信長の船の大砲と兵士たちの火炎放射銃の威力はなかなかのもので、今はマシュが「
なおこの兵士たちの正体は、光己たちは知らないが正式な名称を英霊兵といって、戦闘で斃れたサーヴァントから回収した霊基を使って作られた人工的な魔術兵士である。要はゴーレムの一種だ。
能力的にはサーヴァントに及ばないが、数を揃えれば面倒な相手になる。ちょうど今現在のように。
「空を飛べる人が壁の上から行く……ダメだな、集中砲火される未来しか見えん」
せめて兵士の数を大幅に減らしてからでなければ危険すぎる。まずは飛び道具、といっても壁の上を乗り越えていけるタイプのものしか使えないが……。
「アタランテ、もう1回宝具お願いしていい?」
「ああ、今度こそ成果を挙げてみせよう。『
大量の矢が信長の船の上に降り注ぐ。信長軍は壁になる物を持っていないらしく、兵士たちはそれぞれ避けたり銃で払ったり腕で受けたりして凌いだ。
最終的には死者20人、負傷者50人というところか。
「むう、思ったより
アタランテはこの戦果に少々不満げだったが、そこにカルデアから通信が入る。
《いや、レディの宝具が弱いのではない。今ので判明したが、あの兵士たちは一種のゴーレムだ》
「ゴーレム」
言われてみれば、生き残った兵士たちは矢が肩や腕に刺さっているのに痛そうな素振りを見せないし、人間的な雰囲気を感じない。エルメロイⅡ世の分析は正しそうに思えた。
《つまり人間扱いする必要はないということだな。マスターが竜になってこちらの船の後ろから「滅びの吐息」をぶっ放せば片がつく》
実に合理的な提案であった。「滅びの吐息」は爆発する火の玉を放物線の軌道で飛ばす、つまり爆弾を投げるようなものなので、ルーラーアルトリアの船の後ろという安全圏からでも攻撃できるのだ。
ただし今の光己の竜モードの力はフランスで遭遇したファヴニールとほぼ同等なので、力加減を誤ると味方も吹っ飛ぶが、事前にマシュの宝具を展開しておけば大丈夫だろう。
「いや、すごく不安なんですがそれ!?」
光己は昨日フリージアに血をもらった後、新必殺技「
マシュの宝具は騎士王の聖槍を防ぎ切った実績があるとはいえ、あの城が船全部を覆えるかどうかは試していないし。
《ふむ、ならば距離を取れば問題あるまい。むろんその分火球を当てるのは難しくなるが、仮に外して海面に落ちてもそれはそれで、水蒸気爆発が起こるから十分攻撃になる》
「ほむ」
水蒸気爆発なら光己も無人島で1度見た。十分どころかオーバーキルな威力があるだろう。
無関係の魚たちにとっては災難な話だと思うが、野生の本能か何かで察知して逃げてもらいたい。
「うーん、戦争って人間だけじゃなくて動植物や自然環境にも迷惑かけるんだなあ」
しかしそのために戦法を変えるわけにはいかない。アタランテの宝具で20人しか斃せなかったのだから、普通にやっていたら時間がかかり過ぎてマシュが力尽きてしまうのだから。
「ルーラー、そういうわけで1度距離取ってくれる?」
「分かりました」
距離を取るのはたやすい。単に加速するだけですれ違いの形になるのだから。
しかし信長にとってそれは想定の範囲内だった。光己たちの船が信長の船より速いのを何度も見ているのだから。
いつの間にか、大きな茶釜のようなものに乗ったちびノブが上空から大勢光己たちに近づいていた。
「何ぞあれ!?」
正式名称はノッブUFOという。釜型の爆弾を投げたり、金色の輪のような形のビームを撃ったりするのが攻撃方法だ。
「き、弓兵組お願い!」
「はーい」
リアリティという言葉を全力で投げ捨てた奇ッ怪な軍団の襲来に光己はいささか面食らってはいたが、ノッブUFOが敵なのは明らかなのでとにかく攻撃の指示を出した。すでに準備完了していたカーマ・アルテミス・アタランテがすぐさま射撃を始める。
3人の技量は確かなものでノッブUFOは次々と撃破され消えていったが、彼女たちもダテに「信長」の名を冠しているわけではない。消える前にきっちり爆弾を放り投げて、爆炎と熱風でカルデア側を火傷と困惑と視界不良の坩堝に陥れる。
「うわ、強い!?」
見た目はギャグでファンシーだが、こちらも数を揃えられると厄介だった。
しかもこの爆撃はあくまで牽制であり、本命はこれからである。不意にルーラーの船に強い重みがかかってガクンと揺れた。
「……しまった!」
ルーラーがはっと船を見渡すと、尾翼の柱に鉤付きのロープが何本も巻きついていた。ノッブUFOの一部は爆撃に加わらずロープを持って海面スレスレを飛んできており、カルデア勢が爆撃に気を取られている隙にこっそり柱に近づいて巻きつけたのである。
ロープの端はむろん信長の船につながっており、ロープを切るかほどくかしなければ離れることはできない。それどころか兵士たちがウインチのような物でロープを巻き取っており、少しずつ接近されていた。
「残念だったな。貴様らの宝具の性質を考えればいったん距離を取るというのは正解じゃが、今回は相手が悪かったということじゃの」
信長の声は相変わらず冷淡だったが、ちょっと勝ち誇った風にも聞こえた。
確かにこのまま接舷すれば、兵士がマシュのシールドエフェクトを乗り越える、あるいは回り込んでルーラーの船に攻め込むことも可能になる。信長が戦況有利と判断したのも無理はない。
「それはどうでしょうね。要は縄を切ればいいんじゃないですか」
清姫が爆撃をかいくぐりながらロープに向かって炎を吐く。しかしロープは頑丈で、ちょっと焦げただけだった。
「え、もしかしてただの縄じゃない!?」
普通の綿や麻で作られた縄なら一瞬で燃えて千切れるはずなのに。材料が特殊なのか、それとも魔術で強化しているのか?
「フン、当然じゃろう。わしらの技術を甘く見るでないわ」
「ぐぬぬ、ならば宝具で……って、今のわたくしではダメですか」
清姫はランサーになると宝具が「対象1人を鐘に閉じ込めて蒸し殺す」というものに変わるので、空中に張られたロープを焼き切るのには不向きだった。
どうやら普通に得物の薙刀で切断するしかないようである。その柄をぐっと握り直して突撃した。
当然爆弾が集中投下されるが、「ふぬりゃーっ!」と気合一発で薙ぎ払う。狂化EXぶりは健在であった。
「ますたぁのためなら溶岩すらただの水になるこのわたくしに、この程度の炎が効くとでも!?」
「ぬう、見た感じランサーじゃがバーサーカーであったか。しかしこいつはどうかの?」
信長がさっと手を振ると、ルーラーの船の船尾に身長4メートルほどもあるちび、いやでかノブが現れた。しかも全身がメタリックな銀色に光っている。
縄を伝ってきたのだろうが、指がないのに実に器用なものだった。
「ちょ!?」
これにはさすがの清姫も驚いて足を止める。するとでかノブはチャンスと見たのか、どこからか身長相応の大きな火縄銃を取り出して清姫に狙いをつけた。
「え!?」
「危ない!」
清姫は回避できる体勢ではなかったが、ヒルドが槍からビームを撃って火縄銃を横にはじいてくれたので難を免れた。
しかも銃身が曲がったのでもう使えない。と思いきや、でかノブはあっさり銃を捨てて大きく口を開いた。
「え、まさか!?」
そこから白っぽいビームが射出され、清姫とヒルドはまとめて吹っ飛ばされた。「めたる尾張砲」といういかにも力が抜けそうな名前なのだが、サーヴァント2人を簡単に転倒させた辺り相当の威力である。
「いたたた……な、なかなかやりますわね」
「けっこう強いねえ」
もっとも2人ともすぐ立ち上がったが、一目で分かる大きなケガをしている。こんなのが何人も乗り込んできたらさすがにマズそうだ。
マシュもいつまでも保たないだろうし、光己は自分も多少の危険はかぶる覚悟を決めた。
「ルーラー、服持ってて」
礼装をちゃんと脱いでから、船縁から海に飛び込む。水の中でファヴニールに変身した。
犬かきをしながら、首から上だけ外に出す。
「みんな大丈夫か? これでだいぶやりやすくなるはずだけど」
光己は竜モードになると魔力タンクとしての性能が3桁上がる。つまりマシュは粘るのが楽になるし、他の契約サーヴァントたちもパワーアップする上に魔力を惜しまずガンガン戦えるようになるのだ。
なお光己が竜モードになる時は周囲の魔力を大量に吸収してしまうのだが、これまでに何度も変身しているので吸収する方向を制限するくらいはできるようになっている。つまりルーラーの船とは逆の方からだけに絞ったので、マシュたちから吸収することは回避できていた。
「はい、先輩! これならまだまだいけます」
「なるほど、これが弟君の真の支援力なのですね!」
マシュのシールドが強度を増し、カーマや沖田やジャンヌの飛び道具も威力が上がってノッブUFOを次々と撃墜していく。
むろん接近戦組も負けてはいない。清姫と玉藻と沖田オルタがそれぞれの得物を振るってでかノブたちを斬り伏せた。
ただしその代償として、光己が危惧したように彼が注目を受けることになる。
「龍、じゃと……!? 誰かが宝具で変身でもしたのか」
清姫や上杉謙信あたりならそんな宝具を持ってそうな気がする。いずれにせよ敵なら討ち滅ぼすだけだが。
「英霊兵ども、
その命令に応じて、兵士たちが一斉に竜の鎌首に銃口を向ける。無数の火線が光己を襲った。
……が、太陽属性のドラゴンにそんな攻撃は全くの無意味である。避けることはできなかったが、その必要すら感じない。
光己は自分で反撃しても良かったが、このたびは仲間に花を持たせることにした。船の上から視線を感じるので。
「それじゃヒルド、お願い」
「はーい!」
ヒルドはケガの痛みをまったく態度に出さずに元気よく答えると、信長や英霊兵の注意が光己に集中している隙を突いてこっそり船から飛び立った。つまり先ほどノッブUFOにやられたことの仕返しである。
「それじゃいっくよー! 『
7騎の戦乙女が7本の槍を信長の船の甲板に投擲する。狙いは当然信長本人だ。
この槍は必中の加護を持っており、信長がどう逃げても避けることはできない。7本を1人に集中させれば、肉体的にはさほど頑強ではなさそうな彼女にはとても耐えられないだろう。
ヒルドはこの時点で勝利を確信した。
「―――!!」
しかし信長は歴戦の勘で槍が飛んで来たことに気づくと、なんと近くにいた英霊兵を盾にした。槍は彼らに突き刺さったが、英霊兵はそれなりに硬いのか信長には届かない。
「うわひっど! でもそれで終わりじゃないよ」
ヒルドがそう言った通り、槍の周囲に正しき生命ならざる存在を否定する結界が展開される。サーヴァントも英霊兵も該当するので、英霊兵は完全に機能停止し信長も痛撃を受けた。
「おのれ……じゃが1歩足らなんだな。この第六天魔王を傷つけた報いを受けるがいい!」
信長は全身から魔力を放出して結界を打ち破ると、そのまま宝具の開帳準備に入った。体にかなり負担がかかる行為だが、気にするつもりはないようだ。
「三界神仏灰燼と帰せ。我こそは第六天魔王波旬、織田信長!」
信長の周囲に紅蓮の炎が噴き上がる。まさにすべてを灰燼に帰すかのような苛烈な炎で、近くにいた英霊兵たちも焼かれていたが信長はやはり気にしていなかった。
「おぉぉぉおぉ、『
そして巨大な黒い骸骨が現れる。ただし骸骨は信長本人から離れられないので射程距離は短いのだが―――信長は骸骨の手に自身を掴ませると、なんとヒルドの方にぶん投げさせた。
「うそぉっ!?」
すると骸骨も一緒になって飛んでくる。これにはヒルドも度肝を抜かれた。
骸骨が両手を開き、蚊でも叩くかのように少女を挟み潰しにいく。
「!!」
このまま両手に挟まれればヒルドは即死するだろう。しかし彼女は仮にもワルキューレであり、しかも事前に信長の宝具の性質を聞いていた。
とっさに槍をつっかい棒にして骸骨の手を止めると、その槍を蹴って後ろに跳んで距離を取った。炎までは止め切れず、神性特攻だけあってかなり熱かったが、気にするのは後回しだ。
「む、うまく逃げおったな。しかし得物を失ったぞ!?」
「それはどうかなあ? 貴女と違って、私には超優秀なマスターがいるんだよね。
というわけでもう1発いくよ、『
「何じゃとぉぉぉ!?」
今度は信長が驚く番だった。結構強力な宝具だったのに、まさか連打できるとは!
骸骨を盾にして防いだが、今度は防ぎ切れずに何本かが体に刺さる。急所だけは避けたが、そのまま船の上に打ち落とされた。
「くっ、どこの誰かは知らぬがなかなかやりおるわ……」
しかしまだ戦える。信長は五体に力をこめて立ち上がったが、その真後ろに何者かが現れる。
「さすがは我が君、これだけの数のサーヴァントを相手に見事な采配です。
無傷とはいかぬようですが……」
「光秀!? 貴様……!?」
後ろに現れたのは彼女の部下の明智光秀のようだ。
ただ普段と様子が違うのを信長は察していた。
「……長う、……長うございました。
この時のために300年の計を案じ、ただひたすらにお待ちいたしました」
「何を……!?」
この男は何を言い出すのか。何を考えているのか!?
「今こそ、真の信長公がお戻りになられるのです!」
「…………光秀ぇええええっ! 貴様ぁっ!」
信長は光秀の思惑を悟ったらしく声を荒げて罵倒したが、その直後に気を失って甲板に倒れたのだった。
カーマとノッブを会話させたかったのですが、ノッブが神性特攻を持っていると判明した時点で無理になってしまいましたo(_ _o)
主人公が邪ンヌに作ってもらっている短刀に付与する機能はどれが良いですか?(鞘とは別枠)
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ガンド
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氷作成
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魔術解除
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お姉ちゃん