FGO ANOTHER TALE   作:風仙

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第130話 世界最古の海賊船5

 ヘラクレスはヘクトールが双子を倒したことと、その後彼を黄金の鹿号(ゴールデンハインド)の連中が退避させたことには気づいていたが、特に干渉はしなかった。必要のないことである。

 それより相方が役目を果たした以上、自分も果たさねばならない。ただそれだけである。

 

「■■■■■■■■■ーーーーッッ!!」

 

 ヘラクレスは改めて報復と勝利を誓うと、雄叫びを上げながら魔神柱に斬りつけ―――ようとしたその時、いきなり彼が危険な雰囲気をたたえた黒い煙と濁った水を吐き出してきたので反射的に跳び下がっていた。

 

「■■■■……!?」

 

 煙と水はかなり多く、さして広くもない甲板の上では避け切れない。足が水に浸かってしまったが、その足がまるで強い毒か酸にでも触れたかのようにただれて灼けるような痛みが走る。

 

「■■■■……」

 

 やはり魔神柱は炎を吐く以外の能力を持っていた。ディオスクロイが退去して同士討ちの危険がなくなったので、無差別攻撃の技も使い始めたということか。

 守りに入ったら毒煙と毒水が増えて不利になるだけである。ヘラクレスは一声大きく咆哮すると、覚悟を決めて毒水の中に足を踏み入れた。

 

「■■■■■■ーーーーッ!」

 

 魔神柱に近づくと煙の方も浴びてしまうが、ヘラクレスはその傷と痛みを無視して斬りつけた。

 その一撃は先ほどまでと同じ程度のダメージは与えられたものの、やはり聖杯からの魔力とメディアの治癒魔術ですぐに回復してしまう。

 

「■■■■……」

 

 これはどうしたものか。ヘラクレスは攻撃を続けつつも、新しい戦術を考える必要性を感じ始めていた。

 

 

 

 

 

 

 一方カルデア側はその戦いに手出しせず観戦に徹していたが、光己はふとここでやっておくべきことに気がついた。

 

「そうだマシュ、今のうちに通信機でヘクトールとブラダマンテにお話してもらえばいいんじゃないかな」

「あっ、それはそうですね! ではヘクトールさん、こちらへどうぞ」

 

 マシュも大きく頷いて賛成の意を示し、さっそくカルデア本部に連絡を取ってブラダマンテを呼んでもらう。最後の戦いということでローマの時同様留守番組も管制室に詰めていたので、少女騎士はすぐにスクリーンに現れた。

 

「ヘクトール様、本当にヘクトール様なんですね! ああ、人類の味方に戻って下さって良かったです……!!」

 

 ブラダマンテはいろいろと感きわまった様子で、顔をくしゃくしゃにして涙を流して、口をぱくぱくさせているがうまく言葉にできない模様である。この様子を見ればもはや彼女とカルデアのマスターが嘘をついているという疑念なんて残るはずもなく、ヘクトールはとりあえず子孫につらい思いをさせたことを謝ることにした。

 

「ああ、悪かったな。まさかオジサンの子孫が生き残ってるなんて思ってなくてね。

 それで慣れない悪役なんてしちまったが、一応手柄は立てたからアンタも肩身が狭くなったりしなくてすむかな?」

 

 するとブラダマンテはぱーっと表情を明るくし、満面の笑顔を見せた。

 

「はいっ! まさかお1人でディオスクロイの2人を倒すなんて、さすがは九偉人に名を挙げられただけのことはあります! 私むちゃくちゃ感動しました!!」

 

 そしてぐっと両手でガッツポーズを決めると、何を思いついたのか光己の方に顔を向ける。

 

「そうだマスター! ヘクトール様のサイン! サインと写真、もらっておいて下さい!

 戦闘中みたいですけど、今は見てるだけですから大丈夫ですよね」

「おっ、おう」

 

 ブラダマンテはアーサー王と円卓の騎士のファンというミーハーな面があって、カルデア所属のアルトリアズ5人にサインと写真をもらって宝物にしているが、有名なご先祖様に対しても似たような心理が働くようだ。光己には首を縦に振る以外の選択肢はなく、彼女の求めるままにヘクトールのサインと写真を―――ついでに自分の分も入手した。

 ヘクトールはちょっとあきれているようだったが、ここまで慕われれば悪い気はしないらしく、写真を撮り終わるとまたブラダマンテと話を始めた。

 邪魔をするのは無粋である。光己はそっとその場を離れると、注意と視線をアルゴー号の方に戻した。

 

 

 

「■■■■■■■■ーーーーッ!!」

 

 ヘラクレスは相変わらず意味不明の咆哮を上げながら戦っていたが、やはり攻め切れずにいるようだ。今はまだ斧の威力は落ちていないが、火炎と毒煙と毒水で傷は増える一方だから、このままではいずれ倒されてしまうだろう。

 

「といっても殺されたら復活した上で耐性がつくそうだから、このままでも問題ないっていえば問題ないんだけど……」

 

 ヘラクレスほどの武人なら多少長期戦になっても疲れて斧を振れなくなるなんてことはあるまいし、手出ししなくても勝ち目は十分ありそうだ。

 しかしこの観測は甘かった。メディアはヘラクレスが攻撃できなさそうな高い所まで飛び上がると、何やら呪文を唱え始めたのだ。

 その内容は光己たちまで届かなかったが、空中に光る魔法陣が現れたのは見えた。そこから一見して強大な魔力を持っていると分かる人影が飛び出す!

 

「まさか、サーヴァント!?」

「そっか、フォルネウスの中の聖杯の魔力を使って召喚したんだ」

 

 驚いて思わず叫んだ光己に、傍らのヒルドがそう説明してくれた。

 どうやらメディアは聖杯の所有権まではフォルネウスに渡さず、自分所属のままにしておいたようだ。それなら魔力を引き出して召喚に使うことも可能だろう。

 現れた人影は武闘系の若い女性のようだった。白と黒を基調にした軽鎧を着て、長槍と円盾を持っている。

 妙に露出が多い格好で、特にバストの谷間からお腹にかけて思い切り良く見せてくれているのが光己的に大変好印象だったが、性格はかなり猛々しそうな感じがするのは元々のものなのか、それとも狂化をかけられているせいか。

 

「―――あれは真名カイニス、ランサーです! 宝具は『飛翔せよ、わが金色の大翼(ラピタイ・カイネウス)』、黄金の翼を持つ鳥に変身して突撃するものですね」

 

 ついでルーラーアルトリアが真名看破の結果を告げる。

 カイニスといえばアルゴノーツの一員で、海神ポセイドンに女性から男性に変えてもらったとか、その際に神性や不死性も授かったとか言われている。

 当然ながら屈強の戦士であり、不死性があるなら魔神柱の無差別攻撃にもいくらかは耐えられるだろう。順当な人選といえた。

 カイニスが甲板に降り立ち、狂化のせいか荒々しい雄叫びを上げながらヘラクレスに襲いかかる。

 

「■■■■■■■■ーーーーッ!!」

 

 その苛烈な槍の一撃をヘラクレスは斧で受けたが、見るからに迷惑そうな様子だった。何しろ彼女に恨みはないし、倒してもまた新手が来るだけで何の意味もないのだから。

 

「ヘラクレス! こうなったら先に聖杯奪うしかないんじゃないか!?」

 

 黄金の鹿号からそんな声が飛んできたが、実際それしかなさそうだ。

 メディアは聖杯をイアソンの心臓のあたりに埋め込んでいたから、多分魔神柱の下から見て七分目くらいの所にあるだろうが、もしそうでなかったら面倒である。ちと口惜しいが確実を期すためにここはカルデア、いやアタランテに確認してもらう方がいい。

 

「■■■■■■ーーーー!」

「……?」

 

 その問いかけは光己たちには通じなかったが、ヘラクレスの期待通りアタランテだけは理解できた。

 

「多分聖杯の位置を訊ねているんだと思う。それも単なる推測ではなく、たとえば魔力の量みたいな根拠がある話で」

「ほむ」

 

 そういうことならカルデア本部に探知してもらうのが1番早いが、光己がマシュの方を見てみるとヘクトールとブラダマンテがまだ話をしていた。他に方法がなければちょっと中断してもらうところだが、今回は別の手段を採ることにする。

 あって良かったドラゴンパワー!

 

「それじゃ俺が。いくぞ肉柱! とぅあーーーっ!!」

 

 目を閉じて精神集中し、魔力感知のスキルでフォルネウスの体内をサーチする。

 魔神柱の魔力濃度もかなり高いが、聖杯は次元が違う。思ったより簡単に所在を割り出すことができた。

 

「……ほむ。上から見て3分目か2.5分目くらいのところだな。その真ん中辺」

「なるほど、人間でいうと心臓の辺りか」

 

 魔神柱の生態は不明だが、まあ妥当なところだろう。アタランテがこの旨をヘラクレスに報告すると、ヘラクレスはまた「■■■■■■ーーーー!」と例によって部外者には理解できない咆哮で答えた。

 ただし今のやり取りはカルデア側とヘラクレスの新しい作戦をメディアに教えることでもある。魔術師少女は慌ててカイニスに吶喊させた。

 

「■■■■■■■■ーーーーッ!!」

「■■■■■■■■ーーーーッ!!」

 

 獣じみた雄叫びがダブルになると大変にやかましかったがそれはともかく。純粋な武力ではカイニスはヘラクレスには及ばない。ただヘラクレスはカイニスを殺したくはないようで、斧で斬るのを避けて前蹴りで船の外まで放り出す。

 

「■■■■……!」

 

 彼女が悔しそうな顔をしつつも海に落ちる水音を聞き終えると、ヘラクレスは斧を床に置いていったん呼吸を整えた。何しろこれから、あの猛毒の塊のような醜い魔物の体内にもぐり込むのだ。

 

「■■■■■■■■■■■■ーーーーッッ!!」

 

 そしてひときわ大きな咆哮とともに、渾身の力で床を蹴ってフォルネウスに体当たりを敢行するヘラクレス。フォルネウスは彼の意図に気づいて火炎と毒煙を噴きつけたが、ギリシャ神話最強格の戦士の突撃を阻止することはできず、ぞぶりという濡れた音と共に体内への侵入を許してしまう。

 1度体内に入られると、フォルネウスにもメディアにも手出しする方法がない。ヘラクレスが泳ぐようにして聖杯に迫るのを、身体内部を抉られる激痛という形で感知しつつも、それを止めることはできなかった。

 

「……うーん。まさか本当に、まったくためらわずに魔神柱の体内に飛び込むなんて」

 

 何というか、ヘラクレスに限らず武力で歴史に名前を残した者はメンタルも常人と違う。パンピーの光己はそんな畏怖を抱かざるを得なかったが、彼の今回の勇敢、あるいは無謀な行動の結果はどうなるのか? 光己たちが固唾を飲みながら見守っていると、やがてフォルネウスの身体からヘラクレスの上半身がにゅっと突き出てきた。

 ボロボロに傷ついてはいるが、その右手には聖杯がしっかりと握られている。

 

「おお、やったか!」

 

 光己が感嘆の声を上げる―――がその直後、ヘラクレスの真上にカイニスが現れた。

 いつの間にか甲板の上に戻っていて、ヘラクレスが戻った瞬間、つまり上からの攻撃には対処できないタイミングを狙ってジャンプしたのである。

 

「■■■■■■ーーーー!」

 

 ヘラクレスは当然それに気づいたが、下半身が動かない状態で「真後ろ」から攻撃されてはどうしようもない。と誰もが思ったが、やはり歴戦の勇者は格が違った! 腕と脚を振って反動をつけると、体をぐるっと横回転させてカイニスと正面から向き合う形になったのだ。

 

「!!」

 

 とはいえ彼は素手で、しかも右手は聖杯を持っているから戦闘には使えない。むろんカイニスもそれは承知で、彼の左手を重点的に警戒しつつ右手の槍を繰り出す。

 

「■■■■■■ーーーーッ!」

 

 カイニスの槍が正確にヘラクレスの心臓に突き刺さる。しかしヘラクレスは止まらず、左拳でカイニスを殴りつけた。

 カイニスは盾でそれを受けたが、体重と腕力の差でそのまま吹き飛ばされてしまう。槍はちゃんと持ったまま、またも海に落下した。

 一方ヘラクレスは殴った反動で下半身もフォルネウスから抜けたので、そのまま甲板に飛び下りる。すぐさま聖杯を黄金の鹿号の方にぶん投げた。

 

「■■■■ーーーー!」

 

 ただメディアの干渉を避けるためかなりの速球で投げたが、柔らかく受け取るのに失敗して最悪壊れてしまっても構わない。メディアに取り返されさえしなければよかった。

 もっともカルデア側は多士済々である。この状況を想定して準備をしていたオルトリンデがすかさずルーンで風のクッションを作り出し、聖杯を減速させてソフトにキャッチした。

 

「……聖杯、確かに受け取りました」

 

 あとはこれを光己に引き渡せば所有権が移転し、メディアとフォルネウスは魔力を引き出すことができなくなる。ミッションコンプリートだ。

 光己は聖杯を手に取ると、まずは約束通りドレイクに(元)彼女の聖杯を返したが、その後立役者への感謝と敬意を示すため、拳を突き出して親指を立てるジェスチャーなどしてみると、ヘラクレスもまたニヤリと薄く笑ってサムズアップを返してきた。

 ―――というのも、ヘラクレスにとってカルデア一党は特に憎らしい相手ではないのだ。

 友の呼び声に応えてこの特異点に来たはいいものの、どうやら彼の望みをかなえると「時代が消滅」するらしいと分かった。そんなことに加担したくはないし友にやらせたくもなかったが、自分は喋れないから口頭では止められないし、腕力で止めるわけにもいかない。どうすればいいか困っていたところへカルデア一党とドレイク一味がやってきて、「契約の箱(アーク)」の真実を語ってくれたのだ。

 あの時メディアが聖杯をイアソンの身体に埋め込むのを阻止できていれば、イアソンを死なせずに特異点修正することもできたかも知れない。そう考えるとこの事態は自分のせいだともいえるわけで、聖杯をカルデアに渡したのはその詫びの意味もあった。

 光己にはヘラクレスのそんな内心は読み取れなかったが、彼の男気あふれる振る舞いにはいたく感心した。

 

「おお……何というか、漢だな。これが巷でいう『やはりヘラクレス……ヘラクレスは全てを解決する』というやつか」

 

 その感心のあまりそう呟くと、空の上に死んだイアソンと誰かドイツ系っぽい少女がドヤ顔キメてきたのが見えたが、たぶん目の錯覚だろう。

 むしろ今の発言に反発する者が現れたことの方が現実だった。

 

「おやマスター、その台詞はいただけませんね。そこは『ルーラーアルトリア』に訂正するべきでは?」

「えー、『ワルキューレ』の方が妥当じゃないかなあ」

 

 ただ2人は口頭での抗議だけではなく、「漢」の対立項である「女」の象徴、つまりおっぱいを押しつけてきてくれているので思春期男子的に大変気持ち良くて喜ばしい。返事をしばらく保留にして、むにむにたわむ弾力の感触を楽しませてもらったが、その間にもアルゴー号上での戦いは続いていた。

 ヘラクレスは魔神柱の毒とカイニスの槍で1回死亡したが、そのおかげでとどめとなったカイニスの槍への耐性を得ている。ただカイニスは周到にも、最初に海に落とされた意趣返しとしてかヘラクレスの斧を海に投げ捨てていたので、ヘラクレスは今も素手のままだった。

 

「■■■■■■■■ーーーーッ!!」

「■■■■■■■■ーーーーッ!!」

 

 三度両雄が激突する。カイニスは槍で突きかかると思われたが、意外にもいきなり宝具を開帳した。

 

「■■■■■■■■■■■ーーーーーーッ!!!」

 

 カイニスが金色に輝く巨大な鳥に変身し、そのままヘラクレスに体当たりをしかける。ヘラクレスは斧があればカウンターを決められるところだが、素手ではできない。

 

「■■■■■■■ーーーーーッ!」

 

 ならば回避一択かと思いきや、何と自分から前に出て巨鳥とがっぷり組み合うヘラクレス。しかしさすがに止め切れず、ずりずりと後ろに押された上に肉が裂け血が飛び散る。

 それでも甲板の端のフェンスに足をついて踏ん張って、ようやく巨鳥の突進を止めることができた。その次は巨鳥をかかえたまま、ハンマー投げのように回転して勢いをつけフォルネウスに叩きつける!

 轟音とともに、巨鳥が半分くらい肉柱の中に埋まった。

 

「す、すげぇ……」

 

 パンピーの光己にはもうそんな感想しか出てこない。敵対せずに済んで本当に良かった。

 とはいえここまでやったらさすがのヘラクレスも疲れてくると思われたが、最強の戦士は止まらない。大重量の激突で船が揺れるのも気にせず、いや船が揺れる=魔神柱が傾いたのを利用して、その胴体の上を駆け上る!

 ヘラクレスほどの体重がかかるとさすがの肉柱もいくらかヘコむのだが、沈み切る前に足を抜いて前に出せば問題はない。そしてついに、友の仇を視界におさめる。

 

「ななななな……!?」

 

 メディアの方はこの超展開についていけず、目が点になって防御の魔術も使えていない。この隙に、ヘラクレスは途中で抉り出しておいた魔神柱の目玉をメディアめがけて投げつけた。

 

「!!??」

 

 武芸素人のメディアに躱せる速さではない。まともに顔面にくらって―――それでも即死はしなかったが衝撃と気持ち悪さで気絶して、そのまま甲板に墜落していく。

 ヘラクレスはそれを追いかけて、ようやく仇討ちを果たしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 メディアが退去したらカイニスもそうなるので、残るはフォルネウスだけである。聖杯もメディアの支援もなくなった今、最強の勇士にかなうはずがなかった。

 そして魔神柱が息絶えたら、この特異点も修正されることとなる。まずヘラクレスが足元から金色の粒子に変わり、煙のようにすうーっと消えていく。

 彼は人語を喋れないので別れの言葉はなかったが、また微笑とサムズアップを残して去って行った。

 続いてヘクトールも光になっていく。

 

「おやおや、もうおしまいかい。まあ話したいことは話せたし、満足すべきかねえ。

 それじゃまたな、カルデアのマスターさん」

 

 最後の時も飄々とした態度のままヘクトールが退去すると、その次はダビデとエウリュアレとアステリオスのようだった。

 

「やれやれ、一時はどうなることかと思ったが無事に解決したみたいだね。あまり長い付き合いじゃなかったけど、縁があったらまた会おう」

「そうね、あんな歩く災害と戦わずに済んでラッキーだったわ。また会いましょう」

「うう……さよ……なら」

 

 この3人とはダビデが言った通り付き合いが短いので、別れの言葉にも感傷はあまりなかった。

 その次は沖田2人が光己の前に進み出て来る。

 

「マスター! 最後はちょっと尻切れトンボでしたが、今回もいい戦いができて良かったです。またお会いしましょうね!」

「……マスターのおかげで使命を果たせて、しかも特異点の修正まで同行できた。本当に感謝の言葉もない。

 もしまた会えたら、精一杯お礼をしよう」

 

 沖田は笑顔で手を振りながら、沖田オルタはいかにも名残惜しそうな様子で去っていった。

 ついでオリオンとアルテミス、アタランテがやってくる。

 

「美女美少女アイランドでほんとに目の保養だったが、ついにお別れか……まあ元気でな」

「ダーリン!?

 ……それじゃみんな、元気でね!」

「やれやれ。

 とにかく今回も世話になったな。想像もしなかった結末になったが、マスターたちに会えてよかった。

 いつかまた、どこかで会おう」

 

 オリオンとアルテミスはいつもの夫婦漫才をしながら、アタランテはそんな1人と1柱に小さなため息をつきながら光に還っていった。

 最後にジャンヌオルタがやってくる。

 

「せっかく盟友になれたのに、どうやらこれでお別れみたいね。そこの不審者と縁切れるのは嬉しいけど。マジで嬉しいけど!

 それじゃマスター、またいつか会いましょう」

 

 ジャンヌオルタはジャンヌに見せつけるかのように悪っぽい微笑を浮かべながら去っていったが、その直後に自称姉がもっと邪悪な笑みを見せたのには気づいていなかった……。

 ジャンヌは念のためにということで光己の短刀に引っ込み、光己とマシュはドレイクに向き合った。

 

「なるほど、これでゴタゴタ解決ってわけかい。いやあ、何度もすごいもの見せてもらって本当に眼福だったよ。

 何もお礼できないけど、せめてアンタたちの残りの仕事がうまくいくよう祈ってるさ」

 

 ドレイクはそう言うと豪快に笑ったが、不意に何かを思い出したような顔をした。

 

「っと、そうそう。マシュには宿題出してたね。

 答えは出たかい?」

「―――」

 

 ドレイクに真正面から見つめられて、マシュもまっすぐ視線を返した。

 

「はい! 私もドレイクさんに倣って、世界をいろいろ見て回りたいと思います。

 できれば先輩にも、他の女性抜きで来てもらって!」

「ちょ、マシュ!?」

 

 マシュの迷いのなさそうな返事に光己は目を剥いたが、ドレイクは気にせずまた愉快そうに笑った。

 

「あはははは、いい返事だ。しかしモテる男はツラいねえ!

 まあ何だ、刺されない程度に頑張りな!!」

「むう、ここはおとなしく忠告を聞く返事をすべきか、それとも男として前のめりな返事がいいのか……ってもう消えかけてる!?

 そ、それじゃドレイクさん。お互い元気で!」

「ああ、またね!」

 

 そして光己たちはドレイクが手を振るのを見つめながら、カルデア本部へと帰還するのだった。

 

 

 

 ―――封鎖終局四海オケアノス 定礎復元。

 

 

 

 




 1年以上ご無沙汰でしたが、はたして何人が読んで下さることやら……。
 次回はなるべく早く出したいものです。
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