カルデアに戻った光己がコフィンを開けて外に出ると、今回も女の子に抱きつかれた。
「マスター、マスター! ありがとうございます! マスターのおかげでヘクトール様が正義に立ち戻って下さいました。
ああ、本当にどうお礼していいものやら……!」
ブラダマンテはヘクトールを味方にしたことをよほど感謝しているようだ。まあ先ほどの様子を見れば理解できる。
光己も彼女をそっと抱き返したが、ずっとそうしていると周りの職員たちの視線が痛い。なので少し落ち着いたところで、名残惜しかったがいったん離れてもらう。
次はトップに帰還と任務成功の報告をせねばならない。
「所長、ただいま戻りました。特異点修正と聖杯の奪取も成功です」
「ええ、見ていたわ。本当にお疲れさま、貴方がいてくれて良かった。
今日はゆっくり休んでちょうだい。もちろんサーヴァントの皆さんも」
オルガマリーは光己から聖杯を受け取ると、本心からそう言ってねぎらった。
初対面の時は彼とこんなやり取りをするようになるなんて想像もしなかったが、今はこの関係がとても心地いい。
「はい、それじゃまた後で」
光己はそう言うと職員たちの残務の邪魔にならないよう管制室から出ることにしたが、その前にもう1つやることがあった。
ポルクスの剣を預けていた段蔵にそれを返してもらうと、ダ・ヴィンチの前に赴く。
「ダ・ヴィンチちゃん。時間が空いた時でいいんですが、これの鞘作ってくれませんか?」
「ああ、あの双子神の剣だね。特異点に持っていくつもりかい?」
「ええ、ジャンヌオルタに作ってもらった短刀は宝物ですから戦闘には使えませんけど、こっちは拾い物ですから折れたり欠けたりしても惜しくありませんから」
「―――」
エルメロイⅡ世は光己の言葉を聞いて(サーヴァントの遺留品とはいえポルクスの剣なら、聖杯戦争用の触媒としてオークションに出せば相当な金額になるのだが……)と思ったが、彼はそちらの世界の住人ではない。口出しは控えることにした。
「そっか。サーヴァント戦の場に持っていけるようなちゃんとした物を作るならちょっと時間が欲しいけど、カルデアの中で保管したり持ち歩いたりするだけの簡単な物なら夕方までに作れるよ。どうする?」
「じゃあとりあえず簡単な方を」
「了解、それじゃ剣借りるよ。へえー、これがかの『星の光剣』かあ」
ダ・ヴィンチは光己から剣を受け取ると、いかにも物珍しげに眺め回した。
伝承によればこの剣の「本物」は物質としては無敵のものアダマス、いわゆる神鋼を用いてつくられたという。分析して再現できればいろいろ面白いものが作れそうなので、機会があれば長期借用したいものである。
「はい、お願いします」
これでここでの用事は終わったので、光己はサーヴァントたちと一緒に管制室から退出した。
「―――さて、みんな今回もお疲れさま。おかげで任務成功できたよ。
それじゃ俺は夕方まで個室で休憩するから、これで解散ってことでいい?」
「はい、それではまた後で」
サーヴァントたちは承知してそれぞれ個室に向かったが、ブラダマンテだけは彼の腕に抱きついて離れようとしなかった。
何かこう、感謝と好意が爆発していて何かお礼をしないと気が済まないようだ。子犬のようなまなざしで、じーっと光己の顔を見つめている。
光己としてはヘクトールが味方になったのはタナボタみたいなものだったので、そこまで感謝されるとかえって気が咎めるのだが、それを言ってもブラダマンテは納得しなさそうである。
「んー、それじゃお酌とかマッサージとかして接待してくれる?」
「はい、喜んで!!」
というわけで光己とブラダマンテが並んで部屋に行こうとすると、清姫を初めとした何人かのサーヴァントがちょっと羨ましそうな顔をしたが、今回は動機がはっきりしているので留め立てはできないようだった……。
自室に着いて軽くシャワーを浴びたら、レオタード姿の美少女騎士に2人っきりで接待してもらうというご褒美タイムだ。前回同様留守番組ともお話しないといけないが、今回はわずか8日で終わったから後回しでも問題あるまい。
「よーし、それじゃまずお茶でもついでもらおうかな」
「はいっ!」
ブラダマンテが嬉しそうににこにこしながら、光己の隣に座ってかいがいしくコップにお茶をついだり、備え付けのお菓子をあーんしてで食べさせてくれる。特異点での肉体的・精神的疲労があっという間に溶けていく素晴らしさだ。
なおアルコールは未成年なので禁止である。2人きりで酔っ払って間違ってしまったら大変だし。
寝取りは悪い文明なのだ。恋人がいる女の子に自分から迫るようなことをしてはいけない!
「美味しいですか? マスター」
「うんうん。いつもと同じお茶でも、ブラダマンテのお酌だと倍くらい美味しく感じるなあ。これはまたお願いしないと」
「えへへー、ホントですか? マスターのご希望でしたらいつでも!」
「おおー、それは嬉しいな」
などといちゃいちゃしながらアフタヌーンティーをキメた後は、先ほどの約束通りマッサージだ。肩や腕を軽く揉んでもらったり、うつ伏せになって背中の筋肉をほぐしてもらったりと色々である。
その際にブラダマンテの豊かな胸の谷間がバッチリ見えたりとか、とても良い臀部が尻や太腿に当たったりとか、思春期男子としては大変気持ちいいのとアレやコレやをガマンしなきゃいけないのとで実にマスター冥利であった。
―――そうこうしているうちにダ・ヴィンチから内線電話が来てポルクスの剣の鞘ができたと言われたので、ブラダマンテのお礼はひと段落ということにして剣と鞘を取りに向かう。
「そうだマスター、確かジャンヌオルタさんに短刀つくってもらったんですよね? せっかくですから見せてほしいです」
「ん、そうか? じゃあ談話室に行って他のみんなにも見せよう」
その途中そんな話が出たので、2人は剣と鞘を受け取ると、今回留守番だったスルーズ、景虎、アルトリアノーマル、アルトリアリリィも呼び出して談話室に集まった。
例によってオケアノスでの思い出話をしてから、満を持して短刀と剣を披露する。
「――――――というわけでこれがジャンヌオルタにつくってもらった『白夜』で、こっちが双子神の妹が持ってた剣。なかなかの業物だろ」
光己がそう言いながら短刀と剣を見せると、なかなかどころか宝具級の貫禄に4人は目を見張った。
「これは……確かに素晴らしい剣ですね。神秘があふれていた時代ならともかく、この時代ではこれほどの物はまず作れないでしょう」
「そうですね。ヴァルハラに鍛冶師として迎えたいほどの技量です」
特にアルトリアとスルーズは、エクスカリバーとかグングニルとか比較対象を知っているだけに感心の度合いが深いようだ。景虎も「マスターの守り刀として申し分ない逸品ですね!」と太鼓判を押している。
「ありがと、ジャンヌオルタもきっと喜ぶと思うよ。
そうだ、そろそろお姉ちゃんも呼ぶかな」
いつまでも短刀の中で寝かせておくのは申し訳ない。光己はジャンヌに出て来てもらうことにした。
立ち上がって短刀を構え、気合いを入れて召喚の呪文を唱える。
「出でよ、我がお姉ちゃん!!」
もう完全にジャンヌが姉だと刷り込まれてしまっているようだ。南無南無……。
最初に呼んだ時と違って光がきらめいたりすることはなく、ぽんっと光己の前にジャンヌ―――と、もう1人よく似た若い女性が出現する。
「この不審者ァァァ!! よくもまた引っ張り込んでくれたわね」
怒りもあらわにジャンヌにつかみかかったのは彼女の妹、もとい贋作のジャンヌオルタであった。これはひどい!
しかしジャンヌは悪びれる様子もなく、いつも通りのにぱーっとした笑顔で答えた。
「だってオルタ、貴女あの特異点でマスターと別れる時にちょっとさみしそうにしてましたし、『またいつか会いましょう』って言ってたじゃないですか。だから私と同じようにこの短刀に紐付けして、修正が終わってもマスターと一緒にいられるようにしたんですよ」
私もオルタと一緒にいたかったですし、とまでは言わない。この天邪鬼な妹はツンデレなので、そういうことを言うとまた暴れ出すので。
ちなみに今回ジャンヌがジャンヌオルタに使った方法はオルタが彼女の贋作だというつながりがあったからできたことで、しかも短刀の方にもう空き容量がないので、今後はこの方法で現地サーヴァントを招くことはできない。
「そ、それは確かに言ったけど! 言いましたけど!!」
邪ンヌが床に手をついて「九」の字になってうなだれる。
いやまあ確かにそうなのだが、何故人前で「さみしそうにしてた」などと臆面もなく口にする!?
「え、ええっと。ジャンヌオルタはこれからも俺の仕事手伝ってくれるんだよな? オケアノスで『この機に私の存在を確立しようと思った』って言ってたし」
光己は邪ンヌにどう言葉をかけていいものか悩んだが、自分がコミュEXではないことは自覚しているので、とりあえず1番重要なことを訊ねてみた。
すると邪ンヌは彼が初対面の時の言葉まで覚えていてくれたことでちょっと元気が湧いたのか、体を起こして光己に向かい合った。
「そうね。盟友が大いなる試練に立ち向かっているというのなら、同じ
「おお、ジャンヌオルタならそう言ってくれると信じてた!」
光己は邪ンヌが立ち直ってくれたことにほっと安心して握手などかわしつつ、しばらく出していなかった己の宿業もちょっとだけ解放することにした。
「じゃあジャンヌオルタ、ともに戦うことを決めた証として、合体技なんて作ってみないか?」
「合体技?」
邪ンヌの封印されし右目がキュピーンと怪しい光を放つ。
「ああ、今ジャンヌオルタが来てくれたのを見てパッと思いついたんだ。まさに天啓というやつだな。
具体的には、俺の白い光の炎とジャンヌオルタの黒い闇の炎で2頭の竜をつくって、それが二重螺旋軌道を描いて突進、敵に喰らいついて焼き尽くす、って感じだ。
名前は『
「素晴らしいわね、早速試してみましょう。あーでもここじゃまずいかしら」
「じゃあ体育館に行こう。本当はこういうことは『シミュレーター』っていう施設を修理すれば遠慮なくできるんだけど、今はレイシフト用の発電機を増強するのが優先だから後回しになっててさ」
「へえー、それじゃさっそく行きましょうか」
「よし、決まりだな……っと、スルーズも付き添いお願い」
体育館といっても人間用のものだからサーヴァントの能力の実験や練習をするのは危険なのだが、スルーズを連れていけば技の的をつくれるし、万が一の時も施設の消火や修繕ができる。本当にルーンは便利だった。
「は、はい。話の流れはよく分かりませんでしたが、ご命令とあれば」
「ええと、訓練をするのならマシュたちも呼んだ方がいいのでは?」
するとスルーズとアルトリアがそんなことを言ってきたが、光己としてはそれは好ましくなかった。
「いや、みんな呼ぶと話が大げさになって気恥ずかしいからさ。今ここにいる人だけでいいよ」
「……そうですか」
マスターがそう言うのなら、ということで納得したのか、5人はそれ以上の詮索はせずおとなしくついてきた。
そして体育館に到着する。
「じゃあまず肩慣らしに、メンタル方面の訓練をしようと思う。黒髭の時は翻弄されて隙見せちゃったからさ」
「ああ、あれは嫌な事件だったわね……」
光己がまずそう言うと、ジャンヌオルタもうんうんと大げさに頷きながら同意した。
あの気持ち悪い言動が素だったのか戦術だったのかは不明だが、恐るべき精神攻撃術の使い手だったのは間違いない。
「そこで対抗策を考えてみたんだ。『煽りの呼吸 壱ノ型 敵の目の前で女の子といちゃいちゃ』というのはどうだろう」
光己が考えたというか、実際に考案したのはヒルドなのだが、すると当然というべきかスルーズが乗ってきた。
「なるほど、良い戦術ですね。さっそく練習しましょう」
ついっと光己の体にしなだれかかり、胸や太腿をすりつける。耳元にふうっと濡れた吐息を吹き込んだ。サービスサービスぅ!
光己もそれに応えて彼女を抱きしめ、背中をやさしく撫でつつも、その手をだんだん下に降ろしていく。
「―――って、何をしてるんですか貴方たちーーー!!」
しかしすぐに、顔を真っ赤にしたアルトリアに引っぺがされてしまった。
「何ってさっき言ったろ。敵に挑発された時に煽り返す練習だって」
するとアルトリアはちょっとひるんだように見えたが、納得してはくれなかった。
「確かに怒らせる効果があるのは認めますが、戦ってる後ろでいちゃつかれると普通に腹が立ちます。というか私よりマシュが黙っていないのでは?」
「いや、マシュはあの時黒髭の精神攻撃でいっぱいいっぱいだったから」
「そうですか……」
黒髭というのはいったいどんな人物なのだろうか。アルトリアは興味を抱かないでもなかったが、直感的に彼と関わってもヨゴれるだけだと分かったので今回は危うきに近寄らないことにした。
「でもとにかく駄目です」
「うう、王は人の心が分からない……」
「お黙りなさい」
「……はい」
暴君の弾圧により「煽りの呼吸」は不採用になったので、光己は思春期要素がない技を練習することにした。
背中に背負った鞘からポルクスの剣を抜いて、両手で柄を握り垂直に構える。
「それじゃ次は『太陽の呼吸』を試してみるかな。コォォォォーーッ!」
光己がそう言いながらそれっぽい息をつくと、剣の周りに白い炎が噴き上がる。
ついで剣を軽く振り回すと、炎もそれについてサラマンダーのごとく宙を踊った。これまでのトレーニングのかいあってか、操作能力もだいぶ上達してきたようだ。
なお光己の炎はドラゴンの超能力によるもので、呼吸はまったく関係ない。
「よし、できたな。これはカッコいい……吸血鬼とか鬼とかには特効だな。フッフッフ、よくぞここまで来たものだ。
それじゃアルトリア、ちょっと受け役してくれる? 軽ーく振るから」
「分かりました」
どうやら真面目な訓練のようなので、アルトリアは頷いて剣を構えた。
すると光己が上段から剣を振り下ろしてきたが、予告通り遅くて軽いものだったので普通に受ける。
それで彼の剣は止まったが、なんと炎はそのまま落ちてきたではないか!
「―――っと! なるほど、こういう仕掛けでしたか」
直感Aにより一瞬早く反応し、バックステップして炎を避けるアルトリア。
しかし本気の攻撃だったなら喰らっていたかも知れない。少女騎士はわずかに冷や汗をかいた。
「おお、加減はしてたけど初見なのに避けられるとは」
「はい、ですが驚きました。奇襲用の技としてなら十分有用だと思いますが……しかしマスターの1番大事な役目は要石です。強くなったからといって、むやみに前に出ようとしないで下さいね」
「ああ、それはもちろん」
アルトリアがしかつめらしい顔で訓戒してきたが、光己もそれは重々承知している。攻撃技はレムレム特異点に行った時など味方が少ない時に備えてのものであって、仲間が大勢いるのならあえて前に出るつもりはないのだ。
「んじゃそれはそれとして、予定通り合体技の練習しようか。
スルーズ、的用に氷の塊作ってくれる?」
「分かりました」
一方スルーズは攻撃技に対しても協力的である。まず投影でシートを敷くと、その上に高さ2メートルほどの氷柱を製作した。
「これでよろしいですか?」
「うん、十分だよ。それじゃジャンヌオルタ」
「ええ、いってみましょうか」
光己とジャンヌオルタはまず横に並ぶと、半身になって片手を前に突き出した。ついで必殺技を使う時には当然行うべき様式美として、その技の名を高らかに叫ぶ!
「我が白き炎にて灰燼に帰するがいい!」
「我が黒き炎にて闇に飲まれよ!」
「「
アルトリアたちがものすごくいたたまれなさそうな顔をしているがそれはさておき。2人が放った炎は光己の台本通り同じサイズの白と黒の竜となって、同じ速さできれいな二重螺旋を描きながら氷塊に向かって飛翔した。
そして竜が顎を開けて咬みつくと、水蒸気爆発こそ起こらなかったものの、バシューッ!というすごい音とともに白い蒸気が盛大に広がっていく。相当の熱量があったようだ。
「やった、成功だ!」
「ぶっつけでここまでぴったり動きが合うなんて、やはり私たちは盟友だったわね」
「うんうん、まさに運命の出会いだった!」
すっかり舞い上がってハイタッチをかわす光己と邪ンヌ。それは良かったが、そこに呼んでもいなかった清姫がどこからか現れて光己に抱きつく。
「だ、旦那さまぁぁぁぁ!! つ、妻を差し置いてそんなぽっと出の女と合体、もとい合体技だなんてぇ。そういうことはまずわたくしとするべきなのではぁぁぁぁ」
どうやら光己と邪ンヌが仲良くしているのにヤキモチを焼いたようだ。両目に涙を溜めてうるうるしている。
光己は清姫が言いたいことは分かったが、それに応えてやることはできなかった。
「うーん。清姫の気持ちは分かるけど、これは邪〇眼がないとできないんだよ」
「……邪気〇?」
清姫が不思議そうに首をかしげる。
そういえばオケアノスで光己とジャンヌオルタがそんな話をしていたような気がするが、〇気眼とはいったい何なのだろうか?
「うーん、言葉ではちょっと説明しづらいんだよな。
とにかく邪〇眼の道は修羅の道だから、清姫には不向きだよ。清姫が愛に生きる女だっていうんなら、もっと平和で穏やかな人生を歩むべきだと思う」
光己はそう言ってさとしたが、むろんそれで引っ込む清姫ではない。
「何を仰いますか旦那さま! この清姫、旦那さまが行かれる所ならたとえ修羅道だろうと餓鬼道だろうと、どこまでもお供する所存でございます。
どうかその邪気〇とやらをわたくしにも伝授して下さいませ」
「……清姫」
清姫の表情と口調からは言葉通りの強い決意が感じられた。言葉で翻意させることは無理そうだ。
これは仕方ない。光己は覚悟を決めた。
「分かった。でも〇気眼はあくまでセンスだからな、勉強や努力で習得できるものじゃないんだ。
だから1回だけ見せる。その1回で、見事盗んでみせてくれ。
それが最終奥義を教える時の伝統的なやり方だからな」
「わ、分かりました……!」
光己は嘘は言っていない。どうやら本当にそういうもののようだ。
というわけで、5メートルほど離れて向かい合う光己と清姫。
光己がまず目を閉じて呼吸を整え、ついでなぜかポルクスの剣を構えてからカッと見開いてパワーを高める!
「―――燃えろ俺の
奇跡を起こせぇ!!」
光己の全身から黄金色のオーラが噴き出す。その津波のような圧力に、清姫は思わず生唾を飲み込んだ。
「こ、これが邪〇眼とやらの力……!?」
「じゃあいくぞ清姫。必殺! 『ギャラク〇アンエクスプ〇ージョン』!!」
光己が両手を広げて突き出すと、その技名のように銀河の星々をも砕きそうなすごい爆圧が放たれた。
こんなものをまともに喰らったら、サーヴァントといえども消し飛びかねない。なるほど、命がかかった土壇場でこそ本当の全力を出し切れるということか。
俗にいえば「火事場の馬鹿力」というやつで、どこぞの盾娘もこれで仮想宝具を習得したと聞く。
「ならばわたくしも!
今こそ萌え上がれ安珍様への愛、グランドの位まで高まれ!!
ふぬりゃーーーーっ!!!」
清姫の身体からも黄金色のオーラが噴き出す。しかしそれだけではまだ不足で、必殺技として昇華させねばならない。
「最終決戦奥義! 『
清姫の手前の足元から超強烈な火柱が噴き上がる。爆圧を押しとどめるにはやや不足に見えたが清姫はそれに屈せず、さらに体ごと火柱の中に飛び込んだ!
「―――ぅああっ、お肌が……!」
しかしそれでも爆圧は止め切れず、ぽーんと斜め上に弾き飛ばされた。
爆圧は真横から来たのに上に飛んだ理由は不明だがそれは措いておいて、清姫は体育館の天上近くまで舞い上がった後、なぜかくるっと縦回転して頭から落下していく。
このままだと床に頭をぶつけてしまうが、当人は受け身を取る余裕がないようだ。
「やれやれ、世話がやけるわね……っと」
しかし幸い、傍らに控えていたジャンヌオルタが抱き留めて脳天からの墜落は防いだ。
清姫は意識はあったようで何とか自力でジャンヌオルタの腕から降りたが、その表情には精彩がない。
「あの、旦那さま……これはやはり失格でしょうか」
光己の技を防ぎ切れなかったので、〇気眼を習得できず彼の期待に沿えなかったのではないかと思っているのだ。
しかしむろん、光己にそんなことを言うつもりはない。
「いやまさか、清姫の覚悟は十分見せてもらったよ。
合体技は今ここでは思いつかないけど、後でちゃんと考えるからさ」
「ああ、旦那さま……!!」
清姫が今度は感動の涙で頬を濡らしながら光己に抱きつく。
こうして、3人は人理修復に向けて一段と絆を深めたのだった。
たくさん感想をいただけたので、早めに上げてみました!
体育館での必殺技のあれこれはギャグですので、シリアスなバトルには出て来ない……はず。きっと。めいびー。