、オイル塗りっこは嫌じゃありませんでしたから……良かったらまたして下さいね」
「!?」
正直やり過ぎたと思っていた光己は予想外の反応にびっくりしてしまった。
「デ、デジマ!?」
「……はい。それにXXがマスターを慕っている理由も分かりましたから。
マスターと魔力や心がつながるのはとても気持ちいいです。あ、もちろんその、手で触れていただくのも」
「そ、そっか」
さすがに恥ずかしそうに頬を染めて小声で話すルーラーはかなり年上なのに心底可愛らしい。光己は改めて押し倒したくなったが、皆がすぐ来るので自重せざるを得なかった。
やがてマシュたちがやって来て、口々に事情を訊ねてくる。光己はオイル塗りっこについては口をぬぐって、ワイバーンを追い返したことだけを話した。
「なるほど、今後は野良ワイバーンとの不要な戦闘は避けられるわけですか……。
いえ、彼らが人里を襲う可能性を考えれば放置が良いとは言い切れませんが」
マシュはいつもながら真面目であった。
「それで、これからどうするんですか?」
「今から追いかけるのは無理だから、今回は放置かな。
予定通り、日暮れまでは遊ぼう。ただしみんな離れないよう、浜辺でね」
「うーん、ちょっと暢気かなとは思いますが仕方ないですね」
追いかけるのが無理ならこの島に居残ることになるが、ずっと臨戦態勢でいても疲れるだけだ。みんな一緒にいるなら、浜辺で遊んでも問題はないだろう。
「では何をしましょうか」
「そうだなあ」
光己が最初に出したグッズ類に目をやると、すでに物色を始めていたカーマがラケットを出してきた。
「ではこれで遊びませんか? もらった知識によるとビーチテニスって普通のテニスよりマスターの故郷でやってる羽根突きに近いルールなんですよね。
つまりボールを落としたら顔に落書きされるというわけで……うふふ」
また何か邪悪なことを考えているようだ。光己は反撃を試みた。
「それでもいいけど、ビーチテニスはサーヴァントのパワーはあんまり役に立たないからな。自分が負けた時に『私は駄目な女神です』って書かれる心の準備はOK?」
「……! 上等です、やってやろうじゃないですか!」
そんなわけで光己はカーマと段蔵や玉藻の前たち日本勢も加えてビーチテニスという名の羽根突きに興じたり、その後泣きべそをかいたカーマを慰めるため一緒に砂遊びをしたり、ワルキューレズと追いかけっこしたりして浜辺の遊びを堪能したが、ふと気づくと夕方になっていた。
マシュが1人でぼんやり夕日を眺めているのを見かけて声をかける。
「マシュ、夕日がどうかした?」
「あ、先輩。……はい、すごく色が鮮やかだなと思いまして」
「そっか、確かに綺麗だな」
水平線の向こうに沈みゆく太陽は燃えるようにまばゆく輝き、圧倒されそうに強烈なオレンジ色の光で雲と海を染め上げている。
そのまま一緒に夕焼けを眺めていたが、やがてマシュが口を開いた。
「私はずっとカルデア育ちで、外に出たのは冬木の時が初めてなのはご存知ですよね。
カルデアの建物の窓からは吹雪しか見えませんし、中の施設も無機質な感じであまり『色』や『温度』を感じたことがなかったんです。
それが不幸だと思ったことはありませんでしたけど、でも外の世界はこんなに色彩豊かで綺麗で眩しい所だったんだなあって……」
「………」
育ち方が違いすぎる光己にはどう答えていいか分からなかったが、マシュは気の利いた返事を求めていたわけではないらしく独白を続けた。
「冬木は地獄絵図みたいでしたし、フランスでもローマでもひどい光景を何度か見ましたけど……それでも、外に出られて良かったと思ってます。
アルトリアさんたちじゃありませんが、現地のごはんは美味しいですし。
戦いはまだ怖いですけど、先輩と皆さんがいて下さるおかげで勇気を出せます」
「……そうだな、俺も1人だったらとっくに折れてたと思う。いつも守ってくれてありがと」
「先輩……」
2人がゆっくりお互いの方を向いて、視線がやわらかく混じり合う。
「私、正直言ってまだまだ未熟で……今の先輩にとっては物足りないんじゃないかと思うのですが、あの、本当にそう思って下さってるんですか?」
「そりゃもちろん、清姫の目の前ででも言えるよ。実際戦国時代に行った時は不安だったし。
ローマでレフと戦った時だってすごく役に立ってくれてたろ」
「先輩……はい、ありがとうございます」
たった数センテンスの言葉でこんなに胸が暖かくなったのは、業績を評価してもらえたからか、それとも評価してくれた人が光己だからだろうか。
そういえば彼はサーヴァントたちが手柄をたてた時はこまめに褒めているように思う。マスターというかリーダーとして気を配っているのだろう。
それなら大変な仕事だから気分転換を求めるのは当然……いや海水浴や水着にこだわっている点がちょっと怪しいが。
「それじゃ暗くなってきたことだし、そろそろ行こっか」
「はい」
2人は自然に肩を並べて、テントと夕食の支度を始めたメイドオルタたちの所に戻るのだった。
実際オケアノス編にはグレートドラゴンとワイバーンがいるのですな。