その頃マシュは所長室に呼び出されてそちらに向かっていたが、中に入るとエルメロイⅡ世以外の古株幹部の3人だけが待っていた。
表情は明るいから悪い話ではなさそうだけれど。
「休憩中に呼び立てて済まないとは思うけど、なるべく早く伝えたくてね。
とりあえず座ってちょうだい」
「は、はい」
オルガマリーに着席を勧められたので、とりあえず言われた通り部屋の真ん中の会議用テーブルの椅子に座るマシュ。あまり来たことのない部屋で、ちょっと落ち着かない。
すると次はダ・ヴィンチがお茶をついでくれた。やっぱり落ち着かない。何を言われるのだろうか?
マシュがそんなことを考えてそわそわしながら待っていると、やがてオルガマリーが口を開いた。
「……さて、それじゃ用件に入るわね。
マシュ、貴女もすでに知っている通り、貴女は英霊と人間を融合させるために作られたデザインベビー……そのせいで長くても18年くらいしか生きられない運命
それについて思うところはあるでしょうけど、今は聞かないわ」
「……はい」
マシュはこっくり頷いた。
オルガマリーが何を言うつもりなのかはまだ分からないが、そのことはもう知っているし、それを不幸だとは思っていない。オケアノスでドレイクに語った「世界をいろいろ見て回りたい」という夢が実現できないことも分かっているが、そのことにも不満はない。
だって自分は今幸せなのだから。たとえあと1年かそこらしか生きられない身なのだとしても。
「―――だって、貴女の寿命が18年だというのは過去の話なのだから。
今の貴女には人並みの寿命があるわ。もちろん、無理して縮めなければの話だけれど」
「…………は!?」
マシュは思い切り意表を突かれて、数秒ほど間抜けっぽく口を開いて硬直してしまった。
その間にオルガマリーはロマニにバトンタッチして、ロマニが続きを話し始める。
「オケアノスでドラゴンの血を飲んだだろう? そのおかげで体質と運命が改善されたんだよ。何度もバイタルチェックして確かめたから間違いない。
藤宮君もなかなかチャレンジャーだと思うけど、今回は本当にいい方向に働いた」
ドラゴンの血は劇物のようなもので、うまくいけば光己やジークフリートのように強大な力を得られるが、悪くすれば命を失うことすらあり得るのだ。もっともマシュはデミ・サーヴァントで毒にも強いから、悪い結果が出る可能性は低かったのだけれど。
「彼にはホント、いろんな意味で感謝しなくちゃね。この際だからマシュ、今夜にでも部屋に押しかけてカラダでお礼してもいいんじゃないかな。何たって文字通りカラダのことなんだからね!」
こんなことをおちゃらけた口調で言うのはもう1人の幹部しかいない。マシュは真っ赤になって反駁した。
「も、もうふざけないで下さい!」
「あはははは、いやあ、若い子はかわいいなあ。
……まあそういうわけだ。人数は少ないけど、お祝いの1つもしようじゃないか」
こうして4人は、ささやかながらパーティーをして少女の新しい人生を祝福したのだった。
なおその最中、オルガマリーは(これでマシュに復讐される可能性はだいぶ下がったわね……こんなこと考えちゃうのは自分でも見苦しいと思うけど)なんてことを少しだけ考えたりもしていたが、顔に出すことはなかった。
ちなみに夜も特異点修正成功を祝うパーティが開かれたので、特に大食いでもないオルガマリーとロマニは少々胃もたれを起こしていたがそれはともかく。翌朝になって食事を終えたら、エウリュアレにもらった聖晶石で新しいサーヴァントを召喚である。
今のカルデアではサーヴァントを増やしても電力の関係で特異点に送りこむことはできないのだが、カーマが元いた世界では異聞帯にはシャドウ何とかという車を使って大勢同行していたそうなので、呼んでおく意味はあるのだ。
「よし、それじゃいってみるか。今回も美女か美少女が来ますように!」
「先輩!?」
「マスター!?」
光己が召喚に向けて気合いを入れていると、いつも通りのマシュと、昨日の件で思春期要素に警戒心を持つようになったのかアルトリアノーマルも圧を加えてきたので、光己は慌てて弁解を試みた。
「ま、まあまあ2人とも! 狙って呼ぶわけじゃないんだからそんなに神経質にならなくても」
「それはそうですが、でもこれは人理修復のために共に戦う仲間を呼ぶための重要な儀式なのですから、くれぐれも邪心は控えるように」
「……はい」
アルトリアはマシュより口が立つので、光己の弁才では分が悪かった……。
なぜこんなことに? こんなの絶対おかしいよ!
仕方がないので口には出さず内心だけでアラヤの加護を求めて祈った後、普通に召喚の呪文を唱える光己。
「――――――汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
するといつも通り魔法陣の上に稲妻のような閃光がほとばしり、それが消えた後には女性らしき人影が残っていた。
身長は170センチほどと女性としては高めで、長い銀髪を黒いリボンでまとめてポニーテールにしている。年の頃は20歳くらいか、もちろん美人で顔形や肌の色や雰囲気はアルトリアオルタに似たところがあった。
スタイルもとても良いが、バストサイズは同年代のヒロインXXには及ばないようだ。
白と青と黒の薄手のドレスを着ているが、胸元がかなり広く開いており、その下のお腹も大きく露出しておへそも出している。スカートはロングだが広いスリットがいくつもあって、美味しそうな太腿がチラチラ見えていた。光己的には大変高ポイントな装束である。
右手に黒い十字槍を持っているからランサーだろうか。
女性がすうっと口を開き、静かな、それでいて威厳を感じる口調で自己紹介を始める。
「……私を召喚したのですね。
バーサーカー、モルガン。
妖精國ブリテンの女王にして、汎人類史を呪い続けるもの。
それで問題がないのなら、サーヴァントとして力を貸しましょう。
私が女王である事はもう変えようのない事実。
おまえには、私の臣下としての働きを期待します。
それとも、夫として扱ってほしいですか?」
「「!!!!????」」
アルトリアズとブラダマンテの表情がピシリと凍りつく。何しろこの6人、生前はモルガンにいろいろ痛い目に遭わされていたのだ。
しかしいきなり難癖をつけはせず、まずはマスターが先ということか沈黙を保っている。
もちろん光己もそのつもりだ。アーサー王を5人もかかえているのだからモルガンの名前くらいは知っているし、彼女はいろいろと聞き捨てならないことを口にしたから。
「アッハイ。ドーモ、ハジメマシテ。カルデアのマスターの藤宮光己です」
ただちょっと緊張して自己紹介がニンジャっぽくなってしまったが、まあささいなことだろう……。
「とりあえずいくつか質問があるんですが、いいですか?」
「かまいませんよ」
「じゃあまず1つ目。汎人類史を呪うってどういうことですか?」
自分を女王として認めなかった故国を憎んでいるというだけなら、わざわざ「汎人類史」という単語は使うまい。おそらく彼女は汎人類史ではなく別の世界から来た存在なのだろうが、まずは具体的にどこから来たかを確かめるべきだろう。
モルガンは特に隠し立てすることもなく、淡々とした口調で答えてくれた。
「それは私が異聞帯……今言った通り、汎人類史には存在しなかった『妖精國ブリテン』の出身だからです。
異聞帯というのが何かを知っていれば、今のおまえの質問の答えも分かるでしょう。
……いえ、おまえたち汎人類史にとっては異聞帯こそが共存不可能な侵略者であることは理解していますが」
モルガンはバーサーカーであるそうだが、その割にちゃんと喋れていてその内容も筋が通っていた。どの辺りが狂っているのか分からなかったが、光己はそこはスルーして今の話をもう少し詳しく説明してもらうことにする。
「なるほど……それなら話は分かります。
ではなぜ
光己は異聞帯についてはカーマに聞いていたから、モルガンに解説を求めずにすんだ。
しかしモルガンが汎人類史を呪うというなら、焼却された汎人類史を修復しようとする組織に協力する理由はないだろう。光己がこう思うのは当然だったが、無論モルガンにも彼女なりの思惑がある。
「……そうですね。まずここに来られたのはおまえとの縁……いや、おまえ、の……?」
ところが説明の途中で、モルガンは何かを忘れてしまったかのように首をかしげて困り顔をした。
「どうかしました?」
「あ、いえ。私のブリテンが滅びたのは『異邦の魔術師』が来たのが
未来のおまえだったのか、それとも別人なのかはっきり思い出せないのです。
……まあ、マシュのことは覚えていますから彼女との縁という線もありますが」
「え、私ですか」
いきなり名前を出されてマシュはびっくりしたが、カルデアのマスターが行ったというのなら彼女がいたのも当然といえるだろう。
マシュは寿命が伸びたから、人理焼却事件を解決した後でも生きていられるわけだし。
「ああ、はっきり覚えている……」
そこでモルガンが遠くを見るような目をしてひどく懐かしそうな顔をしたのがマシュには不思議だったが、実はモルガンにとってマシュは敵だった時間より仲間だった時間の方がはるかに長い。つまり「元の関係に戻った」ともいえるわけで、モルガンはカルデアに来られたことを少しだけ喜んだ。
「……で、なぜおまえたちの味方をするかという話でしたね。私は今こうして
「……ほむ」
モルガンはブリテンの王位にかなり執着していたらしいから、彼女が人理修復に協力する動機としてはおかしくない。人理が焼却されたり白紙化されたりしている間は王になれないのだから。
しかし彼女の希望を認めてしまっていいものだろうか? ローマで景虎に「足利義政公の幽霊が出て来て『我こそが真の征夷大将軍!』と名乗って兵を挙げるようなものなのでは?」と言ってカエサルの行動を非難した覚えもあるのだが。
「……いやそもそも、カルデアには誰かを国王にする権限なんてこれっぽっちもないんですが」
だから諾否以前の問題なのだが、モルガンはまったく動じなかった。
「ええ、現界の時に知識をもらいましたのでその辺の事情は承知していますよ。
征服事業は私がやりますので、
もっとも普通の魔術師ではそれだけの魔力は供給できないでしょうが、あなたならできるでしょう。
……いえ人理が完全に修復されたらあなたはこの表世界にいられなくなるかも知れませんが、私と一緒にいればどうにでもなります」
「…………おおぅ!?」
モルガンは口調も表情も平坦なままだったが、発言の内容はとんでもない。光己は数秒ほど硬直してしまった。
そしてフリーズから解凍したところで改めて考えてみるに、彼女はどうやら自力でブリテンを征服するつもりのようだ。といってもサーヴァントである以上マスターについてきてもらわねばならないが、外国人が表に出ると抵抗が激しくなるのは必然だから、裏で要石と魔力供給だけしていればいいというのも順当である。いやモルガンなら魔術で光己の外見をごまかすくらい楽勝だろうけれど。
その次に「あなたならできる」と言ったのは、光己の正体と魔力量に気づいたからだろう。どんな手段で征服するにせよ、マスターは強いに越したことはない。
それに普通の魔術師だとたとえば国の特殊部隊とか時計塔の刺客といった連中に襲われたらあっさり殺されることもあり得るが、光己ならその辺安心だ。
最後のセンテンスはちょっと謎解きが難しかったが心当たりはある。オケアノスでフリージアが「この異変が解決されれば妾も家に帰れる」と言っていたように、光己も世界が正常化されたら裏世界、たとえばヴァルハラやアヴァロンのような異界に放逐されてしまう可能性があるということだろう。
しかもモルガンはそれを防ぐことができるそうで、もし光己がこの表世界に残りたいなら自分について来いと言っているのだ。
「ほ、ほむむむむむむ……!?」
唐突に難しすぎる命題を突きつけられて知恵熱を出してしまう光己。そこに青と銀の騎士が割って入った。
「待ちなさいモルガン! 私がこの世にいる限り、そんな悪行はさせません!」
アルトリアである。宿敵がマスターを惑わせようとしていると見て阻止しに来たのだ。無論ブリテン征服の方も見過ごすわけにはいかない。
一方モルガンは彼女の存在に初めて気づいたようで、相当驚いた顔を見せたがすぐに落ち着いて言い返した。
「貴様は汎人類史のアルトリア……!? そうか、貴様もここに来ていたのか。
――――――フッ」
モルガンは汎人類史のモルガンの記憶も持っているので、アルトリアのことが分かるのである。
そしてなぜか、わざとらしく超見下したように鼻で哂った。
当然アルトリアはさらに怒って、また1歩モルガンに詰め寄る。
「……何ですかそのいかにも人を小馬鹿にしたような笑みは」
「嘲りたくもなるというものだ。私は異聞帯のブリテンという滅びが約束された世界で2千年も国を維持したというのに、貴様ときたら汎人類史という存続が許された世界にいながらたったの10年で国を潰したのだからな。
……情けない。なんと情けない女よ。実際情けない」
「こ、この毒婦ーーー!」
ぷっつん来たアルトリアがモルガンにつかみかかる。無論モルガンもそれに応じて、姉妹のキャットファイトが始まった。
「私が情けないというのなら、その情けない女に国を取られた貴女は何なんです? モブザコその1あたりですか?」
「貴様に取られたのではなく、ウーサーとマーリンの奸計にはまっただけだ。いやこちらのウーサーは私の盟友だったがな」
「そこまで喧嘩をしたいのですか、いいでしょう!
貴女が売った、私が買った! だから貴女をボコる、徹底的にです!!」
「フン、愚かな。姉より優れた妹など存在しないことをその貧相な身体に刻み込んでくれる」
「体形は関係ないでしょう!」
2人はさすがに殺し合いをする気はないらしく、剣や槍は引っ込めてほっぺたのつねり合い程度に抑えているが、大変困った事態であるのは否めない。光己はまだ聞きたいことは残っているのにどうしたものかと痛む頭をひねるのだった。
ニューカマーは今話題のモルガン陛下でした!
彼女がカルデアに協力する理由としては、原作のマイルームで野心がまだある旨を述べてますのでそれにしました。アルトリアが5人もいる魔境ですが頑張ってほしいものです(ぉ
それとオケアノス編が終わりましたので、また主人公の現時点での(サーヴァント基準での)ステータスと絆レベルを開示してみます。
以前のものは第39話、56話、75話、91話、108話の後書きにあります。
性別 :男性
クラス :---
属性 :中立・善
真名 :藤宮 光己
時代、地域:20~21世紀日本
身長、体重:172センチ、67キロ
ステータス:筋力B 耐久C 敏捷C 魔力A 幸運B+ 宝具EX
コマンド :AABBQ
〇保有スキル
・竜モード:EX
体長30メートルの巨竜に変身します。頻繁に使うようになったので宝具からスキルに格落ちしました(ぉ
・神魔モード:EX
頭から角、背中から2対の翼、尾てい骨から尻尾が生えた形態に変身します。こちらもよく使うので格落ちしました。
・フウマカラテ:D+
風魔一族に伝わる格闘術、らしいです。
・神通力:D
火炎操作(太陽属性)、魔力放出、魔力吸収等の特殊能力を使えます。
・財宝奪取:D
ドラゴンの習性が進化したスキルで、サーヴァントの所持品を奪うと彼が退去しても自分の物として現世に残しておくことができます。
・
味方全員のデバフを解除した後、絆レベルに比例した強さのバフを付与します。さらに敵全員に敵対度に比例したデバフがかかります。神魔モード中のみ使用可能。
・魂喰いの魔竜:E
大気中もしくは敵単体から魔力を強力に吸収し、さらに身体が人間サイズの竜のようになっていきます。神魔モード中のみ使用可能。
・魔力感知:D
周囲の生命体が発する魔力を光として感知することができます。人の姿でもできますが、竜の姿の方が広範囲を感知できます。
・ワイバーン産生:D
ワイバーンを細胞分裂で産み出すことができます。事前に数日ほど竜の姿を維持しておく必要があります。
〇クラススキル
・
Aランク以下の攻撃を無効化し、それを超える攻撃もダメージを6ランク下げます。宝具による攻撃の場合はA+まで無効化し、それを超えるものはダメージを12ランク下げます。弱体付与に対しても同様です。光や炎や眠りに対してはさらに6ランク下げます。
・竜人:B
毎ターンNPが上昇します。
〇宝具(というか必殺技)
・
自身に宝具威力アップ状態を付与(1ターン)<オーバーチャージで効果アップ>+敵単体に超強力な無敵貫通&防御力無視攻撃+敵単体にガッツ封印(1ターン)。対霊宝具。竜モード限定。
超高エネルギー状態の光子の塊を撃ち出す技……らしいです。直線状ビーム、円錐形に広がる拡散ビーム、などのバリエーションがあります。
・滅びの吐息:EX
敵全体に強力な攻撃<オーバーチャージで効果アップ>。対城宝具。竜モード限定。
通常のブレス攻撃とは一線を画する威力を誇る、爆発性の火球を吐き出します。
・ギャラク〇アンエクスプ〇ージョン:EX
敵全体に強力な攻撃<オーバーチャージで効果アップ>。対銀河宝具。
銀河の星々をも砕くという概念を持った爆圧を放出します。
使用する時はポルクスの剣を装備している必要があり、かつギャグシーン限定です(ぉ
〇絆レベル
・オルガマリー:6 ・マシュ:5
・ルーラーアルトリア:6 ・ヒロインXX:8 ・アルトリア:3
・アルトリアオルタ:2 ・アルトリアリリィ:4
・スルーズ:6 ・ヒルド:5 ・オルトリンデ:4
・加藤段蔵:5 ・清姫:5 ・ブラダマンテ:9
・カーマ:8 ・長尾景虎:9 ・諸葛孔明:2
・玉藻の前:2 ・ジャンヌ:5 ・ジャンヌオルタ:5
・モルガン:0
〇備考
特になし。